SSブログ
映画感想−さ ブログトップ
前の5件 | 次の5件

サボテンの花 [映画感想−さ]

ウォルター・マッソーがプレイボーイ!?
イングリッド・バーグマンがオールドミスの看護婦!?
そこにとんでもなくかわいいゴールディ・ホーンが絡む、
とてもとても愛らしい作品でした。


歯科医のジュリアン(ウォルター・マッソー)は独身主義でプレイボーイ。
恋人のトニー(ゴールディ・ホーン)を深く愛していますが、女遊びも相変わらず。
そうとも知らず、たびたび約束を破られては傷ついていたトニーはついに自殺騒ぎを起こしてしまい、
そのことがきっかけでジュリアンはトニーとの結婚を真剣に考え始めます。
しかし彼はトニーに、自分は結婚していて3人の子どもがいるとウソをついていて、
トニーはジュリアンが離婚する前に奥さんに会いたいと言い出します。
困り果てたジュリアンは、看護婦のステファニー(イングリッド・バーグマン)を、
自分の妻に仕立て、トニーに会わせようしますが・・・。


恋人同士
cactusflower_1.jpg


いきなり我が永遠のミューズ、サラ・ヴォーンのボーカルが響き渡り、
そこに凄まじくキュートなゴールディ・ホーンが登場するオープニングでノックアウト。
今作は彼女のデビュー作ではないようなのですが、
Introducing付きで名前が紹介されます。
そしていきなりこの役でオスカー助演女優賞を受賞。
今となっては彼女の芸風も、そして愛らしさも見慣れてしまっていますが、
この作品で登場した時は、おそらく衝撃だったんじゃないかと思います。
見た目の愛らしさは言うまでもないですが、すでにコメディセンスは十分感じられるし、
(何かというと見えないところでカラテチョップ!するところがカワイイ)
いわゆる(当時の)今時の若者風かつ若干不思議ちゃんでありながら、
真っ直ぐで一途な性格をとても魅力的に演じています。


軍曹
cactusflower_2.jpg


もう一人のヒロイン、イングリッド・バーグマンの役もまた衝撃。
この人がこんなコメディに出ていたなんて!
真面目で堅物、でも徐々に壊れていく様子がなんとも微笑ましい。
まさにサボテンに花が咲く、のです。
どんなに壊れても彼女ならではの気品は損なわれず、
患者のセニョール・サンチェスに誘われて行く舞踏会の時の、
ブルーのドレス姿なんてさすがの美しさ!
でもそのドレス姿でゴーゴーを踊りまくるギャップ!
新ステップ(デンティスト!)まで編み出すし、まさに弾けまくっています。

ウォルター・マッソーのおとぼけぶりは期待どおりだし、
イイ男に見えないこともない。コイツが諸悪の根源なのですが。
このジュリアンとステファニーの偽りの夫婦が、
次第に本物の夫婦のようになっていくあたりの可笑しさ!
歯医者と看護婦としてずっと一緒に仕事をして来た2人の関係は、
まさに長年連れ添った夫婦と同じで、
言い争いになるとまるっきり"夫婦ゲンカ"になってしまって、
「離婚だ!」「もう子どもたちにも会わせません!」なんて言ってしまったり。


踊りまくり!
cactusflower_3.jpg


男女の細かな騙し合いと行き違い。次第に話がこんがらがっていく、
まさに正統派コメディ。
結末は最初から見えてるんですが、そこにどう持って行くのか、
トニーは真実を知るのか、ジュリアンとステファニーはいつ自分の気持ちに気づき、
そして自分に正直になるのか。
舞台劇らしいテンポ良くかつセンスの良いセリフの数々が本当に楽しめます。
ほかのキャストもどれも実に味わい深く魅力的で巧くて、
全員のキャラクターが上手に物語に活かされています。
古き良き時代の、でも決して色あせない正統派コメディ。
こういうの、週に一回は観たい。なんだか安らげてしまいます。


Cactus Flower(1969 アメリカ)
監督 ジーン・サックス
出演 ウォルター・マッソー イングリッド・バーグマン ゴールディ・ホーン ジャック・ウェストン



サボテンの花 [DVD]

サボテンの花 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD


タグ:映画
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

さよなら。いつかわかること [映画感想−さ]

