SSブログ
映画感想−は ブログトップ
前の5件 | 次の5件

プリンセスと魔法のキス [映画感想−は]

ディズニー久しぶりの手描き2Dアニメーション作品。
しかもヒロインは初のアフリカ系プリンセス!・・・と、
正確にはプリンセスじゃないのですが、まあそれはそれとして。


ニューオーリンズに住むティアナの幼い頃からの夢は自分のレストランを持つこと。
その夢のために昼夜働き続けていました。
ある日、街にマルドニア王国のナヴィーン王子がやってくることになり、
ティアナの幼なじみで裕福な家の娘であるシャーロットは、
父親に頼んで王子の歓迎パーティを自宅で開きます。
パーティの手伝いを頼まれたティアナは、そこで一匹のカエルに出会います。
このカエル、自分は魔法使いに呪いをかけられたナヴィーン王子だと言い、
呪いを解くためにティアナにキスしてくれと頼みます。
カエルが苦手なティアナでしたが、おそるおそるキスすることに。
しかし魔法は解けず、なぜかティアナまでカエルになってしまい・・・。


ボク、王子なんだー
theprincessandthefrog_1.jpg


ディズニーランドもシーも大好き、ミッキーやドナルドのキャラクターグッズを、
イイ年して今でもためらうことなくチョイスするぐらいのディズニー好きですが、
実は80〜90年代のディズニーアニメは観てないものが結構あります。
そんななので、何年ぶりかの2Dアニメ復活と言われても最初はふーんという感じだったのですが、
観た人がことごとく大絶賛しているので、途端にものすごく興味を持ってしまいました。
特に音楽の評価が高いのが気になってしょうがなかったのですが、
公開前からあちこちで聴かされていたNe-Yoの主題歌は確かに良い曲だとは思いましたが、
それほど特別なものとは思わなかったし、ほかの音楽はどうなってるんだろう?と思っていたら、
先日のアカデミー賞の主題歌賞候補としてチラッと耳にして、途端にうわわとなってしまったのでした。

映画の舞台となるのはニューオーリンズ、時代は1920年代とまさにジャズエイジ!
というわけで、全編ニューオーリンズジャズ満載なのです。
これがとにかくどれもこれも素晴らしく、ものすごく好み!
音楽を担当したのはディズニー作品ではお馴染みのランディ・ニューマン。
そこにニューオーリンズといえば!のドクター・ジョン、
テレンス・ブランチャードのトランペットなど、
さすがディズニーという豪華さというか、ツボを得た起用ぶり。
ティアナの声を担当しているのは『ドリームガールズ』のアニカ・ノニ・ローズで、
演技はもちろん、歌声はとにかく素晴らしいです。


こんなんなっちゃったよう
theprincessandthefrog_4.jpg


物語はベーシックなプリンセスストーリーかと思いきや、これが微妙に様子が違っていて、
このあたりにも、ディズニーの新しいものを作ろうという意気込みみたいなものを感じました。
もちろん最後はハッピーエンディングなのですが、これが単純に、
「王子様と結ばれてめでたしめでたし」というわけではないのです。
主人公のティアナは、幼い時からプリンセスストーリーに胸をときめかせつつも、
それより何より自分のレストランを持つことが一番の夢であり希望であって、
そのためにがむしゃらに働き、星に願いをかけてみても、しっかり現実を見据えています。
それは父親がティアナが幼い頃に「祈りも大切だけど、努力を怠ってはいけない」なんて、
至極真っ当で現実的なことを教えるからなのです。ティアナはその教えを守り、
レストランの実現を見る前に亡くなってしまった父親のため、
ただただレストランを持つという目標に向かって働きます。
いつか王子様が現れて、私をさらって行って欲しい、なんて思ってもいないし、
実際に目の前に王子様(といっても見た目はカエル)が現れても、
「カエルにキスなんて冗談でしょ!」という、おとぎ話にあるまじきことを言うのです。

そんな現実的なヒロインではありますが、物語はヴードゥー使いの魔術師ドクター・ファシリエが登場し、
王子をカエルに変え、その魔法はティアナにも伝染し・・・と、どんどん幻想的な世界へ入っていきます。
当然のように言葉を話すホタルやワニが登場。このワニのルイスに至ってはトランペットを吹き、
いつかミュージシャンになって人間たちと一緒にセッションしたいと願っているのです!
また、ティアナたちの魔法を解くために、2人をヴードゥークィーンのママ・オーディの元へ道案内する、
ホタルのレイの物語は・・・涙なしでは観られない!
動物たちの歌やダンスは実にディズニーらしい楽しさで溢れているし、
ドタバタ加減もツボを得ていて、そのあたりの基本の押さえどころはさすがキッチリしています。
そんな妙に現実的な部分と幻想的な雰囲気がとても良いバランスで描かれていて、
例えばルイスがフツーに人間たちと一緒に演奏してたりすると、
「おいおいそれはないだろー!」とツッコミたくもなりますが、
まあそのへんは楽しければいいよね、という気になります。


