SSブログ
映画感想−た ブログトップ
前の5件 | 次の5件

ダージリン急行 [映画感想−た]

残念ながら私にとっての鬼門と言っていい、ウェス・アンダーソン作品。
ついに向き合う時が来ました。というほど大袈裟なもんじゃないですが。


父親の死から1年。長男フランシス(オーウェン・ウィルソン)の提案で、
次男ピーター(エイドリアン・ブロディ)、三男ジャック(ジェイソン・シュワルツマン)の3兄弟は、
インド北西部を走るダージリン急行で落ち合います。
バイク事故で瀕死の重傷を負ったフランシスはその体験から、
再び兄弟の結束を固めようと思いこの旅を計画したのですが、
3人はことあるごとに衝突し、またあちこちでトラブルを起こしてしまいます。


もめる
thedarjeelinglimited_1.jpg


感想。兄弟っていいなあ、インドはブルーがキレイだなあ、
こんな列車の旅、一度でいいからしてみたいなあ・・・そんな感じ。
というのではあんまりですが、これ以上のことは感じられませんでした。
例によって出演者は好きな人ばかりだし、みんなとても良い演技を見せて、
映像はキレイだし音楽は絶妙だし、でもやはりそれ以上は響いてこなかった。
イヤな感じを受けることもほとんどないんですが、なぜかなあ。
いろいろ好きなものが満載だからこそ、評価が辛くなるのかも知れません。
私にはウェス・アンダーソンは絶対に友だち以上になることのできない、
深く理解し合えない相手なのかも知れません。

まるで似てない3兄弟、彼らのキャラクターとやりとりは結構おかしくて、
そのあたりは楽しめました。
オーウェン・ウィルソンとジェイソン・シュワルツマンは良い意味でいつも通り、
そこにアンダーソン作品初参加のエイドリアン・ブロディが加わることで、
なんとも言えないアンサンブルを見せてくれました。
それにしても、こんなに男3兄弟って仲が悪いものなんでしょうか?


さらにもめる
thedarjeelinglimited_2.jpg


フランシスが「人生を変える旅をしなければ」とたびたび口にします。
そんな「心の旅」をするのに、インドはうってつけだと思います。おそらく。
昔からインドを旅して人生が変わる人はたくさんいるので。
でも彼らの旅を見ていると、本当にインドから何かを得ようとしてる風にはあまり見えません。
まあ最初からその気なのはフランシスだけですが。
寺院に行き教本を読み、丘の上で祈りを捧げてみたりもしますが、
スピリチュアルな何かを見つけたようには見えません。
途中、ある事件が起こり言葉も通じないような村に泊まることになりますが、
それは父親の葬儀を思い出すきっかけになり、兄弟の仲も戻ったように見えますが、
このあたりはちょっと唐突さを感じたし、
母親(アンジェリカ・ヒューストン)のエピソードも面白いんだけど、
それ以上のものは感じられませんでした。

もちろん、インドの旅だからと言ってもっと泥臭さくなきゃとか、
現地の人と触れ合えとかスピリチュアル体験しろとか言うつもりはないですが、
大きなヴィトンのスーツケースをいくつも抱えた旅は昔の英国貴族か何かのようだし、
(やがてそのスーツケースはすべて捨てられることになるとしても、です)
悩みはあっても基本裕福そうな3人の殿様旅行に、何か感じられるものは本当になかった。
結局現地の人とはわかり合えない、どうしたってこの3人には何も得られるものはなかったという、
そんな結論の"インドのアメリカ人"という話だというならまだわかるんですが、そういうこと?
兄弟の絆はいくらか強くなったのかも知れませんが。
このユルさ、煮えきらなさがウェス・アンダーソン風味として良いところなのかな、とは思います。