ジョン・キューザック好きとしてはすごく観たかった作品でしたが、
またもやビデオ鑑賞となりました。
でもこれ、劇場で観なくて良かったです。理由はのちほど。


シカゴのホームセンターで働くスタンリー(ジョン・キューザック)は、
2人の娘、12歳のハイディ(シェラン・オキーフ)と、
8歳のドーン(グレイシー・ベドナルジク)との3人暮らし。
妻のグレイスは陸軍軍曹でイラクに赴任しており、
母親不在の娘たちとの暮らしはどこかぎくしゃくしていました。
そんなある日、スタンリーの元にグレイスの訃報が届きます。
その事実をうまく受け止められないスタンリー。
学校から戻った娘たちに話そうとしても切り出せず、とりあえず外へ食事に出かけますが、
そのまま、衝動的にドーンが行きたがったフロリダの遊園地へ向かうことにします。


スタンリーは妻を失う
graceisgone_1.jpg


突然スタンリーは家に訪ねてきた軍人から妻の死を聞かされる。
その軍人たちが帰った後も彼はそのまま椅子に座り続け、かかってきた電話にも出ず、
やがて子ども部屋の床に横たわってしまうという長い無言のシーンがあります。
この、始まってすぐのシーンで既に涙が止まらなくなってしまいました。
愛する妻を失ったスタンリーの戸惑いと悲しみ。彼が今何を考えているのか、
最愛の人が亡くなったことを知ったその時、人は何を思うのか。
彼の無言と無表情、そして人気のない部屋がいろんなことを物語ります。

とりあえず旅に出ることになる3人。娘たちに話を切り出せないスタンリー、
何かを感じながらも言い出せないハイディ、対照的にただただ無邪気なドーン。
この小さな家族の中に起こる不安や悲しみ、互いを大切に思い必要としている空気が、
観ている私の胸をずっとずっと捕まえて離しません。
3人が語る言葉、語らない言葉、彼らに起こる、彼らが起こすあらゆる出来事が、
どれもこれも胸に響いて仕方ありませんでした。
グレイスの声で吹き込まれた留守番電話のメッセージ、
そこにたびたび電話をかけずにいられないスタンリー。
ドーンの腕時計のアラームが鳴る、その瞬間のそれぞれの思い。
夜眠れないハイディの心の内、彼女の黒いメガネは父親譲りの視力のせいなのか。
メガネのレンズにぼんやり映るTVのニュースが語っていることは真実なのか。


何も知らない娘たち
graceisgone_2.jpg


3人が旅の途中で立ち寄るおばあちゃん=スタンリーの母親の家。
しかしおばあちゃんは不在で、居たのはスタンリーの弟ジョン(アレッサンドロ・ニヴォラ)。
32歳にもなってフラフラしているジョンと、スタンリーは度々意見がぶつかり合い、
娘たちはなぜ2人は仲が悪いのかとジョンに尋ねたりします。
戦争に対する考え方も食い違い、それはそのままグレイスに対する批判にも取れてしまう。
戦地にいる妻を心から尊敬し、その意味を、意義を支持し、
事情があって除隊することになった自分に引け目を感じているスタンリー。
そんなスタンリーにとって、ジョンの言葉はどれもこれも受け入れがたく、
しかし、妻の死という秘密を抱えているスタンリーは、自分の思いに十分矛盾も感じています。

ジョンがハイディとドーンを連れて食事に行く。
その帰りのクルマの中でドーンの腕時計の秘密を聞いた時のジョンの表情。
姪たちに対する思いが彼の瞳にさっと現れます。
やがてジョンが真実を知り、そのことでスタンリーを責め、
そのまま兄弟ゲンカに発展しそうになりながら、次の瞬間には抱擁し合う。
まるですべてを解り合えたように。そんな兄弟という関係の素晴らしさ。
このあたりも胸が痛くてたまりませんでした。

スタンリーがいつ、どのようにして娘たちに真実を伝えるのか。
その時がどんな風に訪れるのか。もしかして伝えられないで終わるのか。
おそらく観客はずっとその時を待っている・・・もちろん、その時はやってきます。
ようやく、ようやくスタンリーに勇気と、適切なタイミングが訪れる。
このシーンの演出が・・・素晴らしい。
私は久しぶりに嗚咽と言っていいぐらいの泣き方をしてしまいました。
これを映画館で観ていたらどうなっていたことかというぐらい。


