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デビル [映画感想−た]

『レディ・イン・ザ・ウォーター』『ハプニング』で落胆してしまい、
『エアベンダー』はなんか違うかも・・・とスルーしてしまったけど、
やはりM・ナイト・シャマランと聞くと「ん!?」と反応してしまうわけです。
シャマラン原案の今作、ほとんどそれぐらいしか予備知識ナシで観てしまいましたがこれはっ!


ロザリオを握りしめた男が高層ビルから墜落死する事件が発生し、
フィラデルフィア市警殺人課のボーデン(クリス・メッシーナ)は、
現場の状況に不審なものを感じながらもそれを自殺と判断します。
ちょうどその頃、その同じビルのエレベーターの一基が突然停止し、
5人の男女が中に閉じ込められてしまいます。
警備員のラスティグ(マット・クレイヴン)とラミレス(ジェイコブ・バルガス)は、
モニター越しに中の様子を見守り救出の手だてを考えますが、
そんな彼らの見ている前で、突然エレベーター内の照明が消え、
復旧してみると、中の女性の背中が切り裂かれ血を流していました。
誰に襲われたのか、5人は疑いの目を互いに向け合い始めますが、
再び照明が消えると、今度は一人の男が無残な死を遂げ・・・。


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今作はM・ナイト・シャマランの原案を若手の映画作家が映画化していくプロジェクト、
「ザ・ナイト・クロニクルズ」の第一弾ということで、
(なんでもシャマランはもう監督業より製作にまわりたいとか言ってるらしい)
あくまでも今回は"原案"のみで脚本も書いていないと知り、実は驚いてしまいました。
というのも、これは紛れもなくシャマラン作品そのものと言っていいものになっていたからです。
エレベーターに閉じ込められた見ず知らずの男女5人・・・と聞くと、
最初はいわゆる密室劇のようなものを想像したのですが、
やがて、とてもそんな密室の中で起こりえないようなことが次々起こり、
この作品が普通のミステリーやサスペンスなんかではなくて、
ホラー、というかオカルトものだということがすぐにわかってきて、
この独特なニオイがなんともシャマランシャマランしているのです。

エレベーターの中をセキュリティカメラのモニター越しに見つめる警備員の一人、
中南米系で敬虔なクリスチャンのラミレスがあっさりと、
これが単なるエレベーター故障などではなく"悪魔"の仕業だと騒ぎ出します。
もちろんそんな彼の言葉に誰も取り合わず、それでも異常事態は次々と続き、
閉じ込められた5人だけじゃなく彼らを助けようと試みる人びとにまで危害が及びます。
なぜそんなことが?と最後まで理由は謎のまま話は進む・・・のですが、
このラミレスが最初から悪魔のせいだと言って、なぜこんなことになったのかを、
劇中でも、またナレーションでもいろいろと説明してくれます。
観ているこちらはそうなのか、いや、そんなこと言って実は何かしら論理的な答えがあるのでは?
などと頭の中を「?」マークでいっぱいにしながら見続けることになります。


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次第に5人にはそれぞれアヤシイ過去や後ろめたい事情があることがわかってきて、
だからこんなことになったのか、彼らはここに偶然か必然かで集められたのか、
でもだったらどうして?どうやって?と、謎は最後まで簡単に解き明かされず話は進みます。
そこに、最初の墜落死の件でやって来た刑事も加わり、そしてこの刑事にも暗い過去があり、
そんなあれもこれもが絡み合って最後にえええ!?という結論に達するわけですが、
そんな「えええ!?」という終わり方でありながら、
その時点では「なるほど〜」と、ちゃんと納得してしまうのです。
なぜかというと要所要所にラミレスのナレーションによる説明が差し込まれるので、
私のように頭の回転が鈍かったり神だ悪魔だなんてことに疎い人にも、
よくわかるようになっているのです!
おかげですべてが終わった瞬間は一応納得して劇場を後に出来るのですが、
さて、では家に帰ってからこのストーリーについて説明してみろと言われると、
「ええっと?」と、どうにもうまく説明出来ないのです。
そう、このうまく説明出来ない感じこそ、まさにシャマラン!
こういったまるっきりキツネにつままれたような感覚が、
『アンブレイカブル』や『サイン』を思い出させてくれて、
あーこの感じ、自分はこれがスキなんだなーとしみじみ思ったのでした。

今回、ストーリーや構成が実にシャマラン的でありながらうまくまとまっていたのは、
もしかしたらシャマラン自身が監督しなかったからなのでしょうか。
うまい具合に彼の世界観を他者が脚色、演出することで別の作用が働くのかも知れないな、
なんてことをぼんやり考えてしまいました。
こんな強引な話の見せ方や持って行き方が過剰だったり、逆にあっさりと"謎解き"されたりすると、
あの『レディ・イン・ザ・ウォーター』のガッカリになってしまうのかなと。
シャマランらしさというのは意外と微妙なバランスの上に成り立っているのかなと思いました。


