SSブログ
映画感想−さ ブログトップ
前の5件 | 次の5件

スラムドッグ$ミリオネア [映画感想−さ]

映画の評価は何によって左右するのか。
ストーリー、映像、俳優の演技・・・などなどいろんな要因が考えられますが、
こういう作品を観ると、舞台となる場所の持つパワー、
ある人種固有とも言える魅力なども大きな理由となることに気づかされます。
各所での高評価も納得の、まさに圧倒的な一本。


ジャマール(デヴ・パテル)はインドの国民的クイズ番組で、
全問正解まで残りあと1問というところまで勝ち進みます。
しかし番組は時間切れで最終問題は翌日となり、
スタジオを出たジャマールは、なぜか警察に連行されてしまいます。
スラム育ちで無学な彼がここまで正解したのには何か裏があるとして、
過酷な取り調べを受けるジャマール。
そこで彼は、なぜ正解を出し続けられたのか、その理由を話し始めます。


正解を出し続けられるその理由は
slumdogmillionaire_1.jpg


この作品がなぜここまで絶賛されたのか、
予告編や断片的な情報を聞いただけではまったく想像出来ませんでした。
またインドを舞台にしたこの物語の監督を、なぜダニー・ボイルが務めたのか、
もうイギリスやアメリカで撮りたいものがないということなのか、
巨大なインドの映画界の資金力うんぬんも関係してるのか・・・などなど謎は深まるばかり。
例えば『トレインスポッティング』の頃の情熱を再び!とでも考えたんだとしたら、
確かに今のイギリスに描きたいと思わせるものは少ないのかも知れません。
というよりこの作品を観た後ではこれほどのパワーを持った舞台を、
ほかに探す方が困難だと思わせられます。
とにかくムンバイという街の持つ力、そこで生きる人々の力を、
これでもかこれでもかと見せつけられる感じです。

最初はクイズに勝ち進んでいくこと自体が物語のメインで、
ジャマールが不正を行ったのか否かを暴いていく・・・みたいな話なのかと思ったら、
彼がなぜ正解していくのか、その1つ1つすべてに理由があり、
そのことによって同時に彼の半生が語られていくという構成となっていて、
その語り口、話の持って行き方が実に巧い。
現在の時点は警察の取調室であり、そこで番組のビデオを観るという、
スタジオの場面は既にフラッシュバックであり、
そこにジャマールの幼少期からの物語がさらに挟み込まれる。
クイズが進み賞金がアップしていくと同時にジャマールも成長していき、
やがて3つの物語が1つに収束していく。
時間や地点は当然往き来するわけですが、それがまったく難解ではないし、
こちらを何かミスリードさせようという意図があるわけでもなく、
その構成がすべて必然で、かつドラマチックという、
この巧みな作り方自体も評価された理由の1つでしょう。


兄弟はスラムを出る
slumdogmillionaire_3.jpg


ただ、話としてそううまく行くのかというツッコミが入りかねない点は多々あります。
ジャマールが初恋の人であるラティカ(フリーダ・ピント)と、
何度も別れては再会し・・・というのは確かにムリはあるし。
けれどもそこは愛のチカラとか運命とか、
そういうドラマティックな言い訳をしてもいいと素直に思えました。
ムンバイの街をリアルに描き、思わず目を背けたくなるような描写もあり、
ジャマールがなぜこのクイズ番組に出るに至ったか、
正解し続けるのかの謎解き的要素もありながら、
この作品は純粋にラブストーリーであり、
そんないろんな要素の絶妙なバランスが本当に素晴らしい。

過酷なスラムの実情がどこまで真実に近いのかはわかりませんが、
幼い子どもたちが貧しさの中で生きていく様子は、
ブラジルのストリートチルドレンを描いた、
『シティ・オブ・ゴッド』を思い出させました。
ただあちらは相当ヘビーかつバイオレンスで、
ジャマールの兄サリームを主人公にしたらかなり近づきそうですが、
こちらはラブストーリー要素も含め軽やかな印象。
それでもほとんどドキュメンタリーと言えそうな場面も多く、
かといって揺れるカメラでリアリティを出したりなんてこともせず、
躍動感あるカメラワークで写し撮ることによりドラマ性を出し、
素晴らしいエンタテインメントにしています。
きちんとラストにインド映画らしいダンスも登場させるあたり、
まったく完璧な娯楽作となってます。


