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ランナウェイズ [映画感想−ら]

元ランナウェイズのシェリー・カーリーの自伝を元にジョーン・ジェットがプロデュースした今作。
撮影中やプレミア等の写真で二人とダコタ&クリステン一緒の写真をたくさん目にしたし、
公認とかいうレベルじゃないぐらいご本人たちが認知している作品だと思えば、
結局この程度にしかならないんだろうなあという、予想通りの”軽さ”でした。


1975年ロサンゼルス。
ロックスターになることを目指す15歳のジョーン(クリステン・スチュワート)は、
音楽プロデューサーのキム・フォウリー(マイケル・シャノン)に自分を売り込みます。
さっそくキムは十代の女の子だけのバンドを思い立ちメンバーを集めますが、
何か物足りなさを感じ、ジョーンと共に新たなボーカリストを探すことに。
そうしてある晩、クラブでジョーンは同じく15歳のシェリー(ダコタ・ファニング)を見つけ、
彼女をバンドに誘います。
こうしてランナウェイズが誕生しますが・・・。


シェリー
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もう30年以上前の話ですが、まだ30年前とも言えるのかも知れません。
そうなとなると関係者も多くが存命だし、遠慮やいろんなしがらみなどもたくさんあって、
何より前述のように本人たちが製作に関わっているとなるとヘタなことは言わず/言えず、
かなり美化されているところが多いんだろうなといじわるな想像をしてしまいます。
このあたりが実在した人物の映画化の難しく、そして大抵つまらなくなるところだと思います。
今作もそういう意味で登場するエピソードがサラッとうわべをなぞっていくような感じで、
もう一歩踏み込んでくれたらなあという、どこか欲求不満の残る作品になっていました。
ランナウェイズといいながらシェリーとジョーン以外のメンバーの描写が少ないのも、
仕方ないのかも知れませんがちょっと残念だし、成功するまでのトントン拍子ぶりも、
実際にそうだったのかも知れませんが、やはりかなり駆け足過ぎます。
デビュー前、キムが客のブーイングに立ち向かう練習と言って、
そこいらの少年たちを集めて演奏中に彼女たちに向かって空き缶を投げさせるという、
スポ根ドラマみたいなエピソードなんかはバカバカしくも面白く、
こういうのももうちょっと観たかった気がします。


ジョーン
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シェリーが学校の発表会でブーイングを受けながらボウイの口パクをやったり、
バンドのオーディション時にはペギー・リーの『フィーバー』を歌いたがったり、
かと思うと過激な歌詞に拒否反応を示したりするなど、
コルセット姿で歌っていた姿から派手で過激なイメージを持っていたので、
そのあたりはとても意外に感じました。
一方ジョーンは最初からロック一筋、ストレートなハードロックやパンクを愛し、
とにかく自分たちの音楽を真剣に考えていたことがわかります。
だから徐々にランナウェイズがシェリーのビジュアルばかりクローズアップされるようになると、
自然にバンドはうまくいかなくなっていきます。

私はランナウェイズはもちろん知ってはいましたが全然詳しくはなくて、
音楽的なことよりなんとなく色モノ的な印象を持っていた記憶があるのですが、
それはこのあたりのシェリーだけがクローズアップされていたせいだと納得しました。
来日時のエピソードが結構重要な要素となって登場し(トンデモ日本描写はお約束!)、
実際、日本に於いて彼女たちがどう受け止められてたのか、
あんなに女子高生が熱狂するような感じだったのかどうかは知りませんが、
その前の、某シノラマの人と思われる日本人カメラマンのエピソードも含めて、
なるほどなあと興味深かったです。
そういえば、来日時の飛行機着陸前におクスリを証拠隠滅するとかいうのは、
外タレさんによくあることなのか、現物がなければ問題なく入国できちゃうのかあ、
なんてことも単純に感心してしまいました。