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それと、今作ではあまり有名なスター俳優を使っていないのも良かったと思います。
エレベーターの中にサミュエル・L・ジャクソンがいたり刑事がブルース・ウィリスだったりしたら、
もうそれだけで話が読めてしまいそうだし、最後まで"犯人は誰?"と思わせるには、
これぐらい等しくよくわからない人たちだけなのが正解だと思いました。
一番怪しそうな人がそのまま怪しいのか、最後まで生き残る人が当然一番怪しい人なのか、
それが最後まで本当に読めなくて、そして事件は最後に意外な方向に進み、
さて、この終わり方でいいのか、ここまでを踏まえてこの結論でいいものかどうかと、
時間が経ってみるとあれこれ考えてしまうのですが、
見終わった瞬間はそりゃあこれは悪魔の仕業なのだし・・・と思ったり。

さらに、一番やりそうだったけどやらなくて良かったなあと思ったのは、
ラミレスの役をシャマラン本人が演じるという『レディ・イン・ザ・ウォーター』的展開。
これまで彼は必ず自分の作品のどこかしらに登場するというヒッチコックみたいな人でしたが、
今回は監督作じゃないからなのか登場はナシ。
でも、このラミレスというキャラクターはどうみてもシャマランだよなあと思いました。
そういったスター俳優の不在と80分というランタイムが、劇場用作品というより、
ちょっとした小品・・・そう、これって『トワイライトゾーン』の一編みたいな感じで、
オープニングとエンディングにシャマランが出てきて解説しても良かったかも!?(いやいやいや)
まあ、だからどうした?という話と言ってもいいし、
神だ悪魔だみたいな話が気にくわない人も多いかも知れない。
とっくにシャマランに嫌気が差している人にもつらいかも知れません。
でも私は断然支持!このシャマランプロジェクト、ちょっと次が楽しみになってしまいました!



Devil(2010 アメリカ)
監督 ジョン・エリック・ドゥードル
出演 クリス・メッシーナ ローガン・マーシャル=グリーン ジェニー・オハラ
   ボヤナ・ノヴァコヴィッチ ボキーム・ウッドバイン ジェフリー・エアンド
   ジェイコブ・バルガス マット・クレイヴン



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SUPER8/スーパーエイト [映画感想−さ]

見事なまでのスピルバーグオマージュぶりで、誰がどう見てもそのルック、
一般市民が地球外生物と思われるものと遭遇するというストーリー、
舞台となるのが70年代末のアメリカ郊外であることなど、
どうしたって『未知との遭遇』や『E.T.』を思わせるし、
スピルバーグがプロデューサーだからといってここまであからさまってどうなの?
と思う向きもかなりあるみたいで、そこを素直に受け入れ楽しめるか、
鼻についてどうにも乗り切らないでしまうかで相当評価は分かれているようです。
私はあまり小難しいことは考えず意識もせず、素直に楽しめました。


1979年アメリカ。
オハイオ州にあるリリアンという小さい街に住む14歳のジョー(ジョエル・コートニー)は、
工場での不幸な事故で母親を亡くし、父親(カイル・チャンドラー)と二人遺されてしまいます。
その事故から4ヶ月経った夏休み。ジョーは親友のチャールズ(ライリー・グリフィス)らと、
8ミリカメラでゾンビ映画の撮影を行っていました。
いつもの仲間5人での自主映画製作でしたが、脚本の手直しをしていた"監督"のチャールズは、
突然、同級生のアリス(エル・ファニング)を出演者として誘ったことを告げ、ジョーは動揺します。
撮影の日。真夜中の駅に集まったジョーら5人とアリスは順調に撮影を進めていましたが、
突然、彼らの目の前で貨物列車と1台のトラックが衝突。大惨事となります。
そこで彼らはあることを目撃し・・・。


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10年ほど前に『エデンより彼方に』という作品がありました。
これはダグラス・サークの『天はすべて許し給う』を元に作られたもので、
監督のトッド・ヘインズはストーリーだけでなく、意図して構図や色調、
音楽の使い方からタイトル文字に至るまで完全にサークの世界を再現して製作したものでした。
私はこの作品を観た時、なぜこんなものを作ったのだろう?と、
ちょっと否定的な感想を持ってしまったのですが、それはサークの世界を完璧に再現することによって、
なんとなくヘンなパロディ作品のようにも思えてしまい、役者たちが熱演すればするほど、
美しい風景が描かれれば描かれるほど、かえってなんとなく趣味が悪いような、
どうにも居心地の悪い感じを受けてしまったのでした。
しかしこれはオスカー候補になったりと評価も高く、絶賛している人もたくさんいて、
こういうのは自分の理解できないところなのか、私ももちろんこれが駄作だとは思いませんでしたが、
好きか嫌いかで言えばどうしても好きになれなかったのでした。

