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シャッターアイランド [映画感想−さ]

予告編を観た時は、監督スコセッシなのになんだかシャマラン映画みたいだなあと思い、
謎解きだの結末はしゃべらないでだの、しまいには超日本語吹替版とか、
「?」がいっぱいだったのですが、スコセッシを信じて?観てきました。


1954年、連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は、
新しい相棒のチャック(マーク・ラファロ)と共に、
ボストンから離れた沖合に浮かぶ孤島"シャッターアイランド"に向かいます。
そこには精神を患った犯罪者を収容するアッシュクリフ病院があり、
彼らの目的はそこで起こったある女性患者の失踪事件の捜査を行うためでした。
2人は院長のコーリー(ベン・キングズレー)らから事情を聴き捜査を始めますが、
女性患者が島を出た形跡はなく、捜査は進展せず・・・。


テディが追うもの
shutterisland_1.jpg


まず言いたいのは、この映画の広告宣伝での謎解き云々はまったくどうでもいいこと。
これに惑わされてしまうと余計な神経を使ってしまって映画自体を楽しめないと思いました。
事前に、既に観た人たちの「そういうのは関係ない」という意見をいくつか聞いていたので、
私はなるべくそんな宣伝で言っているような「謎」に関してはあまり考えないようにして、
全編に流れる空気や、主人公テディが体験し感じるそのままを同じように感じる、
映画自体の語り口調のようなものを楽しむように努めました。
そもそも、その言われている"謎"とか"オチ"というのはわりとすぐに気が付くというか、
なんとなくこんなことだろうなと思うし、そしてその通りの結末となります。
なので人によっては「意外性がない」とか「ヒネリがない」みたいな意見になるのかも知れません。
でもそれを持ってつまらないと言ってしまうのは、それこそつまらない。

孤島の精神病院というシチュエーション、それはあまりにも美しく恐ろしく、
いかにもな患者たち、何かしら秘密を隠しているような職員たちなど限りなく怪しい。
連日続く嵐は胸をざわつかせるし、断崖絶壁や引き潮でないと渡れない灯台、
ゴシック調の建物もものすごくいろんなことを語りかけてくるし、
そんなもろもろが真実は何かを少しずつあぶり出し、またわからなくしていく。
そんな映画自体の醸し出す雰囲気が、なぜだかわからないぐらい心地よく、
私はわくわくすらしながら観ていました。


病院が隠すこと
shutterisland_2.jpg


かといって、雰囲気だけを楽しむような映画ではもちろんありません。
細かいストーリーを話すことが出来ないのが困りものですが、
物語の合間合間に挟まるテディの過去・・・戦争での体験や死んだ妻の姿などが、
どんな意味を持ちどんな風にストーリーに絡んでくるのか、
そもそもそれは現実にあったことなのか、テディの妄想なのか、
それとも誰かに見せられているのか、誰か違う人のビジョンなのか・・・など、
観ているこちらもあらゆることを想像し混乱させられます。
けれども最後にすべての真相が明らかにされると、
ああなるほど、だからあそこであんなだったんだ!といくつも思い当たり、
そしてそうなってしまった理由に私はものすごく心打たれてしまいました。

不満な点がないことはありません。
おそらく意識的にだと思われるオーバー過ぎるぐらいの荘厳な音楽は、
クラシカルな雰囲気を出すのに一役買っていますが、ちょっと大袈裟に感じなくもない。
それと最後の真相が明かされるシーンも、それはちょっとと思うような部分もあり、
アナグラムの書かれたボードなんて、そこまで親切じゃなくてもと思ったり
でもそのちょっと過剰な感じ、そして何より偏執狂的雰囲気こそ、
スコセッシ監督らしいところなのかも知れません。
結局最後は、こういう部分が好きか嫌いかということになってしまう気もしました。
私はこれが好きなのかも知れない。嫌いと言う人にはどんなに私が好きかを語っても、
わかってはもらえないかも知れない。残念ですがそんな感じです。