ジョンが感じたものは
graceisgone_3.jpg


今まで見たことのない、冴えないオジサンの風貌で登場するジョン・キューザック。
太めの体型、時代遅れなメガネ、ボサボサのアタマ、内股気味に歩く姿、
そして最初から最後まで悲しみしかない表情。
彼がこんな役をやるようになるんだなあとしみじみしてしまいました。
監督のジェームズ・C・ストラウスは最初から彼を想定して脚本を書いたそうですが、
ジョン・キューザックのキャリアの新たな1ページとなったことは間違いないです。
また、彼はプロデュースまで買って出ていて、それは元々政治的にリベラルで知られる彼の姿勢と、
この作品のテーマが見事に一致したのだと思うし、
その結果、まさに完璧な”反戦映画”となっていたと思います。

娘を演じた2人はいずれもこれが映画初出演。しかしその演技力と表現力にはあきれてしまいます。
微妙な年齢にさしかかりつつあるハイディ、まだまだ無邪気なドーン、
彼女たちの泣き顔は、しばらく頭から離れない気がします。
ほんの少しの登場ながら実に印象的なアレッサンドロ・ニヴォラ。
彼の存在感も素晴らしいものでした。
またキャストの中にマリサ・トメイの名前があるのですが、
え、どこに?もしかしてグレイス役?と思ったら、これはまったくわからない登場でした。
なんでこんな役に?

そして何より一番の驚きは、音楽をクリント・イーストウッドが担当していること。
見終わるまで知らなかったのですが、確かに彼の"音"がずっと流れていました。
エンディング曲はキャロル・ベイヤー・セイガー作詞、
『グラン・トリノ』と同じくジェイミー・カラムのボーカルで、
これまた心に染みまくります。


Grace Is Gone(2007 アメリカ)
監督 ジェームズ・C・ストラウス
出演 ジョン・キューザック シェラン・オキーフ グレイシー・ベドナルジク アレッサンドロ・ニヴォラ



さよなら。いつかわかること [DVD]

さよなら。いつかわかること [DVD]

  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • メディア: DVD


タグ:映画
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

スター・トレック [映画感想−さ]

観るまではかなり不安がありました。
大好きなJ・J・エイブラムス監督作とはいえ、以前書いたように、
スター・トレックに関しては知らないことがあまりに多いし、果たして楽しめるのかな、と。
でもそんな心配はまったく無用でした。


西暦2233年、惑星連邦船USSケルヴィンが、突然謎の巨大宇宙船の攻撃を受けます。
船長が死亡し、代理で指揮を執っていたジョージ・カーク(クリス・ヘンズワース)は、
乗組員を全員脱出させたあと、1人残り船の操縦を続け、その結果命を落とします。
脱出した中には出産間近のジョージの妻ウィノナ(ジェニファー・モリソン)もいて、
彼女は無事、脱出艇の中で息子を出産。ジェームズ・タイベリアス・カークと名付けられます。
それから22年、成長したカーク(クリス・パイン)は自分の進む道を決められず、
他人とトラブルばかりを起こす日々を送っていました。
ある日、惑星連邦宇宙艦隊のクリストファー・パイク大佐(ブルース・グリーンウッド)が、
バーでケンカをしていたカークに声をかけ、宇宙艦隊への入隊を勧めます。
カークは迷いながらも、父親と同じ道を進むことを決めますが・・・。


ヤングカーク
startrek_1.jpg


まず最初にカーク誕生から少年時代のエピソードがテンポ良く語られ、
同時にスポックの少年時代も上手に挟んで、このあたりの話の進め方は見事です。
しっかりそれぞれの性格や家族との関係などを語り、
カークとスポックがどんなキャラクターなのかを説明して、さて本編へと流れていく。
これで一気に物語に入っていけるし、これからどうなるのだろうという期待感でいっぱいになります。

