フォロー・ミー [映画感想−は]
この作品は日本ではたまにテレビ放映され、
最近もテレビ東京の『午後のロードショー』でやっていたようですが、
実は今現在、世界中どこでもビデオ化されていないのだそう。
そういった希少性からの高評価もあるのかなと思っていましたが、
とんでもない、なんとも愛らしく美しい作品でした。
ずっと観たかった作品。絶賛開催中の「午前十時の映画祭」にて鑑賞。
ロンドンの会計士チャールズ(マイケル・ジェイストン)は、
このところの妻ベリンダ(ミア・ファロー)の行動を不審に思い、
探偵社に妻の素行調査を依頼します。
10日後、チャールズの事務所に調査結果を持って現れたのは、
全身白づくめのクリストフォルー(トポル)というどこか怪しげな探偵。
彼はこの10日間のベリンダの行動をチャールズに話し始めますが・・・。
ベリンダの行動は
これまでミア・ファローは私にはどこかとっつきにくく、
ウディ・アレン作品などでもその独特な雰囲気が強い個性となって面白くはあっても、
好きな女優さんかと言われるとちょっと・・・という感じだったのですが、
今作のミア・ファロー、ものすごくチャーミングです。
ちょっと不思議ちゃんと言ってもいいのかもしれませんが、
この当時のヒッピー娘というイメージをよく出しています。
一方、彼女の夫チャールズは山高帽にスリーピース、ステッキのように細く巻かれた傘を持って歩く、
おそらくこの時代であってもすでに珍しいんじゃないかと思われる、
絵に描いたようなイギリス紳士という風貌。しかも職業は会計士というお堅さ。
そんな彼の前に現れた、彼とまったく正反対で不釣り合いに見えるアメリカ娘のベリンダ。
お互い、自分に無いものに強く惹かれてしまうのですが。
ベリンダはおっとりとした性格で、一般常識や芸術的な知識などに欠けていて、
そんな彼女にチャールズは音楽や美術など自分のあらゆる知識を披露し伝授していきます。
ベリンダはいろんな知らない世界に連れて行ってくれる彼に惹かれていき、
チャールズは、あらゆることに無邪気に喜ぶベリンダを愛おしく思う。
でも、結婚するとそんな関係が徐々に崩れ始め、悪い方向に向かってしまいます。
世間体を気にするチャールズは、気ままなベリンダの行動が理解出来ず許せなくなってくる。
ベリンダもチャールズの家族や友人たちの上流社会然とした雰囲気について行けず、
ああしろこうしろとばかり言うチャールズに息苦しさを感じ始めます。
不信感を持つチャールズ
こういうのってすごくわかります!男性は結構この過ちを犯しやすいと思う。
自分の世界を持っている男性は魅力的ではあるのですが、
相手に対する表し方によってはその性格は、頑なさや融通の利かなさに思えてきます。
自分の意見を押し通そうとし、相手が何か違ったことを言うと否定的になる。
ベリンダがチャールズの友人たちの前でちょっと独特な意見を言うと途端に許せなくなる。
ベリンダの自分と違う世界観に最初は惹かれたはずなのに、
周囲が彼女を"異種"だという目で見ると、そんな周囲の視線に耐えられなくなったり。
彼女を嫌いになったわけではなくて、周囲に溶け込ませようとすることを良かれと思ってたり、
何より夫という自分のために良い妻になってくれと思っていたり。
彼女がなぜそう思うのか、なぜそんな行動を取るのかを考えず、
どうして自分の思い通りにならない?と相手を責め始めるのです。
一方のベリンダも、相手のペースに縛られていく息苦しさを感じ始めると、
なぜ自分のこの気持ちをわかってもらえないかと思い悩みます。
オペラもいいけどホラー映画も観たい。自分が好きな絵画にも興味を持ってもらいたい。
でもどうやったら夫に伝わるのかわからない。
彼女はたびたび夫との音楽会やディナーの約束に遅れてしまうようになり、
それはどんな理由であってもベリンダが悪いんですが、もちろん彼女に悪気はなく、
遅れようとかすっぽかそうという気ももちろんない。
でもおそらくイヤだと思う気持ちが無意識に時間を忘れさせてしまうんだと思います。
そして、自分の知らない間にベリンダがどんなに楽しい時間を過ごしていたかを、
チャールズは思わぬ形で知ってしまうことになります。
チャールズが依頼した探偵は、ベリンダの前に謎の男として現れます。
その男、クリストフォルーは当然ベリンダを尾行する・・・のですが、
この人、狙いなのか天然なのか、最初っからベリンダに存在がバレてしまうんですね。
最初は不審に思うベリンダも、なぜかすぐに彼の存在が楽しく、心地よくなっていく。
ベリンダの後をつけて歩いていたクリストフォルーは、やがて前後が逆になり、
クリストフォルーがベリンダを先導して歩くようになります。
あやしい探偵
このクリストフォルーも、チャールズ同様ベリンダを未知の世界に導くことになるのですが、
いったいチャールズとクリストフォルーの違いは何なのでしょう?