そして、見つける?
thedarjeelinglimited_3.jpg


まずインドを舞台にした映画を作りたいという考えがあったのかも知れません。
でも、インドが舞台である必要性のあるストーリーとはなってなかったという感じです。
仮に舞台が日本なら・・・京都の寺巡りとか四国巡礼とか?
それじゃオシャレな絵になりそうにないから監督的には興味ないでしょう。
それに"日本のアメリカ人"なら、すでにソフィア・コッポラが、
『ロスト・イン・トランスレーション』でやっちゃってるし。
そう言えば、この作品はウェス・アンダーソンと共同執筆で、
ジェイソン・シュワルツマンとローマン・コッポラが名を連ねてます。
『天才マックスの世界』以来のコッポラ家との関わりなのかどうか知りませんが、
ウェス・アンダーソンの元々持ってる独特なカラーに、
コッポラ家のニオイが混ざると、私にはどうも苦手な味わいになるのかも知れません。
コッポラ家の子弟の持つちょっと選民意識のようなものを感じてしまって・・・考え過ぎ!?
いっそのことウェス・アンダーソンにはもっとオシャレ路線を突き進んでもらうとか、
『ライフ・アクアティック』的ファンタジーに向かってくれたほうが観てて気がラクかも知れません。
あるいは一度コッポラ家やウィルソン兄弟、ビル・マーレイやアンジェリカ・ヒューストンと別れて、
違う路線に挑戦してみて欲しい。そういうのものすごく期待しています。

ちなみに今回WOWOWでオンエアされたものを観たのですが、
これを観る前に観なくてはならないらしい『ホテル・シュヴァリエ』は放送されず。
仕方なくYouTubeで観ました。便利な時代です。
ビル・マーレイ主演の"インドのセールスマン"はぜひ観てみたい。
オープニングはホント、ワクワクしちゃいました。
申し訳ないけどそっちのほうが絶対面白そうでした。


The Darjeeling Limited(2007 アメリカ)
監督 ウェス・アンダーソン
出演 オーウェン・ウィルソン エイドリアン・ブロディ ジェイソン・シュワルツマン
   アマラ・カラン ワリス・アルワリア イルファーン・カーン バーベット・シュローダー
   ビル・マーレイ アンジェリカ・ヒューストン ナタリー・ポートマン



ダージリン急行 [DVD]

ダージリン急行 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD


タグ:映画
nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

探偵<スルース> [映画感想−た]

1972年製作のイギリス映画。
ジュード・ロウ主演でリメイクされたものを観たくて、
その前に名作と名高いオリジナルを鑑賞しました。


世界的に有名な推理作家アンドリュー・ワイク(ローレンス・オリヴィエ)は、
自分の妻の愛人である美容師マイロ・ティンドル(マイケル・ケイン)を自宅に呼びます。
妻とマイロの関係を既に承知しているワイクは、
マイロに保険金目当てのニセの強盗話を持ちかけます。
そのことで妻はマイロに譲り、自分は愛人のティアと一緒になるというもの。
マイロは戸惑いながらもその話に乗るのですが・・・。


ワイクと親友?ジャック・ター
sleuth_1972_1.jpg


ジョセフ・L・マンキーウィッツ最後の監督作で、
ローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインは今作でアカデミー賞主演男優賞にダブルノミネート。
・・・などなど、タイトルやこういった諸々のことの知識だけはあったのですが、
詳しい内容は知らず、ほぼまっさらな状態で観たので心の底から楽しめました。
元は『フレンジー』や『ウィッカーマン』『ナイル殺人事件』などの脚本家、
アンソニー・シェーファーの戯曲だそうで、出演者はオリヴィエとケインの2人のみ。
(と、こう書くと若干ネタバレに触れてしまうのですが、
まあ昔の作品だし、オープニングから注意深く観ていれば、
その他の登場人物については容易に気が付くことなので、まあ、いいかな)
舞台は屋敷内(と庭が少し)だけという密室劇で、2人の激しいセリフの応酬が続きますが、
138分、まったく飽きさせることなく一気に見せてくれます。
いかにも舞台劇のような、少々オーバーアクトな感じに最初はちょっと戸惑いましたが、
その過剰さは2人のゲームの中で必要な"演技"であるからだとわかると、ああなるほどと納得します。


