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グラン・トリノ [映画感想−か]

『チェンジリング』の感動もまだ冷めないうちに、
クリント・イーストウッドの監督作がまた公開され、
また『ミリオンダラー・ベイビー』以来の俳優イーストウッドにも出会える幸せ。
数々の素晴らしいタイミングで生まれたこの作品を、
同時代に観られる幸運を今、噛みしめています。


妻を亡くし、1人隠居生活を送ることになったウォルト(クリント・イーストウッド)。
2人の息子やその家族とはうまくつきあえず、心を許すのは老犬デイジーのみ。
教会の神父(クリストファー・カーリー)はそんな彼の元を盛んに訪れ、
ウォルトの妻に頼まれたからと彼に懺悔を勧めますがウォルトは聞き入れません。
近頃は近隣にあらゆる国の移民住民が増え、そのことも彼を悩ませていました。
そんなウォルトの唯一の楽しみは、72年製フォード・グラン・トリノの手入れをすること。
しかしある日、隣家に住むラオスの少数民族モン族の少年タオ(ビー・ヴァン)が、
その愛車グラン・トリノを盗もうとウォルトの家に侵入します。
未遂に終わったその事件にはある事情があり、そのことをきっかけに、
ウォルトとタオ、タオの姉スー(アーニー・ハー)らとの新たな交流が始まります。


頑固オヤジ
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冒頭の妻の葬儀シーンから苦虫を何十匹も噛み潰したような顔をして、
子どもたち孫たち、神父らの言動1つ1つに低く唸り声をあげる、
頑固、偏狭を絵に描いたような老人ウォルト。
この映画がどんな方向へ向かうのかわからないでいる最初の時点では、
これがイーストウッド映画であるという意識も働くのかも知れませんが、
どちらかというと年齢層高めな客で埋め尽くされた劇場内は、
まだしんと静まりかえっていました。
ところが、無礼な身内や徐々に明らかになってくる彼の自宅周辺の状況、
それらすべてに対する彼のあからさまな悪態、罵倒、そして例の唸り声に、
次第に劇場内のあちこちから笑い声が上がり始めます。
アジア人ひとからげな言われ方はアジア人である身には気持ちよいものではありませんが、
無法者のギャングたちや不躾な孫たちの"近頃の若者と来たら・・・"な様子を見れば、
キッパリとした悪態の数々は次第に心地よくすら感じ始め、
「こんなジイサンどこにでもいるよなあ」と憎めない気持ちにもなってきます。
特にジョン・キャロル・リンチ演じるイタリア系床屋とのやり取りは本当にオカシイ。
タオを交えた3人のシーンはまるっきりコントのようだし、
こういう付き合い方が出来る人間関係の大切さをしっかり感じさせてくれます。


タオは生き方を教わる
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ウォルトがなぜここまで頑なであるのかは、単に彼が年寄りで、
また頑固な性格であるといった単純なことだけではなく、
長年心の奥底に秘めている思い・・・彼自身の朝鮮戦争での体験、
そのことに対する後悔、罪悪感から来るものであることが次第にわかってきます。
また息子たちとわかりあえないことの苦しみも十分に感じていて、
その上、彼の身体を病が冒し始めていることもわかってきます。
そんな彼の心に次第に入り込んで来る隣家の"異人種"たち。
同じアジア人である私が見ても十分に異文化なその暮らしぶりは、
ウォルトにはまったく理解できない世界だったでしょう。
しかし、そこには自分たちアメリカ人にも理解できる家族の在り方や、
男として、人としての生き方に共感する部分も多くあることを知り、
また逆に、そのまったくの異文化に対しても敬意を払うようになってきます。
妻を亡くし、閉ざした心のままで人生の終末を迎えようとしていた男が、
意外な隣人と心を通わせることになり、新たな人生を歩み始めるのです。

