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がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン [映画感想−か]

ええっと、なんでコレ観ようと思ったんだっけ・・・そうだ!
監督リチャード・リンクレイターで主演ビリー・ボブ・ソーントンだっ!
リチャード・リンクレイターとビリー・ボブ・ソーントン!!
と、思わず2回言いたくなる、個人的に興味津々な組み合わせで、
そうでなければ、たぶんネタ切れのリメイクものでしょ、と思って観ることはなかったかも知れません。


元マリナーズのピッチャー・・・と言っても2/3イニングしか登板したことがない、
今は害虫駆除の仕事をしているモリス・バターメイカー(ビリー・ボブ・ソーントン)。
アル中で女好き。仕事もいいかげん。そんな彼に少年野球チーム"ベアーズ"のコーチの依頼が来ます。
お金欲しさに引き受けますが、このベアーズ、超弱小チームで野球の基本すらなっていません。
そんな彼らを見てバターメイカーもやる気ゼロで、まともな練習もさせず、当然ながら初戦は大敗。
ライバルチーム"ヤンキース"の監督ロイ(グレッグ・キニア)に、
それをあからさまにバカにされたバターメイカーは、ようやくやる気を出します。
剛速球を投げる娘のアマンダをチームに入れ、本格的な練習を開始します。


えっと、でもカッコイイです
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ウォルター・マッソー&テイタム・オニールの『がんばれ!ベアーズ』
これはその忠実なリメイクです。
この1作目を観たのははるか昔。ほとんど細部は忘れてしまっていて、
憶えていることといえばテイタム・オニールがかわいかったこと、
不良少年ジャッキー・アール・ヘイリーがタバコを吸うことや、
太っちょのキャッチャーの子が常にチョコバーを食べていたこと・・・ぐらいです。

基本的に『スクール・オブ・ロック』のノリに近いものがあるかも知れません。
リチャード・リンクレイターはあの作品を作ったことで、これに起用されたのでしょうか?
子どもたちはいずれも超個性的。
太っちょ、チビなのにケンカっぱやい子、無気力、ガリ勉、アルメニア人にメキシカン双子に車イス!
ここにバターメイカーの娘アマンダと、不良だけど野球センスはバツグンなケリーも加わるのですが、
こんなバラエティ豊かな面々なのに、ちょっとそれぞれの個性が活かしきれなかったような気がします。
どちらかというと大人たちのほうに焦点が当てられているようで、
子どもたち自身が考えたり行動したり・・・というより、
監督や親たちなど、大人側の事情で子どもたちが動かされているような印象を受けました。
子どもたち1人1人にも悩みや葛藤があるわけですが、
それがバターメイカーのやる気1つにかかっていたのがちょっと残念。
ライバルのヤンキースも、監督ロイの意地に振りまわされるし。


大人の事情
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飲んだくれで女好きでいいかげん。ビリー・ボブ・ソーントンはこういうの本当にピッタリです。
子ども相手でもキタナイ言葉や下ネタ満載でサイコーです。
調子いいとかズルイとかいう形容詞が付くヒトといえばグレッグ・キニアですが(!)、
今回も期待どおりのイヤなヤツです。もうちょっとイヤミでも良かったかな。
バターメイカーに監督を依頼する、何かと口うるさい母親にマーシャ・ゲイ・ハーデン。
彼女の役はオリジナルでは父親だったようですが、
母親になったことで、あの展開もアリ・・・なのでしょうか?
娘アマンダと不良少年ケリーがイマイチな見た目と印象の薄さでちょっと残念。
でも2人とも野球は本当にできる子らしく、そこが買われての起用だったのでしょう。


個性的なベアーズメンバー
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ビリー・ボブの口の悪さは予想どおりですが、子どもたちも相当にお行儀が悪いです。
イマドキのアメリカの子どもってこんななんでしょうか。
とにかくズケズケとハッキリ言ってくれます。
こういうの、かわいくてキライじゃないですけどね。
でもあまりお子さま向きとは言いづらい感じです。
オリジナルの『がんばれ!ベアーズ』をまた観てみたくなりました。
あ、そうだ。ベアーズと言えばビゼーの『カルメン』!
今作もオープニングから素晴らしくアレンジされたカルメンがたくさん使われています。


The Bad News Bears(2005 アメリカ)
監督 リチャード・リンクレイター
出演 ビリー・ボブ・ソーントン グレッグ・キニア マーシャ・ゲイ・ハーデン
   サミー・ケイン・クラフト ジェフリー・デイヴィス



がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン スペシャル・コレクターズ・エディション

がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン スペシャル・コレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: パラマウント ジャパン
  • メディア: DVD



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カメレオンマン [映画感想−か]

この作品を初めて観たのはいつだったのか・・・かなーり昔です。
テレビで放送された時になんの予備知識もなく観て、
ただただ、その完成度の高さにびっくりしました。
このたび待望の初DVD化、また、これまで劇場公開もビデオもテレビ放送も、
いずれもナレーション部分が日本語吹き替えのものしか存在していなかったのですが、
英語ナレーション版で発売ということで、ためらうことなく購入しました。


ゼリグとフレッチャー博士
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1920年代のアメリカ。
周りの環境に合わせて姿形が変わってしまうという特異体質の男が発見されます。
彼の名前はレナード・ゼリグ(ウディ・アレン)。
人種や体型、話す言葉も自在に変えてしまう彼を、
ユードラ・フレッチャー博士(ミア・ファロー)が科学的に調査することになりました。
彼を"人間カメレオン"と命名すると、世間は一気にカメレオンブーム。
ヒット曲が生まれ、カメレオングッズがたくさん作られたりします。
他の医師たちはフレッチャー博士の意見に反し、ゼリグの肉体的な異常だけを指摘しますが、
彼女だけは彼の過去や精神的な部分を重視し、治療を試みます。
しかし、ゼリグの姉が彼を見せ物にして一儲けしようと企み、彼を連れ出してしまい・・・。


!!!???
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架空の人物伝とか偽ドキュメンタリーというのは今も昔もいろいろありますが、
ここまで設定がくだらなく、かつとことん作り込んでるのはなかなかないのではないでしょうか。
しかも、まだCGもない時代。この完成度は尋常じゃありません。
過去のドキュメンタリーフィルムにひたすら合成する、
あるいは昔のフィルムっぽく撮影、編集する。
どこまでが本物なのか、作られたものなのか、ほとんど区別が付きません。
確実に、そこにもここにもゼリグがいる!
実際に製作に5年近くかかったと何かで読みましたが、それだけのことは感じられます。
ここから約10年後に『フォレスト・ガンプ』が登場するわけですが、
話題になったガンプとケネディの握手のシーンを見て
「それってカメレオンマンじゃん!」
と思った人も多かったのではないでしょうか?


大統領と並ぶゼリグ
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ゼリグが目の前の人に同化してしまう、というのは、
相手に嫌われたくない、という強い思いの表れからとされます。
それは誰もが少なからず持っている性質であり、
特に、込み入った人間関係を嫌い、自分を隠して相手に表面だけを合わせようとする現代人の性質は、
ゼリグ的と言えるかも知れません。

ゼリグが1人でいる時は、まったくの無の状態です。
彼が一人ぼっちでいるときの何者でもない状況は、切なささえ感じます。
そんな彼に正面から向き合い治療を続けるフレッチャー博士。
やがて2人は恋に落ちる・・・という、お約束と言っていい展開ではあるのですが、
ドキュメンタリーという体裁の中なので、
いつものように延々とアレンが言い訳したりといったことはありません。
それはそれでまた、アレン自らおとなしくなっちゃったみたいな可笑しさがあります。

この話の中に何か教訓や警告があるわけではなく、
単にゼリグの行動や、大真面目にインタビューに答える本物の作家や評論家たちを、
面白がって観ていればいい作品だと思います。
ユダヤ人であるゼリグがバチカンでローマ法王の隣にいたり、
ナチスの党大会会場でヒットラーの後ろにいたりというトンデモなさ&くだらなさ。
ウディ・アレン自身がたぶん一番好きな時代なんだろうと思う20〜30年代のアメリカの風俗を、
あれやこれやと盛りだくさんに楽しめます。
きっと本人も大量の古いニュースフィルムを前にして、
楽しみながら作ったんだろうなあということが想像できます。
ウディ・アレンのこういう完璧なコメディ作品というのは、これを最後になくなってしまいますが、
また、こういうの作ってくれないかな。無理かなあ・・・。


黒人と並べば黒人に・・・
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さて、このDVD、初めて英語ナレーションを聞くことができてそれは満足なのですが、
あのお馴染みの日本語ナレーションは収録されていない!残念!
矢島正明さんの声で解説されると、いかにもドキュメンタリーな雰囲気でいいんですけどね。


