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アンソニーのハッピー・モーテル [映画感想−あ]

ウェス・アンダーソンの初監督作品、
そしてオーウェン&ルーク・ウィルソン兄弟のデビュー作です。
アメリカのクライテリオン社がついにブルーレイディスクをリリース、
『第三の男』や『ラストエンペラー』なんていう、
最初に発表されたゴージャスなラインナップの中に、なぜかこのタイトルが!?
いつかは観たいと思っていた作品だったのですが、
それほどの名作だったの!?と慌ててレンタルしてみました。
モノによちゃあ"買い"なのかも、と思いつつ・・・。


心の病で精神療養所に入所していたアンソニー(ルーク・ウィルソン)。
晴れて"退院"となった彼を迎えた悪友ディグナン(オーウェン・ウィルソン)は、
さっそくアンソニーに強盗計画を持ちかけます。
金持ちの息子ボブ(ロバート・マスグレーヴ)も仲間に加え、
大物犯罪者のヘンリー氏(ジェームズ・カーン)をバックに犯罪計画を進めていきますが・・・。


心の病?アンソニー
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元々、ウェス・アンダーソンがウィルソン兄弟と一緒に大学時代に作った短編で、
これが認められ、自ら長編作としてリメイクしたものがこの作品。
脚本はもちろんオーウェン・ウィルソンとの共作、
この時はまだオーウェン・C・ウィルソン名義です。
さすがに兄弟2人とも若い!

で、先に告白してしまうと、
実は私はどうしてもウェス・アンダーソン作品にノレなくて、
最初に観たのが『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』だったのですが、
大好きな人がこんなに出演しているのに、どうしてこんなにダメなのだろう?
と、軽くショックを受けたほどでした。
そのあとの『ライフ・アクアティック』は結構好きでしたが、
あちこちで絶賛されていた『天才マックスの世界』も「う〜ん」という感じでした。
どの作品もすごく共通点があって、画面の作り方だけ観てもすぐに、
「あ、ウェス・アンダーソン作品だ」とわかるぐらい独特なものがあって、
映像の作り方や音楽の使い方など、それは決してイヤでもキライでもない、
むしろ好きなほうなのに、いつも「う〜ん」という感想になってしまいます。
今年公開された『ダージリン急行』も、なんだか怖くて観に行けませんでした。


困ったヤツ、ディグナン
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さて、今作。強盗計画と言ってもまったくのんびりしていて、
恐ろしげでも血まみれでも(あ、血はたびたび登場しますが)ないのですが、
要するにオーウェン・ウィルソン演じるディグナンがとことん困ったヤツなわけで、
じゃあほかはしっかりしているかというとそんなこともなくて、
アンソニーはモーテルの客室係のイネス(ルミ・カヴァゾス)と恋に落ちてしまったり、
(このあたりからこの最低最悪な邦題は付けられたのでしょうか?)
ボブは自分のせいで兄ジョン(アンドリュー・ウィルソン)が逮捕されるしと、
計画はさっぱり、うまく進みそうもありません。
もちろん、この強盗計画がメインテーマということじゃなく、
合間合間のゆるーいノリ・・・いわゆるオフビートな笑いとでも言うのでしょうが、
このあたりを素直に楽しめれば、それでいいのだと思うのですが。

アンダーソン作品でよく登場する、画面の後ろのほうで何かコトが起こってるとか、
そこ、大事なところ?といいたくなるような細かいこだわりとかが、
ここでもたびたび登場します。
アンソニーとイネスがラブラブ(?)な時に、後ろでディグナンが殴られてたりとか、
本屋に強盗に入って、お金を詰める袋が小さかったり、
逃げながらもアンソニーがよくわからない本を持ち出したりとか。
その辺はどれもユルいギャグなんだと思うんですが・・・やっぱりどこか微妙。


パーティしてる場合じゃない
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ルーク&オーウェンの芸風は既に確立しているというか、
若いということ以外、まったく違和感なし。
作風がこんなだということもありますが、
このチカラの抜け具合を見てると、デビュー作なんて気負いはまったくなし。
気の合う仲間たちで作ったという気楽さもあったのでしょうが、
かといって素人っぽさはまったくなし。実にキチンとよくできています。
でも、この中で唯一のスターと言ってもいいジェームズ・カーン、
さすがに彼は登場しただけで場を持っていくというか、アヤシイ大物ぶりを発揮していました。
ボブの兄ジョンを、まさにギャフンと言わせるという表現がピッタリなシーンが登場するのですが、
ここはなんとも爽快!