しかし、そんな新たに作られていく人間関係の一方で、
暗い影は彼らのすぐそばにあり、次第に大きくなっていきます。
最初はささいな小競り合い程度にしか見えなかった近隣のあらゆる人種間での抗争。
そして同郷同士でありながら理解し合えないタオと従兄弟たちとの関係。
彼らだけにとどまっている間は、関わり合いにならなければそれまでのことで、
何かあれば神父が言うように「警察を呼ぶ」ことである程度は回避されたようなこと。
ウォルトはそれでもその場に出くわしてしまうとライフルを掲げてしまい、
その鋭い眼光で睨みつければ、それだけでも最初のうちは十分効果はありました。
しかし、やがて大きな事件へと発展してしまった時、ウォルトは自分の進むべき道を確信します。
さて、ここでいつものイーストウッドのように、正義の名の下に鉄槌を下すのか?
そう、ウォルトは常にイーストウッドの過去のキャラクターらしさを感じさせていましたが、
最後には78歳という年相応で、かつ迷いも間違いもない方向へ踏み出すことを決め、
これ以外に考えられない決着の付け方を見せます。


スーはウォルトの心を溶かす
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人種問題、老人問題、親子の在り方、宗教観に人の生死という、
普遍的でもあるあらゆる問題を提示し、そこに昨今の自動車業界の不況や、
かつての輝きや人々の持っていた良心などを失ってしまったアメリカの現在をも映しだし、
それらをどれも漏らすことなく描き、笑いを起こすポイントも忘れていないという、
よくここまで盛りだくさんな内容をサラリと描き出せるなと、
改めてイーストウッドの監督としての素晴らしさを感じさせられました。
俳優の仕事には既に興味を失いかけていて、引退も匂わせていたイーストウッドが、
最初から彼をモデルにして書かれたかのようなこの脚本に出会い、
すぐに監督だけでなく、自らの出演も決めたそうで、
そんなあらゆるタイミングの良さも手伝いすべてが良い方向へ向かって、
当然のように素晴らしい作品に仕上がったのだと思います。
タイミング云々と言っても製作自体に一切妥協や手抜きは感じられません。
そのこだわりの最たるものとも言えるのは、モン族を演じる俳優を、
すべて本物の在米モン族の人たちの中から探し出し起用したという点。
普通ならハリウッドのアジア系俳優をかき集めて済ますところだと思うのですが、
主要キャストは当然だとしても、その他大勢である親戚や近隣の人まで徹底してキャスティングし、
作中でモン族についての説明もなされ、儀式や風習などもきちんと見せてくれます。

最後の出演作などと言わず、まだまだスクリーンに登場して欲しいですが、
ウォルトとイーストウッドはどうしても重なって見え、
この終わり方を見せられてしまうと、彼自身の俳優としての在り方にも、
キチンと決着を付けられたような気分になってしまいました。
ピカピカに磨き上げられたグラン・トリノが再び走り出す姿は、
過去に縛られていた老人が自ら付けた決着による心の解放と、
進むべき道を見つけられずにいた少年の明るい未来を乗せている・・・というような、
その素晴らしくわかりやすく明るいエンディングに、
(そして素晴らしく心に染みるジェイミー・カラムの歌声に!)
このクルマと、ウォルトとタオのここまでの道のりを思い、
ただただ胸が強く揺さぶられる思いでした。


Gran Torino(2008 アメリカ)
監督 クリント・イーストウッド
出演 クリント・イーストウッド クリストファー・カーリー ビー・ヴァン アーニー・ハー
   ブライアン・ヘイリー ジョン・キャロル・リンチ




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キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ! [映画感想−か]

アタマに"キルスティン・ダンストの〜"と付くことから想像されるとおり、
日本では劇場未公開だった作品。
こういう風にアタマに俳優名が付く作品は、
実際にはその俳優はホンのチョイ役だったり、なんてことも多いですが、
今作は彼女が主役であることは間違いないのですが、
もう1人の主役、ミシェル・ウィリアムズにも大注目です。


1972年のアメリカ、ワシントンDC。
ウォーターゲートビルに住む女子高生のアーリーン(ミシェル・ウィリアムズ)と、
親友のベッツィ(キルスティン・ダンスト)は、
ある夜、民主党事務所に忍び込んだ工作員とバッタリ遭遇してしまいます。
翌日、授業でホワイトハウスを訪れた2人はその工作員と再会。
事情を聞かされたニクソン大統領(ダン・ヘダヤ)は、2人に彼の飼い犬の散歩係を命じます。
嬉々として、手作りクッキー持参でホワイトハウスに出入りするようになる2人でしたが、
ある日、聞いてはいけない録音テープを聞いてしまい・・・?