ラティカは待っている
slumdogmillionaire_2.jpg


文字通りの"疾走感"がただごとじゃない美しい映像となり、
それが単にスタイリッシュな映像で終わってないところも大したものだと思いました。
私は『トレインスポッティング』に世間の評価ほど感動しなかったのですが、
・・・というよりドラッグ、赤ん坊、そしてあのトイレに嫌悪感すら感じたぐらいで、
(今回もまたトイレネタかい!と一瞬キレそうになりました・・・苦手なんです)
あれから十数年経って、ダニー・ボイルは一切変わっていなかったのか、
あるいはようやく新たな一歩を見出せたのか。
いい意味で得意のスタイリッシュ映像をインドという舞台を得て、
発展させ蘇らせることが出来たのか。
こんな傑作を生み出してしまって、さて今後ダニー・ボイルはどこへ向かうのでしょう?

それにしても、今作がオスカーで評価されたのは謎。
スターもいない、アメリカ映画ですらなく、
これまでならせいぜい外国語映画賞ぐらいかなという気がするのですが、
ここは素直にアカデミー会員を見直すべきなのでしょうか。
確かにこれを観たら『ベンジャミン・バトン』なんかまるっきり凡作と思えてしまいます。
この高評価があって日本での公開が叶ったと思うし、そこは本当に感謝したいです。
1人でも多くの人に観て欲しい、傑作。


Slumdog Millionaire(2008 イギリス)
監督 ダニー・ボイル
出演 デヴ・パテル フリーダ・ピント アニル・カプール イルファーン・カーン





タグ:映画

シューテム・アップ [映画感想−さ]

あちこちで評判がいいので気になっていた作品。
86分という長さは平日の夜とかちょっと時間がある時に観るのにはピッタリ。
それにしても、これは・・・う〜ん・・・。


深夜のニューヨーク。裏通りのベンチに腰掛け、
好物のニンジンをかじっていたスミス(クライヴ・オーウェン)の目の前を、
1人の妊婦が怯えながら通り過ぎ、その女を追って男が現れます。
男が妊婦に銃を向けようとするのを見たスミスは、男を始末し彼女を助けますが、
続々と大勢の刺客たちがやって来て妊婦の命を狙います。
銃撃戦となる中、妊婦は産気づき男の子を出産しますが流れ弾に当たり死亡。
スミスは赤ん坊を抱え、その場を立ち去りますが・・・。


謎の男、スミス
shoot'emup_1.jpg


くだらなすぎ、ふざけすぎ!・・・って、これ、ホメ言葉です。
ここまで徹底してくれると、人死に過ぎとかそんなのどうでもよくなってしまう。
まるっきりマンガというか、ありえないシチュエーションの連続は、
アメコミのスーパーヒーローものでももっとリアルかも。
よくこんなにいろんな銃撃戦のパターンを思いつくモノです。

スミスがまったく素性のわからない男で、
彼がなんでこんなに銃扱いがスゴイのかの説明はまるでナシ。
彼を追う殺し屋のボス、ハーツ(ポール・ジアマッティ)は、
元FBIのプロファイラーだかそうじゃないだかで、
割れたクルマのガラスを見ただけで、これはスミスの仕業だとか判断して、
実際その通りだったりするし、まあ要するに適当でご都合主義な展開なんですが、
そういう細かいことは本当にどうでもいいと思わせるテンポの良い作りで感心します。