原題は『Bottle Rocket』で、打ち上げ花火とかロケット花火の意味。
劇中いろんな花火を買い込み、ディグナンが何度となく打ち上げます。
花火の持つ、そのはかない雰囲気は彼らの行動、
特に計画を立てながらも行き当たりばったりのディグナンを表しているように思えました。
若さ故のはかなさ、危なっかしさみたいなものを描きたかったのかな・・・なんて、
テーマは何?と考え出すと、やっぱり「う〜ん」となってしまう。
でも、ずっと心のどこかに何かしら残っていたりもするのです。
そろそろ、頑張って『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』に再挑戦してみようかな。
何か新しい発見もあるかもしれない。


Bottle Rocket(1996 アメリカ)
監督 ウェス・アンダーソン
出演 ルーク・ウィルソン オーウェン・ウィルソン ロバート・マスグレーヴ
   アンドリュー・ウィルソン ルミ・カヴァゾス ジェームズ・カーン



アンソニーのハッピー・モーテル [DVD]

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アイス・ハーヴェスト 氷の収穫 [映画感想−あ]

ジョン・キューザック出演作品にハズレ無し。
・・・と常々思っていたのですが、
でもやっぱりハズレもあるんだろうなあ、と、
観ていなかった、日本では見事にビデオスルーだった作品を鑑賞。
さて、その結果は・・・?


クリスマスイブのカンザス州ウィチタ。
マフィア専門の弁護士チャーリー(ジョン・キューザック)は、
相棒のヴィク(ビリー・ボブ・ソーントン)と共謀し、
顧客であるマフィアのボス、ビル(ランディ・クエイド)の裏金200万ドルを盗み出すことに成功。
チャーリーはこの金を持って、ストリップバーを経営するレナータ(コニー・ニールセン)と共に、
この町を離れようとしていました。
しかし、金を盗まれたことに気づいたビルの手下が彼らを捜し始め、
その上、ヴィクは金を持ったままどこかに姿を消してしまい・・・。


こんな町は早く出よう
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チャーリーとヴィクが奪った大金を持って町を出ることができるか?
・・・というのがメインのお話しなのですが、
ヴィクは途中で姿を消してしまうし、
チャーリーはいろんな出来事に巻き込まれるしで、話は脇に逸れがち。
ストリップバーのバーテン、シドニー(ネッド・ベラミー)はいざこざを起こすし、
元妻の現夫、ピート(オリヴァー・プラット)のこともかまわなくちゃならない。
この脇に逸れた話が最後にひとつになる・・・というのなら面白いのですが、
残念ながらそうはならないのです。

町には氷雨が降り、そこいらじゅうが凍結していて、
人もクルマもツルツルと滑ってしまうぐらい冷え切っています。
これは夏場に観ると涼しくなれて良かったかも。
その暗く凍える空気が、フィルム・ノワール的世界をよく出しているようないないような。
そう、いかにも場末なストリップバー、レナータの服装やヘアスタイル、
マフィアの裏金、ナイフやピストル・・・と、雰囲気はフィルム・ノワールしています。
原作の設定は70年代だったそうで、それを現代劇にしたことの意図もよくわかりません。
現代的なのは携帯電話があることぐらいだし、連絡を取り合うためにはまあ必要ではありますが。


味方なのか裏切り者なのか
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というわけで、この作品をコメディにしたかったのかサスペンスにしたかったのか、
どちらかに絞ればうまくいったのではないかと思います。
その方向性が見えないと、チャーリーとヴィクの湖でのやりとりとか、
彼らの行動1つ1つを笑っていいやら、シリアスに受け止めていいのやら・・・と、
観ているこちら側は置いてけぼり状態になってしまうのです。