ちょっぴりおバカな女子高生
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ウォーターゲート事件は2人の女子高生が鍵を握っていた!という衝撃のドラマ。
・・・というのはもちろんウソで、完全なるコメディ作品です。
ウォーターゲート事件と言えばアラン・J・パクラの『大統領の陰謀』ですが、
私が『大統領の陰謀』を観たのはだいぶ昔で、細部はほとんど忘れてしまっているし、
そもそもウォーターゲート事件に対する知識も乏しい。
ですが、そんな知識がなくても充分楽しめます。
もちろん、知識があったほうが数倍オカシイのだとは思いますが。

『大統領の陰謀』でダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードが演じた、
ワシントン・ポスト紙の記者2人も当然登場します。
ホフマン役をブルース・マックロック、
そしてレッドフォード役をウィル・フェレルが演じています。
(はい、この作品を観ようと思ったのは当然このウィル・フェレル目当てです。)
そう、あえて"役"と言いたいぐらい、まったくこの2人を真似てるとしか言えず、
またワシントン・ポスト内のシーンも、撮り方などすごく『大統領の陰謀』っぽい。
ウォーターゲート事件そのものだけでなく、さらに『大統領の陰謀』のパロディにもなっているのです。


"ディープ・スロート"と接触するウッドワード・・・
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ベッツィとアーリーンは、アイドルやファッションにキャーキャー言ってるだけの、
まったく普通の15歳の女の子・・・というより、かなりアタマが弱そうな女の子たちです。
そんななので、最初はホワイトハウス関係者にもいいように言いくるめられたりしますが、
あることがきっかけで、大統領に疑念を持ってしまいます。
だからといって、それを告発しようとかいうアタマは持ち合わせておらず、
ワシントン・ポストの記者と繋がるのも単なるイタズラが発端だったり。
そんなありえないデタラメが、ウォーターゲート事件の謎の部分に、
ピタリピタリとはまっていくのがオカシイです。

キルスティン・ダンスト演じるベッツィはまだカワイゲもあるのですが、
ミシェル・ウィリアムズ演じるアーリーンは、見た目完全にブスキャラで、
メガネで小太りでかなり鈍くさそう。
アイドルに夢中だったかと思うと今度はニクソンに恋してしまったり。
途中、メガネからコンタクトになるのですが、それでも垢抜けないのがスゴイ!
元々田舎くさい女の子というイメージの彼女ではありましたが、
ここまでスゴイとは思いませんでした。
でも、どちらかというとこの作品の主役はミシェル・ウィリアムズのほうだと思います。


ディックと呼んでくれ
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でも何がスゴイって、ニクソン大統領を演じるダン・ヘダヤです。
特殊メイクもなくダン・ヘダヤそのまんまなのですが、
だんだんニクソンにしか見えなくなってくるのです。
ほかにそっくりなキッシンジャーやブレジネフも登場。
ベッツィたちの作ったアヤシイ草入りクッキーを食べたおかげで核戦争が回避できたとか、
本当にクダラナイ。こういうクダラナサ、大好きです。

70年代のファッションや音楽も楽しく、
お気楽なベッツィとアーリーンのギャル加減もとてもカワイイ。
どう見ても15歳に見えない2人ですが・・・まあ、そこは大目に見ましょう。
ただの女子高生がいろんな勘違いで政治に介入し、その結果世の中を変えることになり、
最後は彼女たちも多少なりとも成長し、賢くなったように・・・は見えませんが、
こう言うと、爽やかな女子の成長物語のようにも聞こえますが、
まあそんなたいそうなものではありません。
改めて『大統領の陰謀』を観てみたくなりました。
きっと、両方の作品に新たな発見がたくさんありそうです。


Dick(1999 アメリカ)
監督 アンドリュー・フレミング
出演 キルスティン・ダンスト ミシェル・ウィリアムズ ダン・ヘダヤ デイヴ・フォーリー
   ウィル・フェレル ブルース・マックロック テリー・ガー



キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!

