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シャーキーズ・マシーン [映画感想−さ]

70〜80年代の映画は『ロードショー』なんかの雑誌で情報は仕入れるのに、
実際に観たことがないモノがいっぱい。これもそんな1本でした。


麻薬課の敏腕刑事シャーキー(バート・レイノルズ)は、
おとり捜査に失敗し風紀課に転属させられてしまいます。
売春婦相手の仕事ばかりでウンザリしていたシャーキーでしたが、
ある1人の売春婦の言動で、政界の絡んだ犯罪組織の存在に気づきます。
シャーキーは風紀課や鑑識課などのメンバーのほかに、
幼なじみで元盗聴のプロ、ノッシュ(リチャード・リバティーニ)を加え、
捜査チーム"シャーキーズ・マシーン"を結成。
高級娼婦ドミノ(レイチェル・ウォード)の部屋の監視を始めます。
しかし、彼女は突然現れた謎の殺し屋に殺害されてしまい・・・。


シャーキー、クール!
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いきなりランディ・クロフォードの『ストリート・ライフ』が流れるオープニング!
これで一気に引きずり込まれました。
クルセイダーズのアルバムが発売されたのが79年頃だそうで、この作品は81年製作。
当時の最新ヒット曲を使った・・・とも言えそうですが、
ものすごく雰囲気ピッタリで、この映画のために作られたのかと思うほどです。
ほかにも『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』がとても印象的に使われたり、
サラ・ヴォーンが『愛のテーマ』を歌ってたりと、かなりジャズ色の濃い作品になっています。
監督バート・レイノルズの趣味なのでしょうか。
いろんな映画評を読むと『ダーティハリー』に影響を受けているという意見も多く、
ジャズ好きなところもクリント・イーストウッド的と言えそうです。

とは言っても、シャーキーはハリー・キャラハンのような一匹狼ではなく、
ストーリーはタイトル通りシャーキーと同僚たちの活躍で進んでいきます。
本来なら街のチンピラや売春婦相手のショボい仕事ばかりしている彼らが、
それぞれの得意分野を活かし、事件を追う姿はなかなか面白い。
殺し屋がいた部屋に踏み込む時に、普段は結構強気なノッシュが、
「オレはこういうのは苦手なんだ」と弱腰だったりするのに対し、
鑑識のおとなしそうなオジサンが「おれは好きだよ」なんてシラッと言ってみたり。
風紀課長(チャールズ・ダーニング)はやたら怒鳴ったりお金のことでぼやいてばかりで、
なのに部下はほとんど聞き流して相手にしない。
彼らの"はみだし刑事"ぶりが、随所で笑わせてくれて、
こういうノリって昔の日本の刑事ドラマとかにもよくあったような・・・というか、こっちが元ネタ?


一晩1000ドルの娼婦、ドミノ
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そんなほのぼのした感じも見せつつ、銃撃戦などハードでアクションもたっぷり。
またシャーキーとドミノの恋物語も展開上重要だったりと、
結構いろんな要素が詰め込まれています。
それなのに空撮やドミノのダンスシーンなんかにたっぷり時間を取っていたりして、
そのせいでテンポが悪く感じられる部分も多く、
こういうところに監督の力量が見えてしまうのかな、なんて観ているときには思ったのですが、
そんなちょっとムダとも言えるような描写1つ1つにこだわりというのか愛情というのか、
キャラクター1人1人を大切にしている感じも伝わってきてなんとなく憎めません。

バート・レイノルズというと脂ぎってニヤケたオジサンのようなイメージがあって、
最初っからドミノとデキちゃうんだろうなあと予想がつくんですが、
まあ確かに結果的にはデキちゃうのだけど、いきなりベッドに押し倒すなんてこともなく、
(・・・そういう意味ではなく押し倒したりはするんですが。
しかも思いっきり殴っちゃったりして、今だとちょっと考えられないかも)
キスしそうで出来なかったりとか、なんだかシャーキー純情!なのが意外です。
自分の監督作なんだからいくらでもやりたい放題だろうに、
オレがオレが!という感じになってないのが本当に意外で、
バート・レイノルズのこと誤解してたかも、なんて思ってしまいました。
向かいのビルから望遠鏡ごしにドミノを見つめ続け、
シャーキーがだんだん彼女に惹かれていく過程がとても丁寧に描かれていて、
甘く切ないラブストーリーにもなっています。
彼女の鼻歌に合わせて一緒に『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』を口ずさむシャーキー。
なんてロマンティック!


