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スヌーピーのメリークリスマス [映画感想−さ]

今年は忙しくてクリスマス映画を全然観ることなくクリスマスを迎えそうです。
それではちょっと寂しいので、無理矢理記事を書くことにしました。
なんだかんだ言って毎年のように観ている『スヌーピーのメリークリスマス』をご紹介。
正確に言うと映画じゃなくテレビアニメなんですが。


もうすぐクリスマス。でもチャーリー・ブラウンはなんとなくユウウツ。
そのことをルーシーに相談すると、彼女はチャーリー・ブラウンに、
クリスマス劇の演出をすることを勧めますが・・・。


なんとなくユウウツなんだ
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製作されたのは1965年!
以来アメリカではクリスマスの時期に必ず放送され、
アメリカ人に知らない人はいないという定番番組です。
日本でも過去にNHKや東京12チャンネル、
現在もカートゥーンネットワークで毎年放送されているのでご存知の方も多いはずです。

クリスマス気分にどうしてもなれないチャーリー・ブラウン。
クリスマスは商業主義に侵されている気がするし、
いったいクリスマスの本当の意味って何なんだろう?
ルーシーをはじめとして女の子たちはみんな現実的、
みんな好き勝手にやって思いはひとつにならず、劇の練習もなかなか進みません。
そしてスヌーピーはマイペース!犬小屋のデコレーションに余念がありません。


スヌーピー、ノリノリ!
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クリスマスに劇をするとか、ツリーを探しに行くとか、
そして何よりライナスが語る"クリスマスの意味"など、
ちょっと日本人には伝わりにくい部分も多い気がしますが、
そんな日本人にだからこそ、クリスマスの本当の意味を知る良い作品かなと思います。
40年以上も前の作品なのに、今でもまったく違和感なく通じるというのもスゴイことです。

私はまったく熱心なスヌーピーファンではないのですが、
今作だけ繰り返し観ているのには理由があって、
元々この番組をキチンと観るきっかけになったのが、
ジャズピアニスト、サイラス・チェスナットのアルバム、
『ア・チャーリー・ブラウン・クリスマス』を持っていたからなのです。
このアルバムはこの番組の曲を中心に演奏されていて、これがどれもとても良い曲ばかり。
そしてある年のクリスマス、たまたまテレビでこの番組を観て、
「あ、あのアルバムの曲だ!」とようやく元ネタに気が付いたという、
かなりひねくれた出会いだったのです。


あああ、やっぱりダメなボク・・・
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このオリジナル曲を作ったのはヴィンス・ガラルディというジャズミュージシャンで、
この人自身の演奏は、私は残念ながらこのピーナッツの番組でしか聴いたことがありません。
でもこの少し醒めたクリスマスストーリーに彼の音楽はすばらしく合っていて、
この作品が長年愛されている理由のひとつなんじゃないかなと思うほどです。

無宗教の典型的日本人である私にとってのクリスマスは、
街中に美しいイルミネーションが点る幸せな時、
そして世界中で素晴らしいクリスマスソングが作られ、演奏されることの喜びを感じる時です。
個人的に定番のクリスマス音楽はいくつかあり、リストは毎年増えていきますが、
このヴィンス・ガラルディの作った音楽は私にとってなくてはならないもの。
そして、その音楽に合わせて歌い、踊り、スケートをし、
悩んでいるピーナッツの面々も欠かせないものになってしまいました。
この番組をご覧になったことがなかったら、ぜひ一度観てみてください。聴いてみてください。
今年は逃しちゃったとしても来年のクリスマスでもきっと問題なし。
まったく色あせることなく放送され、たくさんの人に観られていると思います。
こんなステキな作品ができたことも、クリスマスの喜びのひとつですね。
商業主義のクリスマスについてチャーリー・ブラウンのようにため息をついてみるのもいいかも。
そして、自分なりの愛を考え感じてみる。どうでしょう?