カークとレナード・マッコイ(カール・アーバン)が初めて会うシーンは、
『スター・ウォーズエピソード1』でオビ・ワンと幼いアナキンが初めて会って握手するシーンで、
思わずおおっ!と声が出そうになったんですが、その時のことをちょっと思い出しました。
お馴染みの”役者”の登場に「待ってました!」と声をかけるような感じ。
こういうのはファンの人にとっては嬉しいような複雑なような・・・なのでしょうか?
いきなりウフーラ(ゾーイ・サルダナ)をナンパするのかカーク!とか、
ミスター・カトー、じゃなくてヒカル・スールー(ジョン・チョウ)は、
ジョージ・タケイより可愛い!とか、私程度の知識でも十分楽しめるメンバー紹介でした。
そしてなんといってもスポック(ザッカリー・クイント)!
ヘアメイクで当然積極的に似せているとはいえ、レナード・ニモイと並ぶと十分新旧同じ人。
おそらくほかのキャストより一番オリジナルに似せることを必要とされたと思うし、
そして今作で唯一オリジナルキャストと共演するという、その責任は重かっただろうなと思いました。


ヤングスポック
startrek_2.jpg


細かい小ネタはおそらく満載なんでしょう。
そのあたりを知ってると面白さは何倍も違うんだと思いますが、
そんなことは関係なく、純粋にSF大活劇として楽しめる作品になっていました。
まだピカピカのエンタープライズ号、それとは対照的な敵の宇宙船の不思議な造形もカッコイイし、
地上に突き刺さる巨大なドリル、そこに絶対無茶なスカイダイビングで降りてきて、
そんなところでやっぱり無茶!な肉弾戦もワクワクドキドキ。
スコット(サイモン・ペッグ)がヘンなところに転送されちゃうのもおかしかった。
結構ベタに笑えるシーンもあって、手がこんなんなっちゃった!とかくだらな過ぎでした。

J・J・エイブラムスは実はスター・トレックよりスターウォーズの大ファンだそうで、
でもそんな彼だからこそ自由な発想で、新しいスター・トレックを創造できたのかも知れません。
相当リサーチを重ね、トレッキーたちの協力もかなり得たという、
脚本家チームのガンバリはかなりのものだったと思います。
冷静に考えればエッという部分も多いけど、それもまるで気にならない話の運び方、
スピーディで盛りだくさんで、映像は文句なく美しいし・・・と、なんだか褒めまくりですが、
「スター・トレックってよく知らないし」と躊躇している人は相当数いると思うので、
まあ騙されたと思って!観て欲しいです。
私もいろんなことを確認する意味も込めてもう一回観たいです。


ヤングドクター・マッコイ!
startrek_3.jpg


私はザッカリー・クイントだけが目当てだったようなものなんですが、
彼も含め、基本的にキャストが地味なのでは、と思っていました。
クリス・パインって全然知らないし、と思ってたら、
この人、『スモーキン・エース』のあの凶悪3バカ兄弟の1人だったんですね、ビックリ!
で、観てみたら結構豪華キャストでびっくりしました。
直前にウィノナ・ライダーがスポックの母!と聞いていたのでなんとか認識できましたが、
あれは気が付かなかったかも知れません。
ほかはほとんど予備知識入れずに観てしまったので、
メイクで全然わからなかったエリック・バナ、
久しぶりのカール・アーバンはドクター・マッコイに似てるかも!
大好きなブルース・グリーンウッドの登場に興奮!と、結構心の中で大盛り上がりでした。
レナード・ニモイの登場も知ってましたが、ファンへのサービスみたいな出演かと思ったら、
ものすごく重要な役回りだったのに感心しました。
こういう敬意の払い方は素晴らしいと思います。

JJネタとしては、スラショーがそんなにロングセラーになっているとは!にびっくり。
スラショー出したくてバーのシーンにしたんじゃないかとすら思えます。
それと、あちこちにR2-D2を登場させているというのは知ってたんですが、
よし、ここは私もひとつ見つけてやろう!なんて思いましたが、
そんな余裕は全然なくてまるで見つけられませんでした。
いくつかネット上で登場シーンを見ましたが、これはわかんない!
『エピソード1』のE.T.なんてのとはまるでレベルが違ったようです。
そんなこんなの小ネタも楽しい新生スター・トレック。
予備知識なくても全然大丈夫。大きい画面でぜひぜひご覧ください。
なんかもう終わっちゃいそうなので、急いで!