キム・フォウリー!
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いまいち盛り上がりに欠けるストーリーではありますが、
それでもこの作品が美しいものになっているのは、
やはり主人公二人の美しさと頑張りがあるからだと思いました。
ダコタ・ファニングは撮影当時、実際にシェリーがランナウェイズに加入した時と同じ15歳。
子役時代を知っている者としては、演技はもちろん、
歌やパフォーマンスの体当たりぶりにただただ驚くばかり。
クリステン・スチュワートは本当にジョーン・ジェットに見た目そっくりで、
彼女も実際に歌とギター演奏をこなしていてすごくサマになっていました。
シェリーのエピソードに比べるとジョーンのパートが少ないのがちょっと物足りなかったです。
似ているというと、シェリーの双子の妹マリーを演じているライリー・キーオという人が、
ヘンな話ですがダコタ・ファニングよりシェリーに似ている気がして、
もしかして実際に血縁関係があるとか?と思ったらそんなことは全然なくて、
というかこの人、お母さんはリサ・マリー・プレスリーで、つまりエルヴィス・プレスリーの孫!
なんだこちらのほうがロックの血が流れてるのでは?と思いましたが、
本職はモデルさんで今作が映画デビューだそうです。
それとこの双子の母親役がテータム・オニールというのもなんだか70年代を思わせるキャスティング。
それから忘れてならないのがプロデューサー、キム・フォウリーを演じているマイケル・シャノン!
胡散臭くていい加減でエキセントリックで、見た目も喋りからも目が離せません。
アッサリし過ぎの今作中、一人頑張り過ぎな気がしてなんというかもったいない気すらしてしまいました。


The Runaways(2010 アメリカ)
監督 フローリア・シジスモンディ
出演 クリステン・スチュワート ダコタ・ファニング マイケル・シャノン
   ステラ・メイヴ スカウト・テイラー=コンプトン アリア・ショウカット
   ライリー・キーオ テータム・オニール



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ローラーガールズ・ダイアリー [映画感想−ら]

ドリュー・バリモア初監督作品!
『JUNO/ジュノ』のエレン・ペイジ主演といい、ローラーゲームという題材といい、
観たい、いや観なくてはいけない要素ばかりなのにやってる劇場が少なすぎる!


テキサスの田舎町ボディーンに住む17歳の女子高生ブリス(エレン・ペイジ)。
母親(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は娘を美人コンテストに出場させることに熱中しており、
ブリスはしぶしぶそれに付き合っていました。
ある日、母親と買い物に出かけたブリスは立ち寄った店でローラースケートを履いた一団を見かけます。
彼女たちの姿に興味を持ったブリスは親友のパシュ(アリア・ショウカット)と、
こっそり隣町のオースティンにローラーゲームを見に出かけ、すっかりその虜となってしまいます。
そこでブリスはローラーゲームチームのひとつ「ハール・スカウツ」の新人発掘オーディションに、
年齢を偽って参加。そこで彼女は才能を買われ合格してしまい・・・。


