SUPER8/スーパーエイト [映画感想−さ]
見事なまでのスピルバーグオマージュぶりで、誰がどう見てもそのルック、
一般市民が地球外生物と思われるものと遭遇するというストーリー、
舞台となるのが70年代末のアメリカ郊外であることなど、
どうしたって『未知との遭遇』や『E.T.』を思わせるし、
スピルバーグがプロデューサーだからといってここまであからさまってどうなの?
と思う向きもかなりあるみたいで、そこを素直に受け入れ楽しめるか、
鼻についてどうにも乗り切らないでしまうかで相当評価は分かれているようです。
私はあまり小難しいことは考えず意識もせず、素直に楽しめました。
1979年アメリカ。
オハイオ州にあるリリアンという小さい街に住む14歳のジョー(ジョエル・コートニー)は、
工場での不幸な事故で母親を亡くし、父親(カイル・チャンドラー)と二人遺されてしまいます。
その事故から4ヶ月経った夏休み。ジョーは親友のチャールズ(ライリー・グリフィス)らと、
8ミリカメラでゾンビ映画の撮影を行っていました。
いつもの仲間5人での自主映画製作でしたが、脚本の手直しをしていた"監督"のチャールズは、
突然、同級生のアリス(エル・ファニング)を出演者として誘ったことを告げ、ジョーは動揺します。
撮影の日。真夜中の駅に集まったジョーら5人とアリスは順調に撮影を進めていましたが、
突然、彼らの目の前で貨物列車と1台のトラックが衝突。大惨事となります。
そこで彼らはあることを目撃し・・・。
10年ほど前に『エデンより彼方に』という作品がありました。
これはダグラス・サークの『天はすべて許し給う』を元に作られたもので、
監督のトッド・ヘインズはストーリーだけでなく、意図して構図や色調、
音楽の使い方からタイトル文字に至るまで完全にサークの世界を再現して製作したものでした。
私はこの作品を観た時、なぜこんなものを作ったのだろう?と、
ちょっと否定的な感想を持ってしまったのですが、それはサークの世界を完璧に再現することによって、
なんとなくヘンなパロディ作品のようにも思えてしまい、役者たちが熱演すればするほど、
美しい風景が描かれれば描かれるほど、かえってなんとなく趣味が悪いような、
どうにも居心地の悪い感じを受けてしまったのでした。
しかしこれはオスカー候補になったりと評価も高く、絶賛している人もたくさんいて、
こういうのは自分の理解できないところなのか、私ももちろんこれが駄作だとは思いませんでしたが、
好きか嫌いかで言えばどうしても好きになれなかったのでした。
『スーパーエイト』を観たあと、いろんな人の意見を読んでその意見の分かれかたに、
ふとこの『エデンより彼方に』のことを思い出したのでした。
今作も、作られた意味や実際に出来上がったもののクオリティを考えると、
それだけで大歓迎し感動し感謝すらしてしまう人もいれば、逆に最後まで、
上っ面だけ似せた中身のないものと思い、醒めた目で観てしまった人も多かったようで、
そんな風に意見が分かれてしまうのはとてもよくわかる気がするのです。
作品の出来としてどうこうより、こういうのは結局好きか嫌いかでしかないのかも知れないし、
その意味で言えば私は今回、この作品は"大好き"でした。
"Super 8"とはコダックが製造販売していた8ミリフィルムのこと。
ジョーたちが映画製作に用いるこのフィルムの名前がタイトルとなっていることから、
今作で監督が描きたかったのは、ジョーたちの周りで起こる奇怪な事件の顛末ではなく、
少年たちが映画製作を進めて行く中で育んでいく恋や友情、
家族の意味や在り方といったことだったのではないかと思いました。
謎の生物の正体が何であるかとか、地球人対宇宙人の戦いとかいったものではなく、
その謎の生物とそれをめぐるアメリカ軍の軍事機密がどうこういうようなことも、
実際二の次、ワキの話であって、メインテーマは少年たちの友情、初恋、複雑な家庭環境、
親や周囲の大人たちとの関わり、そして何より映画作りといった、
おそらくJ・J・エイブラムスはじめ今作の製作に関わった人々に共通する、
自分たちの少年時代の思い出や思いをこそ描きたかったんではないかと思います。