ヘソ出てます
theprincessandthefrog_3.jpg


ナヴィーン王子はこれがどうしようもないお調子者のおぼっちゃんで、
遊んでばかりなので親から勘当され一文無しという、ちょっとこれもありえない設定。
そんな実態を知ったらいくら王子とはいえ、さすがに誰も恋に落ちないんじゃない?と思ってしまう。
でも、このおぼっちゃまも、カエルにされていろいろ苦労してちょっとずつ自立していくのです。
ディズニーの王子様といえばとにかくハンサムで、プリンセスのために勇敢に敵と戦ったり、
何もかも完璧でなければいけないはずなのに、このナヴィーンの情けないことといったら!
まだ『魔法にかけられて』の王子の方が王子としての自覚を持っていたような。
なので、しっかり者のティアナがナヴィーンに惹かれるとは思えないし、
でももし2人が結ばれないとしたらプリンセスストーリーとしてどうなの?と思ってましたが、
・・・情けないオトコに惹かれる心理?こういうの、子どもには難しいんじゃないかしらん。
なんて、余計なことかも知れません。とにかくこういうところも新しいなあと思いました。

それと、金持ちの娘と貧乏な娘が親友同士というのもありそうでないというか、
シャーロットはシンデレラにおける意地悪な姉たちのような位置づけにされてもおかしくないのに、
このシャーロットがティアナのために一肌脱ぐところも新しいと思いました。
ティアナとは対照的に、ひたすら王子と結ばれることを夢見ているシャーロット。
単に苦労を知らない素直なお嬢様で、だからずっとティアナと親友同士なんだろうなと納得できる。
途中から、シャーロットもなんとか幸せになって欲しい!と祈らずにはいられませんでした。
というわけで、悪役はドクター・ファシリエだけなんですね。
でまた、このドクター・ファシリエがいわゆる毒リンゴを持ってくる不気味な老婆なんかじゃなく、
ファッションとか立ち居振る舞いがなんだかカッコイイんです。
黒人ならではの身のこなしというのか、サミュエル・L・ジャクソンの格好良さに通じるような感じ。
(ちなみに声をあてているのは『コララインとボタンの魔女』で黒猫を演じたキース・デイヴィッド!)
やっぱりイマドキの悪役はカッコ良くないとね。


レイ・・・レイ・・・!
theprincessandthefrog_2.jpg


CGだ3Dだとアニメーションはどんどん進化していってますが、
この手描きアニメもまったく劣ることのない驚くほど美しい表現力で驚かされました。
これを復活させたディズニーに拍手したいです。
前半の1920年代のニューオーリンズの風景、蒸気船にストリートカー、
フレンチクォーターには行ったことないですが、きっとあんな風にあちらこちらからジャズが聞こえて、
そこらじゅうで歌ったり踊ったりしてたんだろうなというイメージそのまんま!
人々の暮らしぶり、ファッションや文化などがすごく丁寧に描かれていて、
こういうのを見ているだけでも楽しいです。
ティアナの作るベニエやガンボスープが本当に美味しそうに見える!
一方後半のジャングルの様子は、ジットリと湿った沼地に現れるワニ、
咲き乱れる花々に、この奥地に本当にヴードゥー使いが居ても不思議じゃない神秘さ、
そして見上げれば美しく光り輝く星空、こういう描写は本当にディズニーならではだと思います。
カエル採りに来た親子3人のいかにもにいかにもな土着的雰囲気は本当にオカシイし、
ホタルのレイの歯っ欠け具合も併せて、ここまでリアル?に描いていいのやら。
いえ、素直に笑わせてもらいましたが。
そしてエンディングのマルディグラの美しい光景まで、
とにかくあきれるほど良く出来たニューオーリンズ描写。
ヴードゥーのおどろおどろしさを乗り越えたあとの、多幸感は本当に心地よいです。
ディズニーアニメだと侮ってしまっていた自分を愚かだったと反省しました。
そしてそして、これがアトラクションとしてディズニーランドに登場してくれるといいなあ、
なんて夢想してます。星に祈っちゃおうかしらん。