ベイブ・ルースレス誕生!
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ドリュー・バリモア初監督?もう既に2、3本ぐらい撮ってるような気がしていたのですが、
これまで製作に関係していたのはいずれもプロデュース作品だったのですね。
『チャーリーズ・エンジェル』なんかは彼女自身がキャメロン・ディアスや、
ルーシー・リューに出演を依頼した経緯などを公開当時聞いたりしたし、
また、彼女自身主役3人のうちの1人なのに、なんとなく脇にまわっているような、
ほかの2人を立てようとしているような印象を持ってしまっていたので、
すっかり彼女の監督作のように感じてしまっていました。
プロデュースなど製作側の立場でいることがどこまで作品の内容に関わるものなのか、
私にはまったくわかりませんが、ドリューが関わったその他の作品、
『25年目のキス』や『2番目のキス』さらに『ドニー・ダーコ』でさえも、
なんとなく彼女のカラーが強く影響しているように思えてしまうのは、
そうと知っているからなのかも知れないけれど、そう言われると「ああやっぱり」というような、
ドリュー・カラーのようなものをどこかしらに感じてしまうのです。
けれどそれは強い個性、作家性のような"ニオイ"というほど強力なものではなく、
色づかいやファッションや音楽なんかのあくまでほんのりとした程度のもので、
いずれもそれぞれの監督のカラーのほうが当然強い。
でも、ドリュー自身の持つあのなんとも言えないふんわりした笑顔のような、
尖っているけど先はケガしない程度に丸い、とか、
激しく打ちつけられそうだけどちゃんと柔らかいクッションが用意されている・・・みたいな、
なんだかものすごく漠然とした言い方ばかりですが、
そんなドリュー・バリモアらしさがほんのりと、だけどしっかりと感じられる。
そしてそれらはいずれも私にはとても心地よく、魅力的で、
つまり「彼女が関わってるなら信頼できる」とすら思っていました。


美人コンテストこそ生きる道。
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というわけで前置きが長くなってしまいましたが今作。
初監督というにはやはり満を持してという感じで、
とにかくこれまでのプロデュース作品以上のドリュー・カラーを、
これでもかと出してくるんじゃないかと観るまでは思っていました。
キャストやプロットだけ見たらどうしたって女の子全開!ガールズパワー!
みたいな作品を想像してしまっていました。
ところがこれがものすごくストレートでものすごく落ち着いている。
全体の雰囲気はどこか懐かしささえ感じさせるような、今時珍しいくらいの正統派ぶり。
ストーリーも裏切る部分のまったくない、良い意味で先が見える展開。
この落ち着きぶりはとても"新人監督"とは思えません。

圧倒的女性パワーの中、かといって男なんて関係ないわ、みたいな突き放しはないし、
女子だけでキャッキャみたいな浮ついた感じもまるでない。
確かに登場する男性・・・コーチ、父親、ボーイフレンドいずれも、
女性陣に比べたら元気はないし、一見、蚊帳の外のようでもあります。
でも、ラブストーリー部分もきちんと描かれているし(水中ラブシーンの美しさ!)、
基本的に母と娘の話ではあるけれど、父親の存在もとても大きい。
これでアンドリュー・ウィルソン演じるコーチのキャラクターに、
もうちょっと肉付けがあるといいなと、そこは惜しいと思いました。
でも、チームメンバーの女子パワーに押されながらもきちんと戦略を練って来たり、
ここぞという時に頼りになる感じはキャラクターとして大切にされてるなという、
演出の誠実さをものすごく感じました。


私に勝てるっての?
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チームのメンバー、クリステン・ウィグ、ゾーイ・ベル、イヴ、そしてドリュー・バリモアの、
それぞれのワケあり、脳天気、腕っ節の強さ加減などが誰も彼も完璧。
それと敵チームのライバルとして登場するジュリエット・ルイスが、
ようやく現在の彼女にピッタリの役が回って来たと周りも本人も思ってるに違いない、
このキャラクターのスピンオフが作られてもいいぐらい強力な素晴らしさです。
全員ローラースケートのトレーニングを重ね、実際にスタントなしで演じているらしく、
そのリアルさも見応えがありました。
ブリスの親友パシュ役のアリア・ショウカットはとてもチャーミングで、
自分の道を踏み出した親友に対する複雑な思いとか、ものすごく良い表情をたくさん見せていました。