Star Trek(2009 アメリカ)
監督 J・J・エイブラムス
出演 クリス・パイン ザッカリー・クイント レナード・ニモイ エリック・バナ ブルース・グリーンウッド
   カール・アーバン ゾーイ・サルダナ サイモン・ペッグ ジョン・チョウ アントン・イェルチン
   ベン・クロス ウィノナ・ライダー クリス・ヘムズワース ジェニファー・モリソン



スター・トレック スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

スター・トレック スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD



スター・トレック スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

スター・トレック スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: Blu-ray



スター・トレック エンタープライズ号BOX<7,000セット限定> [DVD]

スター・トレック エンタープライズ号BOX<7,000セット限定> [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD


タグ:映画
nice!(4)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

スルース [映画感想−さ]

名作『探偵<スルース>』から35年後のリメイク作。
あれほどの名作のリメイクに果敢にも挑んだ勇気には賞賛を送りたいです。


ベストセラー推理作家アンドリュー・ワイク(マイケル・ケイン)の屋敷を、
無名の俳優マイロ・ティンドル(ジュード・ロウ)が訪ねてきます。
マイロはワイクの妻マギーの浮気相手で、マイロはワイクに離婚するよう迫ります。
ワイクはそれを受け入れ、その代わりにある1つの提案をします。


追い詰められます
sleuth_2007_1.jpg


予想通り、そして評判通りイマイチでした。
オリジナルが傑作過ぎることもあるし、比べるのは酷な気もしますが、
なんだか安易なサスペンスドラマ風リメイクにしか見えず残念でした。
全体に遊びとかひねりとかがほとんどなくて、"第二幕"までは展開は前作とほとんど同じ。
それも結構早足で、余計なものはどんどん削っていったのかなと思いますが・・・削り過ぎ。
オリジナルより尺が短いというのは珍しいし、潔くもありますが、
なんだかガチガチしていて、悪い意味で余裕がなくシンプル過ぎです。
もう30分長くしてもいいから、もうちょっと遊びの部分が欲しかった。
ストーリーを知っているだけに意外性も感じられず、
前作はオチがわかっても何度も見返したくなるぐらいだったのに、
話の展開以外の観るべき部分がないのです。
前作の仕掛け人形の役割を現代風のハイテク設備に変えてみたといったところですが、
これもなんだか中途半端だし、おおっという感じでもない。
そもそも、ワイクの家がそんな風である理由がいまひとつ活かされていません。
前作のワイクはゲームが好きで、そのこだわりがあの奇妙な屋敷を作り上げていて、
そんなこだわりのある人物であるからこそ、理解不能なゲームを始めてしまったわけで、
では今回のワイクのこだわりはというと、これがまるで感じられません。
ガチガチに警備を固めて世の中と隔絶した生活をしている・・・という風でもなく、
単純にハイテク好きというわけでもなさそう。
だってあの万能リモコン、ウチにもあるし!しかしそんなにすごいリモコンだったとは・・・。


今度は追い詰めます
sleuth_2007_2.jpg


ワイクは冒頭から「私のクルマのほうが大きい」とか、
わかりやすくマイロを見下してる感じを出していて、そのあたりの描写も不満でした。
オリヴィエ卿のワイクは金持ちで上品そうでありながら下世話さもあり、
狂気も秘めつつ、でもいい人かもしれないと思わせる複雑さを感じさせました。
それが今作では、ワイクもマイロもどうも品がない。
マイロに関しては今回は売れない役者という設定なので、多少品がなくてもOKなのかも知れませんが。
ワイクはもっと何を考えてるかわからない複雑な感じを出して欲しかったです。

まあでも、何を考えてるかわからないと言えば”第三幕”なのですが。
この脚色というのか改変はオリジナルとの違いを出すためだったのでしょうけど、
ホモセクシュアルな雰囲気を出すことの意味はよくわかりませんでした。
前半から「君は魅力的だ」とか「君を好きになった」とかワイクに言わせてはいましたが、
そういう意味だったとは!?
ジュード・ロウを見たらみんなそんな気になってしまうとか?
オリジナルでも変装の衣装を選ぶ時に、マイロがドレスを身に着けてふざけるシーンがありましたが、
男2人となると、そういう方向に行きがちなのでしょうか?
そんなホモセクシュアルな展開が意外な方向に向かうのかと思えば・・・どこにも行かず。
意外性もどんでん返しもなく、無理矢理に終わってしまった感じです。
脚本はハロルド・ピンター。これが遺作となってしまったんですね。
ちなみにワイクが観ていたTVドラマにちらっと登場していました。