A Charlie Brown Christmas(1965 アメリカ)
監督 ビル・メレンデス


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スヌーピーのクリスマス

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  • アーティスト: ヴィンス・ガラルディ,モンティ・バドウィッグ,コリン・ベイリー
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1994/10/21
  • メディア: CD



ア・チャーリー・ブラウン・クリスマス

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  • アーティスト: サイラス・チェスナット&フレンズ
  • 出版社/メーカー: イーストウエスト・ジャパン
  • 発売日: 2000/09/27
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戦場でワルツを [映画感想−さ]

ゴールデングローブ賞外国語映画賞、全米映画批評家協会賞最優秀作品賞など多数受賞、
アカデミー賞では外国語映画賞にノミネートされ本命視されていましたが、
ご承知の通り『おくりびと』が受賞、その主演の本木雅弘が、
「今でも本命はこれだと思っている」と発言したことで話題?の今作。
そんな宣伝文句もどこかに吹き飛んでしまいそうな、素晴らしい作品でした。


2006年、映画監督のアリは旧友のボアズと再会、
彼が悪夢に悩まされている話を聞き、
それが共に体験した24年前のレバノン内戦から来る後遺症であり、
しかしアリ自身はその記憶をまったく失っていることに気付きます。
憶えているのはあるひとつのぼんやりとした情景だけ。
そのことを頼りに、アリはほかの仲間たちを訪ね、
失ってしまった記憶を取り戻そうと試みます。


夢なのか現実なのか
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1982年のイスラエル軍のレバノン侵攻というあまりにも遠く、
そのことについての知識はほとんどない自分にとって、
この作品の背景はかなりハードルが高く、観ている間も混乱することがしばしば。
しかし、残酷な戦闘シーンもアニメーションで描くことによって、
いい意味でのフィルターがかけられ、幻想的なシーンは美しく魅力的でもあり、
スクリーンから一瞬たりとも目を離せない状況を作り上げていました。

リチャード・リンクレイターが『ウェイキングライフ』や『スキャナー・ダークリー』で行った、
実写をキャプチャーしてアニメ化した映像に一見似ているのですが、
今作は実はまったく製法が異なり、実写したものをビデオ編集し、
そこから絵コンテに起こしてイラストを描き、一からアニメーションを作ったのだそうです。
どうしてそんな手間をかけたのか、監督曰く、
スクリーン上で暗い戦争の過去をただ語るだけの作品にはしたくなくて、
主人公が辿る「記憶の旅」を美しい映像で描きたかったのだそうです。


旧友の語る真実
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戦争の記憶を失っているアリにとって、すべては夢の中の出来事のようにも思え、
また戦友たちの語る思い出は、聞かされる側としては当然想像するしかなく、
それはいずれにしてもクリアな映像なんかではありえない。
いわゆる一般的なアニメーション作品や、昨今のCG映像などとは異なり、
映像はどこかギクシャクしていて、でもそれが夢か現実かわからない不思議な印象を与え、
主人公アリが置かれた心情をよく表していると思いました。
実写でないことが残酷な戦争の場景を美化したり誤魔化したりしている、と言えなくもないですが、
人の目では見ることができないアングルから見せることが出来たり、
見せたいものがかえってクリアになっていて、作者からすればこの方法は、
伝えたいことをはっきり伝えることに成功していると思いました。