妻が伝えること
shutterisland_3.jpg


もうレオ君と呼ぶには十分大人なはずなんですが、全体にずいぶんふっくらして、
顔が丸くなったことでやっぱり幼く見えてしまう、
レオナルド・ディカプリオはそれでも素晴らしい熱演でした。
この人の困り顔や泣き顔は毎度同じなような気もするのですが、
でも毎度私は胸をぎゅぎゅっとされてしまいます。
大好きなマーク・ラファロも常にこうやって隣りで見守る役、という気がします。好演。
ベン・キングズレーにマックス・フォン・シドーは、
確実に素晴らしく怪しすぎて惑わされました。
それと"カナダのデ・ニーロ"ことイライアス・コティーズがスコセッシ作品に出るのは違反!
一瞬「えっ!?」って思っちゃいました。すぐにイライアス・コティーズだってわかりましたけどね。

映画の面白さはいろんな要素から成っていて、
人が面白いと思うポイントも人それぞれで、
だからこれをつまらないという人がいるのもわかります。
謎解きを期待して観に来た人にとってはやっぱり期待はずれだろうし。
映画をつまらなかったと思わせる理由が観る側にある場合、
・・・その時の体調とか気分とか、年齢や経験から来る理解力の有無など、
そんないろんな理由で映画と不幸な出会いをしてしまうことはよくあります。
ですが「つまらない」「面白くなかった」と思わせる要素に、
今回は宣伝があまりに加担してしまっている気がして、それが本当に残念でなりません。
配給会社にもいろいろ事情はあると思います。1人でも多く観に来て欲しいと思うのだろうし。
でもこれはあまりにも営業妨害・・・というのは逆かな、
作品自体の良さを壊してしまってるような、ヘンな先入観を持たせてしまうし、
もっと映画自体の良さを信じてあげても良かったのになという気がします。



Shutter Island(2010 アメリカ)
監督 マーティン・スコセッシ
出演 レオナルド・ディカプリオ マーク・ラファロ ベン・キングズレー
   マックス・フォン・シドー ミシェル・ウィリアムズ エミリー・モーティマー
   パトリシア・クラークソン ジャッキー・アール・ヘイリー テッド・レヴィン
   ジョン・キャロル・リンチ イライアス・コティーズ



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シャーロック・ホームズ [映画感想−さ]

シャーロック・ホームズ・・・実はかなり苦手な部類です。
本はほとんど読んだことがないし、映画やドラマも観てないものばかり。
よってホームズに関する知識が無いに等しく、
そんななので原作と比べてどうだこうだも言えない。
ということはこれも素直に楽しめないかも知れないと思って、
観ないでスルーしようかと思ってたんですが。
でもねえ、このキャストですよ。観たいじゃないですか!


1891年ロンドン。若い女性が黒魔術により次々と殺害される事件が起こっていました。
シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr.)とワトソン医師(ジュード・ロウ)は、
独自の推理で犯人のブラックウッド卿(マーク・ストロング)を追い詰め、逮捕に導きます。
彼は処刑されることになりますが、処刑前に魔術により自分は復活すると宣言。
そして数日後、その言葉通り彼は生き返り、全世界の支配へ向けて動き出します。
その頃、ホームズを女悪党アイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)が訪ねてきて、
ホームズにある依頼をしますが・・・。


仲良し
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どう見てもイギリス紳士には見えないロバート・ダウニー・Jr. と、
正しくイギリス人であるジュード・ロウのコンビ。
もうこれがものすごく良い空気を醸し出していて、それを観ているだけで満足でした。
引きこもりの肉体派、敵を頭脳と肉体でバッタバッタと倒していくホームズ。
すっとぼけた雰囲気ながら常にアタマはフル回転、
相手をどう倒すか一旦アタマの中でシミュレートして、
実際その通りに倒していく様子はすっごく面白い。
そんな彼をうまくサポートしたり出し抜いたりのワトソンもすごくイイ。
『スティング』や『明日に向って撃て』のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのよう、
・・・というと褒めすぎですが、でもそんな男二人が主人公の大活劇は懐かしくもあり、
逆にガイ・リッチーお得意のスローや巻き戻し映像は新鮮でもあり。
突然話が進んでいて「え、何があったの?」と思わせておいて、
そこから巻き戻すようにしてそのプロセスを見せる。
これからどうなるのかとか、その時何があったのかというのを、
映像でパパパッと見せていく、この演出は楽しくて好きです。