The Princess and the Frog(2009 アメリカ)
監督 ジョン・マスカー ロン・クレメンツ
声の出演 アニカ・ノニ・ローズ ブルーノ・カンポス キース・デイヴィッド マイケル・レオン・ウーリー
     ジェニファー・コーディ ジム・カミングス ジェニファー・ルイス オプラ・ウィンフリー
     テレンス・ハワード ジョン・グッドマン



プリンセスと魔法のキス [DVD]

プリンセスと魔法のキス [DVD]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • メディア: DVD



プリンセスと魔法のキス ブルーレイ(本編DVD付) [Blu-ray]

プリンセスと魔法のキス ブルーレイ(本編DVD付) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • メディア: Blu-ray


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

フォロー・ミー [映画感想−は]

この作品は日本ではたまにテレビ放映され、
最近もテレビ東京の『午後のロードショー』でやっていたようですが、
実は今現在、世界中どこでもビデオ化されていないのだそう。
そういった希少性からの高評価もあるのかなと思っていましたが、
とんでもない、なんとも愛らしく美しい作品でした。
ずっと観たかった作品。絶賛開催中の「午前十時の映画祭」にて鑑賞。


ロンドンの会計士チャールズ(マイケル・ジェイストン)は、
このところの妻ベリンダ(ミア・ファロー)の行動を不審に思い、
探偵社に妻の素行調査を依頼します。
10日後、チャールズの事務所に調査結果を持って現れたのは、
全身白づくめのクリストフォルー(トポル)というどこか怪しげな探偵。
彼はこの10日間のベリンダの行動をチャールズに話し始めますが・・・。


ベリンダの行動は
followme_1.jpg


これまでミア・ファローは私にはどこかとっつきにくく、
ウディ・アレン作品などでもその独特な雰囲気が強い個性となって面白くはあっても、
好きな女優さんかと言われるとちょっと・・・という感じだったのですが、
今作のミア・ファロー、ものすごくチャーミングです。
ちょっと不思議ちゃんと言ってもいいのかもしれませんが、
この当時のヒッピー娘というイメージをよく出しています。
一方、彼女の夫チャールズは山高帽にスリーピース、ステッキのように細く巻かれた傘を持って歩く、
おそらくこの時代であってもすでに珍しいんじゃないかと思われる、
絵に描いたようなイギリス紳士という風貌。しかも職業は会計士というお堅さ。
そんな彼の前に現れた、彼とまったく正反対で不釣り合いに見えるアメリカ娘のベリンダ。
お互い、自分に無いものに強く惹かれてしまうのですが。

ベリンダはおっとりとした性格で、一般常識や芸術的な知識などに欠けていて、
そんな彼女にチャールズは音楽や美術など自分のあらゆる知識を披露し伝授していきます。
ベリンダはいろんな知らない世界に連れて行ってくれる彼に惹かれていき、
チャールズは、あらゆることに無邪気に喜ぶベリンダを愛おしく思う。
でも、結婚するとそんな関係が徐々に崩れ始め、悪い方向に向かってしまいます。
世間体を気にするチャールズは、気ままなベリンダの行動が理解出来ず許せなくなってくる。
ベリンダもチャールズの家族や友人たちの上流社会然とした雰囲気について行けず、
ああしろこうしろとばかり言うチャールズに息苦しさを感じ始めます。


不信感を持つチャールズ
followme_2.jpg


こういうのってすごくわかります!男性は結構この過ちを犯しやすいと思う。
自分の世界を持っている男性は魅力的ではあるのですが、
相手に対する表し方によってはその性格は、頑なさや融通の利かなさに思えてきます。
自分の意見を押し通そうとし、相手が何か違ったことを言うと否定的になる。
ベリンダがチャールズの友人たちの前でちょっと独特な意見を言うと途端に許せなくなる。
ベリンダの自分と違う世界観に最初は惹かれたはずなのに、
周囲が彼女を"異種"だという目で見ると、そんな周囲の視線に耐えられなくなったり。
彼女を嫌いになったわけではなくて、周囲に溶け込ませようとすることを良かれと思ってたり、
何より夫という自分のために良い妻になってくれと思っていたり。
彼女がなぜそう思うのか、なぜそんな行動を取るのかを考えず、
どうして自分の思い通りにならない?と相手を責め始めるのです。

一方のベリンダも、相手のペースに縛られていく息苦しさを感じ始めると、
なぜ自分のこの気持ちをわかってもらえないかと思い悩みます。
オペラもいいけどホラー映画も観たい。自分が好きな絵画にも興味を持ってもらいたい。
でもどうやったら夫に伝わるのかわからない。
彼女はたびたび夫との音楽会やディナーの約束に遅れてしまうようになり、
それはどんな理由であってもベリンダが悪いんですが、もちろん彼女に悪気はなく、
遅れようとかすっぽかそうという気ももちろんない。
でもおそらくイヤだと思う気持ちが無意識に時間を忘れさせてしまうんだと思います。

