デビル [映画感想−た]
『レディ・イン・ザ・ウォーター』『ハプニング』で落胆してしまい、
『エアベンダー』はなんか違うかも・・・とスルーしてしまったけど、
やはりM・ナイト・シャマランと聞くと「ん!?」と反応してしまうわけです。
シャマラン原案の今作、ほとんどそれぐらいしか予備知識ナシで観てしまいましたがこれはっ!
ロザリオを握りしめた男が高層ビルから墜落死する事件が発生し、
フィラデルフィア市警殺人課のボーデン(クリス・メッシーナ)は、
現場の状況に不審なものを感じながらもそれを自殺と判断します。
ちょうどその頃、その同じビルのエレベーターの一基が突然停止し、
5人の男女が中に閉じ込められてしまいます。
警備員のラスティグ(マット・クレイヴン)とラミレス(ジェイコブ・バルガス)は、
モニター越しに中の様子を見守り救出の手だてを考えますが、
そんな彼らの見ている前で、突然エレベーター内の照明が消え、
復旧してみると、中の女性の背中が切り裂かれ血を流していました。
誰に襲われたのか、5人は疑いの目を互いに向け合い始めますが、
再び照明が消えると、今度は一人の男が無残な死を遂げ・・・。
今作はM・ナイト・シャマランの原案を若手の映画作家が映画化していくプロジェクト、
「ザ・ナイト・クロニクルズ」の第一弾ということで、
(なんでもシャマランはもう監督業より製作にまわりたいとか言ってるらしい)
あくまでも今回は"原案"のみで脚本も書いていないと知り、実は驚いてしまいました。
というのも、これは紛れもなくシャマラン作品そのものと言っていいものになっていたからです。
エレベーターに閉じ込められた見ず知らずの男女5人・・・と聞くと、
最初はいわゆる密室劇のようなものを想像したのですが、
やがて、とてもそんな密室の中で起こりえないようなことが次々起こり、
この作品が普通のミステリーやサスペンスなんかではなくて、
ホラー、というかオカルトものだということがすぐにわかってきて、
この独特なニオイがなんともシャマランシャマランしているのです。
エレベーターの中をセキュリティカメラのモニター越しに見つめる警備員の一人、
中南米系で敬虔なクリスチャンのラミレスがあっさりと、
これが単なるエレベーター故障などではなく"悪魔"の仕業だと騒ぎ出します。
もちろんそんな彼の言葉に誰も取り合わず、それでも異常事態は次々と続き、
閉じ込められた5人だけじゃなく彼らを助けようと試みる人びとにまで危害が及びます。
なぜそんなことが?と最後まで理由は謎のまま話は進む・・・のですが、
このラミレスが最初から悪魔のせいだと言って、なぜこんなことになったのかを、
劇中でも、またナレーションでもいろいろと説明してくれます。
観ているこちらはそうなのか、いや、そんなこと言って実は何かしら論理的な答えがあるのでは?
などと頭の中を「?」マークでいっぱいにしながら見続けることになります。
次第に5人にはそれぞれアヤシイ過去や後ろめたい事情があることがわかってきて、
だからこんなことになったのか、彼らはここに偶然か必然かで集められたのか、
でもだったらどうして?どうやって?と、謎は最後まで簡単に解き明かされず話は進みます。
そこに、最初の墜落死の件でやって来た刑事も加わり、そしてこの刑事にも暗い過去があり、
そんなあれもこれもが絡み合って最後にえええ!?という結論に達するわけですが、
そんな「えええ!?」という終わり方でありながら、
その時点では「なるほど〜」と、ちゃんと納得してしまうのです。
なぜかというと要所要所にラミレスのナレーションによる説明が差し込まれるので、
私のように頭の回転が鈍かったり神だ悪魔だなんてことに疎い人にも、
よくわかるようになっているのです!
おかげですべてが終わった瞬間は一応納得して劇場を後に出来るのですが、
さて、では家に帰ってからこのストーリーについて説明してみろと言われると、
「ええっと?」と、どうにもうまく説明出来ないのです。
そう、このうまく説明出来ない感じこそ、まさにシャマラン!