『スーパーエイト』を観たあと、いろんな人の意見を読んでその意見の分かれかたに、
ふとこの『エデンより彼方に』のことを思い出したのでした。
今作も、作られた意味や実際に出来上がったもののクオリティを考えると、
それだけで大歓迎し感動し感謝すらしてしまう人もいれば、逆に最後まで、
上っ面だけ似せた中身のないものと思い、醒めた目で観てしまった人も多かったようで、
そんな風に意見が分かれてしまうのはとてもよくわかる気がするのです。
作品の出来としてどうこうより、こういうのは結局好きか嫌いかでしかないのかも知れないし、
その意味で言えば私は今回、この作品は"大好き"でした。


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"Super 8"とはコダックが製造販売していた8ミリフィルムのこと。
ジョーたちが映画製作に用いるこのフィルムの名前がタイトルとなっていることから、
今作で監督が描きたかったのは、ジョーたちの周りで起こる奇怪な事件の顛末ではなく、
少年たちが映画製作を進めて行く中で育んでいく恋や友情、
家族の意味や在り方といったことだったのではないかと思いました。
謎の生物の正体が何であるかとか、地球人対宇宙人の戦いとかいったものではなく、
その謎の生物とそれをめぐるアメリカ軍の軍事機密がどうこういうようなことも、
実際二の次、ワキの話であって、メインテーマは少年たちの友情、初恋、複雑な家庭環境、
親や周囲の大人たちとの関わり、そして何より映画作りといった、
おそらくJ・J・エイブラムスはじめ今作の製作に関わった人々に共通する、
自分たちの少年時代の思い出や思いをこそ描きたかったんではないかと思います。

ジョーたちが目撃するものは殺人事件や死体、謎の財宝でも奥深い洞窟でもなんでもよくて、
けれどもJJとしてはスピルバーグオマージュとしてやはりE.T.を登場させたかったのかもだし、
ジョーズやジュラシック・パークのように無抵抗な人々が襲われる様子も描きたかったのかも知れません。
"それ"は凶暴で、しかし人間と心を通わせることも出来る存在であって欲しかったんだと思います。
その結果、どれもこれもがいつかどこかで観たようなものになってしまい、
うわべだけスピルバーグ風にしてしまったような印象を与え、確かに深みに欠けるところがあるのは否めず、
もう少しストーリーや人物描写を掘り下げて描いて欲しかった気もしますし、
そんなスピルバーグ風なものを作ることにどんな意味が?と思うと、
そこに何の価値も感銘も受けなければ本作は途端につまらないものに思えてしまうのかも知れません。
それはこういう方向でこういう作品を作ってしまった以上、どうしようもないことだと思います。


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J・J・エイブラムスはこれまで『M:i:III』『スタートレック』の監督を務め、
いずれもメジャー作品のリメイクという雇われ仕事のようなものばかりをやって来て、
ようやくオリジナル作品を作れることになったら、
スピルバーグをトレースしたようなものを作ってしまうというのは、
結局オリジナリティのない人なんじゃないかとか、小手先だけの人だとか思われそうで、
(・・・まあ実際そうなのかも知れませんが!)だけど前2作はオリジナルのあるものでありながら、
それぞれ新たなスタイルや、かなり斬新な世界観も見せてくれていたと思うのです。
そんな彼だから、もっと何かやってくれるんじゃないかと、
やればできる子だろう!と、どうしても信じたい気持ちがあるのです。
今作が作られることになったいきさつはインタビューなどで語られていますが、
スピルバーグ本人が参加することであらゆることが許され、やりやすくなった反面、
彼に対する遠慮や逆にやりにくい部分もあったと思えるし、そういう意味では、
次回はもっと自由に、よりオリジナリティのある作品を作って欲しいと思います。

主人公ジョーを演じたジョエル・コートニー君がとにかくカワイイ!
彼が何度となく涙が溢れそうになり瞳がうるうるする様子にこちらもうるうる。
彼とチャールズ役のライリー・グリフィス君(この子もカワイイ!)はいずれもこれがデビュー作。
少年グループの構成員をデブ、チビ、メガネ、と定型パターンで揃えて来たのも王道で正解。
そしてそんな男子とはさすがに格の違いを見せつけていたのがエル・ファニング。
この年頃は男の子より女の子のほうがちょっと大人びていて、
少年たちの中でもそんなちょっとお姉さん的な雰囲気をとてもよく出していました。
それにしてもこんな可愛い子がどアップで迫って来たら(しかもゾンビメイクで!)、
ジョーでなくても誰でも恋しちゃいます。