謎の男、ハーツ
shoot'emup_2.jpg


スミスの(どうやら)欠かせないものとして、
また武器として重要なアイテムであるのがニンジン。
いったい彼はコートの中に何本ニンジンをしのばせてるの!?と、
観た人全員がツッこむところでしょう。
でもいくら細くて堅いニンジンでもあんな風に刺さらないと思うなあ。
このニンジンネタもこれでもかというぐらいいろんなパターンで出てくるのですが、
そのくだらなさったらないです。

銃の怖さというのは困ったことにあまり実感が湧かないので、
こういう風に映画で観ても恐怖を感じないのですが、
ナイフで(あるいはニンジンで?)刺されるとか、
指をグギッとされるのはやっぱりものすごく痛そうでコワイ。
あと、経験ないですがへその緒を"切る”シーンも・・・無茶。
結構そういうウワッと思う痛いシーンが多いのには辟易だったんですが、
とにかくテンポが早いので、ウワッとか言ってる間に次に行く感じ。
赤ん坊をなぜみんな狙ってるのかとか、一応ちゃんとしたストーリーはあるんですが、
細かい矛盾やツッコミどころも含めて、もうどうでもいい!と思ってしまう。
でも赤ん坊がヘビメタ好きだから妊婦がどこにいたかわかるとか、
博物館の戦車の中が安全だからそこに隠れてるとか、
テキトーでクダラナイ感じなのに、ヘンなこだわりの小ネタがいっぱいで、
そのギャグのようなセンスがいちいちオカシイです。


謎の女、ドンナ
shoot'emup_3.jpg


スミスは"中年男のポニーテール"とか"ウィンカーを出さないドライバー"とか、
ありとあらゆることが気に入らなくてすぐにキレます。
でもその理由は結構マトモというか納得できちゃうことばかりなんですけどね。
クライヴ・オーウェンが終始ほとんどニコリともせず、
必死に赤ん坊を守って孤軍奮闘って、ある意味『トゥモロー・ワールド』と同じ!?
話はまるっきり違いますが、セルフパロディと言えなくもない・・・かも。
悪役ポール・ジアマッティもいいです。
彼のこのところの芸風の広さは、一時期のフィリップ・シーモア・ホフマンかって感じです。
久しぶりに観たモニカ・ベルッチは・・・う〜ん、そろそろこういう役もギリギリかも。
でもここで若くてキャピっとした女の子を出さないところがいい。
イタリア訛りの英語、怯えた顔、これが意図してなのか自然になのか、
なんだかどれもこれもオーバーアクト気味に見えて、
クライヴ・オーウェンの仏頂面と合わせて、ほとんどギャグの域に達しています。
そんなもろもろを狙ってのキャスティングなのかも知れません。

ものすごくセンスの良いB級作品、というところでしょうか。
アクション・コメディとも言えそうなぐらいの、
思わず笑っちゃうトンデモな銃撃戦の数々。
映像作りに凝りすぎな感じもありますが、時間も短くて本当に軽〜く観られる作品。
最近ストレスたまってるなーって時には、こういう1本があると便利?です。


Shoot 'Em Up(2007 アメリカ)
監督 マイケル・デイヴィス
出演 クライヴ・オーウェン ポール・ジアマッティ モニカ・ベルッチ



シューテム・アップ

シューテム・アップ

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD



シューテム・アップ [Blu-ray]

シューテム・アップ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


タグ:映画

再会の街で [映画感想−さ]

アラン(ドン・チードル)はマンハッタンの歯科医。
クリニックは繁盛し、妻ジャニーン(ジェイダ・ピンケット=スミス)と、
2人の娘とともに安定した生活を送っていますが、
妻とはこのところ、どこか噛み合わないものを感じており、
また、少し困った患者ドナ(サフロン・バロウズ)の存在にも悩まされていて、
セラピストのアンジェラ(リヴ・タイラー)に何かと悩みを打ち明けたりしていました。
そんなある日、アランは街で大学時代のルームメイトのチャーリー(アダム・サンドラー)を見かけます。
彼の身に数年前に起こった悲劇のことは新聞で知っていましたが、会うのは十数年ぶり。
しかしチャーリーはアランのことを憶えておらず・・・。