こういったまるっきりキツネにつままれたような感覚が、
『アンブレイカブル』や『サイン』を思い出させてくれて、
あーこの感じ、自分はこれがスキなんだなーとしみじみ思ったのでした。
今回、ストーリーや構成が実にシャマラン的でありながらうまくまとまっていたのは、
もしかしたらシャマラン自身が監督しなかったからなのでしょうか。
うまい具合に彼の世界観を他者が脚色、演出することで別の作用が働くのかも知れないな、
なんてことをぼんやり考えてしまいました。
こんな強引な話の見せ方や持って行き方が過剰だったり、逆にあっさりと"謎解き"されたりすると、
あの『レディ・イン・ザ・ウォーター』のガッカリになってしまうのかなと。
シャマランらしさというのは意外と微妙なバランスの上に成り立っているのかなと思いました。
それと、今作ではあまり有名なスター俳優を使っていないのも良かったと思います。
エレベーターの中にサミュエル・L・ジャクソンがいたり刑事がブルース・ウィリスだったりしたら、
もうそれだけで話が読めてしまいそうだし、最後まで"犯人は誰?"と思わせるには、
これぐらい等しくよくわからない人たちだけなのが正解だと思いました。
一番怪しそうな人がそのまま怪しいのか、最後まで生き残る人が当然一番怪しい人なのか、
それが最後まで本当に読めなくて、そして事件は最後に意外な方向に進み、
さて、この終わり方でいいのか、ここまでを踏まえてこの結論でいいものかどうかと、
時間が経ってみるとあれこれ考えてしまうのですが、
見終わった瞬間はそりゃあこれは悪魔の仕業なのだし・・・と思ったり。
さらに、一番やりそうだったけどやらなくて良かったなあと思ったのは、
ラミレスの役をシャマラン本人が演じるという『レディ・イン・ザ・ウォーター』的展開。
これまで彼は必ず自分の作品のどこかしらに登場するというヒッチコックみたいな人でしたが、
今回は監督作じゃないからなのか登場はナシ。
でも、このラミレスというキャラクターはどうみてもシャマランだよなあと思いました。
そういったスター俳優の不在と80分というランタイムが、劇場用作品というより、
ちょっとした小品・・・そう、これって『トワイライトゾーン』の一編みたいな感じで、
オープニングとエンディングにシャマランが出てきて解説しても良かったかも!?(いやいやいや)
まあ、だからどうした?という話と言ってもいいし、
神だ悪魔だみたいな話が気にくわない人も多いかも知れない。
とっくにシャマランに嫌気が差している人にもつらいかも知れません。
でも私は断然支持!このシャマランプロジェクト、ちょっと次が楽しみになってしまいました!
Devil(2010 アメリカ)
監督 ジョン・エリック・ドゥードル
出演 クリス・メッシーナ ローガン・マーシャル=グリーン ジェニー・オハラ
ボヤナ・ノヴァコヴィッチ ボキーム・ウッドバイン ジェフリー・エアンド
ジェイコブ・バルガス マット・クレイヴン
『エアベンダー』はなんか違うかも・・・とスルーしてしまったけど、
やはりM・ナイト・シャマランと聞くと「ん!?」と反応してしまうわけです。
シャマラン原案の今作、ほとんどそれぐらいしか予備知識ナシで観てしまいましたがこれはっ!
ロザリオを握りしめた男が高層ビルから墜落死する事件が発生し、
フィラデルフィア市警殺人課のボーデン(クリス・メッシーナ)は、
現場の状況に不審なものを感じながらもそれを自殺と判断します。
ちょうどその頃、その同じビルのエレベーターの一基が突然停止し、
5人の男女が中に閉じ込められてしまいます。
警備員のラスティグ(マット・クレイヴン)とラミレス(ジェイコブ・バルガス)は、
モニター越しに中の様子を見守り救出の手だてを考えますが、
そんな彼らの見ている前で、突然エレベーター内の照明が消え、
復旧してみると、中の女性の背中が切り裂かれ血を流していました。
誰に襲われたのか、5人は疑いの目を互いに向け合い始めますが、
再び照明が消えると、今度は一人の男が無残な死を遂げ・・・。
今作はM・ナイト・シャマランの原案を若手の映画作家が映画化していくプロジェクト、
「ザ・ナイト・クロニクルズ」の第一弾ということで、
(なんでもシャマランはもう監督業より製作にまわりたいとか言ってるらしい)
あくまでも今回は"原案"のみで脚本も書いていないと知り、実は驚いてしまいました。
というのも、これは紛れもなくシャマラン作品そのものと言っていいものになっていたからです。
エレベーターに閉じ込められた見ず知らずの男女5人・・・と聞くと、
最初はいわゆる密室劇のようなものを想像したのですが、
やがて、とてもそんな密室の中で起こりえないようなことが次々起こり、
この作品が普通のミステリーやサスペンスなんかではなくて、
ホラー、というかオカルトものだということがすぐにわかってきて、
この独特なニオイがなんともシャマランシャマランしているのです。
エレベーターの中をセキュリティカメラのモニター越しに見つめる警備員の一人、
中南米系で敬虔なクリスチャンのラミレスがあっさりと、
これが単なるエレベーター故障などではなく"悪魔"の仕業だと騒ぎ出します。
もちろんそんな彼の言葉に誰も取り合わず、それでも異常事態は次々と続き、
閉じ込められた5人だけじゃなく彼らを助けようと試みる人びとにまで危害が及びます。
なぜそんなことが?と最後まで理由は謎のまま話は進む・・・のですが、
このラミレスが最初から悪魔のせいだと言って、なぜこんなことになったのかを、
劇中でも、またナレーションでもいろいろと説明してくれます。
観ているこちらはそうなのか、いや、そんなこと言って実は何かしら論理的な答えがあるのでは?