魔術師?
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たびたび登場する、骨の砕ける音が聞こえそうなくらいの拳闘シーン。
ホント、ガイ・リッチーって殴り合い好きだなあと思ったら、
ウィキペディアによると、元々ホームズはボクシングがプロ級というキャラクターなのだそう。
ちゃんとそれに則っているのですね。
そういう細かい元ネタをやっぱり知ってるほうが断然楽しめるんだろうなと思いつつ、
やはり何も知らない私から見ても、これは相当飛ばしたホームズなんじゃないかなとも思うし、
そのあたり、原作のファンの方はどう思われるのでしょう?
まあでも、今さらこれまで何度も映像化されたようなホームズ像を描いても面白くないだろうし、
こういう新たな解釈こそ大事なのかなと思いました。

映像的なことでは、後半で出てくる爆発シーンが素晴らしかったです。
まずワトソンが吹き飛ばされ、次にホームズとアイリーンも巻き込まれるんですが、
これをずっとスローモーションで見せていって、
ホームズとアイリーンの動きなんか本当に吹き飛ばされているようでもあり、
きれいに振り付けられて踊っているかのようでもあります。
どういう風に撮影したのかわかりませんが、ここはもう一度観たい!
その分、クライマックスの空中戦(?)はイマイチ。
どこかで見たようでもあるし、爆発シーンのようにもうちょっと盛り上げて欲しかったです。
ストーリー自体も個人的にはどうでも良かった・・・謎解きされてもフーンという感じでした。
なんとなくクリストファー・ノーランの『プレステージ』に雰囲気が似ている気がしました。
時代設定もこの頃で舞台はロンドンだし、ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールの男二人モノだし。
まあ内容はまったく違うので比べるのもヘンな話ですが、面白さでは・・・アチラの勝ちかな?


好きなんですかどうなんですか
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最初から最後までロバート・ダウニー・Jr. のアイドル映画じゃないかというぐらい、
彼の魅力全開な作りで、それはそれで十分堪能させて戴きましたが、
その分ジュード・ロウは完全に脇役扱い。
イギリス人だし、本当は自分がホームズやりたかったんじゃないかなあとも思いますが、
ハチャメチャやりまくりのホームズに対して落ち着いた雰囲気でなかなか良かったです。
ジュード・ロウって年とったらどうなるんだろうといろいろ心配してましたが、
これ観て安心しました。薄めのアタマにヒゲ姿、サマになってる!

ホームズはワトソンが結婚するというのがとにかく気に入らなくて、
ほとんどヤキモチ焼いてる風にしか見えない。この男二人のイチャイチャぶりは観ていて楽しい。
残念なのは、その間に入ってくるアイリーンの存在。
ホームズは彼女のことをどういう風に思っているのか、
これまた原作を知ってる人は承知のことなのかも知れませんが、
恋愛感情なのか尊敬/ライバルみたいな感じなのかイマイチ掴めませんでした。
レイチェル・マクアダムスは可愛くてすごく好きだったんですが、
さすがにちょっと年取ったかなあというのと、
ロバート・ダウニーを相手にするにはやっぱりまだ幼い印象もあるし、
どっちつかずな感じで、役に合ってなかった気がしました。
もうちょっと大人かもっとお色気担当な感じの人が良かった気がします。
大人っぽさで言うとケイト・ブランシェットみたいな感じとか、
若くてナマイキで色気もあって・・・だと、スカーレット・ヨハンソンとか?
あ、それじゃ『プレステージ』か。それに『アイアンマン2』に出るし。

これもどうやらシリーズ化されるようですが、うーん、どうなのかな?
ゆるーい感じが気楽に見られていいかなとも思いますが、
ロバート・ダウニーさん、ちょっと働き過ぎな気も。
好きだから、いっぱい観られるのは嬉しいんですけどね。