マイロはピエロ
sleuth_1972_2.jpg


二転三転、どんでん返しなんて言葉が生易しいくらい。
2人は互いに騙し騙され、そして観ているこちらも騙し続けます。
オープニングのタイトルロールのところから既にトリックがあるし、
意味ありげに映し出されるものに意味があるのか、
見えているものは果たして思っている通りのものなのかとか、
オチがわかったあとでも何度でも見直してみたくなります。

ワイクはゲームが大好きで、屋敷内にはあらゆるゲームや仕掛けがあり、
いわゆるからくり人形の類がそこらじゅうにあって、2人の騙し合いを冷めた目で見つめています。
この時折挿入される人形たちの表情がすごくいい。
ワイクとマイロだけのやり取りを、彼らがすべて見つめ続けている。
人形たちは少ない登場人物を補う、良い脇役となっていました。
それにしてもよくこんなに集めたなあと感心します。
ちょっと不気味さもあるけど、この屋敷で一日遊んでみたいなあ。


ゲームは続く
sleuth_1972_3.jpg


そんなワイクが仕掛けた究極のゲーム。
最初はマイロを貶めることのみが目的だったはずで、そしてそれは一応成功します。
しかしそのゲームを始めた結果がどうなるのかまでワイクには思いが至らなかったのか、
次のゲームでは形勢逆転・・・かと思うとさらに逆転と、
2人のゲームはどこまでもどこまでも終わらないように思えます。
どちらが主導権を握り、どちらが優位に立つか、
そしてどうなれば勝敗が決まりゲームオーバーとなるのか。
ラストシーンになっても、まだどんでん返しがあるんじゃないかと思ってしまうし、
ずっとずっと続いて欲しいような気すらしました。

この面白さを今まで知らなかったなんて。
ぜひ1人でも多くの人に観て欲しい・・・と思ったらDVD未発売!
リメイク版の発売と同時に出して欲しかった。
でもそうするとリメイクのほうがかすむと思ったのでしょうか?
あまり評判のよろしくないジュード・ロウ版の感想は明日にでも。


Sleuth(1972 イギリス)
監督 ジョセフ・L・マンキーウィッツ
出演 ローレンス・オリヴィエ マイケル・ケイン

タグ:映画
nice!(3)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

タロットカード殺人事件 [映画感想−た]

『それでも恋するバルセロナ』もうすぐ公開!・・・と、その前に、
すっかり見忘れていたウディ・アレンの前作をようやく鑑賞。


アメリカ人女子大生サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、
夏休みに友人のヴィヴィアン(ロモーラ・ガライ)を訪ねてロンドンに遊びに来ていました。
ある日、ヴィヴィアンと一緒に訪れたマジックショーでサンドラは、
マジシャンのスプレンディーニことシド(ウディ・アレン)の舞台に上がり、
人間を消すマジックボックスに入ります。
するとそこに、3日前に急死した新聞記者ストロンベル(イマン・マクシェーン)が現れ、
近頃ロンドン中を震撼させているタロットカード殺人事件の犯人が、
貴族のピーター・ライモン(ヒュー・ジャックマン)であると告げられます。
ジャーナリスト志望であるサンドラはこの世紀の大スクープの裏を取るため、
シドと共にピーターに近づくことにしますが・・・。


とりあえず親子
scoop_1.jpg


『マッチポイント』に続いて再び舞台をロンドンにし、
アレンの新ミューズ、スカーレット・ヨハンソンを再び主役に迎えた今作。
でも今回は、重苦しさすら感じられた『マッチ〜』とは一転、
ウディ・アレンお得意の軽やかさが心地よくまとまった作品となっていました。
『僕のニューヨークライフ』以来のアレン出演作ですが、
さすがにもう恋愛モノの主人公になるには年を取りすぎと自覚したのか、
せっかく愛しのスカジョをキャスティングしても、
役柄は事件解決のための彼女の相棒であり、表向きには”パパ”になるハメに。
これって内心は悔しかったりするのかな?
まあでも、相変わらずの好きな女優に対するストレートな愛情表現というのか、
ヒッチコックみたいに屈折してないところは憎めない。
実は今回、アレンが思いっきりヘタクソなマジシャンっぷりで登場した時は、
なぜかものすごく嬉しい気持ちになってしまいました。
なんだかすっかりおじいちゃんで、そのおじいちゃんぶりが可愛くて愛おしくて。
観るまではヒュー・ジャックマンが一番楽しみだったりしたのですが、
私、こんなにウディ・アレン好きだったかなあ?と自分で自分が不思議なくらいでした。