そして母親役マーシャ・ゲイ・ハーデン!この人とエレン・ペイジが親子だなんて完璧すぎる!
途中チラッと登場する若かりし頃の写真がものすごく美しくて、
「若くて美しい時は一瞬なのよ」というのに強い説得力を持たせていました。
彼女が単なる堅物教育ママなんかじゃない、この母にしてこの娘ありという感じも面白かった。
重要な小道具となるストライパー(!)のTシャツが実は・・・というのも良いヒネリ。
そして母娘の物語だけれど過度にウェットじゃないところも良かったです。
ブリスが主人公であり彼女の成長物語であることは間違いないのだけれど、
彼女を取り巻く人々の描き方の誠実さ、ローラーゲーム自体からどうしても感じ取ってしまう、
どことなく裏街道的というのかプロレス興業的雰囲気も、
そこをことさらに強調することなく、そして何よりローラーゲーム自体を、
ストレートに面白く見せているところが映画の作りとしてあまりにも直球で誠実。
この作風の姿勢はそのままドリュー・バリモアという人のまっすぐさに思えて、
やっぱり彼女は信用できる、どこまでもついていきたいと思ってしまいました。
脇でヨゴレ役を一手に引き受けてるところも憎めません。
女優としての彼女を観る楽しみはずっと持っていたけれど、
これからは彼女の監督作に対する期待もこれで持てるようになりました。


Whip It(2009 アメリカ)
監督 ドリュー・バリモア
出演 エレン・ペイジ マーシャ・ゲイ・ハーデン クリステン・ウィグ ドリュー・バリモア
   ジュリエット・ルイス ジミー・ファロン アリア・ショウカット イヴ ゾーイ・ベル
   ダニエル・スターン アンドリュー・ウィルソン ランドン・ピッグ



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ラブリーボーン [映画感想−ら]

予告編を観て「これは!」と待ちこがれていた作品でしたが、うーん、微妙。
予告を観た時は、事件に巻き込まれて死んでしまった少女が、
天国から悲しみに暮れる家族を見守り、犯人捜しに一役買うみたいな、
まるっきり『ゴースト』っぽい話を想像し、
そこにプラス『乙女の祈り』的なものを期待してしまっていたのですが、
まあそれも大筋で間違ってはいないのですが・・・。
もちろん、思っていたのと違うからダメ!なんてバカなことを言うつもりはありませんが、
なんとも言えない微妙さを感じてしまいました。


1973年12月、ペンシルベニア州郊外の街で、
14歳のスージー(シアーシャ・ローナン)は学校帰りに、
近所に住むハーヴィ(スタンリー・トゥッチ)という男に殺されてしまいます。
自分の死を受け入れられないスージーは、天国へ行くことも出来ず、
ただ家族の様子を見つめ続けるだけでした。
事件は未解決のまま時は過ぎていき、父親(マーク・ウォールバーグ)は一人犯人捜しを続け、
その様子に耐えられない母親(レイチェル・ワイズ)は家を出てしまいます。


スージー・サーモン、14歳
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原作は読んでないのでよくわかりませんが、私の感じた微妙さの原因の一つは、
映画化にあたって物語の取捨する部分を間違っちゃったというのか、
どこを切ってどこを映像化したかったかで悩んでしまって、
何を描こうとしたのかわからなくなったような印象を受けてしまったからだと思います。
殺されてしまったスージーの無念さと共に描かれる幻想的な映像、
遺された家族の葛藤、犯人の心の闇、そして犯人捜し。
これらファンタジー、人間ドラマ、サスペンスという大きく分けて3つの要素が、
どうもまとまりなく描かれてしまっていると思いました。
それぞれはそれなりによく出来ているのに、さっぱり噛み合わないでしまっている。

実はストーリー自体はすごく短くて、全体を膨らますために、
幻想的な映像を延々と見せてるのかな、と観ている時に思ったのですが、
それぐらい死後の世界のパートが結構長いし、でもそこにあまり必要性は感じられない。
こういうファンタジー部分をメインに描きたかったというのならそれでも良かったと思うし、
ドラマにするならもうちょっと遺された家族の描写を丁寧にやって欲しかった。
そして謎解きに重点を置くならもっと徹底的にやって欲しかった。
スージーの妹リンジー(ローズ・マクアイヴァー)の、
犯人宅突入シーンの緊張感はものすごく見応えがあって、
逆にそこだけ突出していて別の映画になっているよう。
妹や父親が真犯人に気付く理由もほとんど描かれていないに等しいし、
そこを端折るぐらいなら・・・というバランスの悪さをすごく感じました。