ジョーたちが目撃するものは殺人事件や死体、謎の財宝でも奥深い洞窟でもなんでもよくて、
けれどもJJとしてはスピルバーグオマージュとしてやはりE.T.を登場させたかったのかもだし、
ジョーズやジュラシック・パークのように無抵抗な人々が襲われる様子も描きたかったのかも知れません。
"それ"は凶暴で、しかし人間と心を通わせることも出来る存在であって欲しかったんだと思います。
その結果、どれもこれもがいつかどこかで観たようなものになってしまい、
うわべだけスピルバーグ風にしてしまったような印象を与え、確かに深みに欠けるところがあるのは否めず、
もう少しストーリーや人物描写を掘り下げて描いて欲しかった気もしますし、
そんなスピルバーグ風なものを作ることにどんな意味が?と思うと、
そこに何の価値も感銘も受けなければ本作は途端につまらないものに思えてしまうのかも知れません。
それはこういう方向でこういう作品を作ってしまった以上、どうしようもないことだと思います。
J・J・エイブラムスはこれまで『M:i:III』『スタートレック』の監督を務め、
いずれもメジャー作品のリメイクという雇われ仕事のようなものばかりをやって来て、
ようやくオリジナル作品を作れることになったら、
スピルバーグをトレースしたようなものを作ってしまうというのは、
結局オリジナリティのない人なんじゃないかとか、小手先だけの人だとか思われそうで、
(・・・まあ実際そうなのかも知れませんが!)だけど前2作はオリジナルのあるものでありながら、
それぞれ新たなスタイルや、かなり斬新な世界観も見せてくれていたと思うのです。
そんな彼だから、もっと何かやってくれるんじゃないかと、
やればできる子だろう!と、どうしても信じたい気持ちがあるのです。
今作が作られることになったいきさつはインタビューなどで語られていますが、
スピルバーグ本人が参加することであらゆることが許され、やりやすくなった反面、
彼に対する遠慮や逆にやりにくい部分もあったと思えるし、そういう意味では、
次回はもっと自由に、よりオリジナリティのある作品を作って欲しいと思います。
主人公ジョーを演じたジョエル・コートニー君がとにかくカワイイ!
彼が何度となく涙が溢れそうになり瞳がうるうるする様子にこちらもうるうる。
彼とチャールズ役のライリー・グリフィス君(この子もカワイイ!)はいずれもこれがデビュー作。
少年グループの構成員をデブ、チビ、メガネ、と定型パターンで揃えて来たのも王道で正解。
そしてそんな男子とはさすがに格の違いを見せつけていたのがエル・ファニング。
この年頃は男の子より女の子のほうがちょっと大人びていて、
少年たちの中でもそんなちょっとお姉さん的な雰囲気をとてもよく出していました。
それにしてもこんな可愛い子がどアップで迫って来たら(しかもゾンビメイクで!)、
ジョーでなくても誰でも恋しちゃいます。
最後の最後、エンドロールのお楽しみも素晴らしく、
映画内映画でこんなに完成されたものもちょっと珍しいかも知れません。
実はこれを一番やりたかったのかも知れないと思うくらい。
いろんな不満点や物足りなさが多いことも含めて、あそこはああかもとかアレはなんだったんだとか、
見終わっていろいろ人と話し合いたくなることもたくさん。
(JJお得意の隠しキャラやお楽しみもいっぱいあって、ファンとしてはそれも楽しい!)
私は観ている間とにかく楽しくて、出来ることならこのままずーっとやっててくれないかなあと、
この少年たちが登場し、映画製作を続ける連続ドラマを夢想してしまったほどでした。
Super 8(2011 アメリカ)
監督 J・J・エイブラムス
出演 ジョエル・コートニー カイル・チャンドラー エル・ファニング
ライリー・グリフィス ライアン・リー ガブリエル・バッソ
ザック・ミルズ ロン・エルダード グリン・ターマン ノア・エメリッヒ
ブルース・グリーンウッド グレッグ・グランバーグ
一般市民が地球外生物と思われるものと遭遇するというストーリー、
舞台となるのが70年代末のアメリカ郊外であることなど、
どうしたって『未知との遭遇』や『E.T.』を思わせるし、
スピルバーグがプロデューサーだからといってここまであからさまってどうなの?