などと頭の中を「?」マークでいっぱいにしながら見続けることになります。
次第に5人にはそれぞれアヤシイ過去や後ろめたい事情があることがわかってきて、
だからこんなことになったのか、彼らはここに偶然か必然かで集められたのか、
でもだったらどうして?どうやって?と、謎は最後まで簡単に解き明かされず話は進みます。
そこに、最初の墜落死の件でやって来た刑事も加わり、そしてこの刑事にも暗い過去があり、
そんなあれもこれもが絡み合って最後にえええ!?という結論に達するわけですが、
そんな「えええ!?」という終わり方でありながら、
その時点では「なるほど〜」と、ちゃんと納得してしまうのです。
なぜかというと要所要所にラミレスのナレーションによる説明が差し込まれるので、
私のように頭の回転が鈍かったり神だ悪魔だなんてことに疎い人にも、
よくわかるようになっているのです!
おかげですべてが終わった瞬間は一応納得して劇場を後に出来るのですが、
さて、では家に帰ってからこのストーリーについて説明してみろと言われると、
「ええっと?」と、どうにもうまく説明出来ないのです。
そう、このうまく説明出来ない感じこそ、まさにシャマラン!
こういったまるっきりキツネにつままれたような感覚が、
『アンブレイカブル』や『サイン』を思い出させてくれて、
あーこの感じ、自分はこれがスキなんだなーとしみじみ思ったのでした。
今回、ストーリーや構成が実にシャマラン的でありながらうまくまとまっていたのは、
もしかしたらシャマラン自身が監督しなかったからなのでしょうか。
うまい具合に彼の世界観を他者が脚色、演出することで別の作用が働くのかも知れないな、
なんてことをぼんやり考えてしまいました。
こんな強引な話の見せ方や持って行き方が過剰だったり、逆にあっさりと"謎解き"されたりすると、
あの『レディ・イン・ザ・ウォーター』のガッカリになってしまうのかなと。
シャマランらしさというのは意外と微妙なバランスの上に成り立っているのかなと思いました。
それと、今作ではあまり有名なスター俳優を使っていないのも良かったと思います。
エレベーターの中にサミュエル・L・ジャクソンがいたり刑事がブルース・ウィリスだったりしたら、
もうそれだけで話が読めてしまいそうだし、最後まで"犯人は誰?"と思わせるには、
これぐらい等しくよくわからない人たちだけなのが正解だと思いました。
一番怪しそうな人がそのまま怪しいのか、最後まで生き残る人が当然一番怪しい人なのか、
それが最後まで本当に読めなくて、そして事件は最後に意外な方向に進み、
さて、この終わり方でいいのか、ここまでを踏まえてこの結論でいいものかどうかと、
時間が経ってみるとあれこれ考えてしまうのですが、
見終わった瞬間はそりゃあこれは悪魔の仕業なのだし・・・と思ったり。
さらに、一番やりそうだったけどやらなくて良かったなあと思ったのは、
ラミレスの役をシャマラン本人が演じるという『レディ・イン・ザ・ウォーター』的展開。
これまで彼は必ず自分の作品のどこかしらに登場するというヒッチコックみたいな人でしたが、
今回は監督作じゃないからなのか登場はナシ。
でも、このラミレスというキャラクターはどうみてもシャマランだよなあと思いました。
そういったスター俳優の不在と80分というランタイムが、劇場用作品というより、
ちょっとした小品・・・そう、これって『トワイライトゾーン』の一編みたいな感じで、
オープニングとエンディングにシャマランが出てきて解説しても良かったかも!?(いやいやいや)
まあ、だからどうした?という話と言ってもいいし、
神だ悪魔だみたいな話が気にくわない人も多いかも知れない。
とっくにシャマランに嫌気が差している人にもつらいかも知れません。
でも私は断然支持!このシャマランプロジェクト、ちょっと次が楽しみになってしまいました!
Devil(2010 アメリカ)
監督 ジョン・エリック・ドゥードル
出演 クリス・メッシーナ ローガン・マーシャル=グリーン ジェニー・オハラ
ボヤナ・ノヴァコヴィッチ ボキーム・ウッドバイン ジェフリー・エアンド
ジェイコブ・バルガス マット・クレイヴン
2011-08-09 03:16
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