娘はどこに
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それでも、私は冒頭から何度も何度も泣かされっぱなしでした。
最初に出てくるスージーの弟の事故のエピソードから泣いてしまったし、
スージーが犯人に襲われているまさにその時、何も知らない家族の、
いつもと何ら変わらないであろう食卓の様子の平和さにも涙が出てしまいました。
遺された家族は絶望の中でバラバラになっていくという、その後も続く不幸には本当に胸が痛みます。
父親は自力で犯人捜しを始め、母親は悲しみに暮れ、そんな夫の様子に耐えられない。
この描写、何か前にもあったなあと考えたら・・・そう、
『帰らない日々』という作品が同じような感じでした。
これも、ひき逃げで息子を亡くした父親は犯人捜しに没頭し、母親は自責の念に駆られ続ける。
死んでしまった人はもうどうしたって戻らないのに、何かせずにはいられない人と、ただ後悔する人。
この違いはどこから来るのかわかりませんが、いずれも不幸以外の何ものでもありません。

そんな家族の葛藤も虚しく、事件は最後まで未解決のままで、
家族もこれからどうなっていくのかわからないまま終わってしまいます。
しかしあの世とこの世の間にいたスージーは、この世に思い残したあることを実らせ、
ようやく天国へ向かうことが出来るようになる。
14歳という年齢を考えると、この思いはわからなくもないし、
素直に「良かったね」と言いたくなるようなラストではあります。
でもこれでいいのかな、というよりこの作品で本当に描きたかったことは何なのか、
いよいよわからなくなってしまいました。
でも、こんな風にして死んでいく人はこの世の未練を断ち切るのかも知れないし、
遺された人も、少しずつ死者への思いから離れていくのかも知れない、そんなことも感じました。
とはいえ、単純に純粋に、犯人にはもっとひどい鉄槌を下して欲しかった。
でも、こういう理不尽さは世の中にはたくさんあって、
映画だからと都合良くドラマチックに結論を出しても、それも嘘くさくなるのかも知れません。


犯人の心の闇は見えない
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『つぐない』の頃よりだいぶ大人びたシアーシャ・ローナンは、
本当に愛らしい14歳の少女を演じていました。
今時のアメリカの14歳にくらべたらずいぶん幼いですが、そこが70年代らしい。
スーザン・サランドン演じるかなり型破りなおばあちゃんは、
ものすごくもったいないことに、存在意義が非常に希薄でした。
スージーがおばあちゃんのことをどんなに好きだったのか、
逆に娘である母親はなぜこのおばあちゃんとうまくいかないのかもわかりづらかった。
せっかくスーザン・サランドンなんて名優を持ってきてこれでは。
でもこんなにカッコイイおばあちゃん、彼女ならではですけどね。
犯人ハーヴィの描写もいまひとつ物足りなくて、
なぜこんな事件を起こすようになったのかがもう少し見えても良かった気がします。
あるいは本当に謎の殺人鬼として顔も見えないぐらいが良かったんじゃないかな。
とは言ってもスタンリー・トゥッチはなかなかアヤシイ熱演でしたが。

スージーの死後の世界の映像は、父親がボトルシップを壊すシーンなど、
現実とリンクするあたりに悪夢の美しさと恐ろしさのようなものを感じました。
でも、スージーがティーン雑誌の表紙になるみたいなのは下世話過ぎ。
14歳の女の子の夢だとは思いますが、ここは蝶だ花だぐらいで留めていて欲しかったです。
スージーのファッションからマーク・ウォールバーグのヘアスタイルまで、
全体的に70年代の雰囲気がものすごく良く出ていたのが単純に好みでした。
そうだ、ネガフィルムを写真屋に出して焼き上がってくる時のどきどきわくわくする感じを、
久しぶりに思いがけず思い出させてもらいました。
でもこんな風に1本ずつ焼くというのは切なすぎる。
いつか来る最後の1本に私なら耐えられそうにないです。