Zelig(1983 アメリカ)
監督 ウディ・アレン
出演 ウディ・アレン ミア・ファロー



カメレオンマン

カメレオンマン

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD


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グッドナイト&グッドラック [映画感想−か]

劇場に観に行こうと思った時には終わっていました。
・・・このパターンが実に多くて本当に悲しくなるのですが、
確かにこういう内容では、日本ではなかなかお客さんは入らないかなあとも思いました。


1950年代初頭、ソ連との冷戦状態にあったアメリカは、
共産主義者排除のいわゆる「赤狩り」の嵐が吹き荒れていました。
マッカーシー上院議員が中心となって、学者やマスコミ、一般市民までもが標的となり、
少しでもリベラルな活動をしたり、政府に反抗的態度を取るものは密告され共産主義者と認定され、
職や地位を失います。
誰もが自分が標的にされるのを恐れ、口を閉ざしました。
CBSの報道番組『See It Now』のキャスター、エド・マローと番組スタッフたちは、
そんな世の中に違和感を持ちながらも、日々番組制作を行っていました。
そしてある日、マローが地方紙の小さい記事を見つけます。
それは、ある空軍兵士の身内が共産主義と疑われ、除隊されそうになっているというもので、
彼らはこの事件を番組で取り上げることを決意します。


彼らの目指したものは?
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「赤狩り」と聞いて思い出すのはチャップリンやエリア・カザンといった映画人の名前ぐらい。
この当時を舞台にした映画などを観るとよく出てくるキーワードではあるのですが、
キチンと説明しろと言われると、それはちょっと、となってしまいます。
この作品は、このことをある程度把握していないとあまり理解できない内容だと思うし、
今の日本で、それをわかってこの作品について行ける人はかなり少数なのではと思います。
そういう意味で冒頭の「日本ではお客さん入らないよなあ」の感想になったわけですが。

実際のニュースフィルムなどを多用し、本物のマッカーシーの映像もたっぷりと見せます。
マッカーシーを役者にやらせるのではなく、本物の映像を使うことによって、
ドキュメンタリーを観ているような気分にさせられます。
このマッカーシーの映像を見る限り、この人の言動の矛盾点は明かであり、
これを見せられた視聴者も同じように彼に不信感を持つ結果となるのですが、
実際の番組作りがどのように行われたのか、
スタッフはどういう思いで番組を作り続けていたのか、ということは、
もちろんこれだけではわかりません。


抑えた演技で脇にまわったジョージ・クルーニー
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共産主義者であると勝手に判断され、そのために立場を失っていく人たちがいることを見過ごせない、
そのこと自体は正しいことだと思います。
密告し合ったり、お互い疑心暗鬼になりながら日々を過ごすというのはどう考えても異常なことであり、
そのことに疑問を持ち、そしてそれを報道番組を作るものとして、
世間に知らしめようとする行為は実に正しいと思います。
ただそれが、マローをはじめとするスタッフたちの中でどのくらい切実なものとしていたのか、
どれほどの思いがあったのか、ということが、私には今ひとつ伝わりませんでした。

エド・マローを演じるデヴィッド・ストラザーンの、
終始何か思い詰めたような硬い表情が、何を憂いているのか、
そしてなぜ彼をここまで動かしたのか、ということがよくわかりませんでした。
これが実話であって、アメリカ人にとっては周知のことであるからなのかなとも思いましたが。
本物のエド・マローの写真を見ると確かに憂い顔で、ストラザーンはよく特徴を出していたと思います。
上映時間90分ほどで、無駄なものを一切そぎ落としたようなまとめ方であり、
その潔さはとても好ましいのですが、
ここまで説明が少ないと、私の理解力では追いつけない感じです。

もう一つわからなかった点は、ロバート・ダウニー・Jr.とパトリシア・クラークソンのカップル。
この二人のことだし、要所要所で意味ありげで、てっきり何かあると思っていたんですが、
最後に二人が夫婦であるということを理由に解雇される、というだけ?
"職場結婚禁止"というのも時代を感じさせるものなのかなとも思うのですが。