恋しちゃいました
scoop_2.jpg


連続殺人事件の真相を追ってにわか探偵となるサンドラとシド。
でも、スリルやサスペンスや凶器や死体なんかはまるっきり登場せず、
誰が犯人かなんて謎解きも実はほとんどどうでもよくて、
ただただ、ニセ父娘の2人がしゃべりまくり、ドタバタしまくる様子が楽しくてしょうがない。
二言も三言も多いシドはあちこちでカードマジックを披露し、
つい出てしまうジョークや言い訳でおろおろしたり、
簡単な数字が思い出せなくて、あ〜もう!な感じになって、
そんな"父親"の様子を横で睨みつけるナタリーも最初の目的を忘れ、
徐々にピーターに夢中になってしまいます。
スカーレットのしゃべりまくりはちょっと無理して頑張ってる感じではありましたが、
メガネでドジッ子な雰囲気はとても可愛くてハマッていました。
ヒュー・ジャックマンはおそらく狙い通りの上品で良い人そうなピーターを上手に演じてるのですが、
スカジョ&アレンコンビの飛ばしっぷりの前では、かなり影が薄くてかわいそうでした。


犯人逮捕?
scoop_3.jpg


相変わらずのユダヤ人ネタとか、イギリス人に対する卑屈な感じとか、
お約束と言っていいぐらいなんですが、本当に心地いい笑いの元がいっぱいで、
ウディ・アレン好きなヒトはこういうところが好きだっていうツボをちゃんと押さえています。
一番のお気に入りは、やはりあの世行きの船!
日本で言うところの三途の川の渡し船?微妙に違う感じですが。
船首に立つ死神とか、妙にリラックスしてる死んじゃった人たちとか、いいなあ。
なんだか、死ぬのもいいかもと思わせるところ、さすがです。
ラストもそう持って行くか!という。わかりやすくてちゃんとオカシイ。
とにかくずっとニコニコの96分でした。

年1本の製作ペースを守り続けているウディ・アレン。
しかも毎回違ったアプローチ(まあいくつかのパターンには分けられるかもですが)で、
どうしてこう次々にアイデアが生まれていくのか、心から尊敬してしまいます。
このところのスカジョのように、お気に入り俳優を続けて使ったりもしますが、
新しい俳優をどんどん起用していく柔軟さもエライなあと思います。
それにしても、もうニューヨークには戻らないのでしょうか?
今回シドに「ロンドンはいいところだけど定住する気はない」なんて言わせてましたが、
これは本音なのかどうなのか。もちろんこれは「車線が逆だから」ということで、
今作のラストの伏線になってるからでもあるんですが。
個人的にはまたいつか、マンハッタンを描いて欲しいです。


Scoop(2006 イギリス/アメリカ)
監督 ウディ・アレン
出演 スカーレット・ヨハンソン ヒュー・ジャックマン ウディ・アレン
   イアン・マクシェーン ロモーラ・ガライ



タロットカード殺人事件 [DVD]

タロットカード殺人事件 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
  • メディア: DVD


タグ:映画
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

ダーウィン・アワード [映画感想−た]

"ダーウィン・アワード"とは?
「ダーウィン賞は愚かな行為により死亡する、
もしくは生殖能力を無くすことによって自らの劣った遺伝子を抹消し、
人類の進化に貢献した人に贈られる賞である」とウィキペディアにあります。
今作はこのダーウィン賞を元に製作されたコメディ・・・ということですが。


