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ブッシュ [映画感想−は]

オリバー・ストーン作品は昔はよく観ていましたが、
どうもそのアクの強さというのか押しの強さというのか、がだんだん苦手になって、
最近は敬遠気味でした。
でもこれは題材と出演者に惹かれて鑑賞。


名門ブッシュ家の長男に生まれたジョージ・W・ブッシュ(ジョシュ・ブローリン)。
しかし学業も仕事も中途半端。何かと問題ばかり起こし、
父親ジョージ・H・W・ブッシュ(ジェームズ・クロムウェル)からも見放されそうになります。
やがて彼は一念発起し、テキサス州の下院議員選挙に立候補。
政治の道を歩み始めますが・・・。


ダブヤ
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事前に多少予備知識を入れていたので、これが真っ向からのブッシュ批判という作りではなく、
オリバー・ストーン自身の生い立ち・・・ブッシュと同い年、同じイエール大生、
そして同じような父親との関係・・・などを重ねた、
ブッシュというその人そのものを描いた作品だとはわかっていました。
確かに見終えてみるといかに彼が大統領という職に不向きであったかということがよく描かれています。
学生時代は酔って暴れて留置所に入ったり、ガールフレンドを妊娠させたりしてはその都度父親に助けられ、
仕事は何をしても長続きしない、本当にどうしようもないボンボンぶり。
そんな自分がイヤだったり、なんとかしたいとは思っているんだけど結局自分では何も出来ない。
自分と違って優秀な弟、家系、特に父親から受ける重圧はかわいそうにさえ思えます。
でも、そんなに単純に同情してもいいのか、そんな"器の小さい"男がアメリカ大統領となり、
そのことが世界にもたらした不幸の大きさを考えると、
こんな男だったから仕方なかったのね、では済まされないと思います。


パパ・ブッシュ、ママ・バーバラ
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では、そんなブッシュの人間性を描くことによって、
オリバー・ストーンはいったい何を言いたかったのか。
正直なところ、私にはよくわかりませんでした。
徹底的にブッシュを叩くのならわかります。
彼がどんなに無能であるかや、またどうやってあの2004年の選挙戦を勝ち抜いたのかとか、
それらを明らかにしていくというのならわかりやすい。
あるいは逆に徹底的にブッシュのその人間性に焦点を当て、父親との確執を掘り下げ、
いかに哀れで愚かな男であるかを描き、ブッシュ版『エデンの東』にして、
もっともっと同情を買うように作ることも出来たと思います。それこそ反発は大きいかも知れませんが。
しかしそのいずれでもない。そこが拍子抜けしてしまうというか、ちょっと期待はずれでした。

この器の小さい男を8年間大統領として据えておくことを許した、
アメリカ国民に対しての批判なのかも、とも思いました。
でもそれも特にそういった問題提起をされるわけではなく、
観た人がそれぞれ何かを感じる程度でしかない気がしました。
当のアメリカ人にはそれぞれ考えも言い分もあるでしょうし、
そのあたりは部外者である日本人の私にはよくわかりません。
でも、今作がアメリカ国内での評価も低いということが、答えであるとも言えます。
結局これは何を言いたい、表したい作品だったのか。
なぜブッシュ退任のタイミングで作られたのかも謎だし、
もう少し時間が経ってからなら、もっと違う意味も出てきたと思う。
そもそもこのタイミングだった理由もよく見えて来ませんでした。


ローラとの出会い
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ジョシュ・ブローリンのブッシュは、若い頃から最近までを見事に演じていて、
たまに本人の映像が混ざったのかと思うぐらいソックリなシーンもあってびっくりです。
エリザベス・バンクスのローラ夫人はまあ、ちょっと可愛すぎる気がしますが、
女性なので何割増しかのキャスティングはサービスですね。
フラットパック好きとしては、彼女のストレートな演技が見れるのはそれだけで嬉しかったりします。
ジェームズ・クロムウェルのパパ・ブッシュとエレン・バースティンのバーバラ夫人も、
それほど似せているわけではないんですが、こんな人たちだった気がしてしまうから不思議。
それはリチャード・ドレイファスのチェイニー、ジェフリー・ライトのパウエルにも言えて、
まあよくやってるなあと感心してしまいます。
ただタンディ・ニュートンのコンドリーザ・ライスはあまりにも似せすぎて、
彼女の熱演に対して申し訳ないですが、なんだかコントでもやってるみたいで、
ちょっと見ているのがつらかったです。
こういう実在の人物を描く映画というのはあまりに本人に似すぎていると、
かえってヘンなものだということがわかりました。

でも、そんな熱演も含めて、見どころはいくつかあって、
それだけに、もうちょっとテーマや方向性がはっきりしていたら、と残念に思いました。
ブッシュの行動や発言にヒヤヒヤしたり気を揉んだりする周囲の人々の様子はおかしくもあり、
イラク侵攻を決める会議での各人の言い分、それに対するブッシュの良く言えば素直な言動、
なぜ彼がそこまでイラクにこだわったのか・・・その理由が見えると、
ああなんて恐ろしい時代だったのだろうと思わされるし、
その地獄は意味や形を変えてまだ終わっていないという事実に改めてハッとさせられます。
もう何年かしていろんなことが落ち着いたら、
この悪夢の8年間をきちんと冷静に描く作品が登場するといいなと思います。
それを期待したいです。


W.(2008 アメリカ)
監督 オリバー・ストーン
出演 ジョシュ・ブローリン エリザベス・バンクス エレン・バースティン ジェームズ・クロムウェル
   リチャード・ドレイファス スコット・グレン トビー・ジョーンズ ステイシー・キーチ
   ブルース・マッギル タンディ・ニュートン ジェフリー・ライト



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