アランとチャーリー
reignoverme_1.jpg


チャーリーに起こった悲劇、それは妻と3人の娘を911テロによって亡くしたということ。
そのことがあって以来彼は堅く心を閉ざし、世間との関係を絶って生きているのでした。
911テロのことは予告編などでも説明されるので事前にわかっていることなのですが、
実際に劇中では、中盤になってようやくチャーリー自身の口から語られるまで、
あまり具体的に言及されません。
911テロという事実を示さないことにより、そのことに囚われることなく、
純粋にチャーリーの悲しみを感じられるようで、とても良い演出だと思いました。
テロの遺族でなくても愛する人を失う悲しみは同じで、
誰もがその悲しみを経験する可能性があり、その傷は同じように深いはず。
誰の傷のほうがこちらの傷より深いとか浅いとかいうことはないし、
比べるものでもない。
誰だっていつだって、チャーリーのようになってしまう可能性があるのです。

深く傷ついたチャーリーの姿を見て、アランはなんとかしてあげたいと思う。
何かとチャーリーの世話をするアランに対して妻は、
「チャーリーの"自由"を羨ましいと思っている」と言います。
でも実際は羨ましいというより、チャーリーをどうにかしようとすることで、
自分の現実問題から逃れようとしているのかも知れません。
チャーリーが妻と娘たちの存在を知らないアランと付き合うのと同じように、
アランも現在の自分の状況を知らないチャーリーと大学時代のように遊ぶことで、
現実逃避しようとしている。
悩みや心の傷は人それぞれで、どうにかしたいと思いながら自分ではどうにもならない、
そんな時に"再会"した2人は、ただ昔の思い出の中だけで生きていくのか、
それとも明日のために一歩踏み出すことができるのか。
映画はそんな2人の関係を、ユーモアを交えながら描いていきます。


再会は2人を幸せだった頃に戻す
reignoverme_2.jpg


やがてチャーリーがある事件を起こすことがきっかけとなって、
いよいよ現実と向き合わなくてはならなくなってしまいます。
チャーリーは妻の両親との接触をずっと絶ち続けていたのですが、
とうとう審問会という公の場で過去を振り返らなくてはならなくなります。
チャーリーと義理の両親、どちらも被害者でも加害者でもない、
家族であり同じテロ事件の被害者なのに、なぜいがみ合わなくてはならないのか。
このことも実に不幸なことです。
ここで判事としてドナルド・サザーランドが登場するのですが、
彼がとても正しくてシンプルなことを話します。
彼のこの言葉はチャーリーの居ない場所で語られるため、
直接チャーリーの耳には届かないのですが、
チャーリーもまた、自分の気持ちを妻の両親に伝えます。
誰かに無理強いされるのではなく、セラピストの力や入院という形を取るのでもなく、
1つの答えらしきものを見つけ出します。
人の心の難しさ、そして可能性を感じさせられる素晴らしいシーンでした。

原題の『Reign Over Me』の元となったザ・フーの『Love, Reign O'er Me』を始め、
70年代〜80年代初頭のロックの名曲がとても効果的に使われていて、
このあたりでグッと来る年代の人も多いかも知れません。
外界の”雑音"を遮断するために、常にチャーリーが被り続けるヘッドフォン。
そこに流れる音楽は、チャーリーにとって妻や娘たちの存在がまだ無い頃の音楽であり、
彼が今、その音楽の中で生きていることを観ているこちらも共有できる仕掛けです。


再会の街は再生の街
reignoverme_3.jpg


最初に観た時にはボブ・ディラン!?と思ってしまったアダム・サンドラーの風貌。
ストーリーもいつもの彼のとは路線が違うことは確かなのですが、
コメディ作品でもどこか寂しげな表情をしていたり、
かと思うと突然キレたりといった感情の起伏の激しい役柄が多い人なので、
これが意外なことにこのチャーリーのキャラクターにピッタリはまっていました。
ドン・チードルも素晴らしい。誰が見ても幸せな日々を送っているようで、
どこか満たされないものを持っている不安げな表情がこちらの心を揺さぶります。