彼らが向かう先は
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あまりにも平和な日本からは遠い場所の、
そしてすでに昔の出来事になってしまったこの戦争に対して、どう接したらいいのか。
アリたちはいずれも当時まだ十代で、何もわからないまま戦地へ向かった。
恐怖のあまり銃を乱射する、何も起こらない戦車での移動は彼らにピクニック気分を与え、
しかし次の瞬間、どこからか飛んできた銃弾で隣にいた仲間があっさりと死ぬ。
その場にいた彼らの混乱は、もしかしたら何も知らない私と同様な部分もあるかも知れない、
少しだけそんな気持ちにもなりました。
けれど本当のことは、当然それを体験した者にしかわからない。
そして、すべてが夢のようだと、いやこれは夢であって欲しいとすら思う展開の中、
最後に、私たちはどうしようもない現実を見せつけられます。
ものすごく不意を突かれた私は、ものすごく唐突に自分の目から涙が流れるのに気が付き、
そして何も知らず平和に生きている自分は、いったいここで何を見ているのだろうと、
確かに映画館の椅子に座っているのだけれど、
劇中にたびたび登場した、真っ暗な海に放り出されたような気分を味わいました。

タイトルにもなったショパンのワルツ、それ以上に印象的だったバッハのコンチェルト、
かと思うと唐突に響き渡るジョン・ライドン。
この戦争が、決して遠い過去の出来事ではないと思わされる瞬間でした。
こういうことがほんの20数年前にあったのだという事実を、
こうやって知ることは大事なことで、知ることが出来て本当に良かったと思う。
一人でも多くの人に観てもらい、何かを感じ取って欲しいです。


Vals Im Bashir / Waltz with Bashir(2008 イスラエル/ドイツ/フランス/アメリカ)
監督 アリ・フォルマン
出演 ロン・ベンイシャイ ロニー・ダヤグ アリ・フォルマン ドロル・ハラジ
   イェヘズケル・ラザロフ ミキ・レオン オリ・シヴァン ザハヴァ・ソロモン



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シャレード [映画感想−さ]

休日の午後、ぼんやりテレビを見ていたら始まったので思わず鑑賞。
子どもの時に一回、大人になってから一回で今回がおそらく三回目の鑑賞ですが、
何度観ても、この頃の映画はいいですね。


富豪の妻レジーナ(オードリー・ヘプバーン)はスキー旅行先で夫との離婚を決意します。
しかしパリの自宅に戻ると家財道具はすべて無くなっており、やがて夫の死亡を知らされます。
葬式にはギデオン(ネッド・グラス)、テックス(ジェームズ・コバーン)、
そしてスコビー(ジョージ・ケネディ)という三人の奇妙な男たちが現れ、
また、アメリカ大使館のバーソロミュー(ウォルター・マッソー)は、
夫が軍の資金を横領していたと彼女に告げます。
わずかに残された夫の遺品を前に途方に暮れるレジーナは、
スキー場で知り合ったピーター(ケーリー・グラント)に助けを求めますが・・・。


夫に何が?
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ヘプバーンの作品はいろいろありますが、今作の彼女は本当に美しい!
『ローマの休日』の輝くばかりの美しさはやはり別格ですが、
それからちょうど10年、34歳の今作の彼女は少女と大人の女の両方の顔を併せ持ち、
当時59歳のケイリー・グラントを相手にすると、その両方の顔で相手を翻弄し、
そして守ってあげたいと思わせるという、彼女ならではの魅力を放っています。

まず殺人事件が起こり、罪のない主人公が巻き込まれるという、
どう見てもヒッチコック的なストーリー。
製作当時のことはわかりませんが、ケイリー・グラントを引っ張り出してきたところで、
ヒッチコック風なものを作ろうとしたであろうことは想像できます。
しかし、当時すでにトップスターであった二人の共演とは言え、
ヒッチコックもどきとして失敗作になりかねない危険性はあったと思います。
けれどそこにオードリーの魅力とスタンリー・ドーネンらしい軽さがプラスされ、
そこはきっちり、かつ軽い雰囲気でまとめあげたなあという職人技のようなものを感じます。
あらゆることがすべてプラスに作用したと言ってもいいかも知れません。