サンフランシスコ市警のマイケル・バロウズ(ジョセフ・ファインズ)は、
優秀なプロファイラーながら、血を見ると失神してしまう体質。
そのせいで連続殺人犯を取り逃がし失職してしまいます。
彼は愚かな死に方をした人々を讃えるサイト"ダーウィン・アワード"にはまっていて、
そんな死に方をする人が大勢いるかぎり保険会社に損失を与え続けるという持論を持って、
自分のプロファイリング能力と共に保険会社に売り込みに行きます。
保険会社は彼の能力を試すために保険調査員シリ・テイラー(ウィノナ・ライダー)と組ませ、
アメリカ各地の事故被害者の調査に当たらせますが・・・。


調査に乗り出す2人
thedarwinawards_2.jpg


"ダーウィン賞"なんてものがあることを、この映画で初めて知りました。
映画では、マイケルとシリが調査する事故が一見普通の事故のようだったり、
逆にまったく理由がわからないものだったりするのですが、
ダーウィン賞にハマっているマイケルが"こうかも知れない"と想像すると、
その結果やはりトンデモナイ理由で死んだor負傷した人たちばかりだという、
この発想は面白いと思いました。

というわけでダーウィン賞候補のみなさん!という感じで描かれる、
ありとあらゆるバカな事故の数々。
普通のクルマにジェットエンジンを取り付けるとか、
自動販売機の取り出し口に手を突っ込んで倒れてきた販売機で圧死とか、
ダイナマイトで凍った池に穴を開けようとして・・・とか、
1個1個の"事例"は見事にバカで笑えます。
そんなわけないよなあというものや、確かにあり得るかもというようなものまで、
ああ出来れば自分は普通に死にたい、と思ってしまいます。
基本的にホワイトトラッシュな方々が登場する率が高いのが・・・まあそういうことなんでしょう。
せめてそういうものに巻き込まれないようにしたいものです。


こんな死に方とか?
thedarwinawards_1.jpg


さて、この作品ではマイケルが大学生の卒業研究のドキュメンタリー製作で、
ずっと学生のカメラに追われているという作りで、
随所でこの学生カメラの映像になります。
マイケルらがたびたびカメラ目線になって撮影者と話したりという演出がなされるのですが、
これがどうもあまり効果を発揮していません。
学生カメラには白枠があるのでそれとわかるのですが、
この白枠もあったりなかったり(カメラが変わるせい?)、
実際の映画としての映像だと思ってたらそうでもないとか、
どうもその辺の一貫性がなくわかりにくいのが残念です。
映画としての映像、学生カメラ、それとマイケルの"想像"シーン、
少なくともこの3つの視点をそれぞれわかりやすく整理して欲しかったです。
最後にこの学生カメラの映像が事件解決の役に立つということはあるのですが、
基本的にこの設定必要だったのかな?という気がしました。

マイケルが失職するきっかけになった連続殺人犯が自称ビートニク詩人で、
ケルアック通りでマイケル・”バロウズ"を襲うとか、
シティ・ライツ・ブックスが登場したかと思うと、
その創始者ローレンス・ファリンゲッティ本人が登場したりと、
この監督どういう人?実はドキュメンタリー撮る学生っていうのは監督本人で、
今まさにビートニクにかぶれてる学生だったりとか・・・といろいろ想像してしまいました。
でも監督のフィン・テイラーは1958年生まれの結構なオジサンで、
フィルモグラフィーを見ても日本未公開の作品を何本か撮ってるのみ。
実際にビートニク周辺に影響を受けた人なのかも知れませんが、よくわかりません。
でもそもそもウィノナ・ライダーのキャスティングというのがアヤシイ。
で、さらに調べたらファリンゲッティを引っ張り出したのは実はウィノナだそうで、
さすがヒッピーコミューン育ち!
とは言ってもこの連続殺人犯にこんな小ネタを散りばめる必要があるのかなあという気もするし、
ヘンなところにこだわりを持ちすぎな気もしてしまいました。