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大統領の陰謀

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キャンディ [映画感想−か]

ヒース・レジャーが『ブロークバック・マウンテン』や『カサノバ』のあとに、
故郷のオーストラリアに戻って出演した作品。
甘いタイトルとポスターから受ける印象とはまるで違う、
ドラッグに溺れ、浮かび上がることの出来ない恋人たちの物語です。


詩人志望のダン(ヒース・レジャー)と画家志望のキャンディ(アビー・コーニッシュ)。
2人は出会い、瞬く間に恋に落ちます。
ダンはヘロイン常用者で、キャンディもほどなく中毒となり、
2人はあらゆる手を使ってドラッグを手に入れるためのお金を作り始めます。


堕ちていく男、ダン
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「天国」「地上」「地獄」の3つのパートに分かれているのですが、
「これで天国なら地獄はどんな恐ろしいことに?」と思わずにいられない、
とにかくジャンキーな2人の生活ぶりです。
2人とも無職なので、お金がない。
キャンディの親に無心したり、盗品を売る、他人のクレジットカードを悪用する、
・・・などなど、まったくもって最低な生活ぶりです。
終いにはキャンディが身体を売るところまで堕ちてしまいます。
それもこれも、食べるためでも遊ぶためでもなく、ドラッグのため。

2人が互いに愛し合い、納得してやっていることなので、
まあ、勝手にやってちょうだい、としか言えないのですが、
不思議なことに、観ていてそれほどイヤな思いになりませんでした。
この手のドラッグがらみのダメカップル物語は昔からたくさんあるし、
(『トゥルーロマンス』とか『ある子供』とか)
映画としては面白くても、そんなヤツらに感情移入はできないし、
死のうが生きようが私には関係の無い話、と普通は思います。
今作の2人にもまったく感情移入などできないし、とても冷静に観ていたのですが、
かといって、醒めた、しらけた思いということではなく、
ものすごく不思議な感情を持って最後まで観ました。
納得はできないのに、すべてを受け入れてしまいそうというのか。
おそらく映画の作り自体が感情的にも感傷的にもならず、
2人をものすごく客観的に描いていて、
なぜ2人がこんな風になってしまうのかという分析や、責めることをせず、
ただ淡々と描いているせいかなと思いました。


堕ちていく女、キャンディ
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そして何より、この主人公2人の演技が素晴らしい。
ヒース・レジャーがジャンキー・・・というと、
今となってはいろんな思いが巡ってしまいますが、
とことん情けなくて無力で、そしてただただキャンディを愛する男を演じています。
どうすることもできない感情を、爆発させるのではなくむしろ無表情で表現する。
ヒース・レジャーの素晴らしさをまた改めて感じさせられました。
アビー・コーニッシュは逆に、喜怒哀楽を全身で表現します。
堰を切ったという言葉がまさにピッタリな泣きっぷりが何度か登場しますが、
本当に胸が痛くなります。
この女優さんは初めて観たのですが、実に素晴らしい!
まなざしと、その体当たりぶりが時折シャーリーズ・セロンを思い出させ、
角度によってはニコール・キッドマンにもよく似ています。
ライアン・フィリップとリース・ウィザースプーンの離婚原因になったヒトらしいですが、
う〜ん、ちょっと納得。

そしてもう1人、彼らの父親代わりのような存在として、
大学教授のキャスパーという男が登場します。
演じているのはジェフリー・ラッシュ。
ジャンキーでゲイ。何かと2人の力になりますが、
彼もドラッグの誘惑から逃れられない弱さを持っています。
ダンとキャスパーの関係は父と息子のようであり、
純粋な友情関係のようでもあり・・・。
常に2人の味方であるのだけれど、結局彼らを甘やかしているだけとも言え、
その存在はこの作品の中でとても大きな位置を占めています。