と思う向きもかなりあるみたいで、そこを素直に受け入れ楽しめるか、
鼻についてどうにも乗り切らないでしまうかで相当評価は分かれているようです。
私はあまり小難しいことは考えず意識もせず、素直に楽しめました。
1979年アメリカ。
オハイオ州にあるリリアンという小さい街に住む14歳のジョー(ジョエル・コートニー)は、
工場での不幸な事故で母親を亡くし、父親(カイル・チャンドラー)と二人遺されてしまいます。
その事故から4ヶ月経った夏休み。ジョーは親友のチャールズ(ライリー・グリフィス)らと、
8ミリカメラでゾンビ映画の撮影を行っていました。
いつもの仲間5人での自主映画製作でしたが、脚本の手直しをしていた"監督"のチャールズは、
突然、同級生のアリス(エル・ファニング)を出演者として誘ったことを告げ、ジョーは動揺します。
撮影の日。真夜中の駅に集まったジョーら5人とアリスは順調に撮影を進めていましたが、
突然、彼らの目の前で貨物列車と1台のトラックが衝突。大惨事となります。
そこで彼らはあることを目撃し・・・。
10年ほど前に『エデンより彼方に』という作品がありました。
これはダグラス・サークの『天はすべて許し給う』を元に作られたもので、
監督のトッド・ヘインズはストーリーだけでなく、意図して構図や色調、
音楽の使い方からタイトル文字に至るまで完全にサークの世界を再現して製作したものでした。
私はこの作品を観た時、なぜこんなものを作ったのだろう?と、
ちょっと否定的な感想を持ってしまったのですが、それはサークの世界を完璧に再現することによって、
なんとなくヘンなパロディ作品のようにも思えてしまい、役者たちが熱演すればするほど、
美しい風景が描かれれば描かれるほど、かえってなんとなく趣味が悪いような、
どうにも居心地の悪い感じを受けてしまったのでした。
しかしこれはオスカー候補になったりと評価も高く、絶賛している人もたくさんいて、
こういうのは自分の理解できないところなのか、私ももちろんこれが駄作だとは思いませんでしたが、
好きか嫌いかで言えばどうしても好きになれなかったのでした。
『スーパーエイト』を観たあと、いろんな人の意見を読んでその意見の分かれかたに、
ふとこの『エデンより彼方に』のことを思い出したのでした。
今作も、作られた意味や実際に出来上がったもののクオリティを考えると、
それだけで大歓迎し感動し感謝すらしてしまう人もいれば、逆に最後まで、
上っ面だけ似せた中身のないものと思い、醒めた目で観てしまった人も多かったようで、
そんな風に意見が分かれてしまうのはとてもよくわかる気がするのです。
作品の出来としてどうこうより、こういうのは結局好きか嫌いかでしかないのかも知れないし、
その意味で言えば私は今回、この作品は"大好き"でした。
"Super 8"とはコダックが製造販売していた8ミリフィルムのこと。
ジョーたちが映画製作に用いるこのフィルムの名前がタイトルとなっていることから、
今作で監督が描きたかったのは、ジョーたちの周りで起こる奇怪な事件の顛末ではなく、
少年たちが映画製作を進めて行く中で育んでいく恋や友情、
家族の意味や在り方といったことだったのではないかと思いました。
謎の生物の正体が何であるかとか、地球人対宇宙人の戦いとかいったものではなく、
その謎の生物とそれをめぐるアメリカ軍の軍事機密がどうこういうようなことも、
実際二の次、ワキの話であって、メインテーマは少年たちの友情、初恋、複雑な家庭環境、
親や周囲の大人たちとの関わり、そして何より映画作りといった、
おそらくJ・J・エイブラムスはじめ今作の製作に関わった人々に共通する、
自分たちの少年時代の思い出や思いをこそ描きたかったんではないかと思います。
ジョーたちが目撃するものは殺人事件や死体、謎の財宝でも奥深い洞窟でもなんでもよくて、
けれどもJJとしてはスピルバーグオマージュとしてやはりE.T.を登場させたかったのかもだし、
ジョーズやジュラシック・パークのように無抵抗な人々が襲われる様子も描きたかったのかも知れません。
"それ"は凶暴で、しかし人間と心を通わせることも出来る存在であって欲しかったんだと思います。
その結果、どれもこれもがいつかどこかで観たようなものになってしまい、
うわべだけスピルバーグ風にしてしまったような印象を与え、確かに深みに欠けるところがあるのは否めず、
もう少しストーリーや人物描写を掘り下げて描いて欲しかった気もしますし、
そんなスピルバーグ風なものを作ることにどんな意味が?と思うと、
そこに何の価値も感銘も受けなければ本作は途端につまらないものに思えてしまうのかも知れません。
それはこういう方向でこういう作品を作ってしまった以上、どうしようもないことだと思います。
J・J・エイブラムスはこれまで『M:i:III』『スタートレック』の監督を務め、
いずれもメジャー作品のリメイクという雇われ仕事のようなものばかりをやって来て、
ようやくオリジナル作品を作れることになったら、
スピルバーグをトレースしたようなものを作ってしまうというのは、
結局オリジナリティのない人なんじゃないかとか、小手先だけの人だとか思われそうで、
(・・・まあ実際そうなのかも知れませんが!)だけど前2作はオリジナルのあるものでありながら、
それぞれ新たなスタイルや、かなり斬新な世界観も見せてくれていたと思うのです。
そんな彼だから、もっと何かやってくれるんじゃないかと、
やればできる子だろう!と、どうしても信じたい気持ちがあるのです。
今作が作られることになったいきさつはインタビューなどで語られていますが、
スピルバーグ本人が参加することであらゆることが許され、やりやすくなった反面、
彼に対する遠慮や逆にやりにくい部分もあったと思えるし、そういう意味では、
次回はもっと自由に、よりオリジナリティのある作品を作って欲しいと思います。
主人公ジョーを演じたジョエル・コートニー君がとにかくカワイイ!