”秘密”のカップル
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監督のジョージ・クルーニーの父親は実際にニュースキャスターで、
彼自身もジャーナリスト志望だったそうです。
この作品の前に監督した『コンフェッション』では、
テレビ番組『ゴングショー』の司会者チャック・バリスを描いていますし、
テレビというメディアに相当こだわりがあるのではと言われているようです。
両方を観て感じるのは、ジョージ・クルーニーという人は意外(?)にマジメな人なのではないかということです。
この作品も、もう少し娯楽寄りにすることも出来たと思うのですが、
そうはせず、淡々と事実のみを積み上げていくような作りで、
それはとても好感の持てるものなのですが、
結果的に私のような勉強不足、理解力不足な者には冷たい作りになっているとも思えます。

全編モノクロ作品。それも白は白、黒は黒とかなりコントラストがはっきりしていて、
これは、映画的な光と影ではなく、テレビのスコーンと明るい照明を意識したのではないかなと思いました。
そんな固い映像に紗をかけるかのように燻り続けるタバコの煙、煙、煙。
タバコ会社がスポンサーだったことが途中で示されますが、それにしても!
観ているだけで目やノドが痛くなりそうでした。

劇伴が一切なく、ダイアン・リーヴスのゆったりとしたジャズが要所要所で使われているのですが、
これがとても素晴らしい。
スタジオでライブ演奏している、という設定で、
イメージしたのはビリー・ホリデイかサラ・ヴォーンか。
さすが、身内にジャズシンガーを持つ監督ならではのこだわりでしょうか?


Good Night, and Good Luck.(2005 アメリカ)
監督 ジョージ・クルーニー
出演 デヴィッド・ストラザーン パトリシア・クラークソン ロバート・ダウニー・Jr.
   ジェフ・ダニエルズ ジョージ・クルーニー フランク・ランジェラ



グッドナイト&グッドラック 通常版

グッドナイト&グッドラック 通常版

  • 出版社/メーカー: 東北新社
  • メディア: DVD



グッドナイト&グッドラック 豪華版

グッドナイト&グッドラック 豪華版

  • 出版社/メーカー: 東北新社
  • メディア: DVD


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華麗なる恋の舞台で [映画感想−か]

アネット・ベニングがこの作品でゴールデングローブ主演女優賞を受賞、という記憶のみで、
ほとんど期待せず観たのですが、これは観て良かった!
こういうのに出会えると、本当に得した気分になってしまいます。


1938年のロンドン。ジュリア(アネット・ベニング)は名実ともにイギリス演技界のトップ女優。
舞台演出家であり興行主である夫マイケル(ジェレミー・アイアンズ)ともうまくいっていましたが、
連日の舞台に疲れきっており、しばしば夫に当たり散らしたりしてしまいます。
そこに、マイケルの仕事を手伝いにやって来たアメリカ人青年トム(ショーン・エヴァンス)が現れます。
ジュリアの熱狂的ファンだというトムと、あっという間に恋に落ちてしまうジュリア。
とたんに舞台での演技も輝き始めますが、やがてトムが若い女優の卵と付き合っていることを知り、
しかもトムから彼女のデビューの後押しを頼まれる始末。
そこで彼女の取った行動は・・・?


恋は女優を輝かせます
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自分の息子ほどの相手との恋で、途端に明るく輝き美しくなるジュリア。
舞台でも完璧な演技を見せます。
しかし、トムの心変わりという予想どおり(?)の展開を見せ始め、
一旦はボロボロになってしまうのですが、
そこでめげてちゃオンナが、というか女優が廃る!ということなのか、
まさに女優魂全開のクライマックスは、とにかく観ていて爽快です。

いわゆる女優ってこんなかも知れない、と思わせる、
自己主張が強く、気ままで、舞台を降りている時もセリフをしゃべっているかのようで、
流す涙もホンモノかニセモノかわからない。
ジュリアのことをよく知っている周囲の人々はそんな部分も含めて彼女を愛していますが、
若い恋人や新進女優からしてみれば、まったく理解できない"怪物"でしょう。


誰よりもジュリアを愛している?夫
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その周囲の人たち、友人であるチャールズ卿(ブルース・グリーンウッド。素敵!)や、
ジュリアの身の回りの世話を一切任されているアシスタントのエヴィー、
共同出資者の、何かと口うるさい上にアヤシイ趣味のありそうなドリー、
一人息子や田舎の母、叔母など、ジュリアは実に個性的で良い人々に恵まれていて、
それが、彼女が単なる高慢な女優ではないということを示してもいます。
ジュリアの息子は、初めての恋を母に告白しにやって来たかと思えば、
母親の生活を"ニセモノ"だと断じ、自分はそこに生きていたくないと言い放ちます。
しかし彼が母を心から愛していることも後にわかります。