本当の名前は?
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死人が何人も出るようなストーリーでありながら、基本的にはコメディタッチ。
それとジェームズ・コバーンにジョージ・ケネディ、
そしてウォルター・マッソーという個性的な役者を揃えたのも正解。
ケーリー・グラントも含めみんな怪しくて、誰が犯人と言われてもおかしくない。
まあさすがにケーリー・グラントが犯人ということはないだろうなとは思うんですが、
それでも彼の正体は最後の最後までわからない。
"シャレード"というのは偽装とか茶番とかいう意味なのだそうで、
そんなタイトルが付いているのだから、一筋縄でいかないのは最初からわかっていること。
でも、謎解きだけの作品になってないのがさすがだと思うし、
50年近く経った今観ても、魅力溢れる作品になっている理由だと思います。


この人は味方?
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そしてオードリー映画にかかせないオシャレ要素も、
これでもか!というぐらいてんこもりです。
舞台はパリ。セーヌ川の川べりを優雅に歩き、川下りのボートでディナー。
メトロの追いかけっこもなんだかステキと思ってしまいます。
衣装はお馴染みジバンシィ。レジーナは家財道具すべてを失って、
持ち物は旅行時のスーツケースだけになったハズなのに、
どこからそんなに次々とドレスが出てくるの!?・・・と言うのはまあ目をつぶりましょう。
ジェームズ・コバーンに電話ボックスの中でマッチで脅されるシーンは、
怖いというより「ジバンシィが焦げる!」と思ってしまいました。

オレンジリレーとかケーリー・グラントの服のまんまのシャワーとか、
あんまりストーリーと関係ないお遊びなシーンも微笑ましい。
オードリーが「どうやってここをシェーブするの?」と、
唐突にケーリー・グラントのあの特徴的なアゴを触りながら聞いてみたり、
ケーリー・グラントの名前が変わるたびに「ミセス○○は?」と聞くお約束とか、
イキでスウィートなセリフは満載。
どんなに人が残酷な死に方をしても、悲鳴をあげてもあくまでも上品。
映画というものが夢を見させてくれるものだった時代の、とびきり夢のような作品。
こういうのは昔からある美味しい老舗の店のケーキみたいな、
いつもそこにあって、時々味わっては確実に幸せな気持ちにしてくれるもの・・・という感じです。
たまには、いかがですか?


Charade(1963 アメリカ)
監督 スタンリー・ドーネン
出演 ケーリー・グラント オードリー・ヘプバーン ウォルター・マッソー ジェームズ・コバーン
   ジョージ・ケネディ ドミニク・ミノット ネッド・グラス ジャック・マラン



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サイレンサー [映画感想−さ]

のんびり地味にやってます、ジョセフ・ゴードン=レヴィット祭り。
その第二弾は二大オスカー俳優共演の話題作!・・・だったと記憶してたんですが。


殺し屋のローズ(ヘレン・ミレン)は末期ガンに侵されており、
パートナーのマイキー(キューバ・グッディング・Jr.)と共に仕事の引退を考えていました。
その最後の仕事はある組織のボス、クレイトン(スティーヴン・ドーフ)が依頼した、
彼の部下と妻ヴィッキー(ヴァネッサ・ファーリト)の暗殺。
決行の夜、屋敷に忍び込み次々にターゲットを殺していくローズとマイキー。
しかし、臨月のヴィッキーを前にした時、ローズの取った行動は・・・。


ローズとマイキー
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監督のリー・ダニエルズは『チョコレート』などのプロデューサーとして知られた人で、
今作が初監督作・・・というのがなんとなく納得できそうな、
ぎこちないというか、どうも焦点が定まっていないというか、
新しいものを作りたいという意欲は感じられるのですが、結果は空回りしてしまった感じです。
ヘンに映像に凝っていたり、でもムダなサービスカット(?)も多い。
(キューバ・グッディング・Jr.のヌード多すぎ!ファンにはたまらないと思いますが)
その凝った映像はなかなか美しくて良いところもあるのですが、
もうちょっと描くべき、語るべき部分があるのでは?