世の中には、サスペンスとコメディが上手く融合した作品はたくさんあります。
コーエン兄弟の作品なんか、まさに成功例のオンパレード!だと思うし、
ジョン・キューザック絡みで言えば『ポイント・ブランク』なんかまさにそんな感じ。
そんな路線を目指したのかも知れませんが、見事に外れてしまっています。
こんなに良いキャストを揃えて本当にもったいない。
しかも監督は『恋はデジャ・ブ』や『アナライズ・ミー』のハロルド・ライミス・・・なのにです。
この人、最近はまた俳優業のほうが多いみたいで、
フラットパック映画に出まくったりしてるから腕が鈍ったのかしらん?
アメリカ版の『The Office』の演出したりしてるみたいですけど、大丈夫なのかな?
映画作りって難しいことなんですね。
ちなみに新作はジャック・ブラック主演作で、
『スーパーバッド 童貞ウォーズ』のマイケル・セラとクリストファー・ミンツ=プラッセも出てるし、
オリヴァー・プラットも出てます。期待しても大丈夫かなあ?


オリヴァー・プラット!いいなあ
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ジョン・キューザックとビリー・ボブ・ソーントンは期待通りの仕事ぶり。
ビリー・ボブの使い方はちょっともったいない気もしましたが。
今作で一番良い味を出しているのはオリヴァー・プラット!
いろんな作品でよく見かける人ですが、この人すごくいいなあ。
ずっと酔っぱらってるだけ、とも言えますが。
裏金強奪の話より、この元夫と現夫の話で一本作って欲しかった感じです。
2人の元・現妻の両親とチャーリーの子どもたちのキャラクターとか、
ワンシーンしか出てこないのに、すごいドラマがありそうだったし。
まあそんな風に見せてたのも、オリヴァー・プラットのおかげとも言えそうです。

ジョンキューとビリーボブ好きな人以外にはちょっとオススメできませんが、
オリヴァー・プラットの名前にピンと来た人にはオススメ。
なんだそりゃ?って感じですね。


The Ice Harvest(2005 アメリカ)
監督 ハロルド・ライミス
出演 ジョン・キューザック ビリー・ボブ・ソーントン コニー・ニールセン
   ランディ・クエイド オリヴァー・プラット ネッド・ベラミー



アイス・ハーヴェスト 氷の収穫 (ユニバーサル・セレクション2008年第10弾) 【初回生産限定】

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ウォンテッド [映画感想−あ]

最初に予告編を観たときに思ったのは「今さらマトリックス?」
キャラクターの設定や映像の作り方はどうみても『マトリックス』。
ただ、メインキャラクターが3人とも好きな俳優だし、びっくり映像も大好き、
聞こえてくる評判もなかなか良さそうだったので、これはものすごく期待大でした。


何もかもうまくいかない日々を送っているウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)。
ある日、そんな彼の前に謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)が現われます。
彼女はウェスリーの父親を知っていたと言い、彼をある組織のもとへと連れて行きます。
幼い頃に生き別れた父の秘密、そして自分の"素質"を知らされたウェスリーは、
この組織で暗殺者となるべく、訓練を始めますが・・・。


ジェームズ・マカヴォイ、カッコイイ!
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サエない主人公ウェスリーが特訓を受けて目覚めていく、その過程はなかなか楽しめました。
最初に説明される彼のストレス、それによって起こるパニック障害の説明も適切で、
預金残高がなくてATMにバカにされちゃうあたりの演出も面白い。
そんなこんながあって、自分の可能性に目覚めてしまうというのは説得力があります。
特訓だからって、あんなにボコボコにされなきゃなのかなあとは思いますが。

フォックスが登場するドラッグストアの銃撃戦、
そしてそのあとのカーチェイスもかなりの見応えです。
クルマを使うシーンはこのあといくつも出てくるのですが、
これがどれもこれも「そんな無茶な!」なんですが、なかなか見せてくれます。
それから、予告編でも登場する曲がる銃弾。
これは究極の「ありえない!」なんですが、これができるなら百発百中・・・ではないのですね。
スローで見せる銃弾、その銃弾同士がぶつかり合うビジュアルも楽しいです。

そして「ありえない!」というより「これ欲しい!」のが、あっという間に傷を治すお風呂。
これがあるおかげでボコボコにされても翌日には顔の傷もなくなってるという!
そもそも映画では「あんなにケガしたのにもう腫れもカサブタもないの?」というのはよくあることですが、
このお風呂の言い訳が、次のシーンの傷メイクをしなくて済む理由になってる・・・?
あのお風呂、何でできてるのでしょう?全身固まって窒息しちゃいそうですけどね。