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最後の最後、エンドロールのお楽しみも素晴らしく、
映画内映画でこんなに完成されたものもちょっと珍しいかも知れません。
実はこれを一番やりたかったのかも知れないと思うくらい。
いろんな不満点や物足りなさが多いことも含めて、あそこはああかもとかアレはなんだったんだとか、
見終わっていろいろ人と話し合いたくなることもたくさん。
JJお得意の隠しキャラやお楽しみもいっぱいあって、ファンとしてはそれも楽しい!)
私は観ている間とにかく楽しくて、出来ることならこのままずーっとやっててくれないかなあと、
この少年たちが登場し、映画製作を続ける連続ドラマを夢想してしまったほどでした。



Super 8(2011 アメリカ)
監督 J・J・エイブラムス
出演 ジョエル・コートニー カイル・チャンドラー エル・ファニング
   ライリー・グリフィス ライアン・リー ガブリエル・バッソ
   ザック・ミルズ ロン・エルダード グリン・ターマン ノア・エメリッヒ 
   ブルース・グリーンウッド グレッグ・グランバーグ



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ブルーバレンタイン [映画感想−は]

ポスターや予告編からはオシャレなラブストーリーのイメージを受けたんですが、
実際は全然違って、ものすごく現実的でシビアで残酷な作品。
これは観る人によって感じるところは相当違うのではないかと。


シンディ(ミシェル・ウィリアムズ)とディーン(ライアン・ゴズリング)の夫婦は、
娘のフランキー(フェイス・ウラディカ)と三人暮らし。
病院で看護師として忙しい日々を送るシンディと違い、
ディーンの仕事は朝からビールを飲みながらでも出来るペンキ塗り。
シンディはそんなディーンにもっときちんとした、やりがいのある仕事に就いて欲しいと思い、
そのため二人はことあるごとに言い争い、喧嘩になってしまうのでした。
ある朝、飼い犬の行方がわからなくなり、シンディはその犬が路上で死んでいるのを発見します。
深い悲しみに沈むシンディを慰めようと、ディーンは町外れにあるラブホテルへ行くことを提案。
気乗りしないシンディをなんとかなだめ、二人はホテルへと出発しますが・・・。


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物語は結婚して数年後の現在と、二人が出会って結婚へ至るまでの過去が交互に描かれ、
現在の冷め切ってしまった(少なくともシンディは)夫婦間の、
なにをやってもうまく行かない様子がとにかくどれもこれもイヤになるほどリアルで痛々しく描かれ、
観ていると本当につらいというかやるせない気持ちになってしまいます。
長年付き合ってるカップルだったら多かれ少なかれ経験しているような、
ああワカルワカルという話満載で、こんな話を見せられてもなあと、少々ウンザリ。
これは私が女でどうしてもシンディの側に立って観てしまうのかも知れませんが、
こんなディーンのような夫や彼氏だったらそりゃあこうなるよなあと思うことばかりだし、
ディーンのあまりの鈍感さを弁護できる人がいるなら出てきて欲しいぐらい。
これぐらい許してやれよと言うのなら、心の狭い女のままでいいなとすら思ってしまいます。
とにかくそれぐらいディーンには救いがなくて、彼を観て「ああ俺みたいだ」と思った男性は、
すぐにでも考えを改めること!と強く言いたくなります。

『(500)日のサマー』は恋に憧れる男トムと愛を信じない女サマー、という図式で、
主に(というか全編)トム側の主観だけで描かれ、その一方的な感じが今作で言うと、
ほとんどの問題はディーンが原因で、観ている側はどうしたってシンディに同情してしまうところが、
どことなく通じるような気がしました。かなり状況は違いますが。
しかしあちらはサマーを"得体の知れない存在"とすることで、
本当はトムのほうがどうしようもないヤツかも知れないとか、
やっぱりサマーはとんでもないビッチだったのだとか議論の余地もあり、
恋愛の美しさ残酷さを見た目も美しく愛らしく描くことで、
上質なラブコメディとして楽しめる作品になっていたと思うのですが、
今作を観るとそんなのはやっぱり夢物語なんだよとバッサリ言い渡されるような、
最初から最後まで、とにかく暗い暗い話になっています。
出会った頃はこんなヤツとは思わなかっただろうけど、
こんなディーンをシンディは選んでしまったのはどうしようもないことで、
そもそもシンディがあんなことにさえなってなければ・・・とか、
まあそんな風に、恋愛なんて始まりは美しくともキレイゴトのまま終わるわけはないという、
誰もが知っているのに気付かないふりをしているようなあれやこれやをドスンと提示して、
いったいこれを見せられた私はどうすればいいの?と、重い気持ちで劇場を後にしたのでした。