堕ちても生きている男、キャスパー
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結局ダンとキャンディには次第に溝ができ始め、
不幸な出来事もあって、キャンディは精神を病んでしまう。
それでもキャンディを愛し続けるダン。
彼女のしたいようにさせ、彼女のすることに何も言わず、
それでもキャンディを壊してしまう悲しさ、その愚かさ。
それだけに、ラストのダンのとった行動はものすごく胸を締め付けました。

どうしてこんなにダメな男を愛してしまうのか。
どうして自分も相手に合わせて堕落していってしまうのか。
例え相手が無職のジャンキーとまでは行かなくとも、
他人から見れば「あんなののどこがいいの?」と言われそうなヤツを、
愛してしまう女は大勢います。
どうしようもない男女のどうしようもない愛の話。
そこにほとんど教訓も、得るものもないのだけれど、
こんなに心を揺らすのはなぜだろう?
こういうの、ダメな人は絶対ダメだと思うので強くお薦めもできませんが、
私はこの作品に出会えて本当に良かったと思いました。


Candy(2006 オーストラリア)
監督 ニール・アームフィールド
出演 ヒース・レジャー アビー・コーニッシュ ジェフリー・ラッシュ



キャンディ

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ゲット スマート [映画感想−か]

1960年代に人気のあったTVシリーズ『それ行けスマート』のリメイク。
と言っても、このオリジナルはまったく観たことがありません。
元ネタ知らなくて楽しめるのかな?とちょっと心配しましたが。


アメリカの極秘諜報機関"コントロール"に所属する、
敏腕分析官マックスウェル・スマート(スティーヴ・カレル)。
その驚異の分析能力のため、憧れのエージェントへの昇格が見送られていました。
しかしある日、コントロールの本部が国際犯罪組織"カオス"の襲撃を受け、
エージェント全員の顔が知られてしまいます。
そこで急遽、敵に顔が知られていないスマートがエージェント86に昇格。
最近整形手術したばかりのエージェント99(アン・ハサウェイ)とコンビを組み、
極秘任務に就くことになりますが・・・。


エージェント86&99
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実はあまり期待していなかった・・・というのも、
元のTV版の知識がないし、そういう元ネタのあるものにありがちのお約束とか、
あるある、あったあったネタのようなものばっかりだと、
ちょっと楽しめないかなと思っていました。
ところが、なんというかまさに"スマート"。
お腹抱えて大爆笑、ということはないのですが、
繰り出される小ネタにニヤリとさせられることの連続でした。

それもこれもスティーヴ・カレルのキャラクターによるところが大きいと思います。
スマートのキャラクターをいわゆる"おバカ"にしていないのがいい。
バスター・キートン系統と言われる彼得意の"無表情"から繰り出されるギャグ!
どれもこれも痛い!
そもそもスティーヴ・カレルが演じるキャラクターは、
基本的に賢いとか真面目とかいう役が多いのですが、
『俺たちニュースキャスター』のお天気お兄さんを除く)
今回のスマートも優秀な分析官で、
そんな優秀な彼がバカなことを言ったりやったりするところが笑いのポイント。
その辺がこの作品を『オースティンパワーズ』なんかと決定的に違えているところだと思います。
(『オースティンパワーズ』ももちろん好きですが。)


チーフ&エージェント23
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YouTubeでオリジナルのオープニングシーンを観ましたが、
忠実に再現していることがわかりました。
こういうのは元を知ってると楽しめるポイントですね。
予想通り、随所に007などのスパイ映画パロディが登場します。
どうしたって"ジョーズ"を思い出させる大男のボディーガードとか、
その彼との飛行機からのダイブという、モロ『ムーンレイカー』なシーンは、
映像も大迫力だし、オチも効いてるし、ものすごく良く出来ています。
カーチェイスシーンも迫力満点。その辺にまったく手抜きがないのが素晴らしい。
いろんなところに貼られた伏線を漏らさず回収していくのもエライし、
ギャグとアクションのバランスがとてもよく取れていたと思います。
ただ、意図的になのか、007ではお約束のセクシャルなシーンはまるでナシ。
唯一、アン・ハサウェイの『エントラップ』シーンぐらいでしょうか。
"キスシーン"は何度も登場するのですが。