さて勝者は?
sleuth_2007_3.jpg


二代目マイケル・ケイン!と初代の演技はさすが見応えがありました。
意外にもジュード・ロウは健闘していたと思います。
それはマイケル・ケインが、というかワイクがどんどんパワーダウンしていくのとは逆に、
マイロは泣いたりエキセントリックになったり変装したりと、
メリハリがあってわかりやすいということもあるでしょうが。
インテリアが高級家具店のレイアウトそのままのような生活臭の無さで、
それが舞台劇っぽい雰囲気を出していて、本当に2人の舞台を観ているような感じでした。
でも、それ以上ではないのが本当に残念。
いっそのこともっともっとシンプルにして、話はオリジナルに忠実にして、
純粋なこの2人の舞台劇として見せても良かったかも知れません。
なんだかいろんな意味でマイケル・ケインが気の毒な気がしました。
ケネス・ブラナーって、いつもどこかちょっとだけ方向を間違っている気がします。
俳優としてはすごく面白い人だと思うんですが。


Sleuth(2007 アメリカ)
監督 ケネス・ブラナー
出演 マイケル・ケイン ジュード・ロウ ハロルド・ピンター



スルース 【探偵】 [DVD]

スルース 【探偵】 [DVD]

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD


タグ:映画
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

セックス・アンド・ザ・シティ [映画感想−さ]

これ、映画館で観るほどなのかなあ、2時間半って長すぎ!と劇場鑑賞はパス。
どうせ来年になったらWOWOWで放送してくれるだろうし、なんて思って、
予想通りのオンエアを鑑賞いたしました。


キャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)、ミランダ(シンシア・ニクソン)、
シャーロット(クリスティン・デイヴィス)、サマンサ(キム・キャトラル)の4人は、
今も変わらぬ固い友情で結ばれています。
キャリーは長年務めた新聞のコラムを辞め2冊の本を出版、今やベストセラー作家に。
長年付き合っているMr.ビッグ(クリス・ノース)との関係も順調です。
弁護士のミランダは夫スティーブ(デヴィッド・エイゲンバーグ)と息子と共にブルックリン暮らし。
仕事と家庭の両立で多忙な毎日を過ごしています。
シャーロットは夫ハリー(エヴァン・ハンドラー)と養女リリーとの幸せな日々。
サマンサは恋人のスミス(ジェイソン・ルイス)とロサンゼルスに移住、
彼の俳優業のマネージメントで多忙な毎日です。
そんなある日、キャリーとMr.ビッグとの間に結婚話が持ち上がり・・・。


女の友情は強し
sexandthecity_1.jpg


TVシリーズはたまーに観ていた程度でした。
サラ・ジェシカ・パーカーが昔から苦手なのと、吹き替えがどうしても慣れなくて。
下ネタ満載のフラットパック映画やアバトー作品は大好きなのに、
女性の真っ正面からのセックス話というのがドラマでも実生活でも非常に苦手なので、
それを吹き替えでやられると本当に勘弁してくださいとなってしまうのです。
コレの声優さんたちはホント、エライなあと思います。
ところがこのドラマの映画化にあたって、昨年WOWOWで一挙再放送をやってて、
しかも字幕放送だというんで観てみたら・・・ハマッタ!
断片的にしか観てなかったのをキチンと連続ドラマとして観たら、
彼女たちの友情、恋愛、結婚、仕事などなどものすごく共感できる部分が多くて、
なるほどこれにハマる人が多いだろうなと今さらながら納得しました。
私も登場人物に世代的に近いし、理解できる部分が多くて、
観ながら笑ったり怒ったり、思わずホロリとさせられたり。
もちろん、私はランチ食べながら「昨夜のオトコは・・・」なんて話は絶対しませんが。

映画は5年間のTV放送が終わってさらに4年後の物語ですが、
コレ、TVシリーズを観てなかった人は絶対に楽しめないと思いました。
冒頭で簡単に女性4人のキャラクター説明があるし、
まったく予備知識がなくてもなんとかついていけるとは思います。
でもそれだと、なぜMr.ビッグが結婚をためらうのかとか、
シャーロットの妊娠の意味や、サマンサがスミスとの関係を思い悩む理由などなどの、
本当のところがよくわからないままで終わってしまうんじゃないかなと思いました。
男性陣についてはほとんど説明もなかったし。