そもそも、ストーリー自体がなんだかよくわかりません。
クレイトンはものすごく暴力的でアブナイ男。
気に入らないヤツはあっさり殺すようなヤツ・・・なのに、
なぜ妻と部下を消すのにわざわざ殺し屋を雇うのかが謎。
自分の手を汚したくない、特に自分の奥さんは殺せない・・・とかいうのならわかるんですが、
でも普段から自分で、ちょっとしたことでバンバン殺しまくってるのに。
そこが「?」と思ってしまった途端、話に乗れなくなってしまいました。
街中で仕事の依頼をする車椅子の男もなんだか思わせぶりなだけという感じだし、
マイキーたちは基本的に仕事には銃を使うんですが、
あるターゲットの時にはなぜか回りくどく毒殺?してみたりもする。
うーん、あそこは笑うところなの?と思ってしまいました。
ストーリー自体は二の次で、ひたすらスタイリッシュな映像のみを追求した、
・・・というようなことでもないようで、なんだか途方に暮れてしまいました。


アブナイ男、クレイトン
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おそらく、監督の狙いは”ハズし”なのかも知れません。
ローズとマイキーのカップルは、人種も違い年齢も離れていてどういう関係かわからない。
最初は殺し屋の先輩後輩かなんかなのかな?とか、あるいは何かわけありの母と息子かもとか、
で、だんだんと、もしかして恋人同士・・・?となるのです。
実際二人は愛し合ってるわけなのですが、確かにそんなカップル!という驚きがあります。
それはそれでいいと思うんですが、個人的には表現としてもう少し、
その恋愛関係は匂わす程度でも良かったのではと思いました。
リアルなラブシーンがあったって別にいいけれど、何度も登場し、結構生々しい。
二人がそういう男女の関係に、いつ、どこでなったかはわからないまま。
じゃあ最後までハッキリ見せなくても良かったのかもと思うわけです。
そのほうがいろいろ想像できるし、ドラマに奥行きが出た気がします。

それと、ローズらを助けるドクター・ドン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)と、
プレシャス(モニーク)のカップルも、映像的に見ていてどうも落ち着かない。
別にこんなカップルがいたっていいと思うけど、
これも単になんか映像的に"狙った"っていう感じしか受けません。
ドクター・ドンはフツーに若造な医者で、これもハズしの1つと言えそう。
普通ならあんなヤクザなヤツらのお抱え医者なら、
もっとギラギラした俗っぽいオヤジとか、あるいはインテリヤクザ風なヤツにしそうなものですが。
まあでもこれはこれでアリかな。贔屓目かもですが。


命を狙われる妻、ヴィッキー
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そして一番のハズしというのが、この作品の主人公なんですが、
私はてっきりローズのほうだと思っていたのです。でも違いました。
ビリング通り、キューバ・グッディング・Jr.の映画だったんですね。
これは結構衝撃です。
まあでもそんな衝撃もあまりチカラになることもなく、
意識的な"ハズし"は単純に映画自体がハズレた印象のままで終わる感じ。
脚本自体がつまらないのか、演出力に問題があるのか。難しいところです。
せっかくこんないい役者を揃えてるのに・・・。

ハズしといえば音楽もハズしてる気がします。今さら『リベルタンゴ』?
これが合ってるんだかなんだか、監督の趣味なのでしょうか。
これだけ黒人キャラクター満載の映画なのにR&Bやヒップホップ系を多用しないのは、
たぶん意識してなのかなと思いますが、それも含めて音楽の使い方はイマイチ。
このあたりが凝ってると個人的にはオッと思うところなんですが。
せっかくメイシー・グレイが出ているのに・・・と関係ないですが。
でも彼女、出番は少ないですがなかなか印象的なキャラクターでした。
ダニエルズ監督の次回作『Precious』はマライア・キャリーやレニー・クラヴィッツが出演の話題作で、
カンヌ映画祭で好評だったそうです。
これを観ると、ちょっとその好評が信じられないのですが。