Sherlock Holmes(2009 アメリカ)
監督 ガイ・リッチー
出演 ロバート・ダウニー・Jr. ジュード・ロウ レイチェル・マクアダムス マーク・ストロング
   エディ・マーサン ケリー・ライリー ジェラルディン・ジェームズ ハンス・マシソン
   ウィリアム・ヒューストン



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幸せになるための10のバイブル [映画感想−さ]

いやあ久しぶりにヒドイ映画を観ました。
感想書くのやめようかとも思ったんですが、
こんなヒドイ作品を観たことを忘れないようにするために・・・。


モーゼの十戒が刻まれている巨大な2枚の石版。
その石版の前に立ってジェフ(ポール・ラッド)が10の物語を語り始めます。
パラシュートを着け忘れてスカイダイビングし、奇跡的に助かる男の話。
手術中に体内にわざとハサミを残して患者を死なせてしまう医者の話。
腹話術の人形に恋してしまう女やメキシコでイエスと名乗る男に出会う女。
さて、彼らはどうなってしまうのか・・・?


こんなだったり
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『ぼくたちの奉仕活動』の監督デヴィッド・ウェインとポール・ラッドのコンビで、
ほかのキャストも結構豪華だし「幸せになるための〜」なんて言ってるし、
観るまでは『ラブ・アクチュアリー』風のコメディタッチ恋愛群像劇かなんか?と思ってたら、
まあものの見事に間違ってました。
「10」というのは旧約聖書に出てくるモーゼの十戒のこと。
まず、何もないスタジオにこの十戒の書かれた大きな石版がドーンとあって、
その前で唐突に語り出すポール・ラッド・・・って、もうここから意味不明。
彼が何者でなんでそんなことを始めたのか説明があったのかも知れませんが、
なんかもう一度確認する元気もないです。

で、十戒に沿って10個のストーリーが語られるのですが、
正直1話目が終わった時点で「あと9個もあるの?」とグッタリ。
その1話目も、パラシュート付けずにスカイダイビングした男が、
奇跡的に助かるんだけど、落下地点で土に埋まったまま動けなくなって・・・という、
こういうのキライじゃないんですが、うーん、だから何?という感じ。
この1話目に出てくるウィノナ・ライダーがそのあとの話でも登場して、
(これももう何話目だったかも考えるのめんどくさい)
でまた、トンデモナイ演技を見せてくれるんですが、
スゴイなあとは思うけど、やっぱり「それで?」という感想しか持てませんでした。


こんなだったり
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聖書の知識があればもうちょっと面白いのかなあと思うんですが、
十戒なのに下ネタオンパレードなところが笑うポイントなのかなあ。
そもそも、ポール・ラッドの立ち位置がよくわからない時点で、
結局何を言いたいのか、どうしたいのかさっぱりわからないまま。
合間合間に挟まるポール・ラッドの部分、ハッキリ言っていらないと思います。
別にナレーションかなんかだけで10話オムニバスでいいと思うし。
この合間のシーン、ほかにファムケ・ヤンセンとジェシカ・アルバが出て来るんですが、
ポールとファムケは本題の10話の中にも登場するし、あーわからん!

10話の中で同じ人が同じ役で何度も登場したりして、
微妙に話が繋がってたり絡んでたりするんですが、
それもまあそれ以上でも以下でもなく、おーココに出てくるか!みたいな感動もないです。
話の内容は「勝手に神を名乗ってはならない」とか「盗みをはたらくな」とかいう、
それぞれ十戒に沿ったテーマで、確かに言われてみればその通りなストーリーなんだけど、
教訓にもなってないような・・・本当に微妙。