そして、自分の知らない間にベリンダがどんなに楽しい時間を過ごしていたかを、
チャールズは思わぬ形で知ってしまうことになります。
チャールズが依頼した探偵は、ベリンダの前に謎の男として現れます。
その男、クリストフォルーは当然ベリンダを尾行する・・・のですが、
この人、狙いなのか天然なのか、最初っからベリンダに存在がバレてしまうんですね。
最初は不審に思うベリンダも、なぜかすぐに彼の存在が楽しく、心地よくなっていく。
ベリンダの後をつけて歩いていたクリストフォルーは、やがて前後が逆になり、
クリストフォルーがベリンダを先導して歩くようになります。


あやしい探偵
followme_3.jpg


このクリストフォルーも、チャールズ同様ベリンダを未知の世界に導くことになるのですが、
いったいチャールズとクリストフォルーの違いは何なのでしょう?
思うに、クリストフォルーはベリンダに無理強いしないし、彼女の好きなことを尊重する。
「それもいいけどこれもいいよ」と提案し「これはどこがいいの?」と意見を聞く。
しかも互いに一切言葉を交わさないまま!
この会話のない関係が、逆に互いの感情をストレートに伝え合うのでしょうか。
言葉の力に頼らずとにかく同じ体験をする、まさに共感しあうことの大切さ。
もちろんこれは誰にでも、誰とでも有効な手段ではないだろうし、
仮にベリンダとクリストフォルーがこの後、口を利くようになり交際が始まったとして、
チャールズとのようにならないとは限らない。
人と人が出会い、共に過ごしていくことってなんて難しいことなんだろうと、
もう自分もいい大人なのに思ってしまいました。

さて、ベリンダは理解しあえない夫に愛想を尽かし、
居心地の良い新たな男に気持ちが動いていくのか・・・というとそう安易な話ではありません。
夫婦の間に愛情がなくなったわけではなく、どちらも互いを求めている。
だからこそ、通じ合えないもどかしさに二人とも傷つき合っているのです。
そこでクリストフォルーがこの夫婦に対してある提案をするのですが・・・ああこんな展開!
『フォロー・ミー』というタイトルの本当の意味がここで表されるのです。
ロンドンの美しい街並みにジョン・バリーの美しい音楽、
そこに描かれる三人の互いを思う心の美しさ。
小さくて優しい、まさにマカロンのような作品でした。

「午前十時の映画祭」が最寄りの映画館で行われていたら、ぜひ足を運んでいただきたい。
それが叶わない方は、今年の秋にはDVD化されるそうなので、お楽しみに!


Follow Me! / The Public Eye(1972 イギリス)
監督 キャロル・リード
出演 ミア・ファロー トポル マイケル・ジェイストン
   マーガレット・ローリングス アネット・クロスビー



【日本語解説付】フォロー・ミー (Follow Me!)

【日本語解説付】フォロー・ミー (Follow Me!)

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: Harkit/Rambling Records
  • 発売日: 2010/03/06
  • メディア: CD


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

バレンタインデー [映画感想−は]

『ラブ・アクチュアリー』のリメイクです・・・というのはウソですが、
大勢の老若男女が登場し、好きだ愛してるだ言ってる話なので、
まあ大筋で同じと言っても間違いありません。
それにしても、ちゃんとバレンタインデーに合わせて日本公開してくれて嬉しい。
『ラブ・アクチュアリー』はクリスマスの話なのに、
日本では年が明けてからの公開でがっかりした記憶があります。
私はバレンタインの翌日に鑑賞しましたが、当日観たカップルはたくさんいたのかな?


