キャンディ [映画感想−か]
ヒース・レジャーが『ブロークバック・マウンテン』や『カサノバ』のあとに、
故郷のオーストラリアに戻って出演した作品。
甘いタイトルとポスターから受ける印象とはまるで違う、
ドラッグに溺れ、浮かび上がることの出来ない恋人たちの物語です。
詩人志望のダン(ヒース・レジャー)と画家志望のキャンディ(アビー・コーニッシュ)。
2人は出会い、瞬く間に恋に落ちます。
ダンはヘロイン常用者で、キャンディもほどなく中毒となり、
2人はあらゆる手を使ってドラッグを手に入れるためのお金を作り始めます。
堕ちていく男、ダン
「天国」「地上」「地獄」の3つのパートに分かれているのですが、
「これで天国なら地獄はどんな恐ろしいことに?」と思わずにいられない、
とにかくジャンキーな2人の生活ぶりです。
2人とも無職なので、お金がない。
キャンディの親に無心したり、盗品を売る、他人のクレジットカードを悪用する、
・・・などなど、まったくもって最低な生活ぶりです。
終いにはキャンディが身体を売るところまで堕ちてしまいます。
それもこれも、食べるためでも遊ぶためでもなく、ドラッグのため。
2人が互いに愛し合い、納得してやっていることなので、
まあ、勝手にやってちょうだい、としか言えないのですが、
不思議なことに、観ていてそれほどイヤな思いになりませんでした。
この手のドラッグがらみのダメカップル物語は昔からたくさんあるし、
(『トゥルーロマンス』とか『ある子供』とか)
映画としては面白くても、そんなヤツらに感情移入はできないし、
死のうが生きようが私には関係の無い話、と普通は思います。
今作の2人にもまったく感情移入などできないし、とても冷静に観ていたのですが、
かといって、醒めた、しらけた思いということではなく、
ものすごく不思議な感情を持って最後まで観ました。
納得はできないのに、すべてを受け入れてしまいそうというのか。
おそらく映画の作り自体が感情的にも感傷的にもならず、
2人をものすごく客観的に描いていて、
なぜ2人がこんな風になってしまうのかという分析や、責めることをせず、
ただ淡々と描いているせいかなと思いました。
堕ちていく女、キャンディ
そして何より、この主人公2人の演技が素晴らしい。
ヒース・レジャーがジャンキー・・・というと、
今となってはいろんな思いが巡ってしまいますが、
とことん情けなくて無力で、そしてただただキャンディを愛する男を演じています。
どうすることもできない感情を、爆発させるのではなくむしろ無表情で表現する。
ヒース・レジャーの素晴らしさをまた改めて感じさせられました。
アビー・コーニッシュは逆に、喜怒哀楽を全身で表現します。
堰を切ったという言葉がまさにピッタリな泣きっぷりが何度か登場しますが、
本当に胸が痛くなります。
この女優さんは初めて観たのですが、実に素晴らしい!
まなざしと、その体当たりぶりが時折シャーリーズ・セロンを思い出させ、
角度によってはニコール・キッドマンにもよく似ています。
ライアン・フィリップとリース・ウィザースプーンの離婚原因になったヒトらしいですが、
う〜ん、ちょっと納得。
そしてもう1人、彼らの父親代わりのような存在として、
大学教授のキャスパーという男が登場します。
演じているのはジェフリー・ラッシュ。
ジャンキーでゲイ。何かと2人の力になりますが、
彼もドラッグの誘惑から逃れられない弱さを持っています。
ダンとキャスパーの関係は父と息子のようであり、
純粋な友情関係のようでもあり・・・。
常に2人の味方であるのだけれど、結局彼らを甘やかしているだけとも言え、
その存在はこの作品の中でとても大きな位置を占めています。
堕ちても生きている男、キャスパー
結局ダンとキャンディには次第に溝ができ始め、
不幸な出来事もあって、キャンディは精神を病んでしまう。
それでもキャンディを愛し続けるダン。
彼女のしたいようにさせ、彼女のすることに何も言わず、
それでもキャンディを壊してしまう悲しさ、その愚かさ。
それだけに、ラストのダンのとった行動はものすごく胸を締め付けました。
どうしてこんなにダメな男を愛してしまうのか。
どうして自分も相手に合わせて堕落していってしまうのか。
例え相手が無職のジャンキーとまでは行かなくとも、
他人から見れば「あんなののどこがいいの?」と言われそうなヤツを、
愛してしまう女は大勢います。
どうしようもない男女のどうしようもない愛の話。
そこにほとんど教訓も、得るものもないのだけれど、
こんなに心を揺らすのはなぜだろう?