アンジー、当然カッコイイ!
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気になる点、気に入らない点もたくさんあります。
ストーリーが破綻しているというのはあまり気にしません。
あの機織り機の意味はまるでわからないけど、そもそも何もかもがありえない設定だし、
そのありえない世界の中ならなんでもアリなわけで、細かいところに箸をつっこむ気はありません。
それより、私がこの作品に大きくマイナスポイントを付けたのは列車事故のシーン。
「1人を倒して1000人を助ける」って話じゃなかったんでしょうか?あれ、乗客全員死亡ですよね。
とりあえず殺される理由がある人は、その理由がどうであれストーリー上死ぬのはかまわない。
でも、まったく関係ない一般人を巻き込むのは絶対にダメ。
せめて「これって死人が出ててもおかしくないよね?」と思わせるぐらいで留めておくべきだと思います。
街中のカーチェイスもたぶん死人は出てるでしょう。思いっきりバスに突っ込んでたし。
でも、これは世の映画のカーチェイスすべてに言えることですが、
クルマが大爆発でも起こさない限り"おそらく、大丈夫"と曖昧なままで終わらせられます。
でも、あの列車のシーンは絶対ダメ。あれで一気に気分が悪くなりました。

それと、あの組織内にいた人たちの立場もどうなのでしょう?
憎むべきはスローンだけなのでは?
でも、そのラストシーンでのフォックスの"判断"は正しい。
さすがアンジーにはいいところを持って行かせました。


モーガン・フリーマン、やっぱりカッコイイ!
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個人的に苦手な刃物バトルとネズミもちょっとカンベンして欲しかったです。
大好きなピーナッツバターが当分食べられそうにない!
豪華なキャストとこれでもかのVFXで誤魔化されてる気がしますが、
作品としては思いっきりB級映画。
ダニー・エルフマンの音楽も高級感を出すのに一役買ってますが、
ちょっと静かで感情的なシーンにも延々流れる音楽の使い方は安っぽいメロドラマ風で、
このあたりもB級っぽさ満点です。
それを悪いとは思わないし、何も考えずに観るストレス解消映画としたらよくできていると思います。
上に書いたようなことを「なんで?」と思いながらも、
終盤でウェスリーが大勢を一人で相手にするシーンは素直にカッコイイ!と思いました。
ストーリーが破綻しているとはいえ、どんでん返しな展開もおおっと思わせられたし、
ちゃんと最初のシーンが伏線になっているオチも納得。
そんなこんなで、結局なんだか中途半端で惜しいというか、
読み捨てられるマンガのような作品、という感じを受けました。
こう考えると『マトリックス』は偉大だったのだなあ。時代もあるのでしょうけど。
これも3部作になる、なんて話もあるようですが、
『マトリックス』でさえあの惨状だったのだから、止めた方がいいのでは・・・。


Wanted(2007 アメリカ)
監督 ティムール・ベクマンベトフ
出演 ジェームズ・マカヴォイ モーガン・フリーマン アンジェリーナ・ジョリー
   テレンス・スタンプ トーマス・クレッチマン コモン 



ウォンテッド リミテッド・バージョン [DVD]

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80デイズ [映画感想−あ]

目的はウィルソン兄弟!
これはジュール・ヴェルヌの小説を映画化した『80日間世界一周』のリメイク。
うーん、リメイク?


19世紀末のロンドン。イングランド銀行から翡翠の仏像を盗み出したラウ・シン(ジャッキー・チェン)は、
警察の追っ手から逃れるために、発明家のフィリアス・フォッグ(スティーヴ・クーガン)の屋敷に逃げ込みます。
ラウ・シンは名前をパスパルトゥと偽り、成り行きでフォッグの助手になります。
そのフォッグは、王立科学アカデミー長官のケルヴィン卿(ジム・ブロードベント)に、
「80日間で世界一周できる」と口走ってしまい、賭けに乗せられてしまうことに。
こうして2人の無謀な世界一周の旅が始まりますが・・・。