2月14日、バレンタインデーの朝。ロサンゼルス。
花屋を経営するリード(アシュトン・クッチャー)は、
同棲中のモーリー(ジェシカ・アルバ)にベッドでプロポーズします。
幸福の絶頂のままリードは市場へ花の仕入れへ向かいますが、
そこでスポーツキャスターのケルビン(ジェイミー・フォックス)のインタビューを受けます。
リードの親友ジュリア(ジェニファー・ガーナー)は、今夜は出張で不在になる、
恋人のハリソン(パトリック・デンプシー)と名残惜しい別れの朝を過ごしていました。
会社の同僚同士のリズ(アン・ハサウェイ)とジェイソン(トファー・グレイス)は、
初めての一夜を過ごし、ベッドの上で幸せな朝を迎えていましたが、
突然リズの電話が鳴り、彼女は慌てて部屋を出ます。
エステル(シャーリー・マクレーン)とエドガー(ヘクター・エリゾンド)の夫婦は、
互いに贈らないと言ったバレンタインのプレゼントを交換し合います。
ロサンゼルス行きの機中ではホールデン(ブラッドレイ・クーパー)が、
自分の肩にもたれかかって眠る隣席の女性ケイト(ジュリア・ロバーツ)と出会います。
アメフト選手のショーン(エリック・デイン)は引退の危機に瀕していて、
彼のパブリシストのカーラ(ジェシカ・ビール)は、毎年恒例の、
「バレンタインなんか大嫌いディナー」を今年も開こうとしていました。


親友同士
valentine'sday_1.jpg


バレンタインデーは、日本では女性が男性に愛を告白する日で、
贈るものはチョコレートということになっていますが、
欧米では男女どちらからということではなく、チョコだけじゃなくカードとか花とか、
とにかく愛する人に贈り物をする日、ということなんですよね。
というわけでバレンタインデーは花屋さんが大忙し、
その花屋さんを中心にいくつもの話が語られていきます。

この花屋さんという軸があるせいか、この手の同時進行話によくある、
「そんなに世間は狭くないでしょ」というツッコミどころがありません。
人々の繋がり具合が自然で違和感があまりないのです。この点はうまいなあと思いました。
とは言え、途中ダレてしまう感じもあったし、何より展開は読めるし、
音楽の使い方とかベタだし・・・と、不満な点も多々。
全部で何人、何カップル出てくるんだか数えるのも面倒なくらいなんですが、
明らかに"この人はいらないだろう"という人たちもいるし、
明らかに"何のためにこの人は出てきたんだ?"という人たちもいます。

前者のいらないだろう!はテイラー・スウィフトとテイラー・ロートナーのカップル。
この2人は、若いお客さんを呼びたいがためのキャストなんでしょうか?
エマ・ロバーツとカーター・ジェンキンスというカップルがもう1組いて、
こちらはかなりほかの人々に影響する役柄なので、高校生組は彼らだけで十分。
どうせならテイラー・スウィフトは歌でも歌えば良かったのでは?と思いました。
そして後者の何のために?はキャシー・ベイツとクイーン・ラティファ。
まあクイーン・ラティファは意味のある役ではあったけど、
キャシー・ベイツは途中でその存在をすっかり忘れてしまっていたし、
実際、忘れても全然差し支えないという、ほとんどカメオ並みの出方。
最初に出てきた時は、ジェイミー・フォックスとどうかなるのかと思ってしまいました。


始まったばかり
valentine'sday_2.jpg


ゲイリー・マーシャル監督作のヒロイン経験者ということでお声がかかったのか、
『プリティ・ウーマン』のジュリア・ロバーツと、
『プリティ・プリンセス』のアン・ハサウェイが出ています。
アン・ハサウェイはまあいつも通り(というかかなり元気で過激)な役。
(ああトファー・グレイスが押しつぶされそう!)
ジュリア・ロバーツはてっきりゲスト的な、ヘタすると全体から浮きそうな役かと思ったら、
いい意味で別扱いというのか貫禄があって、彼女にこういう役をやらせたということで、
この作品をググッと引き上げた感じです。
上にも書いたように、誰がどのようになっていくかの展開はほとんど見えるんですが、
ジュリア・ロバーツだけは私は最後までわからなくて、
ええ、そう繋がるの!?と、ここは不意を突かれて思わず涙がボロッ。
最近、こういうのに弱いというのもあるんですが、最後にやられました。
確かにジュリア・ロバーツもいつまでも浮かれた恋なんかしてるわけないですよね。

貫禄といえば、高齢カップルのシャーリー・マクレーンとヘクター・エリゾンド。
シャーリー・マクレーンには特に敬意を払ったなというシーンが用意されていました。
ちょっとドレスのヒラヒラが過ぎるかなあと気になったけど、彼女だからすべて許す!