The Lovely Bones(2009 アメリカ/イギリス/ニュージーランド)
監督 ピーター・ジャクソン
出演 シアーシャ・ローナン マーク・ウォールバーグ レイチェル・ワイズ スタンリー・トゥッチ
   スーザン・サランドン マイケル・インペリオリ リース・リッチー ローズ・マクアイヴァー
   キャロリン・ダンド クリスチャン・トーマス・アシュデイル ニッキー・スーフー



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ルックアウト/見張り [映画感想−ら]

『(500)日のサマー』公開が待ち遠しいので、
それまでジョセフ・ゴードン=レヴィット祭りを不定期で開催します!
とは言っても彼の出演作は日本では劇場未公開やDVDすら出てないものが多くて、
あっさり終わりそうな気がしてるんですが・・・まずはこれから。


壮絶な交通事故を起こし、恋人や友人を失ってしまったクリス(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)。
生き残った彼も記憶障害の後遺症に悩まされながら、
昼は自立支援センターに通い、夜は銀行の掃除係として働いていました。
ある日、クリスは行きつけのバーでゲイリー(マシュー・グード)という男に声をかけられ、
彼を介し、ラヴリー(アイラ・フィッシャー)とも親しくなります。
新しい出会いにようやく生きる喜びを見出し始めたクリスでしたが・・・。


自分を取り戻したいクリス
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見終わってから公式サイトなどを見たら、
"クライムアクション"なんて文字が躍っていて驚きました。
確かに銃撃戦があったりもするんですが、どちらかというとそういう要素は少なめで、
あくまで主人公クリスの心の動き、彼の行動などに重点を置いた人間ドラマだと思いました。

事故の後遺症と罪の意識で自分を見失ってしまっているクリス。
物事を順序だてて考えられない、理由もなく涙が流れる、すぐに睡魔が襲う。
あらゆることを憶えていられないのですべてメモに書き留めて暮らす彼の毎日。
いったいこのあと彼はどうなってしまうんだろうと心配になってしまうし、
またそんなクリスの様子はとても興味深くもあって、
ずっと彼の行動を追っていたいとさえ思ってしまいます。
というのも、やがてクリスはある犯罪に加担してしまうことになり、
話は宣伝どおりの"クライムアクション"の方向へ進んでいくわけです。
そうすると、それまでクリスの日常を描いていた"人間ドラマ"が、
途端に単なる犯罪ドラマになっていきそうになり、
それってちょっとありきたりな感じだし、もしかしてこれつまんないのかも、と思っていたら、
いえいえ、そんなにカンタンにありきたりなものにはなりませんでした。


ゲイリーの企みは
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最初に描かれるクリスの症状、彼の生活ぶりがすべて伏線となっていて、
彼は直面する出来事に彼なりの方法でひとつひとつ対処していきます。
それは非常に危なっかしいし、観ていてハラハラしてしまいます。
こういう、悪気のない主人公が犯罪に巻き込まれていくのは本当に観ていてつらいし落ち着かない。
友だちもなく、家族にもほとんど見放されたクリスを支える唯一の存在が、
ルームメイトのルイス(ジェフ・ダニエルズ)です。
盲目で、クリスよりはるかに年上で少しシニカルなルイス、
彼はクリスのために食事は作るし、クリスにいろんなアドバイスを与える頼もしい存在。
授業で「日課を順序よくリストにする」という課題が出来なかったクリスに、
「リストじゃなくストーリーを考えろ、結末がわかっていたらそこからさかのぼればいい」
とアドバイスし、それが後にクリスを大いに助けることになるのです。