911テロで失われた多くの命、そしてその数だけ遺族はいて、
今もその人たちは深い悲しみの中で生きている。
この先何十年経ってもその悲しみが消えることはない。
では、私たちのような第三者がそんな遺族たちにしてあげられることはあるのか、
あるとしたらそれはどんなことなのか、あるいは何もしないことが大事なのか、
そんなことが、見終わっても頭の中をずっと駆けめぐっています。
チャーリーを始め、アラン、アランの患者ドナなど、
何かに傷ついた人たちがとりあえず最後は何かしら答えを得ることが出来ます。
でもそれは正解ではないかも知れないし、誰にでも当てはまる答えでもない。
答えは1人に1つでもないかも知れない。
でもそうやって、人は生きていくしかないのかも知れません。
チャーリーがキッチンのリフォームを繰り返すことになる、ある"後悔"。
こういう話はたびたび耳にし、そのたびに毎日誰にでも優しくしよう、
後悔することなく日々生きようと思うのですが、これがなかなか難しい。
とりあえず、ゴメンと謝れる相手のいる現実を幸福だと思い、素直に受け入れ、
毎日を正直に生きたいと思います。


Reign Over Me(2007 アメリカ)
監督 マイク・バインダー
出演 アダム・サンドラー ドン・チードル ジェイダ・ピンケット=スミス リヴ・タイラー
   サフロン・バロウズ ドナルド・サザーランド



再会の街で [DVD]

再会の街で [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD



再会の街で [Blu-ray]

再会の街で [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: Blu-ray


タグ:映画

スモーキング・ハイ [映画感想−さ]

『スーパーバッド 童貞ウォーズ』のコンビ、
セス・ローゲン&エヴァン・ゴールドバーグの脚本なので、
またいつものルーザーたちの物語かと思えば・・・まあ確かにそうなんですが、
今回はなんと銃撃戦あり爆破ありカーチェイスありの大アクション巨編!?


召喚状の配達人デール(セス・ローゲン)。
ラジオの人生相談が好きで高校生の彼女もいて・・・そしてマリファナ中毒。
その日も最近馴染みのドラッグディーラー、ソール(ジェームズ・フランコ)の家を訪ね、
"パイナップル・エクスプレス"というレアなマリファナをゆずってもらいゴキゲン。
その夜、配達の仕事で向かったのはディーラーの親玉テッド(ゲイリー・コール)宅。
仕事の前にさっそく"パイナップル・エクスプレス"で一服していたところ、
殺人事件を目撃してしまい・・・。


極上ハッパで超ハッピー!
pineappleexpress_1.jpg


昨年夏のアメリカでの公開時には『ダークナイト』を首位から引きずり下ろした今作。
・・・なんてこともまったくチカラにならず、当然のようにDVDスルー。
確かに日本的なスターは出てないし、テーマがマリファナということで、
アメリカと日本では事情が違いすぎて感覚的にわかりにくいところが多いかも知れません。
マリファナはもちろんタバコも吸わない私にはやたら煙たそうで、
彼らのハイになった状態はまるで想像もできないし、
実際観ていてこれはハッパのせいなのか、
元々こういうキャラなのかも、ちょっとわかりにくい気がしました。
途中でデールが「ヘマをやるのはハイになってる時だ」と、
冷静になって言うシーンがあるのですが、
ここを除けばほぼ全編ハイな状態・・・と理解してよいのかどうか。
ソールは確実にそうだと思いますが。

このソールを演じるジェームズ・フランコ。
ゴールデングローブではこれで助演男優賞にノミネートもされたぐらい、
とにかくいい演技しています。
このソールのキャラクターは『トゥルー・ロマンス』のブラッド・ピットを参考にしたと、
ジャド・アパトーがインタビューで答えていましたが、ああ、なるほど!と納得。
ロングヘアでパジャマ?みたいなカッコでカウチに寝転がってばかりのその様子は、
確かにあの時のブラピそのもの!