アン・ハサウェイはあのお姫様ルックスでアイドル的イメージだったのですが、
一方で『ブロークバック・マウンテン』みたいな仕事もするし、
今回もなかなか頑張っていて、骨のあるところを見せています。
この人、これからどんどんイイ女優さんになりそう。
頑張ってるといえばチーフ役のアラン・アーキン!
普通こういったエライ上司はデスクで指示出すだけだったりですが、
彼はバリバリ現場に出て大活躍します。
ロック様改めドゥエイン・ジョンソンのエージェント23。
スーツ姿がこんなにカッコイイなんて!
個人的にもうちょっと活躍して欲しかったデヴィッド・ケックナー、
日本人としては一番の注目点なのかな?の研究員ブルース役のマシ・オカも、
出番は思ったより少なめ。でも、なかなか頑張っていました。
ほとんどヒロ・ナカムラのキャラでしたが。


オタク研究員ブルース&ロイド
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敵側のボス、シーグフリードがテレンス・スタンプ。
最近『ウォンテッド』で観たばかりだったので「おお、また出た〜!」と思ってしまいました。
敵キャラの凄味はありましたが、もうちょっとワルでも良かったかな。
核爆発計画の”ショボさ”は、逆にギャグになっていたかも知れませんが。
そのシーグフリードの相方が『ボラット』のプロデューサーだったケン・ダヴィティアン。
相変わらず太い!スマートとの絡みは笑わせてくれます。
ジェームズ・カーンの、まんま現アメリカ大統領なところもオカシイ。
あ、忘れてた!エージェント13のビル・マーレイ!
まったくこの人は・・・大好き!

続編が当然作られるようで楽しみです。
が、その前に!オタク研究員ブルースとロイドのスピンオフ作品が既に作られていて、
なんともうDVDが発売されます!
さすがマシ・オカ人気?『ヒーローズ』ファンはマストバイ!・・・なのかな?
エージェント99も"ハイミー"も登場するようです。


Get Smart(2008 アメリカ)
監督 ピーター・シーガル
出演 スティーヴ・カレル アン・ハサウェイ ドゥエイン・ジョンソン アラン・アーキン
   テレンス・スタンプ デヴィッド・ケックナー ジェームズ・カーン ビル・マーレイ
   マシ・オカ ネイト・トレンス ケン・ダヴィティアン 



ゲット スマート 特別版(2枚組) [DVD]

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ゲット スマート [Blu-ray]

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ブルース&ロイドの ボクらもゲットスマート [DVD]

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殺したいほどアイ・ラブ・ユー [映画感想−か]

昔の映画を観る楽しみに、もう今となっては実現できない競演や、
二度とこんな役はやらないだろうな、という役柄を見られるということがあります。
1990年のこの作品には、そんな驚きがいっぱい詰まっています。


ピザ屋を営むジョーイ(ケヴィン・クライン)は働き者ですが、大変な浮気性。
妻のロザリー(トレイシー・ウルマン)を愛してはいますが、
何人も愛人を作り、かつナンパを繰り返す日々です。
密かにロザリーに想いを寄せている店員のディーボ(リヴァー・フェニックス)は、
彼女にさりげなくジョーイの浮気を知らせますが、ロザリーは信じません。
しかしある日、彼女は自分の目で夫の浮気現場を目撃してしまいます。
悲しみに暮れるロザリーは、母親のナージャ(ジョーン・プローライト)に相談。
そして、ジョーイの殺害を決意するのですが・・・。


愛すべき浮気男、ジョーイ
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大好きな大好きなケヴィン・クライン。
イタリア人で敬虔なクリスチャンで”ホルモンが有り余っている”浮気男という、
実に胡散臭く、彼得意のキャラクターとも言えます。
冒頭、告解室で神父に何人と浮気したかを告白するシーンからおかしい。
仕事も浮気もエネルギッシュ。子どもたちには愛情いっぱい。
妻ロザリーに対してはかなりの亭主関白ぶり。
イタリア人男性ってこんなイメージなんでしょうか?