この"ストーリーを考える" "結末からさかのぼる"という考え方、
私自身にもすごく良いアドバイスだと思ってしまいました。
クリスのような障害はなくても、日々あらゆることがとっちらかってしまっている自分にとって、
物事を冷静に考える良いアイデア。なんでもメモするクセもつけたいと思いました。


唯一の友ルイス
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新しい友人や恋人が出来たと思い喜んでいたクリス。
しかし彼らはある目的のためにクリスに近づいてきただけで、
そのことが新たな悲劇を生み、クリスをさらに深く傷つけます。
けれどそれは結果的に彼を交通事故の心理的な後遺症から立ち直らせ、自立させ、
新たな一歩を踏み出すきっかけとなるのです。
罪のない犠牲者を出してしまう展開は少し残念ではありますが、
そのことで彼は新たな十字架を背負うことになるのだろうし、それでも彼は生きてゆく。
1人の青年の成長ドラマとして、深く心に染みました。

ジョセフ・ゴードン=レヴィットは一見普通の青年のようで、
実際には心に深い闇を抱えている主人公クリスをうまく演じています。
傑作『BRICK』の主人公に通じる暗さ、でもあれよりはいくらか笑顔も見せるし、
その分内面の複雑さが感じられ、何にしてもこういう葛藤する青年は本当にピッタリ。
ジェフ・ダニエルズの盲目演技はスゴイ。この人は本当にカメレオン俳優ですね。
カメレオンと言えば、クリスを悪の道に引きずり込むゲイリー。
見終わって名前を見るまでまったく気が付かなかったのですが、
『マッチポイント』のあのすごくカンジのいいおぼっちゃま、
というか『ウォッチメン』のオジマンディアスことマシュー・グードだったとは!
目のあたり、すごく見覚えある人なんだけどなあと思いながら最後まで本当に気付きませんでした。
相変わらず年齢不詳なラヴリー役のアイラ・フィッシャー、
1シーンだけ登場するカーラ・グギーノもすごく良かった。
B級サスペンス風なジャケットに騙されないで欲しい、佳作です。


The Lookout(2007 アメリカ)
監督 スコット・フランク
出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット ジェフ・ダニエルズ マシュー・グード
   アイラ・フィッシャー カーラ・グギーノ ブルース・マッギル



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  • 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
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リンガー! 替え玉★選手権 [映画感想−ら]

以前、町山智浩さんが大絶賛していたので気になっていた作品。
大好きなファレリー兄弟のプロデュースと聞けば、観ないわけにはいきません。


スティーヴ(ジョニー・ノックスヴィル)は平凡なデスクワークの日々に嫌気が差し、
ある日、勇気を出して上司に昇進を願い出たところ、あっさりと受け入れられます。
そのかわり、会社の雑用係スタヴィ(ルイス・アヴァロス)をクビにするよう命じられますが、
スティーヴにはそれが出来ず、仕方なく個人的にスタヴィを雇うことに。
彼はスティーヴの自宅の芝刈りの仕事を快く引き受けてくれますが、
思わぬ事故で手の指を3本切断してしまいます。
責任を感じたスティーヴはなんとか彼のこの高額な治療費を捻出するため、
叔父のゲイリー(ブライアン・コックス)に貸していたお金の返済を迫りますが、彼も一文無し。
するとゲイリーは、スティーヴをスペシャル・オリンピックス大会に出場させ、
賭けの対象にして一攫千金を狙うという、困った企みを持ちかけます。


なんかアヤシイ
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今作ではプロデューサーとしての参加のみのファレリー兄弟。
彼らの作品に障害者のキャラクターは欠かせないのですが、
今回はまさにそれがメインテーマとなっていて、
しかも実際に大勢の障害者が出演しています。
プロットだけでそのヒンシュクぶりはわかると思いますが、
それでも登場する障害者の人たちは嬉々として役を演じていて、
最初は観ているこちらが気を遣いそうな感じなのですが、
それが徐々に当たり前の状況になっていく自然さ。
そのことこそが、この作品が目指していたところなのだと思いました。