レッドは敵か味方か・・・?
pineappleexpress_2.jpg


デールが殺人を目撃したことがあっさりばれてしまい、
テッドの手先や悪徳警察官(ロージー・ペレス)に追われることになる2人に、
もう1人、ソールに"パイナップル・エクスプレス"をゆずった、
レッド(ダニー・マクブライド)という男が絡んできます。
彼はテッドの手先にもデールたちにも痛めつけられ散々な目に遭うのですが、
やがてこの3人に友情が芽生え・・・と、
やはり最後は男同士の友情物語に持ってってしまいます。
ただいつものアパトー作品によくあるホロッと来る感じは無いし、
合間合間のギャグも控えめというか、ちょっと噛み合ってない感じです。
笑わせる部分とアクションパートをもう少しメリハリつけて欲しかった。
セス・ローゲンのユルッとした笑いが元々好きな私はまあ満足なんですが、
(お金のために中学生ぐらいの子どもにマリファナ売っちゃうところとか最高!)
そうでない人には、ハッパのせいでユルいのか、
そもそも彼らのキャラクターがユルいのかわかりにくい気もします。

笑いもあって、それでも人はバンバン死ぬ。なかなか死なない人もいる。
例えばこれがタランティーノだったらなぜか違和感もなく、
うまーく調和している感じなんですが、こちらはなんだか居心地が悪い。
いっそ死人は1人も出なかった、というオチならいいのにと思ってしまいました。


大爆発!
pineappleexpress_3.jpg


冒頭、1937年の謎の地下研究施設シーンがモノクロで登場します。
どうやらここで"パイナップル・エクスプレス"の研究をしてるようなんですが、
実験台にされた兵士(ビル・ヘイダー)の様子を見て、
上官が施設の閉鎖を告げます。
で、これがどう現代に繋がるのかというと・・・繋がってない!?
なんかもったいぶった感じを出したかっただけなのか、
そういうツメの甘さは意図的なのか、らしいと言えばらしいんですが、
ここは何かしら説明が欲しかったです。
ビル・ヘイダーのネタ見せ?としてはよくできてると思いましたが。
デールのガールフレンドとの関係も結局よくわからないままだし、
脚本がこうだったのか、どうも演出がイマイチなのかも知れないと思いました。
まあガールフレンドより男同士の友情を取った、というより、
限りなくそれ以上の関係を匂わせてるようでもあり、
なんにしてもジェームズ・フランコの時折見せるトロ〜ンとした笑顔が、
カワイイというか意味深というか何も考えてないというか、
ジェームズ・フランコあってのこの作品、彼の演技だけは観る価値が十分あります。
セス・ローゲン、完全に食われちゃってます。


Pineapple Express(2008 アメリカ)
監督 デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演 セス・ローゲン ジェームズ・フランコ ダニー・マクブライド
   ゲイリー・コール ロージー・ペレス ビル・ヘイダー



スモーキング・ハイ [DVD]

スモーキング・ハイ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD


タグ:映画

シカゴ [映画感想−さ]

2003年の劇場公開以来なので約6年ぶりに鑑賞。
実は最初に観た時は、そのめまぐるしく変わるカットに疲れてしまい、
かなり不満もあったのですが、
今回改めて観てみたら、少し違う感想を持ちました。


1920年代のシカゴ。
キャバレーの専属歌手ヴェルマ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、
夫と妹の不倫関係を知り、2人を殺害。
その足で店に向かい、いつもは妹と2人で上がるステージを、
今日は1人で堂々と勤め上げていました。
そのヴェルマを憧れの眼差しで見つめるのは、
スターを夢見るロキシー(レネー・ゼルウィガー)。
彼女も後日、自分を騙した愛人を撃ち殺してしまいます。
夫エイモス(ジョン・C・ライリー)のかばい立ても役に立たず、
逮捕されたロキシーは、刑務所でヴェルマと出会います。
敏腕弁護士ビリー(リチャード・ギア)のおかげで、
ヴェルマは刑務所の中にいてもスター扱いされており、
それを見たロキシーは、自分もビリーを雇おうとしますが・・・。