ラウ・シンの目的は・・・
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1956年作『80日間世界一周』はすごく昔に観ました。
ダンディなデヴィッド・ニーヴンのフォッグと、パスパルトゥは陽気なメキシコ人、
シャーリー・マクレーンがどこかの国のお姫様で、
フランク・シナトラやバスター・キートンが登場したり・・・とキャストも豪華で、
ここでちょっと書きましたが、楽しいタイトルバック、
そしてあの有名なテーマ音楽と、とても印象深い作品でした。
お約束のトンデモな日本描写も微笑ましく(でもちゃんと日本ロケしていた!)、
のんびりとした雰囲気の中、世界旅行の楽しさを充分見せていた作品でした。

さて今作。フォッグのキャラクターがちょっとマッドサイエンティストっぽかったり、
旅の始まりから同行するフランス娘モニク(セシル・ドゥ・フランス)がいたり、
いろいろアレンジされていますが、何と言っても一番の違いはパスパルトゥ。
主役はこのパスパルトゥことジャッキー・チェンです。
話の半分以上はジャッキーがどうやって故郷に翡翠の仏像を持ち帰るかだし、
それを追って謎の女将軍(カレン・モク)とその一味とのバトルが繰り広げられるし、
これのどこが『80日間世界一周』?


3人は中国へ
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私はジャッキー映画とはほとんど縁がなくて、
テレビで『蛇拳』や『酔拳』をやってるとつい観てしまう・・・というぐらい。
その後彼がスーパースターとなってからの作品はほとんどまともに観ていません。
そんななので、今作のジャッキーのバトルシーンがどの程度のレベルなのかわかりませんが、
でも充分に楽しめました。
逆に言うと、それ以外の部分がどうもイマイチ。
スティーヴ・クーガンは好きな俳優なんですが、今回は完璧に脇役。
セシル・ドゥ・フランスという女優さんはたぶん初めて観たのですが、
魅力的なのかどうか微妙。
豪華さを期待したキャストも、シュワちゃんの怪演は面白かったけれど、
目的のオーウェン&ルーク・ウィルソンも、なんだか1日仕事だったのねって感じで、
もうちょっと絡んで欲しかったです。
兄弟が兄弟役なのはとっても嬉しかったですが。
サンフランシスコのホームレスのロブ・シュナイダーはさすがに場を持っていってくれました。
中国系キャストはほとんどわかりませんが、サモ・ハン・キンポーはなぜかわかるのでした。
最後に登場するキャシー・ベイツのビクトリア女王はもうひとつインパクトがなかった。
あらかじめ登場がわかっていたから意外性がなかったのかも知れません。


ジャッキーがんばってます
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80日間で世界一周できるかどうかというドキドキ感は皆無と言ってよくて、
中国への寄り道が長すぎるし、日本にも立ち寄ってくれません。
最後のイギリスへの戻り方はちょっと反則に近いし、不満な点が多すぎます。
はっきりジャッキー映画と割り切って観れば納得だし楽しめると思いますが、
そこまで変えてしまうなら、最後にもう一回ジャッキーの故郷に帰る、
・・・なんていうのもいいんじゃないかなと思いました。
何も考えずにのんびり楽しむジャッキー映画、ということではよくできているのかも。
映像はとてもキレイだし、豪華なディズニーお子さま映画としたら合格点かも知れません。
くしゃみすると自由の女神の鼻から・・・なんてベタなギャグは子どもには絶対受けそう!


Around the World in 80 Days(2004 アメリカ)
監督 フランク・コラチ
出演 ジャッキー・チェン スティーブ・クーガン セシル・ドゥ・フランス ジム・ブロードベント
   カレン・モク アーノルド・シュワルツェネッガー サモ・ハン・キンポー ロブ・シュナイダー
   ルーク・ウィルソン オーウェン・ウィルソン ジョン・クリーズ キャシー・ベイツ



80デイズ

80デイズ

  • 出版社/メーカー: 日本ヘラルド映画(PCH)
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大いなる遺産 [映画感想−あ]