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監督のデレク・シアンフランスが脚本を書き始めたのが1998年で、
映画の完成までに実に11年もかかり、その間60回以上も書き直しをして、
あまりにも書き直し過ぎたためウンザリしてしまった彼は、
撮影時には主役二人にプロットだけ告げてほとんどアドリブで演じさせたのだそうです。
そんなストーリー以上にハードなエピソードを聞くと、
二人はよくそんなことをやりきったものだと感心してしまうし、
だからこその生々しさ、リアリティなのかも知れないと思いました。
シアンフランス監督はびっくりするぐらいライアン・ゴズリングにそっくりで、
特に頭部は”現在のディーン"そのまま!なのは笑っていいのやらなのですが、
ということで、おそらくディーンは監督自身を相当投影しているのではないかと思うし、
だからこそ徹底して救いがない人物に描かれていたのかも知れません。

冷え切ってしまった現実とはまったく違い、出会った頃の二人はとにかく美しくハッピーで、
いろんな困難な出来事も二人の愛を強め、深めていくきっかけにしかなりません。
特に二人の心がぐんと近づいたと思われる、ディーンが歌いシンディが踊るシーン。
ディーンの歌はいいとして、シンディの恐ろしくヘタクソなダンスはけれども素朴で愛らしく、
こんなに美しく微笑ましいシーンは最近ちょっと無い、忘れがたい場面となっていました。
それに産婦人科のシーンのリアルさ(本物の医者を使っているのだそう)、
そこからのディーンの決意への流れには涙が止まりませんでした。


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そんな幸せな風景がヘビーな現実と交互に描かれるため、観ているこちら側は、
二人がいずれダメになってしまうことがわかってしまっているし、
だからこそその幸福な様子はあまりにも美しく痛々しく、現実との対比が残酷に感じられます。
いずれ不幸になるんだからその選択は間違いよ、と言ってあげることや、
現在の二人に幸せだったあの頃を思い出して!なんて言うことも出来ず、
こういうことは結局夫婦間で解決していくしかないものだし、
観ている我々もいつこんなことになるか、もうなりかかっているのかも知れないとか、
そこをどう乗り切るかをこの作品を観てそれぞれよく考えましょうということなのかもと思ったり。
まだこんな経験をしていない若い人たち、今がキラキラな状態の人たちには、
こんな未来にならないようにという忠告となるのかも知れません。
何にしても観る側に何かしら重たいものを押しつけて帰してくれる作品なので、
観たほうがいいよ、とも言えず、何というか自己責任で!としか言えない作品でした。

主役二人は、あらゆるシーンがアドリブだったと聞くと一層その凄さを感じてしまいますが、
とにかく素晴らしいの一言。
特にミシェル・ウィリアムズの体当たりぶりと、元々持っているあの暗く、
確実に重たいものを背負っているような表情がシンディをよりリアルな人物にしていました。
ライアン・ゴズリングはその時間の経過ぶりを頭髪で表していましたが、
ミシェル・ウィリアムズは見た目はほとんど変わっていないようで(増量はしたそうですが)、
生活に疲れきっている感じをどこをどうと言えないぐらいうまく醸し出していて驚かされます。
暗く生々しい内容で、それが悪いとは一概に言えないのですが、実も蓋もないというのか、
結局なるようにしかならない結末にまあそうだろうねという感想しか持てず。
それなのに、これはどうなのかな?と思ったのはエンドロールが始まる前、
二人のこれまでのあらゆるシーンが花火と共にフラッシュバックのように見せられるのですが、
ここが妙にオシャレでカッコ良すぎるファッションフォト風で、
この作品ってそんなカッコイイ話でも全体の作りでもなかったのに何を急に?と思ってしまって、
普通に暗転でジ・エンドにして欲しかったなあと、最後の最後はちょっと苦笑してしまいました。


Blue Valentine(2010 アメリカ)
監督 デレク・シアンフランス
出演 ミシェル・ウィリアムズ ライアン・ゴズリング
   フェイス・ウラディカ マイク・ヴォーゲル ベン・シェンクマン



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ランナウェイズ [映画感想−ら]

元ランナウェイズのシェリー・カーリーの自伝を元にジョーン・ジェットがプロデュースした今作。
撮影中やプレミア等の写真で二人とダコタ&クリステン一緒の写真をたくさん目にしたし、
公認とかいうレベルじゃないぐらいご本人たちが認知している作品だと思えば、
結局この程度にしかならないんだろうなあという、予想通りの”軽さ”でした。


1975年ロサンゼルス。
ロックスターになることを目指す15歳のジョーン(クリステン・スチュワート)は、
音楽プロデューサーのキム・フォウリー(マイケル・シャノン)に自分を売り込みます。
さっそくキムは十代の女の子だけのバンドを思い立ちメンバーを集めますが、
何か物足りなさを感じ、ジョーンと共に新たなボーカリストを探すことに。
そうしてある晩、クラブでジョーンは同じく15歳のシェリー(ダコタ・ファニング)を見つけ、
彼女をバンドに誘います。
こうしてランナウェイズが誕生しますが・・・。