出会って50年
valentine'sday_3.jpg


ストーリーに関しては何度も書きますが本当にベタでわかりやすくて、
それぞれがお約束という安心感で、観ていてイヤな気持ちになりません。
各年代の恋愛を描いているので、観ている側の年齢などで思うこともいろいろだと思うし、
ここに繋がるのかあという楽しさがあります。
こういう群像劇、しかもズバリ恋愛話というテーマが好きかどうかで、
この作品の評価はバッサリ分かれると思いますが・・・私はスキです。
不満な点も「まあ、いっか」と思わせるお気楽さ、
こういう毒にも薬にもならないようなものって、大事だと思うのです。
全員がハッピーエンドで終わるわけではないのですが、
ここにはたくさんの幸せがあって、もうみんなニコニコして泣き笑いして、
この表現もベタだけど・・・恋したくなります。うん。

それともう一つ、これはロサンゼルスを舞台にしているのですが、
最近珍しいぐらい"ロサンゼルスところどころ"な撮り方をしていて、
これも観ていてすごく嬉しかった。
冒頭から本当に素敵な景色をいろいろと見せていくという、
ああロス行きたいなあ、こんなお花屋さんとかいいなあと思わせる撮り方。
こういうお気楽ハッピーなドラマには、ロサンゼルスの青空がよく似合ってる、ということかな。


Valentine's Day(2010 アメリカ)
監督 ゲイリー・マーシャル
出演 ジェシカ・アルバ キャシー・ベイツ ジェシカ・ビール ブラッドレイ・クーパー
   エリック・デイン パトリック・デンプシー ヘクター・エリゾンド
   ジェイミー・フォックス ジェニファー・ガーナー トファー・グレイス
   アン・ハサウェイ カーター・ジェンキンス アシュトン・クッチャー
   クイーン・ラティファ テイラー・ロートナー ジョージ・ロペス シャーリー・マクレーン
   エマ・ロバーツ ジュリア・ロバーツ ブライス・ロビンソン テイラー・スウィフト



バレンタインデー [DVD]

バレンタインデー [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD



バレンタインデー Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

バレンタインデー Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: Blu-ray


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

ぼくたちの奉仕活動 [映画感想−は]

そうか、ポール・ラッド主演だと「俺たち〜」じゃなく「ぼくたち〜」なのかーと、
それはあまり関係ないのかもしれませんが、何にしてもこの邦題では気が付かなかった。
原題は『Role Models』さて、彼らは何の"お手本"に?
ポール・ラッド自ら脚本も手がけた当然ながらの日本劇場未公開作品です。


ホイーラー(ショーン・ウィリアム・スコット)とダニー(ポール・ラッド)は親友同士。
LAで栄養ドリンクのセールスマンとして毎日高校を回って営業活動しています。
ダニーは最近自分の生き方に疑問を持ち始め、
恋人のベス(エリザベス・バンクス)ともケンカ別れしたりとイラつき気味。
そしてついに仕事中にキレて仕事を放棄した上に交通事故を起こしてしまい、
ホイーラーと共に逮捕されてしまいます。
刑務所行きか社会奉仕活動かの選択を迫られた2人は迷わず奉仕活動を選びますが、
それは問題を抱えた子どもたちと150時間を過ごすという、想像を超えた体験の始まりだったのでした。


刑務所か、子どもの相手か
rolemodels_1.jpg


ポール・ラッド主演、男2人組の物語ということで、
『40男のバージンロード』をちょっと思わせる(製作はこちらのほうが先)、
何年かしたらゴッチャになってそうな設定ですが、面白さでは『40男〜』のほうが上かな?
ショーン・ウィリアム・スコットとポール・ラッドの2人が主人公というわけなのですが、
暗く静かにキレてるダニーと、何事にも軽くていいかげんなホイーラーという性格付けが、
どうも生かし切れてないような、もう少しとことん振り切れて欲しい物足りなさを感じてしまいました。
その代わりに2人がそれぞれ担当する少年2人のキャラクターがなかなかに強烈で、
彼らを印象づける意味で大人側は控えめになったのかも、とも思えるぐらい個性的です。

ホイーラーがペアを組むロニー(ボビー・J・トンプソン)は誰もが手を焼く問題児。
憎まれ口しか叩かないし、子どものくせに話すことは下ネタばかり。
ホイーラーとも最初は噛み合っていなかったのですが、
いろんなワルい遊びを教えたりして意外にうまく行き始めます。
でも、あることがきっかけで仲違いしてしまうことに。
ホイーラーはなんとか関係修復を図ろうとしますが、一度失った信頼は取り返せるのでしょうか?