深い友情?で結ばれているチャールズ卿
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最初から最後までアネット・ベニングのまさに一人舞台。
確かにだいぶ年は取りましたが、相変わらずチャーミングで、
恋をした途端に少女のように愛らしくなり、
嬉しいことがあるとケラケラと笑い、とにかく憎めません。
アメリカ人である彼女がイギリスのトップ女優を演じるというのは、
一見ミスキャストのようにも思えますが、
この役は彼女で納得といえる素晴らしさでした。

夫のジェレミー・アイアンズは、こういう軽やかな演技は実にうまい。
妻を妻として愛しているのか、女優であることを愛しているのか、
その辺の微妙な感情を実に良く表しています。
ジュリアとトムの関係を本当に知らなかったのか、
もしかして彼がトムをジュリアに”あてがった”のではないかという気すらするし、
そう考えるといろんな部分で彼もジュリアに負けず劣らずしたたかさであると言えます。

そしてなんといっても楽しいのは、
ジュリアの恩師ラングトンを演じるマイケル・ガンボン!
彼はすでに亡くなっているのですが、ジュリアにだけは"見えて"いて、
彼女の守護霊のようにつきまとい、常に彼女に”演技指導"をします。
彼が言う「劇場の外はすべて虚構、舞台の上だけが真実だ」という言葉を、
ジュリアは否定しつつも、結果的にそれを体現して見せるのです。


心の声?ラングトン
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監督はハンガリーの巨匠、イシュトヴァン・サボー。
これまでの彼のフィルモグラフィーからすると、ちょっと驚きのコメディーと言えますが、
登場人物すべてに対する目配せや、観ているこちら側に想像力を働かせる余地の与え方など、
落ち着いた演出力はさすがだと思いました。
先日観た『ヘンダーソン夫人の贈り物』と舞台や時代設定がほぼ同じですが、
あちらはかなり早くから戦争の影が濃く出ていたのに対し、こちらはあまりその影響を見せていません。
一人の女優の生き方を描くことに集中し、あえて戦争を意識させない作りにして、
そのことが結果として"舞台の上だけが真実"という言葉に重みを与えているように思いました。


Being Julia(2004 カナダ/アメリカ/ハンガリー/イギリス)
監督 イシュトヴァン・サボー
出演 アネット・ベニング ジェレミー・アイアンズ マイケル・ガンボン ブルース・グリーンウッド
   ショーン・エヴァンス ジュリエット・スティーヴンソン ミリアム・マーゴリーズ



華麗なる恋の舞台で デラックス版

華麗なる恋の舞台で デラックス版

  • 出版社/メーカー: GENEON ENTERTAINMENT,INC(PLC)(D)
  • メディア: DVD


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クローバーフィールド HAKAISHA [映画感想−か]

今年一番の個人的期待作。観てきました!

ある日、ニューヨークを正体不明の"何か"が襲います。
それはどこから来たのか、何者なのか、まったくわかりません。
街中を破壊し、人々を襲います。
その日、マンハッタンのアパートの一室でパーティを開いていた人たち、
彼らの中の一人がハンディカムを回していました。
そのカメラに、その謎の事件の一部始終が収められていて、
私達はそれを観ている、という設定です。
そのカメラは"かつてセントラルパークと呼ばれた地点で回収された"と冒頭で説明されます。
かつて?ということは、今は存在しないということ・・・?

主な登場人物は6人。
ロブとジェイソンの兄弟に、それぞれの恋人であるベスとリリー。
そして友人のハッドとマリーナ。
ロブはベスとパーティで言い争い別れてしまうのですが、
そこに、この悪夢が始まってしまいます。
逃げまどう中、ロブは身動きの取れなくなったベスからSOSの電話を受けてしまい、
彼女を助けに戻ります・・・。


ロブとジェイソン兄弟、そして"カメラマン"ハッド
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とにかくリアル。
911テロをイヤでも思い出させるビルの倒壊シーンは、
よくこれをニューヨークを舞台にして作ったなと、その勇気に感心してしまいます。
揺れる映像とものすごい振動は、確実にそこにいる気分にさせます。
実際にこういう場所にいたらこう見えるだろうなという、
周りでいったい何が起こっているのかわからない恐怖。
手持ちカメラでの映像のみであるために、見えるものがとても限定されるのですが、
見えていない部分でも確実に何かがそこにあり、何かが起こっていることが伝わってきます。