でもカワイイ
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「本当のお父さんはシュワルツェネッガーなのよ!」と母親に告白され、
(しかもそのシュワちゃんだと言って登場するのはオリヴァー・プラット!)
思い悩む黒人双子の話はまあ面白かったかな。
獄中で妻?の取り合いになる話もかなり微妙なんだけど個人的にはキライじゃない。
2軒並んだ家のそれぞれの父親(リーヴ・シュレイバーとジョー・ロー・トルグリオ)が、
CTスキャンを買い占める話も面白かったけどオチが?だし、
堅物図書館司書グレッチェン・モルがメキシコでセクシーなイエス・キリストと出会うのも、
グレッチェン・モルがカワイイ、ジャスティン・セロー、カッコイイ!というだけでやっぱり話は「?」
そして最後はなんだかわかりませんが、キャスト全員でライブ大会!
皆さんノリノリ?見ようによってはヤケって気がしないでもないですが。

というわけで、好きな俳優が出てるのを観るだけでいいやって人ぐらいしか、
これを観るメリットはないかも知れません。いや、観る人が観れば面白いのでしょうか?
でもこれが面白いという人とはちょっとお友だちになりたくないかもです。
でも、ジェシカ・アルバが「ポニー買ってぇ」と甘えるところは素直に可愛いなあと思うし、
ウィノナが腹話術の人形相手に乱れまくるところはちょっと見ものでもあります。
「オレのウィノナが・・・」って思っちゃう人も多いかも知れませんが、
彼女も再起を賭けて一生懸命頑張ってるんだろうなあと思えるし。
なんて、そんなこと思ったらいっそう悲しくなっちゃうかもですが。
私としてはジャスティン・セローの男前っぷりがちょっと面白かった。
あのエピソードだけならまた観てもいいかも知れない・・・。


The Ten(2007 アメリカ)
監督 デヴィッド・ウェイン
出演 ポール・ラッド アダム・ブロディ ウィノナ・ライダー ケン・マリーノ
   ファムケ・ヤンセン グレッチェン・モル A・D・マイルズ ジャスティン・セロー
   リーヴ・シュレイバー ジェシカ・アルバ オリヴァー・プラット
   ジョー・ロー・トルグリオ ロブ・コードリー ラシダ・ジョーンズ



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ストップ・ロス/戦火の逃亡者 [映画感想−さ]

タイトルの「ストップ・ロス(STOP-LOSS)」とは、
戦地での兵士不足を解消するため、兵士が兵役満了となっても除隊させず、
強制的に兵役期間を延長し戦地に派遣するアメリカ軍の制度のこと。
こんな言葉があることを、これまでまったく知りませんでした。


ブランドン(ライアン・フィリップ)はイラクでの過酷な任務を終え、
仲間らと共に故郷のテキサスへ休暇のため帰還します。
彼と親友のスティーヴ(チャニング・テイタム)は戦地での活躍を称えられ勲章を受けますが、
失った仲間や戦闘に巻き込んでしまったイラクの民間人たちのことなどが、
彼らの心に深く傷を残していました。
ブランドンとスティーブはこの休暇後そのまま除隊することを決めていましたが、
休暇が明けた彼らは上官に呼び出され「ストップ・ロス制度」による兵役延長を申し渡され、
再びイラクへの配属指示が出されてしまいます。
それに納得できないブランドンは、思わずそのまま脱走してしまいますが・・・。


戦友
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キンバリー・ピアースが『ボーイズ・ドント・クライ』以来、
およそ9年ぶりにメガホンを取った作品だというのに、日本では劇場未公開、
アメリカでも興行成績はふるわなかったのだそう。
それはこういった内容のためボイコット運動などがあったことが影響したようで、
アメリカ国内でさえ「ストップ・ロス」というシステムの実態はあまり把握されておらず、
この制度が発令され、実際に再び現地へ送り返された兵士の正確な数も明らかにされていないのだとか。
そしてもちろんブランドンのように軍に背く兵士も多数いて、
彼らを影で援助するシステムも出来上がっているのだそうです。