そんな彼を一途に信じ続ける妻ロザリー。
これを見た目イマイチなトレイシー・ウルマンが演じているところが絶妙です。
ユーゴスラビア人という設定で、母親とは時々自国語(正しいのかどうかは謎ですが)で話したりします。
この母親役のジョーン・プローライトがまた怪演。
なまりのある英語で、いつも怪しいタブロイド記事のスクラップをしていて、
ハンダ持って何か作ったり、自動車に細工したりといった不思議な才能を持っています。
娘婿とは気が合わなくて、誰よりもジョーイを殺す気まんまんです。


浮気はするけど愛してる
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店員ディーボを演じるリヴァー・フェニックス。
ロザリーのことが好きなので、夫殺しをあっさり引き受けてしまったりします。
でももちろんうまくいきません。
『インディ・ジョーンズ』と『マイ・プライベート・アイダホ』の間に位置する出演作なのですが、
彼がこのようなコメディ作品に出演していたというのは貴重に思えます。
コメディセンスがあるかどうかと言われると「?」ですが。
私はあまり彼に対して深い思い入れはなかったんですが、
こういうのを観ると、やはり貴重な役者を失ってしまったんだなあとしみじみ思います。
この時20歳ぐらいである彼は、長髪でヒッピー風ないでたちでとにかくキュート。
何かの拍子でロザリーの胸に顔を埋めてしまうシーンがあるのですが、
もう一度、今度は故意にムギュッとしちゃうところがすごくカワイイ。

そして、ディーボが連れてくるのが、
ジャンキーのハーラン(ウィリアム・ハート)とマーロン(キアヌ・リーヴス)。
2人は従兄弟同士なんですが、とにかくずっとラリッていて挙動不審。
長髪のウィリアム・ハートはまだ多少しっかりしているのですが、
わけのわからないヘアスタイルのキアヌはかなりアブナイ。
でも、このキアヌ君もすごく可愛い!
彼はこういう役が意外に合ってると思うのですが、もうやってはくれないのでしょうか。
この作品での競演が縁でキアヌとリヴァーは仲良くなり、
このあと『マイ・プライベート・アイダホ』が待っているわけですが、
あの作品の前にコレというのはなかなか興味深いものがあります。


ジョーイを殺したい人たち
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続々登場するジョーイの浮気相手も見応えポイント。
ビックリするぐらい可愛いヘザー・グレアムに、
ほとんど顔は映らない上にノンクレジットなのが、
ローラ・パーマーことシェリル・リー。(おお、ツインピークス繋がり?)
そして当時、ケヴィン・クラインと結婚したばかりのフィービー・ケイツ。
この夫婦競演シーンだけ意味もなく長い気がするのですが・・・。
この後、『イカとクジラ』のオーウェン・クライン君が誕生するのかと思うと、
感慨深いものがあります。

殺されても殺されてもなかなか死なないジョーイ。
血やスパゲティにまみれながらフラフラ生きている彼の姿はまるでホラー映画。
これなんと、実話だって言うんですね。
ママ・ナージャがスクラップするタブロイド紙レベルの話のような気もしますが。
公開当時、評価も興行成績もあまり良くなかったらしく、
十数年ぶりに観ましたが、もうちょっと面白かったような記憶があったのですが、
確かに作品としてはもうひとつ物足りなさを感じます。
出演者たちが全員好演しているのでちょっと残念ですが、
この豪華な競演を楽しむ作品として記憶に留めておきたい作品。
キアヌ・リーヴスのファンは絶対に必見だし。
また何年かして観たら、新たな発見があるかも・・・ないかな?


I Love You to Death(1990 アメリカ)
監督 ローレンス・カスダン
出演 ケヴィン・クライン トレイシー・ウルマン ジョーン・プローライト リヴァー・フェニックス
   ウィリアム・ハート キアヌ・リーヴス ヘザー・グレアム フィービー・ケイツ



殺したいほどアイ・ラブ・ユー

殺したいほどアイ・ラブ・ユー

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