シェリー
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もう30年以上前の話ですが、まだ30年前とも言えるのかも知れません。
そうなとなると関係者も多くが存命だし、遠慮やいろんなしがらみなどもたくさんあって、
何より前述のように本人たちが製作に関わっているとなるとヘタなことは言わず/言えず、
かなり美化されているところが多いんだろうなといじわるな想像をしてしまいます。
このあたりが実在した人物の映画化の難しく、そして大抵つまらなくなるところだと思います。
今作もそういう意味で登場するエピソードがサラッとうわべをなぞっていくような感じで、
もう一歩踏み込んでくれたらなあという、どこか欲求不満の残る作品になっていました。
ランナウェイズといいながらシェリーとジョーン以外のメンバーの描写が少ないのも、
仕方ないのかも知れませんがちょっと残念だし、成功するまでのトントン拍子ぶりも、
実際にそうだったのかも知れませんが、やはりかなり駆け足過ぎます。
デビュー前、キムが客のブーイングに立ち向かう練習と言って、
そこいらの少年たちを集めて演奏中に彼女たちに向かって空き缶を投げさせるという、
スポ根ドラマみたいなエピソードなんかはバカバカしくも面白く、
こういうのももうちょっと観たかった気がします。


ジョーン
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シェリーが学校の発表会でブーイングを受けながらボウイの口パクをやったり、
バンドのオーディション時にはペギー・リーの『フィーバー』を歌いたがったり、
かと思うと過激な歌詞に拒否反応を示したりするなど、
コルセット姿で歌っていた姿から派手で過激なイメージを持っていたので、
そのあたりはとても意外に感じました。
一方ジョーンは最初からロック一筋、ストレートなハードロックやパンクを愛し、
とにかく自分たちの音楽を真剣に考えていたことがわかります。
だから徐々にランナウェイズがシェリーのビジュアルばかりクローズアップされるようになると、
自然にバンドはうまくいかなくなっていきます。

私はランナウェイズはもちろん知ってはいましたが全然詳しくはなくて、
音楽的なことよりなんとなく色モノ的な印象を持っていた記憶があるのですが、
それはこのあたりのシェリーだけがクローズアップされていたせいだと納得しました。
来日時のエピソードが結構重要な要素となって登場し(トンデモ日本描写はお約束!)、
実際、日本に於いて彼女たちがどう受け止められてたのか、
あんなに女子高生が熱狂するような感じだったのかどうかは知りませんが、
その前の、某シノラマの人と思われる日本人カメラマンのエピソードも含めて、
なるほどなあと興味深かったです。
そういえば、来日時の飛行機着陸前におクスリを証拠隠滅するとかいうのは、
外タレさんによくあることなのか、現物がなければ問題なく入国できちゃうのかあ、
なんてことも単純に感心してしまいました。


キム・フォウリー!
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いまいち盛り上がりに欠けるストーリーではありますが、
それでもこの作品が美しいものになっているのは、
やはり主人公二人の美しさと頑張りがあるからだと思いました。
ダコタ・ファニングは撮影当時、実際にシェリーがランナウェイズに加入した時と同じ15歳。
子役時代を知っている者としては、演技はもちろん、
歌やパフォーマンスの体当たりぶりにただただ驚くばかり。
クリステン・スチュワートは本当にジョーン・ジェットに見た目そっくりで、
彼女も実際に歌とギター演奏をこなしていてすごくサマになっていました。
シェリーのエピソードに比べるとジョーンのパートが少ないのがちょっと物足りなかったです。
似ているというと、シェリーの双子の妹マリーを演じているライリー・キーオという人が、
ヘンな話ですがダコタ・ファニングよりシェリーに似ている気がして、
もしかして実際に血縁関係があるとか?と思ったらそんなことは全然なくて、
というかこの人、お母さんはリサ・マリー・プレスリーで、つまりエルヴィス・プレスリーの孫!
なんだこちらのほうがロックの血が流れてるのでは?と思いましたが、
本職はモデルさんで今作が映画デビューだそうです。
それとこの双子の母親役がテータム・オニールというのもなんだか70年代を思わせるキャスティング。
それから忘れてならないのがプロデューサー、キム・フォウリーを演じているマイケル・シャノン!
胡散臭くていい加減でエキセントリックで、見た目も喋りからも目が離せません。
アッサリし過ぎの今作中、一人頑張り過ぎな気がしてなんというかもったいない気すらしてしまいました。


The Runaways(2010 アメリカ)
監督 フローリア・シジスモンディ
出演 クリステン・スチュワート ダコタ・ファニング マイケル・シャノン
   ステラ・メイヴ スカウト・テイラー=コンプトン アリア・ショウカット
   ライリー・キーオ テータム・オニール