さて、ジョセフ・ゴードン=レヴィット祭りですので。
今作のジョー君はこんな感じ。


いつもどおりのような、別人なような。
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これまでになくなかなかのヨゴレ役ではあります。白衣姿はちょっとグッと来ました。ハイ。


Shadowboxer(2005 アメリカ)
監督 リー・ダニエルズ
出演 キューバ・グッディング・Jr. ヘレン・ミレン ヴァネッサ・ファーリト メイシー・グレイ
   ジョセフ・ゴードン=レヴィット モニーク スティーヴン・ドーフ



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シャーキーズ・マシーン [映画感想−さ]

70〜80年代の映画は『ロードショー』なんかの雑誌で情報は仕入れるのに、
実際に観たことがないモノがいっぱい。これもそんな1本でした。


麻薬課の敏腕刑事シャーキー(バート・レイノルズ)は、
おとり捜査に失敗し風紀課に転属させられてしまいます。
売春婦相手の仕事ばかりでウンザリしていたシャーキーでしたが、
ある1人の売春婦の言動で、政界の絡んだ犯罪組織の存在に気づきます。
シャーキーは風紀課や鑑識課などのメンバーのほかに、
幼なじみで元盗聴のプロ、ノッシュ(リチャード・リバティーニ)を加え、
捜査チーム"シャーキーズ・マシーン"を結成。
高級娼婦ドミノ(レイチェル・ウォード)の部屋の監視を始めます。
しかし、彼女は突然現れた謎の殺し屋に殺害されてしまい・・・。


シャーキー、クール!
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いきなりランディ・クロフォードの『ストリート・ライフ』が流れるオープニング!
これで一気に引きずり込まれました。
クルセイダーズのアルバムが発売されたのが79年頃だそうで、この作品は81年製作。
当時の最新ヒット曲を使った・・・とも言えそうですが、
ものすごく雰囲気ピッタリで、この映画のために作られたのかと思うほどです。
ほかにも『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』がとても印象的に使われたり、
サラ・ヴォーンが『愛のテーマ』を歌ってたりと、かなりジャズ色の濃い作品になっています。
監督バート・レイノルズの趣味なのでしょうか。
いろんな映画評を読むと『ダーティハリー』に影響を受けているという意見も多く、
ジャズ好きなところもクリント・イーストウッド的と言えそうです。

とは言っても、シャーキーはハリー・キャラハンのような一匹狼ではなく、
ストーリーはタイトル通りシャーキーと同僚たちの活躍で進んでいきます。
本来なら街のチンピラや売春婦相手のショボい仕事ばかりしている彼らが、
それぞれの得意分野を活かし、事件を追う姿はなかなか面白い。
殺し屋がいた部屋に踏み込む時に、普段は結構強気なノッシュが、
「オレはこういうのは苦手なんだ」と弱腰だったりするのに対し、
鑑識のおとなしそうなオジサンが「おれは好きだよ」なんてシラッと言ってみたり。
風紀課長(チャールズ・ダーニング)はやたら怒鳴ったりお金のことでぼやいてばかりで、
なのに部下はほとんど聞き流して相手にしない。
彼らの"はみだし刑事"ぶりが、随所で笑わせてくれて、
こういうノリって昔の日本の刑事ドラマとかにもよくあったような・・・というか、こっちが元ネタ?