思うに、クリストフォルーはベリンダに無理強いしないし、彼女の好きなことを尊重する。
「それもいいけどこれもいいよ」と提案し「これはどこがいいの?」と意見を聞く。
しかも互いに一切言葉を交わさないまま!
この会話のない関係が、逆に互いの感情をストレートに伝え合うのでしょうか。
言葉の力に頼らずとにかく同じ体験をする、まさに共感しあうことの大切さ。
もちろんこれは誰にでも、誰とでも有効な手段ではないだろうし、
仮にベリンダとクリストフォルーがこの後、口を利くようになり交際が始まったとして、
チャールズとのようにならないとは限らない。
人と人が出会い、共に過ごしていくことってなんて難しいことなんだろうと、
もう自分もいい大人なのに思ってしまいました。
さて、ベリンダは理解しあえない夫に愛想を尽かし、
居心地の良い新たな男に気持ちが動いていくのか・・・というとそう安易な話ではありません。
夫婦の間に愛情がなくなったわけではなく、どちらも互いを求めている。
だからこそ、通じ合えないもどかしさに二人とも傷つき合っているのです。
そこでクリストフォルーがこの夫婦に対してある提案をするのですが・・・ああこんな展開!
『フォロー・ミー』というタイトルの本当の意味がここで表されるのです。
ロンドンの美しい街並みにジョン・バリーの美しい音楽、
そこに描かれる三人の互いを思う心の美しさ。
小さくて優しい、まさにマカロンのような作品でした。
「午前十時の映画祭」が最寄りの映画館で行われていたら、ぜひ足を運んでいただきたい。
それが叶わない方は、今年の秋にはDVD化されるそうなので、お楽しみに!
Follow Me! / The Public Eye(1972 イギリス)
監督 キャロル・リード
出演 ミア・ファロー トポル マイケル・ジェイストン
マーガレット・ローリングス アネット・クロスビー
最近もテレビ東京の『午後のロードショー』でやっていたようですが、
実は今現在、世界中どこでもビデオ化されていないのだそう。
そういった希少性からの高評価もあるのかなと思っていましたが、
とんでもない、なんとも愛らしく美しい作品でした。
ずっと観たかった作品。絶賛開催中の「午前十時の映画祭」にて鑑賞。
ロンドンの会計士チャールズ(マイケル・ジェイストン)は、
このところの妻ベリンダ(ミア・ファロー)の行動を不審に思い、
探偵社に妻の素行調査を依頼します。
10日後、チャールズの事務所に調査結果を持って現れたのは、
全身白づくめのクリストフォルー(トポル)というどこか怪しげな探偵。
彼はこの10日間のベリンダの行動をチャールズに話し始めますが・・・。
ベリンダの行動は
これまでミア・ファローは私にはどこかとっつきにくく、
ウディ・アレン作品などでもその独特な雰囲気が強い個性となって面白くはあっても、
好きな女優さんかと言われるとちょっと・・・という感じだったのですが、
今作のミア・ファロー、ものすごくチャーミングです。
ちょっと不思議ちゃんと言ってもいいのかもしれませんが、
この当時のヒッピー娘というイメージをよく出しています。
一方、彼女の夫チャールズは山高帽にスリーピース、ステッキのように細く巻かれた傘を持って歩く、
おそらくこの時代であってもすでに珍しいんじゃないかと思われる、
絵に描いたようなイギリス紳士という風貌。しかも職業は会計士というお堅さ。
そんな彼の前に現れた、彼とまったく正反対で不釣り合いに見えるアメリカ娘のベリンダ。
お互い、自分に無いものに強く惹かれてしまうのですが。
ベリンダはおっとりとした性格で、一般常識や芸術的な知識などに欠けていて、
そんな彼女にチャールズは音楽や美術など自分のあらゆる知識を披露し伝授していきます。
ベリンダはいろんな知らない世界に連れて行ってくれる彼に惹かれていき、
チャールズは、あらゆることに無邪気に喜ぶベリンダを愛おしく思う。
でも、結婚するとそんな関係が徐々に崩れ始め、悪い方向に向かってしまいます。
世間体を気にするチャールズは、気ままなベリンダの行動が理解出来ず許せなくなってくる。
ベリンダもチャールズの家族や友人たちの上流社会然とした雰囲気について行けず、
ああしろこうしろとばかり言うチャールズに息苦しさを感じ始めます。
不信感を持つチャールズ
こういうのってすごくわかります!男性は結構この過ちを犯しやすいと思う。
自分の世界を持っている男性は魅力的ではあるのですが、
相手に対する表し方によってはその性格は、頑なさや融通の利かなさに思えてきます。
自分の意見を押し通そうとし、相手が何か違ったことを言うと否定的になる。