問題児?
rolemodels_2.jpg


一方、ダニーがペアを組むオージー(クリストファー・ミンツ=プラッセ)は、
中世の世界のようなファンタジーゲームにハマっている高校生。
毎週末、公園で扮装してRPG風バトルを繰り返すという、これがなんともスゴイ!
やってるのが彼のような男の子だけじゃなく、女の子もいればいい年のオジサンやらオバサンやら、
とにかく老若男女、入り乱れてチャンバラごっこに興じるのです。
胸を刺されたら死亡、腕や足を切られたら片腕片足になって闘うとかいうルールも、
「子どもか!」と言いたくなる感じなんですが、みんな大真面目に大バトルを繰り広げるのです。
ダニーはこんなファンタジー世界に生きてるオージーを最初は引き気味に見ていたのですが、
オージーの家庭環境や内面を知ると、次第に彼のために一生懸命になっていきます。

クリストファー・ミンツ=プラッセ・・・そう、
あの『スーパーバッド 童貞ウォーズ』のマクラヴィン!
実はこの作品を観たかった一番の理由は彼と言ってもいいぐらい。
相変わらずのピュアっぷり、ナードを絵に描いたような彼が今回もすっごくイイ!
当分彼からは目を離せそうにないです。
そして今作でもう一人大注目なのが、このファンタジーゲームに登場する王様、
演じるのはケン・チョン!
この人『スモーキング・ハイ』『俺たちステップ・ブラザース』など、
ジャド・アパトー系コメディにちょくちょく登場する東洋系の人、というとわかってもらえるでしょうか。
中世風設定なのに思いっきりアジアンな彼が家来を従えて現れるという、もう最高!


王様!
rolemodels_3.jpg


ショーン・ウィリアム・スコットは個人的にイマイチ印象に残らないというか、
もうちょっとこの役は強烈キャラであって欲しかったかなという微妙な感じが惜しい。
TVドラマやアパトー系作品でお馴染みのジェーン・リンチは奉仕活動団体の所長役。
「昔は相当にワルだった」という、私には何でもお見通しよ!みたいな人って、
・・・ホント鬱陶しい。というわけでものすごく適役!?
エリザベス・バンクスは、今回は弁護士でいたって普通の女性。
でも彼女が普通の役ってなぜかちょっと物足りない気がしてしまいます。
彼女も実は・・・なんて意外な顔みたいなものでも見せて欲しかったかな。

いわゆる最近よくある「男の友情物語」としては及第点だと思います。
展開はお約束通りだし、ちょっと物足りなさを感じますが、
元々この手の作品はギャグで大爆笑させようというようなものではないのかも知れないし、
このくらいでちょうどいいのかも知れません。
ある意味気楽に、安心して観られる。イヤな気持ちにはならないし。
お約束と言えばこの路線ではなぜか音楽ネタも欠かせない感じですが、今回はKISS!
『40男〜』におけるRUSHみたいな情熱はちょっと足りないかなと思いましたが、
少年2人のコスプレはかわいらしかった。
でもポール・ラッド、歌ヘタかも?
まあウィル・フェレルやジェイソン・シーゲルが上手すぎるんですけどね。


Role Models(2008 アメリカ/ドイツ)
監督 デヴィッド・ウェイン
出演 ショーン・ウィリアム・スコット ポール・ラッド クリストファー・ミンツ=プラッセ
   ボビー・J・トンプソン エリザベス・バンクス ジェーン・リンチ ケン・チョン




ぼくたちの奉仕活動 【ブルーレイ&DVDセット 2500円】 [Blu-ray]

ぼくたちの奉仕活動 【ブルーレイ&DVDセット 2500円】 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • メディア: Blu-ray


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

ブッシュ [映画感想−は]

オリバー・ストーン作品は昔はよく観ていましたが、
どうもそのアクの強さというのか押しの強さというのか、がだんだん苦手になって、
最近は敬遠気味でした。
でもこれは題材と出演者に惹かれて鑑賞。


名門ブッシュ家の長男に生まれたジョージ・W・ブッシュ(ジョシュ・ブローリン)。
しかし学業も仕事も中途半端。何かと問題ばかり起こし、
父親ジョージ・H・W・ブッシュ(ジェームズ・クロムウェル)からも見放されそうになります。
やがて彼は一念発起し、テキサス州の下院議員選挙に立候補。
政治の道を歩み始めますが・・・。


ダブヤ
w._1.jpg


事前に多少予備知識を入れていたので、これが真っ向からのブッシュ批判という作りではなく、
オリバー・ストーン自身の生い立ち・・・ブッシュと同い年、同じイエール大生、
そして同じような父親との関係・・・などを重ねた、
ブッシュというその人そのものを描いた作品だとはわかっていました。
確かに見終えてみるといかに彼が大統領という職に不向きであったかということがよく描かれています。
学生時代は酔って暴れて留置所に入ったり、ガールフレンドを妊娠させたりしてはその都度父親に助けられ、
仕事は何をしても長続きしない、本当にどうしようもないボンボンぶり。
そんな自分がイヤだったり、なんとかしたいとは思っているんだけど結局自分では何も出来ない。
自分と違って優秀な弟、家系、特に父親から受ける重圧はかわいそうにさえ思えます。
でも、そんなに単純に同情してもいいのか、そんな"器の小さい"男がアメリカ大統領となり、
そのことが世界にもたらした不幸の大きさを考えると、
こんな男だったから仕方なかったのね、では済まされないと思います。