ジャンキーな殺し屋、ビリー
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ドミノ役のレイチェル・ウォードがとにかく魅力的。
ハスキーボイスで、かわいらしく適度にゴージャスでセクシー。
この女優さんって『カリブの熱い夜』の人なのですね。
と言っても実はコレ観てなくて、フィル・コリンズのPVでしか知らないんですが。
そしてもう1人強烈な印象を残してるのが、殺し屋ビリー役のヘンリー・シルヴァ。
見事なサイコパスぶりで、クスリ漬けなんで何発撃たれても痛みを感じないとか、
銃口を相手の頭に向けて奇声を上げるだけで撃たないとか、ものすごく怖いです。

個人的には日本通で"禅"について語ったりするアーチー役のバーニー・ケイシーが気に入りました。
そう、この作品では随所に日本に対する言及があって、
日本びいきのアーチーに"パパ"(ブライアン・キース)が、
「生魚なんか食って腹に虫が湧かないのか?」とか皮肉ってみたり。
琴や尺八っぽい音を使った音楽は流れるし、
敵の刺客がカンフー使いというのも誤解された日本風なんじゃないかなと思います。
そのカンフー使いがシャーキーの指を切り落とそうとする"指詰め"シーンなんて、
絶対日本のヤクザ映画の影響受けてるでしょう?と思いました。
そのカンフー男に向かってシャーキーが「ベニハナのコックか?」なんて言うのもオカシイ。
ものすごくイタいシーンなんですけどね。
そういう日本風というかオリエンタルな感じが流行ってたとか、そんな時代だったんでしょうか。
そう言えば確かこれはタランティーノのお気に入りだったのでは・・・なんとなく納得!

『ダーティーハリー』や『フレンチコネクション』なんかと比べると、
確かに完成度はイマイチというか、B級な感じが拭えませんが、
印象的なシーンが随所に見られ、そして音楽は素晴らしいし、
70年代刑事ドラマ好き、そしてジャズ好きな人は必見!
バート・レイノルズはこのあと数本の映画やTVドラマを撮っているようですが、
いずれも評価はイマイチのようで、でももう一本ぐらい本腰入れて撮ってもらいたいなと思います。


Sharky's Machine(1981 アメリカ)
監督 バート・レイノルズ
出演 バート・レイノルズ ヴィットリオ・ガスマン ブライアン・キース チャールズ・ダーニング
   アール・ホリマン バーニー・ケイシー ヘンリー・シルヴァ リチャード・リバティーニ
   レイチェル・ウォード ジョン・フィードラー
 


シャーキーズ マシーン [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
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コメント 4

ぷーちゃん

おお、dorothyさん、待ってました。「シャーキーズ・マシーン」
懐かしい!と言っても、ストーリーなどは、殆ど
”記憶にありません”(政治家風)なので、コメント読んで
久々に観たくなりました。音楽も魅力だしね。
(^。^)丿
by ぷーちゃん (2009-09-01 08:40) 

ねじまきけんいち

映画の記事とても楽しみにしています。
私も、結構観ている方だと思っていましたが、
観ていない作品に少しでも触れる事が出来て
これは、観てみたいという気持ちになります。
バート・レイノルズは、個人的にはあんまり・・という感じですが。
今回も楽しく読ませて頂きました。
by ねじまきけんいち (2009-09-01 21:09) 

dorothy

ぷーちゃんさん、こんにちは。
ストーリーはわりとありがちというか、たぶん私も来週あたりには忘れてそうw
でもキャラクターとか音楽とか、B級でかたづけられない不思議な魅力を感じました。
お時間があれば、ぜひ。
by dorothy (2009-09-02 00:50) 

dorothy

ねじまきけんいちさん、こんにちは。
楽しんでいただけて良かったです!
これは、積極的に観て観て!とはちょっと言えない、微妙な作品です。
音楽とかキャストとか、少しでも何か引っかかるものがあって、
ものすごくお時間があれば・・・という感じですね。

by dorothy (2009-09-02 00:56) 

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