悪女2人
chicago_1.jpg


映画館では残念ながらかなり前方の席で観てしまい、
大きい画面を見上げるような格好になってしまって、
そこにきて、あのめまぐるしいカット割りなので、
「頼むからもうちょっとゆっくりダンスを見せて!」と、
終わった時にはヘトヘトになってしまいました。
今回、我が家の小さい画面で観ると、
意外に、その細切れ具合があまり気になりませんでした。
やはりもうちょっと落ち着いた画面作りであって欲しいとは思いましたが、
この6年間でこういう画面作りに慣れた?
でも、モノによっては今でも切り替えの多い作品に出会うと、
気になってしょうがない方なので、この感じ方の変化は自分でも意外でした。
決して小さい画面が向いている小品というわけではないのに・・・。

"現実”であるドラマシーンから、
どのように"妄想"とも言えるステージシーンに切り替わるかが、
この作品に於いて一番の見せ所と言っても良く、
それはほぼどのシーンも完璧と言って良い出来だと改めて感心しました。
オープニング、ヴェルマの『All That Jazz』のシーンに、
ロキシーが事件を起こすに至るシーンが割り込むところや、
6人の囚人たちが犯した罪を語りながら踊る『Cell Block Tango』、
裁判なんてサーカスだと言う『Razzle Dazzle』も、
でたらめな実際の裁判シーンにうまく歌が絡まっていました。


悪徳弁護士
chicago_2.jpg


レネー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、
本当に2人が素晴らしい。
もちろん本職の人たちとくらべれば、特にレネーの歌なんてかなり頼りなげだし、
ダンスなど、アラを探すのは簡単かも知れません。
細切れのカット割りは、ダンスシーンを誤魔化すのに必要だったのかも知れません。
それでも、この2人のキャスティングは大正解・・・というか、
リチャード・ギア、クイーン・ラティファ、ジョン・C・ライリー、
いずれも完璧なキャスティングだったと思いました。

映画を観た同じ年にブロードウェイのステージも観ることが出来たのですが、
確かに歌やダンスなら生の迫力も手伝ってステージの方に軍配が上がります。
でも映画では何が大事かと言えばドラマ部分、
つまり劇中の現実の部分をいかに演じるかが大事なのであって、
そう考えると、少々アタマの弱そうなロキシー、悪女ヴェルマ、
ずる賢いビリー、ママ・モートンの迫力、
そしてエイモスの人の良すぎるところなど、全員がピッタリ。
映画とステージはまったく別物だと感じました。
最近のブロードウェイミュージカル映画化ブームの先駆けと言える作品でしたが、
まさにこのタイミングで作られたこと、
このキャストを集められたことが成功の鍵だったと思いました。


どこまでもお人好し
chicago_3.jpg


ロキシーに殺される男がドミニク・ウェスト、
それとルーシー・リューが出てたことはすっかり忘れていました。
ミュージカルシーン=妄想の世界という構成は、
世のミュージカルを敬遠する人たちのよくある言い訳、
"出演者が唐突に歌い出すことの違和感"に対する、
わかりやすい返答とも言えるし、
そのなめらかな切り替わり方は実に見事なので、
ミュージカル敬遠派の方にこそオススメしたい。
あまりにもデタラメなストーリー・・・マスコミが次から次へと、
"新しい血”へ向かう様は、案外今の世の中もこんなかもと思わせるし、
なかなかの皮肉として面白く観ることが出来ました。


Chicago(2002 アメリカ)
監督 ロブ・マーシャル
出演 レネー・ゼルウィガー キャサリン・ゼタ=ジョーンズ リチャード・ギア クイーン・ラティファ
   ジョン・C・ライリー テイ・ディグス ドミニク・ウェスト ルーシー・リュー



シカゴ [DVD]

シカゴ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ハピネット
  • メディア: DVD


タグ:映画
前の5件 | 次の5件 映画感想−さ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。