うーむジュリエット・ルイス
thedarwinawards_3.jpg


冒頭いきなり登場するのがデヴィッド・アークエットという時点で笑ってしまい、
その妻がジュリエット・ルイスって最強な夫婦!
いつ見ても、どんなマジメな役をやっても笑ってしまう(私だけ?)ジョセフ・ファインズ。
今回はそのヘンな存在感が十分に活かされたキャスティングだったと思います。
こういう役をどんどんやって欲しいなあ。
バスルームでのシーン、もうおかしくてどうしようかと思いました。
クリス・ペンの登場はちょっとジーンと来てしまい、
もしやこれが遺作じゃないだろうなと思わず調べてしまいました。
良かった、違ったようです。これが遺作じゃシャレにならないなあと思いましたよ。

ダーウィン・アワード、プロファイリング、ビートニクのこだわり、
学生カメラのドキュメンタリー風・・・などなど、
いろんな独特な要素があるのに、それがどうもうまくまとまってない感じが惜しい。
そのあたりは監督の力量にかかってしまうのだろうなと思いますが、
豪華な出演者も含めてもったいなさでいっぱいの作品でした。
もう少しちゃんとした人が監督してればもう少し面白くなったと思います。ホント残念。
それとビリー・ジョエルってやっぱり恥ずかしい音楽なのかなあ。
まあ最初のデートなんかで聴かされたらちょっと引くかもですが。
逆にメタリカは私には全然理解不能だし、
こういう風に登場するのはどう受け止めるべきなのか・・・。


The Darwin Awards(2006 アメリカ)
監督 フィン・タイラー
出演 ジョセフ・ファインズ ウィノナ・ライダー デヴィッド・アークエット ルーカス・ハース
   ジュリエット・ルイス ジュダ・フリードランダー クリス・ペン ジュリアナ・マルグリーズ
   ロビン・タニー ウィルマー・バルデラマ



ダーウィン・アワード [DVD]

ダーウィン・アワード [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD


タグ:映画
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

ダウト ~あるカトリック学校で~ [映画感想−た]

今年のアカデミー賞で主演・助演賞候補を4人も出した今作。
それも納得のすさまじい演技合戦でした。


1964年、ニューヨーク。ブロンクスにあるカトリック学校で、
唯一の黒人男子生徒ドナルド(ジョセフ・フォスター二世)が、
授業中、フリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)に呼び出されます。
戻って来たドナルドの様子に不審なものを感じた、
新人教師のシスター・ジェイムズ(エイミー・アダムス)は、
校長のシスター・アロイシス(メリル・ストリープ)にそのことを告げます。
厳格で常に規律を重んじるシスター・アロイシスは、
フリン神父とドナルドの間に不適切な関係があるのではと疑いを持ち、
神父を問い詰めますが・・・。


2人は疑いを持つ
doubt_1.jpg


元々は舞台劇で、それも納得の登場人物たちのセリフの応酬は、
思わず見とれ、聞き惚れてしまいそうでした。
シスター・アロイシスはフリン神父をとことん追求するため、
その結果、ただひたすら口論となるのですが、
その凄まじさは一瞬たりともこちらの姿勢を崩すことを許さないほどで、
それぞれ自分の主張をし、あるいは沈黙し、
密室で起こった”らしき"事柄について言い争います。
2人の間に挟まれたシスター・ジェイムズもまた、
自分が目にしたことと彼らが語ることに疑いを持ち、
どちらを信じるべきなのかと2人の間を揺れ動き、
また元々の素直な性質から、自分の考えもハッキリとぶつけます。
最初に3人が話し合いを持つ校長室でのやりとりは、
そのセリフの1つ1つ、動きの1つ1つからとにかく目が離せません。
シスター・アロイシスが神父に話を切り出すまでの、
誰がどこに座るとか紅茶の砂糖がどうとか、
ボールペンの登場の仕方など細々したことを見せて、
目配せや言いよどみを経て、ついに核心に触れるまでの3人それぞれの様子が、
あきれるほど無駄が無く、ただただ上手いとしか言えません。
こんなすごい演技合戦は、久しく観てなかった気がします。