映画の冒頭ではイラクでの市街戦が生々しく描かれます。
突然敵からの銃撃を受ける、目の前で仲間を失う、無防備な老人や子どもを殺してしまう・・・。
そんな地獄からようやく帰り着くことが出来たのに、再びあの地獄へ戻らなければならない。
思わず逃げ出してしまうブランドンの気持ちは本当によくわかります。
一方スティーヴはその指令を受け入れ、すべてを置いて逃げ出したブランドンを許せません。
スティーヴも酔って不審な行動を取ったりと、相当心に傷を受けていることは間違いないのですが、
自分の居場所は、自分が"生きる"場所は戦地にしかないのだと思ってしまいます。
また、銃撃で手足や視力まで失ったロドリゲス(ヴィクター・ラサック)という兵士は、
ブランドンが戦地に戻ることに反対しますが、
「自分なら戻る。自分が死ねば家族がグリーンカードをもらえるから」と言いきります。
彼らいずれも間違っていないし、それぞれの判断を誰も否定出来ない。
どうしてこんなことになってしまったのでしょう?


ミシェルの思い
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彼らが志願兵となったのは、純粋に愛国心からの者もいれば、
家族のため、学費を稼ぐためなど理由は様々。
私なんかはどんな理由であれ自分から志願して戦争に行くなんてとつい思ってしまうですが、
それは平和な場所からボンヤリ対岸の様子を眺めている者の甘い考えなのでしょう。
しかし、あれほどベトナム戦争や湾岸戦争での兵士の後遺症が問題視されても、
戦地に向かう若者が何十万人もいるという現実。
ましてや、これほど意味のない戦争(戦争の意味の有無というのもおかしなことですが)なのに。
オバマ大統領がようやく2011年までのアメリカ軍全面撤退を表明しましたが、
つまりこれはまだ本当に現在進行形の話であるということに、
どうしようもない息苦しさを感じます。

脱走したブランドンの生きる道はただひとつ、
国を捨て、別人となり家族とも縁を切り生きていくこと。
彼の両親はそれでも息子が生きていてくれることを尊重し、彼の決断を支持します。
そしてブランドンが最後に取った行動は・・・。
この決断の厳しさに何ともやりきれないものを感じてしまいました。
しかしこれは彼が人として、正しく人として、そして今現在彼に出来る最善のことなのだと思いました。


トミーの決断
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ブランドンの逃亡を手助けするのはスティーヴの恋人ミシェル(アビー・コーニッシュ)。
二人が恋愛関係になるという安易な展開に行きそうなのに、そうならないのが好ましい。
カットされたシーンにはもう少し二人が心を通わせ合う描写もありましたが、
おそらく敢えてそういうものは排除したのだと思います。
そしてもう一人重要な登場人物が、ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じる兵士トミー。
戦地で目の前で親友を殺され、休暇中は酒に溺れ何度も問題を起こす。
彼のどこにも行き場のない悲しみにも胸が痛みます。
今作も彼目当てで観たのですが、マッチョな兵士たちの中で、
彼の線の細さがトミーというキャラクターを強く印象づけていました。
それでもブートキャンプに参加し5Kgも増量したんだそうで、
でも撮影中に肩を脱臼したりと、なかなか大変だったようです。

実際に戦地に赴く兵士たちはビデオカメラで戦場の様子を撮影するらしく、
その雰囲気をハンディカムの映像を多用することで出しています。
戦争に行って兵士がカメラを回す、そうかそういう時代なのだなと思いましたが、
しかし戦地を撮影する感覚というのはどういうものなのでしょう?
観光気分とか遊び気分と言ってはあんまりですが、
戦地から戻り、彼らはどんな思いでそのビデオを観るのか。
その行為を責めたりはしないけれど、やはり何かどこかおかしい気がする。
でもそれも現実。
良い作品です。機会があればぜひ。


Stop-Loss(2008 アメリカ)
監督 キンバリー・ピアース
出演 ライアン・フィリップ アビー・コーニッシュ チャニング・テイタム
   ジョセフ・ゴードン=レヴィット キアラン・ハインズ ティモシー・オリファント
   ヴィクター・ラサック ロブ・ブラウン ジョセフ・ソマー リンダ・エモンド



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親愛なるザカリーへ [映画感想−さ]