一晩1000ドルの娼婦、ドミノ
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そんなほのぼのした感じも見せつつ、銃撃戦などハードでアクションもたっぷり。
またシャーキーとドミノの恋物語も展開上重要だったりと、
結構いろんな要素が詰め込まれています。
それなのに空撮やドミノのダンスシーンなんかにたっぷり時間を取っていたりして、
そのせいでテンポが悪く感じられる部分も多く、
こういうところに監督の力量が見えてしまうのかな、なんて観ているときには思ったのですが、
そんなちょっとムダとも言えるような描写1つ1つにこだわりというのか愛情というのか、
キャラクター1人1人を大切にしている感じも伝わってきてなんとなく憎めません。

バート・レイノルズというと脂ぎってニヤケたオジサンのようなイメージがあって、
最初っからドミノとデキちゃうんだろうなあと予想がつくんですが、
まあ確かに結果的にはデキちゃうのだけど、いきなりベッドに押し倒すなんてこともなく、
(・・・そういう意味ではなく押し倒したりはするんですが。
しかも思いっきり殴っちゃったりして、今だとちょっと考えられないかも)
キスしそうで出来なかったりとか、なんだかシャーキー純情!なのが意外です。
自分の監督作なんだからいくらでもやりたい放題だろうに、
オレがオレが!という感じになってないのが本当に意外で、
バート・レイノルズのこと誤解してたかも、なんて思ってしまいました。
向かいのビルから望遠鏡ごしにドミノを見つめ続け、
シャーキーがだんだん彼女に惹かれていく過程がとても丁寧に描かれていて、
甘く切ないラブストーリーにもなっています。
彼女の鼻歌に合わせて一緒に『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』を口ずさむシャーキー。
なんてロマンティック!


ジャンキーな殺し屋、ビリー
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ドミノ役のレイチェル・ウォードがとにかく魅力的。
ハスキーボイスで、かわいらしく適度にゴージャスでセクシー。
この女優さんって『カリブの熱い夜』の人なのですね。
と言っても実はコレ観てなくて、フィル・コリンズのPVでしか知らないんですが。
そしてもう1人強烈な印象を残してるのが、殺し屋ビリー役のヘンリー・シルヴァ。
見事なサイコパスぶりで、クスリ漬けなんで何発撃たれても痛みを感じないとか、
銃口を相手の頭に向けて奇声を上げるだけで撃たないとか、ものすごく怖いです。

個人的には日本通で"禅"について語ったりするアーチー役のバーニー・ケイシーが気に入りました。
そう、この作品では随所に日本に対する言及があって、
日本びいきのアーチーに"パパ"(ブライアン・キース)が、
「生魚なんか食って腹に虫が湧かないのか?」とか皮肉ってみたり。
琴や尺八っぽい音を使った音楽は流れるし、
敵の刺客がカンフー使いというのも誤解された日本風なんじゃないかなと思います。
そのカンフー使いがシャーキーの指を切り落とそうとする"指詰め"シーンなんて、
絶対日本のヤクザ映画の影響受けてるでしょう?と思いました。
そのカンフー男に向かってシャーキーが「ベニハナのコックか?」なんて言うのもオカシイ。
ものすごくイタいシーンなんですけどね。
そういう日本風というかオリエンタルな感じが流行ってたとか、そんな時代だったんでしょうか。
そう言えば確かこれはタランティーノのお気に入りだったのでは・・・なんとなく納得!

『ダーティーハリー』や『フレンチコネクション』なんかと比べると、
確かに完成度はイマイチというか、B級な感じが拭えませんが、
印象的なシーンが随所に見られ、そして音楽は素晴らしいし、
70年代刑事ドラマ好き、そしてジャズ好きな人は必見!
バート・レイノルズはこのあと数本の映画やTVドラマを撮っているようですが、
いずれも評価はイマイチのようで、でももう一本ぐらい本腰入れて撮ってもらいたいなと思います。


Sharky's Machine(1981 アメリカ)
監督 バート・レイノルズ
出演 バート・レイノルズ ヴィットリオ・ガスマン ブライアン・キース チャールズ・ダーニング
   アール・ホリマン バーニー・ケイシー ヘンリー・シルヴァ リチャード・リバティーニ
   レイチェル・ウォード ジョン・フィードラー
 


シャーキーズ マシーン [DVD]

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