疑いは真実なのか
doubt_2.jpg


観ているこちら側も誰が真実を言い誰がウソをついているのか、
観ている間、常に気持ちが揺らぎます。
シスター・アロイシスの頑なさにはまったくあきれてしまうほどですが、
老いたシスターたちへの接し方などを見ると、
単純に彼女が今作における悪役だとは思えません。
シスター・ジェイムズの純真さは揺るぎないようで、
けれどもシスター・アロイシスを恐れ、また尊敬するあまり、
次第に生徒への接し方が変わって来たり、
この問題を早く終わらせようと目をつぶることを選びそうになる弱さを持っています。
そしてフリン神父はいつまでも真実を語らず、シスター・アロイシスを"不寛容"と責める。
でもそれは正しい言い分なのか。彼が”寛容”だという証拠も提示されるわけではありません。
そこに来て、第4の登場人物であるドナルドの母親が登場します。
彼女の口から出てくる言葉はおそらく一番真実に近く、衝撃的です。
それを聞いて、また観ているこちら側は混乱させられます。
結局何があったのか。そしてシスター・ジェイムズのように、
それならそれでいいんじゃないか、と思ってしまいそうになります。

その”何があったか"を解き明かすことは実はまったく重要なことではなく、
彼らが持たずにいられない互いへの疑いの気持ち、相手の言動に揺れる気持ちを、
激しい口論の裏側で表しているのだと思いました。
疑う心から真実を見えなくし、彼らにとって重要なものである信仰も揺るがし、
個人の性質もあからさまに否定されてしまう。
また1964年という時代設定も大きな意味を持っていて、
公民権運動やケネディ暗殺を神父の説教などで語らせ、
変わりつつある時代であるということを示し、
それがそのまま、伝統を重んじるシスター・アロイシスと、
学校も変わらなければという進歩的な考えを持つフリン神父という図式でも描いている。
こういう時代背景や宗教観などの予備知識がないとちょっとわかりにくいかも知れません。
でもそこがわかると、この作品が言わんとしていることがすんなりと入って来そうです。


母親が語る真実は
doubt_3.jpg


メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンが素晴らしいであろうことは、
予めわかっていることですが、改めてその凄さをとことん見せつけられました。
2人の一騎打ちは、これ以上ないすべてが正解の演技。
そんな2人を前にして思わぬ大健闘なのがエイミー・アダムス。
『魔法にかけられて』がもしかしてピークかも?と思ってたし、
それより前に私にとっては『タラデガ・ナイト オーバルの狼』なんかのヒトですからビックリです。
そしてドナルドの母を演じたヴィオラ・デイヴィス。
登場時間は非常に少ないながらとても強い印象を残しました。
いずれも受賞はしませんでしたが、オスカーノミネートは本当に納得。

そんな素晴らしい俳優たちばかりなのに、
映画そのものとしては少々不満が残りました。
俳優たちの演技の素晴らしさに比べて、映像から受ける強いものがほとんど感じられません。
一番気になったのは、時々出てくる傾いたカメラアングル。
何か不安感を出したかったのかも知れませんがほとんど効果はなく、
むしろ不自然さを感じてしまいました。
監督のジョン・パトリック・シャンリィは元々脚本家で、
彼が舞台劇として脚本を書いた今作の映画化にあたり、
自らメガホンを取ったということらしいのですが、
監督はほかの人に託したほうが良かったのではないかと思いました。
これだけ役者が揃ってストーリー自体も素晴らしいのに、そこがとても残念でした。


Doubt(2008 アメリカ)
監督 ジョン・パトリック・シャンリー
出演 メリル・ストリープ フィリップ・シーモア・ホフマン エイミー・アダムス ヴィオラ・デイヴィス



ダウト ~あるカトリック学校で~ [DVD]

ダウト ~あるカトリック学校で~ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
  • メディア: DVD



ダウト ~あるカトリック学校で~ [Blu-ray]

ダウト ~あるカトリック学校で~ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
  • メディア: Blu-ray


タグ:映画
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画
前の5件 | 次の5件 映画感想−た ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。