この作品は東京MXテレビの「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」にて鑑賞。
我が家では東京のローカル局であるMXテレビはノイズが入ってキチンと受信せず、
見れないものだとずっとあきらめていたんですが、最近になって、
偶然MXテレビにチャンネルを合わせてみたら、なぜかすごくキレイに映ってる!
電波が強くなったのか、理由はわからないのですが、
これだけキレイに映るんだったら、念願の「未公開映画〜」が観られる!
というわけで、昨年末と今年一回目の放送だったのが、この『親愛なるザカリーへ』でした。
大変素晴らしく、また意義深い作品でしたので、これを今年一本目の記事にします。


多くの人々に愛されていた医師のアンドリュー・バグビー。
しかし彼は何者かによって殺害されます。
幼い頃からの彼の親友であった映画監督のカート・クエンは、
膨大な数のアンドリューの映像、そして彼の友人たちの証言を集め、
一本のビデオレターを作ることにします。
それは、彼が遺した一人息子ザカリーに亡き父親の姿を知ってもらうためのものでした。
しかしそのビデオを製作中、事件は意外な方向に進み始めます。


誰からも愛されたアンドリュー
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町山智浩さんのブログなどを読んでいたので、これが単に、
亡くなった親友の息子に宛てたビデオレターというだけじゃない、
ということはわかっていました。
ドキュメンタリーなのでネタバレという言葉を使うのもヘンですが、
この作品がどう展開し、結末がどうなるのか、詳しいことは言えません。
観ている間に悲劇的な展開は薄々感じてしまうのですが、それでも見終わってみると、
こんなにも残酷で、そしてこんなにも愛を感じるドキュメンタリーというのは、
なかなかないんじゃないだろうかと思いました。

多くの友人、親戚、そして両親のインタビューから見えてくる生前のアンドリューの姿。
彼を知る人たちがまさに口を揃えてアンドリューのことを褒め称えますが、
それは彼が不幸な事件により亡くなったから、ということだけでないことは、
楽しかった思い出に笑い、涙する彼らの表情を見ていればよくわかります。
アンドリューの映像もたくさんあるので、その証言がどれもとてもリアルに伝わって来ます。
こんないい人であったアンドリューなぜ殺されてしまったのか。
しかしこの映画はその真実を追究する内容ではありません。


二人は親友
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大切な一人息子を失った両親は自殺を考えるほど嘆き悲しみます。
やがて息子を殺した犯人が、以前アンドリューが交際していた、
シャーリー・ターナーという女であることが判明します。
彼女は逮捕されますが、実はアンドリューの子どもを身ごもっており、やがて出産。
ザカリーと名付けられたその赤ん坊、愛する息子がこの世に残してくれた、
自分たちの孫となるザカリーを養子として引き取り、育てていくことが、
アンドリューの両親バグビー夫妻にとっては唯一の救いであったはず。
しかし、考えられない司法制度により、この老夫婦にさらなる試練を与えます。
こんなひどいことがあっていいのか・・・この両親の強さには本当に敬服します。

この作品の面白いところ、という言い方もちょっとヘンなのですが、
作っているうちに当初の目的からどんどん逸れていって、着地点が違ってしまうことです。
この映画がザカリーのためでもアンドリューのためでもなく、
まったく違う人たちのためのものになってしまう。
しかしそれは結果として正しい着地点であり、この作品が作られた意義が生まれたとも言える。
ここにドラマではないドキュメンタリーの面白さがあるし、柔軟さを感じられます。
この映画が作られなくても事件は明るみに出たかも知れないし、
起こるべき事は起こってしまったでしょう。
けれどもこの映画によってこの事件に関係した人たちの気持ちはひとつになり、
遺された人たちにたくさんの力を与えたと思います。


両親の悲しみは深い
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今現在、日本でこの作品を容易に観ることは出来ないのが非常に残念です。
これはぜひDVD化して、多くの人に観てもらいたいです。
この記事を書くことで、その役にちょっとでも立てるといいなという淡い希望を抱きつつ。


Dear Zachary: A Letter to a son about his father(2008 アメリカ)
監督 カート・クエン


※追記 この作品は2011年1月に『ザカリーに捧ぐ』というタイトルでDVD化されました。



ザカリーに捧ぐ : 松嶋×町山 未公開映画を観るTV [DVD]

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