とは言ってもかなりキワドイ表現はたびたび登場します。
スティーヴが『フォレストガンプ』や『レインマン』のビデオを観て研究する、
・・・なんてシーンもあるし。
でもそれが障害者をバカにしたりネタにしてるなんてこともなく、
不思議とイヤな感じがまるでしません。
このあたりのバランスの良さというのか、とにかくずいぶんヒドイ話であるのに、
素直に、心の底から笑えてしまうという不思議!


やがて協力し合い
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最初は当然のように障害者たちの言動に驚き、戸惑いを見せるスティーヴですが、
やがてスティーヴが"ニセモノ"であると"ホンモノ"に見破られると、
スティーヴがとことんイジメにあってしまったりする。
そこに彼らが障害者だという前提とかフィルターのようなものは一切なく、
単にイヤなヤツやズルいヤツ、小心者や心底気の優しいヤツなどなど、
個人のキャラクターとして描かれていて、
決して特別視されるような人たちには見えない。見せようとしてない。
その自然さには素直に驚かされます。

私には正直に言って障害者に対する特別な意識があると思います。
何か気を遣わなくてはならない、そんな意識は確実にあって、
おそらく彼らを前にしたら接し方もぎこちなくなってしまうでしょう。
しかし、そんな気遣いこそが間違っているのだとこの作品は教えてくれます。
かといって障害のある人もない人も同じなんだよ!と声高に言ったりもしない。
みんな違って当たり前だし、また"障害者"と一括りにしてしまうのも間違い。
いろんな性格の人がいて、もちろんいい人も悪い人もいる。
そしてそんな彼らの日常をまったく自然に描くことこそが、
ファレリー兄弟の目指していることであり、それは見事に成功しています。


王者ジミーを倒す!
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やはりファレリー兄弟の監督作として観たかった気はします。
ストーリーの展開は先が読めてしまうし、意外なほどアッサリとした大円団となるので、
もうちょっと全体に毒っ気や、得意の甘いラブストーリーの要素が欲しかった。
スティーヴを演じているのが『jackass』で信じられないぐらいバカをやりまくる、
ジョニー・ノックスヴィルなので、もっとハジケるのかと思いきやそんなこともなく、
この人、普通にしてると普通にハンサムで人の良さそうな雰囲気の人なので、
そんな"普通にイイ人そう"なキャラクターを前面に出した感じです。
それでも、そんなお人好しで気の弱いスティーヴから、
障害者ジェフィに切り替わった時のアブナい感じはさすが。
キャサリン・ハイグル演じるボランティアのリンとのラブストーリーもわりとあっさりめで、
このへんももうちょっとベタなスウィートさみたいなのを見せて欲しかった。
そのためリンの立場そのものがちょっと中途半端になってしまった気がしました。
まあそこがあまり目立つと『メリーに首ったけ』になってしまうのかも知れませんが。

ブライアン・コックスの調子のよいオジサンや、スタヴィの子だくさんぶりもおかしい。
宇宙人だとばかり思っていたら・・・のグレン役のジェド・リースもなかなかのもの。
『荒野の七人』のテーマ曲が意味もなく多用されるのもツボでした。
当たり外れの激しいアメリカンコメディですが、
これは心の底から笑ってしまうシーンがいくつもありました。
どうしてもちょっと引いてしまいそうな話ではありますが、
ここは自分の気持ちに素直になって、あらゆるものを笑い飛ばして欲しいです。


The Ringer(2005 アメリカ)
監督 バリー・W・ブラウスタイン
出演 ジョニー・ノックスヴィル ブライアン・コックス キャサリン・ハイグル ジェド・リース



リンガー!替え玉★選手権 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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