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ブラック・スワン [映画感想−は]

ナタリー・ポートマンにオスカーはじめ各賞主演女優賞をもたらした本作。
いわゆる「感動しました!」CMが作られるぐらいの大ヒットとなってるようですが、
そんなに一般的に受け入れられるようなものかな?と疑問を持ってしまうほど、
かなりいびつな、ある一人のバレリーナの妄想に満ちた物語です。
ダーレン・アロノフスキー監督作としては前作『レスラー』のようだという意見もあるようですが、
それよりは『レクイエム・フォー・ドリーム』に近い緊張感や異様さで溢れていて、
どちらかというとひっそり単館上映されて、一部で熱い支持を受けるような作品なのでは、
と思ったのですが。


ニューヨークのバレエ団に所属するニナ(ナタリー・ポートマン)は、
元バレリーナである母親のエリカ(バーバラ・ハーシー)と共に、
バレエ一筋の生活を送っていました。
このバレエ団の次回公演作は「白鳥の湖」。舞台監督のトーマス(ヴァンサン・カッセル)は、
この公演でプリマバレリーナのベス(ウィノナ・ライダー)を起用せず、
新たな主役を選ぼうとしていました。
性格な技能を認められているニナは候補の一人でしたが、この作品では、
純真無垢な白鳥と邪悪で官能的な黒鳥の両方を一人が演じなくてはならず、
ニナの完璧な踊りと生真面目な性格は白鳥には向いていても、
黒鳥を演じる力がないとトーマスに指摘されニナは悩みます。
さらにそこに新しいバレリーナのリリー(ミラ・クニス)が現れ、
その自由奔放でまさに黒鳥そのものの姿にニナは動揺してしまうのでした。


自分がわからない
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アロノフスキー監督の作品は、取り上げる題材や映像に独特で特殊なものが多く、
けれどもその表現の仕方は意外にベタというか、これだったらコレ、という定石のようなものを、
臆面もなく、ドンッと正面に出してくるような印象を受けます。
『レクイエム・フォー・ドリーム』のドラッグを求める姿、
『レスラー』の浪花節的とも言えそうなドサ回りぶりやトレーラーハウスなどは、
語り口としてハマってしまえばとことん面白いのですが、考えたらかなりの直球ぶり。
そして今回は、バレエというテーマだからそう感じてしまうのかも知れませんが、
あまりに少女マンガ的でストーリーはあってないようなものだし、
もうちょっとヒネリが欲しかった気がしました。
(ちなみにアロノフスキー監督は今作と『レスラー』の脚本にはタッチしてないようなのですが)
周囲からのプレッシャーと、それに対処できず徐々に精神を病んでいく主人公が、
果たしてそれを克服するのか、それともそのまま身を滅ぼすのかというストーリーには、
正直なところ目新しさを感じられず、特に舞台監督のトーマスに、
「黒鳥をうまく演じられないのは男を知らないからだ」とかいう、
今どきそんな、少女マンガかレディスコミックかとつっこみたくなるような、
(と言ってもこのへんも詳しくないんで想像で言ってますが)
ベタな展開に心の中でまいったなあとつぶやくことしきりでした。

もちろんこの作品はすべてがニナの主観のみで描かれているので、
彼女の周囲の人々の言動は真実かどうかすらハッキリしません。
もしかしたらトーマスはそんなセクハラめいたことなど一言も言ってないのかも知れないし、
(実際、ニナが彼のアパートに行っても何もなくて帰されるのとか「?」と思ったり)
さらにそのセクシャルな"強迫観念"はリリーとの関係にまでおよび、
しかしリリーとの熱く刺激的な一夜もほとんどが実際にはなかったことだとわかります。
ここまで行くと、なにかそういう"セクシャルな妄想ぶり"をただ見せたいだけなんじゃないのかとか、
ひねくれた考えまで浮かんでしまい、いよいよ自分の心が離れていく気がしました。


あなたがわからない
blackswan_2.jpg


ベタということでは観ている間、いろんな過去の作品をいろいろと思い出し、
そういう点でも新鮮さを感じられず不満が膨らんでいった気がします。
性的なことに拒否反応を起こしていく様子はあちこちで指摘されていますが、
ポランスキーの『反撥』を思い起こさせ、これがもうちょっと異常に突っ切ってくれたら、
ハネケの『ピアニスト』ぐらいになるのかも、なんてことも考えたりしましたが、
さすがに今回とっても頑張ってるナタリーとはいえあそこまでは行けないだろうしなあ、
なんてこともついつい考えながら観てしまっていました。
そう、とにかく今作のナタリー・ポートマンの頑張りは確かに素晴らしいものでした。
バレエは幼い頃に経験はあったそうですが、この作品のために1年ほど猛特訓したらしく、
素人の私からしたらかなり本物らしく見える出来栄え。
もちろんバレエシーンは本物のダンサーの代役を使用したみたいだし、
あまりにも彼女の顔のアップが多いのも、おそらく素人バレエを誤魔化すためだと思われるのですが、
けれどレッスンシーンや本番前のアップする時の身体の柔軟さなど、なかなか本物らしく見えました。
さらにヌードこそないもののかなりセクシャルなシーンを堂々と演じていて、
彼女のこれまで演じてきたキャラクターやプライベートの様子などから受ける、
どこか幼く、真面目な印象を覆す熱演で、この頑張りぶりに対しては主演女優賞は妥当だったと思うし、
その演技を堪能するという目的で観るぶんにはとても素晴らしい作品だと思います。