ベリンダがチャールズの友人たちの前でちょっと独特な意見を言うと途端に許せなくなる。
ベリンダの自分と違う世界観に最初は惹かれたはずなのに、
周囲が彼女を"異種"だという目で見ると、そんな周囲の視線に耐えられなくなったり。
彼女を嫌いになったわけではなくて、周囲に溶け込ませようとすることを良かれと思ってたり、
何より夫という自分のために良い妻になってくれと思っていたり。
彼女がなぜそう思うのか、なぜそんな行動を取るのかを考えず、
どうして自分の思い通りにならない?と相手を責め始めるのです。
一方のベリンダも、相手のペースに縛られていく息苦しさを感じ始めると、
なぜ自分のこの気持ちをわかってもらえないかと思い悩みます。
オペラもいいけどホラー映画も観たい。自分が好きな絵画にも興味を持ってもらいたい。
でもどうやったら夫に伝わるのかわからない。
彼女はたびたび夫との音楽会やディナーの約束に遅れてしまうようになり、
それはどんな理由であってもベリンダが悪いんですが、もちろん彼女に悪気はなく、
遅れようとかすっぽかそうという気ももちろんない。
でもおそらくイヤだと思う気持ちが無意識に時間を忘れさせてしまうんだと思います。
そして、自分の知らない間にベリンダがどんなに楽しい時間を過ごしていたかを、
チャールズは思わぬ形で知ってしまうことになります。
チャールズが依頼した探偵は、ベリンダの前に謎の男として現れます。
その男、クリストフォルーは当然ベリンダを尾行する・・・のですが、
この人、狙いなのか天然なのか、最初っからベリンダに存在がバレてしまうんですね。
最初は不審に思うベリンダも、なぜかすぐに彼の存在が楽しく、心地よくなっていく。
ベリンダの後をつけて歩いていたクリストフォルーは、やがて前後が逆になり、
クリストフォルーがベリンダを先導して歩くようになります。
あやしい探偵
このクリストフォルーも、チャールズ同様ベリンダを未知の世界に導くことになるのですが、
いったいチャールズとクリストフォルーの違いは何なのでしょう?
思うに、クリストフォルーはベリンダに無理強いしないし、彼女の好きなことを尊重する。
「それもいいけどこれもいいよ」と提案し「これはどこがいいの?」と意見を聞く。
しかも互いに一切言葉を交わさないまま!
この会話のない関係が、逆に互いの感情をストレートに伝え合うのでしょうか。
言葉の力に頼らずとにかく同じ体験をする、まさに共感しあうことの大切さ。
もちろんこれは誰にでも、誰とでも有効な手段ではないだろうし、
仮にベリンダとクリストフォルーがこの後、口を利くようになり交際が始まったとして、
チャールズとのようにならないとは限らない。
人と人が出会い、共に過ごしていくことってなんて難しいことなんだろうと、
もう自分もいい大人なのに思ってしまいました。
さて、ベリンダは理解しあえない夫に愛想を尽かし、
居心地の良い新たな男に気持ちが動いていくのか・・・というとそう安易な話ではありません。
夫婦の間に愛情がなくなったわけではなく、どちらも互いを求めている。
だからこそ、通じ合えないもどかしさに二人とも傷つき合っているのです。
そこでクリストフォルーがこの夫婦に対してある提案をするのですが・・・ああこんな展開!
『フォロー・ミー』というタイトルの本当の意味がここで表されるのです。
ロンドンの美しい街並みにジョン・バリーの美しい音楽、
そこに描かれる三人の互いを思う心の美しさ。
小さくて優しい、まさにマカロンのような作品でした。
「午前十時の映画祭」が最寄りの映画館で行われていたら、ぜひ足を運んでいただきたい。
それが叶わない方は、今年の秋にはDVD化されるそうなので、お楽しみに!
Follow Me! / The Public Eye(1972 イギリス)
監督 キャロル・リード
出演 ミア・ファロー トポル マイケル・ジェイストン
マーガレット・ローリングス アネット・クロスビー
ミア・ファロー、めっちゃ久しぶりって感じ。
もうストーリーすら朧げなんですが、
ジョンとマリーだったか、なんかすごい印象に残っている、
と言っても名前くらいだけですが、作品がありました。
なんだっけな〜。
それと、ツィッター、フォロー有難うございます。
また宜しくお願い致します。
by ぷーちゃん (2010-03-02 23:45)
ぷーちゃんさん、こんにちは!
正しくは『ジョンとメリー』ですね、と微ツッコミw
こちらこそフォローありがとうございます。
なんだか見覚えのある名前とアイコンだなあと思ったら・・・びっくりしましたよ!
by dorothy (2010-03-03 01:39)