これまでに何度も映画・ドラマ化されているチャールズ・ディケンズの名作。
これはその中の、1946年デヴィッド・リーン監督作品です。


両親を亡くし、姉夫婦に育てられている少年ピップ。
ある日、両親の墓のある沼地で1人の脱獄囚を助けます。
それから1年後。ピップは近所に暮らす変わり者で知られる、
ミス・ハビシャムの家に呼ばれます。
彼を屋敷に迎え入れたのはエステラという名の美少女。
彼女に淡い恋心抱いたピップは、毎週この大邸宅を訪れるようになりますが、
14歳になり、義兄の鍛冶屋の見習いになることになり訪問をやめます。
そして6年後、20歳になったピップの元にロンドンから弁護士が訪ねて来て、
ピップがある人物の莫大な遺産を相続することになったと告げます・・・。


少年は脱獄囚を助ける
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ディケンズの原作は恥ずかしながら未読。
98年にアルフォンソ・キュアロンが監督したものは観ましたが、
ハッキリ言っていまいちピンと来ない作品でした。
謎の夫人を演じるアン・バンクロフトのインパクトしか記憶にありません。
10年経って、もう一度観てみると違う感想も持てるかも知れませんが・・・。

さて今作ですが、舞台設定は原作通りの19世紀初頭。
当時のイギリスの階級社会が巧みに表現されており、
また、さすがデヴィッド・リーンと言えそうな優雅で細やかで、かつ大胆な映像は、
隅々まで実に魅力的で見応えがあります。
前半の少年ピップの視点で見る世界・・・裕福とは言えない自分の家と、
大きいけれど廃墟のような大邸宅の違い。傲慢だけれど惹かれてしまう少女の美しさ。
少年期の未熟さの中で過ごす世界は狭く、未知なるもので溢れています。
そして青年となったピップは莫大な遺産を相続し、ロンドン暮らしを始めることになりますが、
単に成長しただけでなく、暮らしのすべてがこれまでと異なり、
いろいろなものが見えて来て、また彼自身のものの見方も変わってきます。


謎の老女と美少女の正体は・・・
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成長したピップがロンドン生活の中で少しずつ洗練され"紳士"となっていく過程、
エステラへの届かない想い、そして彼のパトロンがいったい誰なのか、
そのパトロンが明らかになってからの展開など実にドラマが多く、
どこか寓話的ですらあった少年期と違い、次々と起こる出来事はスリリングですらあります。
また登場人物それぞれが実に個性的で、見応えがあるのも作品を面白くさせていると言えます。
成長したピップを演じるジョン・ミルズは、田舎から都会へ出てきた青年の機微をうまく演じていますが、
この時すでに38歳で、さすがに20歳の青年を演じるのには額のシワが深すぎ。
この点だけが、この作品中ちょっと残念な部分でした。
ピップの親友ハーバートを演じるのはアレック・ギネス。
これは彼の映画デビュー作だそうで、彼もこの時すでに32歳ですが、
ジョン・ミルズよりはまだ青年に見えます。


サー・アレック・ギネス。若い!
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バーナード・ミルズ演じる、人の良いピップの義兄ジョー、
フランシス・L・サリヴァンの合理的でエネルギッシュな弁護士ジャガーズ、
この2人の存在感も素晴らしい。
そして少女時代のエステラを演じるジーン・シモンズの美しさ。
強気で何かとピップに冷たく接する姿は若いヴィヴィアン・リーのようです。

デヴィッド・リーンというと『戦場にかける橋』や『アラビアのロレンス』など、
"超大作"を作る監督というイメージだったのですが、
初期のこういった"小品"も、格調高くきっちりと作ってあるのはさすがです。
でもそんな中に意外な構図が見え隠れしたり、細かい心の動きを音楽や効果音で表したりといった、
60年以上前の作品とは思えない大胆な演出も見られます。
沼地での光と影。風のざわめき。心の声。ホコリや蜘蛛の巣で覆われながらも美しい屋敷。
夜に漕ぎ出す小舟。雑踏の中をふらつきながら歩くピップ。
運命に翻弄され、すべて他者に振りまわされるように生きてきた彼が、
"幕引き"ではなく、”幕を開ける”ことによって自分自身の人生を歩み始めるラストの素晴らしさ。
クラシックの名品。機会があればぜひ。


Great Expectations(1946 イギリス)
監督 デヴィッド・リーン
出演 ジョン・ミルズ ヴァレリー・ボブソン ジーン・シモンズ バーナード・ミルズ
   フランシス・L・サリヴァン アレック・ギネス



大いなる遺産

大いなる遺産

  • 出版社/メーカー: 東北新社
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