ブルックリンブリッジはどう見ても本当に落ちてるし、
ヘリコプターは確実に墜落しています。
マンハッタンの街を”何か”がものすごい振動で歩いています。
もちろん、そんなことは今やCGでいくらでも作ることは可能であり、
どんなにありえない映像もめずらしいものではありません。
でも、それらをいかにもこのハンディカムで撮影したんだという風に作るという、
そこにどれだけの緻密な計算があるかと思うと、本当に驚異!です。


大迫力!の音と映像
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それと、単に彼らがパニックになって逃げまどっているだけというのではなく、
ロブとベスのラブストーリーがベースにあるというのも重要な要素となっています。
ロブがベスを助けに行くという行為があったために、
彼らはどんどん悪い状況に追い込まれるわけだし、
この撮影されたテープが、そもそも二人が以前撮ったものに重ね撮りしてしまっていて、
撮影を止めた時に、一瞬関係ない過去の二人のデートシーンが出てきてしまったりします。
それが切なくもあり、謎のエンディングにも繋がっていくという構成の面白さ。


助かった・・・?
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よく言われていることですが、発想としてはまったく『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』で、
その点だけでは目新しいものではありません。
そして『ブレア・ウィッチ〜』がそうであったように、
この映画が、10年後、20年後まで残る作品だとも思えません。
いまこの瞬間の一発勝負的なものであることは否めません。
そういう意味で、これは"映画"ではないかも知れない。
でも娯楽という意味では、公開前の(また公開後の)プロモーションも含め、
これほどのエンタテインメントはないと思うのです。

前も書きましたが、『LOST』好きなもので、
このなんだかわからないけどとにかく驚かしてやろう、みたいな感じが
『LOST』の世界観とどこか共通していて、本当に単純に楽しめました。
そんな私でも、心の中で2、3度ツッコミを入れていました。
そうまでして撮っていたいの!?とか、とりあえずカメラは放置して逃げようよ、とか、
いったいどれだけ頑丈なカメラなの?とか・・・。
楽しんで観ている私でもそうなのだから、たぶんそこに不満やノレないものを感じる人には、
あっさり「NO!」と言われるのかも知れません。


助けに来た!
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揺れまくりの映像に対する拒否反応もあるようですが、
劇場のチケット売り場のお姉さんにも
「気分が悪くなるかも知れませんが?」と念を押されましたが、私は全然平気でした。
『ブレア・ウィッチ〜』でも『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(!)でも平気だったので、
そもそも不安ではなかったのですが、でもまあ、さすがにちょっと疲れはしました。
とりあえず前方の席に座らないようにして、
できればあまり字幕を読まないようにするといいかも知れません。
私は読まないわけにはいかないので、冒頭のパーティシーンがつらかったですが。
このパーティシーンはちょっと長く、画面の揺れや切り替えもかなり多いのですが、
登場人物の関係性がここで説明されるので、ちょっとおろそかにできません。
そこから先はそれほど大したことはしゃべってないし(しかも字幕担当はT女史だし!)
多少でも英語が聞ける人は字幕を見ないようにすることをオススメします。

アメリカでは事前のプロモーションが相当盛り上がっていたのに、
日本国内ではほとんどなかったのではないでしょうか。
とりあえず興行成績1位を獲得したようでメデタシですが、
これだけ日本への目配せが詰まった内容なのに、ちょっと残念。
日本でどれだけの人が「タグルアト」「スラショー」のことを知ってるのか・・・まあ、
知らなくても大して影響はない、かもですけどね。

続編の話もあるようですが、これはちょっと微妙。
別の視点(別のカメラ!?)から観たもの、なんて話も出ていますが、
観てみたい気もするし、ここで止めておいたほうがいいような気もします。

まだまだ言いたいことがたくさんあるんですが、
今日はこのくらいにしておこうかな。
それにしても、自分でもあきれるぐらいの興奮状態!
少しクールダウンしなくちゃです。


Cloverfield(2008 アメリカ)
監督 マット・リーヴス
出演 リジー・キャプラン ジェシカ・ルーカス T・J・ミラー マイケル・スタール=デヴィッド
   マイク・ヴォーゲル オデット・ユーストマン 
    


クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション

クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD



クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション (Blu-ray Disc)

クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション (Blu-ray Disc)

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: Blu-ray


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