パパ・ブッシュ、ママ・バーバラ
w._2.jpg


では、そんなブッシュの人間性を描くことによって、
オリバー・ストーンはいったい何を言いたかったのか。
正直なところ、私にはよくわかりませんでした。
徹底的にブッシュを叩くのならわかります。
彼がどんなに無能であるかや、またどうやってあの2004年の選挙戦を勝ち抜いたのかとか、
それらを明らかにしていくというのならわかりやすい。
あるいは逆に徹底的にブッシュのその人間性に焦点を当て、父親との確執を掘り下げ、
いかに哀れで愚かな男であるかを描き、ブッシュ版『エデンの東』にして、
もっともっと同情を買うように作ることも出来たと思います。それこそ反発は大きいかも知れませんが。
しかしそのいずれでもない。そこが拍子抜けしてしまうというか、ちょっと期待はずれでした。

この器の小さい男を8年間大統領として据えておくことを許した、
アメリカ国民に対しての批判なのかも、とも思いました。
でもそれも特にそういった問題提起をされるわけではなく、
観た人がそれぞれ何かを感じる程度でしかない気がしました。
当のアメリカ人にはそれぞれ考えも言い分もあるでしょうし、
そのあたりは部外者である日本人の私にはよくわかりません。
でも、今作がアメリカ国内での評価も低いということが、答えであるとも言えます。
結局これは何を言いたい、表したい作品だったのか。
なぜブッシュ退任のタイミングで作られたのかも謎だし、
もう少し時間が経ってからなら、もっと違う意味も出てきたと思う。
そもそもこのタイミングだった理由もよく見えて来ませんでした。


ローラとの出会い
w._3.jpg


ジョシュ・ブローリンのブッシュは、若い頃から最近までを見事に演じていて、
たまに本人の映像が混ざったのかと思うぐらいソックリなシーンもあってびっくりです。
エリザベス・バンクスのローラ夫人はまあ、ちょっと可愛すぎる気がしますが、
女性なので何割増しかのキャスティングはサービスですね。
フラットパック好きとしては、彼女のストレートな演技が見れるのはそれだけで嬉しかったりします。
ジェームズ・クロムウェルのパパ・ブッシュとエレン・バースティンのバーバラ夫人も、
それほど似せているわけではないんですが、こんな人たちだった気がしてしまうから不思議。
それはリチャード・ドレイファスのチェイニー、ジェフリー・ライトのパウエルにも言えて、
まあよくやってるなあと感心してしまいます。
ただタンディ・ニュートンのコンドリーザ・ライスはあまりにも似せすぎて、
彼女の熱演に対して申し訳ないですが、なんだかコントでもやってるみたいで、
ちょっと見ているのがつらかったです。
こういう実在の人物を描く映画というのはあまりに本人に似すぎていると、
かえってヘンなものだということがわかりました。

でも、そんな熱演も含めて、見どころはいくつかあって、
それだけに、もうちょっとテーマや方向性がはっきりしていたら、と残念に思いました。
ブッシュの行動や発言にヒヤヒヤしたり気を揉んだりする周囲の人々の様子はおかしくもあり、
イラク侵攻を決める会議での各人の言い分、それに対するブッシュの良く言えば素直な言動、
なぜ彼がそこまでイラクにこだわったのか・・・その理由が見えると、
ああなんて恐ろしい時代だったのだろうと思わされるし、
その地獄は意味や形を変えてまだ終わっていないという事実に改めてハッとさせられます。
もう何年かしていろんなことが落ち着いたら、
この悪夢の8年間をきちんと冷静に描く作品が登場するといいなと思います。
それを期待したいです。


W.(2008 アメリカ)
監督 オリバー・ストーン
出演 ジョシュ・ブローリン エリザベス・バンクス エレン・バースティン ジェームズ・クロムウェル
   リチャード・ドレイファス スコット・グレン トビー・ジョーンズ ステイシー・キーチ
   ブルース・マッギル タンディ・ニュートン ジェフリー・ライト



ブッシュ [DVD]

ブッシュ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • メディア: DVD


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画
前の5件 | 次の5件 映画感想−は ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。