でもだからこそ、ナタリーのこの頑張りに対してもうちょっとストーリー自体に、
ガツンとした盛り上がりやもうひとつ深い何かが欲しかったです。
鏡を多用した映像やホラー的脅かし、徐々に"黒鳥"になっていく様子などのCG使いは、
なかなかどれも凝っていて見応えはありましたが、ニナが壊れていく状況はいろいろ描かれても、
なぜそうなるのかという内面的なことの具体的描写はなく、
それはもちろんニナ自身が自分で自分がわからなくなっているわけだし、
私たちが見せられているのはそんなニナの主観による映像だから、
おかしくなっていく様子や結果しか見えないのは当然なのかも知れません。
でも、何かもう1つ、こちらを芯から震えさせるような"真実"などを見せて欲しかったです。


何がいけないのかわからない
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例えばバレエの世界の競争の厳しさ、その中で彼女がどうやって今の位置を得たのか、
こんなに細い神経でどうしてここまで来れたのかや、母娘の確執、
ニナがこんな風に育ってしまったバックグラウンドなどはほとんど省略されていて、
彼女の言動や暮らしぶりなどで想像することしか出来ず、母親の過剰な過保護ぶりや、
それとは逆にあまりにも無神経な様子、少しだけ語られる母親自身の過去など、
いくつか提示されるものはあるのですが、もうちょっと決定的なこれ!というものが欲しかった。
さらにラストのオチというかケリの付け方も結局そうなるしかないのかなと思いながら、
抹殺すべきは母親では?とか、あるいはトーマスだったらなどいろんなヒネリも考えてしまい、
ニナをさらにとことん落とすか、逆に救いを与えても良かったのではないかと思いました。

ただ、純粋に怖い、そして痛い(本当に痛い!)映像の数々、
ささやきや悲鳴のような声が聞こえたりというホラー的演出はそれなりに面白く、
私は元々鏡に映る映像というのが大好きなので、合わせ鏡が延々と作り出すニナの姿とか、
その鏡の中のニナがフッと違う方向を向いたりといった映像はすごく楽しかったです。
感動作として観れば思いっきり拍子抜けというか裏切られてしまう感じなのですが、
(それでも最後は涙が止まらない!という人もたくさんいるようなのですが・・・う〜ん)
スリラーとかホラーだと思って観ると映像はとても見応えがあるし、
特にCGの使い方はあの『ファウンテン 永遠につづく愛』の、
これでもかという盛りだくさんぶりに比べたら(とは言っても結構スキでしたが)
徐々に黒鳥と化していく様子の自然さ、さりげなさが美しく薄気味悪く見応えがありました。
さすがに最後、黒鳥になりきっちゃうかのような大きな翼はいいとしても、
脚とか瞳とかはちょっとやりすぎかなあと思いましたが。

リリーを演じたミラ・クニスの自然なビッチぶりはとても良かったです。
彼女ももう少しうまく演出されていれば『17歳のカルテ』でのアンジェリーナ・ジョリーぐらいの、
強い印象を残すことも出来たかもしれないのにと思い、ちょっと残念。
なぜ急に『17歳のカルテ』?というのは、役柄的に今作でのミラ・クニスと、
アンジェリーナ・ジョリーに共通するものを感じたからというのと、
ミラ・クニスは『ジーア/悲劇のスーパーモデル』でアンジーの少女時代を演じていたこともあって、
世間的には"第二のアンジェリーナ・ジョリー"という紹介のされ方もしているようだし、
・・・ということが考えられるのですが、それよりはおそらく今作で強烈な脇役として登場するのが、
ウィノナ・ライダーだということも関係あると思います。
落ちぶれた元プリマドンナという役柄はどうしてもウィノナのキャリアと実生活を彷彿とさせ、
そんな残酷な配役も十分ホラーに思えました。


Black Swan(2010 アメリカ)
監督 ダーレン・アロノフスキー
出演 ナタリー・ポートマン ミラ・クニス ヴァンサン・カッセル
   バーバラ・ハーシー ウィノナ・ライダー ベンジャミン・ミルピエ
   セニア・ソロ クリスティーナ・アナパウ 



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