こういうの、ダメな人は絶対ダメだと思うので強くお薦めもできませんが、
私はこの作品に出会えて本当に良かったと思いました。
Candy(2006 オーストラリア)
監督 ニール・アームフィールド
出演 ヒース・レジャー アビー・コーニッシュ ジェフリー・ラッシュ
故郷のオーストラリアに戻って出演した作品。
甘いタイトルとポスターから受ける印象とはまるで違う、
ドラッグに溺れ、浮かび上がることの出来ない恋人たちの物語です。
詩人志望のダン(ヒース・レジャー)と画家志望のキャンディ(アビー・コーニッシュ)。
2人は出会い、瞬く間に恋に落ちます。
ダンはヘロイン常用者で、キャンディもほどなく中毒となり、
2人はあらゆる手を使ってドラッグを手に入れるためのお金を作り始めます。
堕ちていく男、ダン
「天国」「地上」「地獄」の3つのパートに分かれているのですが、
「これで天国なら地獄はどんな恐ろしいことに?」と思わずにいられない、
とにかくジャンキーな2人の生活ぶりです。
2人とも無職なので、お金がない。
キャンディの親に無心したり、盗品を売る、他人のクレジットカードを悪用する、
・・・などなど、まったくもって最低な生活ぶりです。
終いにはキャンディが身体を売るところまで堕ちてしまいます。
それもこれも、食べるためでも遊ぶためでもなく、ドラッグのため。
2人が互いに愛し合い、納得してやっていることなので、
まあ、勝手にやってちょうだい、としか言えないのですが、
不思議なことに、観ていてそれほどイヤな思いになりませんでした。
この手のドラッグがらみのダメカップル物語は昔からたくさんあるし、
(『トゥルーロマンス』とか『ある子供』とか)
映画としては面白くても、そんなヤツらに感情移入はできないし、
死のうが生きようが私には関係の無い話、と普通は思います。
今作の2人にもまったく感情移入などできないし、とても冷静に観ていたのですが、
かといって、醒めた、しらけた思いということではなく、
ものすごく不思議な感情を持って最後まで観ました。
納得はできないのに、すべてを受け入れてしまいそうというのか。
おそらく映画の作り自体が感情的にも感傷的にもならず、
2人をものすごく客観的に描いていて、
なぜ2人がこんな風になってしまうのかという分析や、責めることをせず、
ただ淡々と描いているせいかなと思いました。
堕ちていく女、キャンディ
そして何より、この主人公2人の演技が素晴らしい。
ヒース・レジャーがジャンキー・・・というと、
今となってはいろんな思いが巡ってしまいますが、
とことん情けなくて無力で、そしてただただキャンディを愛する男を演じています。
どうすることもできない感情を、爆発させるのではなくむしろ無表情で表現する。
ヒース・レジャーの素晴らしさをまた改めて感じさせられました。
アビー・コーニッシュは逆に、喜怒哀楽を全身で表現します。
堰を切ったという言葉がまさにピッタリな泣きっぷりが何度か登場しますが、
本当に胸が痛くなります。
この女優さんは初めて観たのですが、実に素晴らしい!
まなざしと、その体当たりぶりが時折シャーリーズ・セロンを思い出させ、
角度によってはニコール・キッドマンにもよく似ています。
ライアン・フィリップとリース・ウィザースプーンの離婚原因になったヒトらしいですが、
う〜ん、ちょっと納得。
そしてもう1人、彼らの父親代わりのような存在として、
大学教授のキャスパーという男が登場します。
演じているのはジェフリー・ラッシュ。
ジャンキーでゲイ。何かと2人の力になりますが、
彼もドラッグの誘惑から逃れられない弱さを持っています。
ダンとキャスパーの関係は父と息子のようであり、
純粋な友情関係のようでもあり・・・。
常に2人の味方であるのだけれど、結局彼らを甘やかしているだけとも言え、
その存在はこの作品の中でとても大きな位置を占めています。
堕ちても生きている男、キャスパー
結局ダンとキャンディには次第に溝ができ始め、
不幸な出来事もあって、キャンディは精神を病んでしまう。
それでもキャンディを愛し続けるダン。
彼女のしたいようにさせ、彼女のすることに何も言わず、
それでもキャンディを壊してしまう悲しさ、その愚かさ。
それだけに、ラストのダンのとった行動はものすごく胸を締め付けました。
どうしてこんなにダメな男を愛してしまうのか。
どうして自分も相手に合わせて堕落していってしまうのか。
例え相手が無職のジャンキーとまでは行かなくとも、
他人から見れば「あんなののどこがいいの?」と言われそうなヤツを、
愛してしまう女は大勢います。
どうしようもない男女のどうしようもない愛の話。
そこにほとんど教訓も、得るものもないのだけれど、
こんなに心を揺らすのはなぜだろう?
こういうの、ダメな人は絶対ダメだと思うので強くお薦めもできませんが、
私はこの作品に出会えて本当に良かったと思いました。
Candy(2006 オーストラリア)
監督 ニール・アームフィールド
出演 ヒース・レジャー アビー・コーニッシュ ジェフリー・ラッシュ
タグ:映画
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