Mr.ビッグとついに・・・?
sexandthecity_2.jpg


というわけでTVシリーズのファンにはまあ満足の出来だったのではないでしょうか。
4人がその後どうなったのかという答えを十分見せてもらえたと思います。
あのあとも4人の人生は続いていたんだと思わせる、
その後の描き方としてはカンペキと言っていいストーリーだったと思います。
不満を持つとしたら、こうなって欲しかった、ならないで欲しかったみたいな、
視聴者の個々の願望が思い通りになったかどうかぐらいかも知れません。
結局、4人とも男に振りまわされてしまってるだけな気がしないでもないですが。
女も40代になったら結婚するかしないか、してるかしてないか、
そんな括りでしか語られないのかなという感じなのがちょっと残念。
ミランダの仕事ぶりぐらいはもう少し見せて欲しかった気がします。

このドラマのウリである4人のファッションは相変わらずの華やかさで、
話題のウェディングドレスはスゴイとしか言えないゴージャスさ。
キャリーの引っ越しの整理で昔の服を登場させたのもなかなか面白かった。
あのチュチュ、取ってあったんですね!
そういうトリヴィアなネタも微妙に交えつつ、相変わらずのワー!キャー!な盛り上がりで、
観てるこちらも同窓会気分になりそうでした。
今作でのゲスト、キャリーのアシスタントのルイーズを演じる、
ジェニファー・ハドソンの存在もなかなか良かった。
キュートで強烈過ぎず印象薄すぎず、ドラマの良いアクセントになっていました。


頼もしいアシスタントのルイーズ
sexandthecity_3.jpg


私の不満な点は、TVシリーズの充実度・・・あの30分の中で、
その回ごとにテーマがあって、4人それぞれのエピソードを漏らすことなく描き、
笑いや涙やファッションについてまでを組み込みながらキチンと毎回オチを付ける、
あの完成度はスゴイと思ったんですが、それを思うと、
これだけ時間があるんだからもうちょっと何かあっても良かったかな、と思いました。
ストーリーを追うことがメインで、いい意味の寄り道が少なかった気がします。
ファッションショーのシーンみたいなのはあんまり必要性を感じなかったし。
あれは、膨大な衣装協力に対するしがらみとか、そんな裏事情でもあるのでしょうか?
あともう1つ不満点は"The City"の部分、ニューヨークの描き方が少なかった気がします。
確かに今のニューヨークでここがクール!みたいな所は映画だと出しづらいかも知れません。
でも公立図書館の結婚式というのはすごく良かった。
ああいう印象的なニューヨークシーンがもうちょっと欲しかった気がします。

TVドラマの映画化は珍しいことじゃないですが、成功してるものってあるんでしょうか?
私はあまりTVドラマ自体を観ないし、その映画化モノも観ないのでわかりませんが、
そのドラマのファンはすごく楽しめるとは思うけれど、
それじゃ映画にする意味はないような気がします。
おそらくお金がTV版とは比べものにならないぐらい使えたりとか、
セクシャルなシーンなんかTVより大胆に出来るとか、
(でもコレはTVシリーズのほうがスゴかった気がする)
いろいろとメリットがあるから映画化するんだろうなと思いますが。
映画化を考えた時点で、TV版を知らない観客も想定すると思うし、
そのへんのバランスを考えると、ドラマの映画化って難しいだろうなと思います。
これ、もう続編製作も動き出してるそうで、どうなんでしょう?
ここでやめてたほうがいい気もするんですが。
でも、次はキャリー以外の3人のドラマももっと掘り下げてくれたらいいかな。
なんだかんだ言って楽しみだったりして。


Sex and the City(2008 アメリカ)
監督 マイケル・パトリック・キング
出演 サラ・ジェシカ・パーカー キム・キャトラル クリスティン・デイヴィス シンシア・ニクソン
   クリス・ノース キャンディス・バーゲン ジェニファー・ハドソン デヴィッド・エイゲンバーグ
   エヴァン・ハンドラー ジェイソン・ルイス ウィリー・ガーソン
   


SEX AND THE CITY [THE MOVIE] COLLECTOR'S EDITION [DVD]

SEX AND THE CITY [THE MOVIE] COLLECTOR'S EDITION [DVD]

  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング
  • メディア: DVD



SEX AND THE CITY [THE MOVIE] Blu-ray

SEX AND THE CITY [THE MOVIE] Blu-ray

  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング
  • メディア: Blu-ray


タグ:映画
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画
前の5件 | 次の5件 映画感想−さ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。