彼が何度となく涙が溢れそうになり瞳がうるうるする様子にこちらもうるうる。
彼とチャールズ役のライリー・グリフィス君(この子もカワイイ!)はいずれもこれがデビュー作。
少年グループの構成員をデブ、チビ、メガネ、と定型パターンで揃えて来たのも王道で正解。
そしてそんな男子とはさすがに格の違いを見せつけていたのがエル・ファニング。
この年頃は男の子より女の子のほうがちょっと大人びていて、
少年たちの中でもそんなちょっとお姉さん的な雰囲気をとてもよく出していました。
それにしてもこんな可愛い子がどアップで迫って来たら(しかもゾンビメイクで!)、
ジョーでなくても誰でも恋しちゃいます。
最後の最後、エンドロールのお楽しみも素晴らしく、
映画内映画でこんなに完成されたものもちょっと珍しいかも知れません。
実はこれを一番やりたかったのかも知れないと思うくらい。
いろんな不満点や物足りなさが多いことも含めて、あそこはああかもとかアレはなんだったんだとか、
見終わっていろいろ人と話し合いたくなることもたくさん。
(JJお得意の隠しキャラやお楽しみもいっぱいあって、ファンとしてはそれも楽しい!)
私は観ている間とにかく楽しくて、出来ることならこのままずーっとやっててくれないかなあと、
この少年たちが登場し、映画製作を続ける連続ドラマを夢想してしまったほどでした。
Super 8(2011 アメリカ)
監督 J・J・エイブラムス
出演 ジョエル・コートニー カイル・チャンドラー エル・ファニング
ライリー・グリフィス ライアン・リー ガブリエル・バッソ
ザック・ミルズ ロン・エルダード グリン・ターマン ノア・エメリッヒ
ブルース・グリーンウッド グレッグ・グランバーグ
SUPER 8/スーパーエイト ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- メディア: Blu-ray
こんにちは。
またまた未見の作品についてあれこれ言うのも恐縮なのですが...
すべてのきっかけとなる冒頭の列車脱線場面が、ちと強引だと思うんですよ。たったトラック一台とぶつかっただけで、あんな大惨事にはならないですよね?。娯楽映画にケレン味は大事ですけど、ちとJJやりすぎかな?と(^皿^)。
スピルバーグがどんな監督か?っていう位置付けによっても感じ方が違うと思うんです。オイラにとってスピルバーグは「ジョーズ」の人であり、「プライベート・ライアン」な人なので、例えば「ET」へのオマージュとか言われても食指が全然動きません。
....というか、全然話が変わりますが、「Rio」って日本公開中止なんですか?....ショックです(T皿T)
by 堀越ヨッシー (2011-07-06 15:48)
>少年時代の思い出や思いをこそ描きたかった
これに尽きるんだろうと思いますね。スピルバーグオマージュに関しては観る側がどのくらい思い入れがあるかで評価も変わりそうですが、もう少しエッセンスとして濾過が徹底できれば普遍的な物語になったのかなあと。
自分もこの映画は楽しめましたし好きですね。わんこ達の扱いには少々不満もありましたが(笑)
by chokusin (2011-07-06 20:58)
なるほど、そーなんだ。
覚えとこ。
by ぷーちゃん (2011-07-06 21:03)
ヨッシーさん、こんにちは。
列車脱線シーンは確かにねー。というかあんな大事故なのに...おっと、これ以上はネタバレになるので言えませんがw
一番残念なのは例の生物の造形がちょっとなあということでした。いっそ見せないほうが良かったかなあと。そのあたりに厳しいヨッシーさんだと一層キビシイ意見になりそう。
でもあの脱線シーンはホント見応えあるし、そこそこ凶悪なシーンもあるんで、まずはご覧ください。話はそれからだ!w
ところで、Rioにそんなに興味が!?
by dorothy (2011-07-07 19:55)
chokusinさん、こんにちは。
好きだけど作品としての完成度でいえばイマイチだと思うし、もう一捻りか新たな何かをプラスして欲しかった気がします。
そういう意味ではエンドロールのアレが本編だと言われても仕方ないかも...(泣
わんこ!?ああそういえば確かに!
by dorothy (2011-07-07 20:00)
ぷーちゃんさん、こんにちは。
んんん、どーなんだ?w
by dorothy (2011-07-07 20:02)