かいじゅうたちのいるところ [映画感想−か]
かいじゅう!
最初にスチールを見た時の衝撃から半年あまり、
ようやく会えたね、かいじゅう!
マックス(マックス・レコーズ)は苛立っていました。
姉(ペピータ・エメニック)は近頃友だちとばかり遊んでかまってくれないし、
母親(キャサリン・キーナー)も仕事で忙しい。
ある日、ついに母親と衝突してしまったマックスは家を飛び出してしまいます。
海岸で見つけたボートに乗り込み大海原へと漕ぎ出すマックス。
やがてボートはどこかの島へとたどり着きます。
そこは、大きなからだのかいじゅうたちがいっぱい住む島。マックスはそこで王様となりますが・・・。
冒頭でお姉ちゃんにかまってもらえず大暴れするマックスくんがまさにかいじゅう!
一人遊びの様子や後先考えない暴れっぷりがまったくもって子どもで、
くやしい気持ちを家中をめちゃくちゃにすることで発散させ、そしていっそう落ち込む。
彼の孤独さが痛いほど伝わってきます。
その夜、猫のように母親の足元に転がって母親のストッキングの先っぽを引っ張り、
母親に促されて物語を語り出すマックス。彼が語る物語を聞き書きする母親。
このシーンの暖かさに早くも涙がツツーッと流れてしまいました。
けれど数日後、マックスは母親と諍いを起こしてしまいます。
母親はボーイフレンド(マーク・ラファロ!)らしき男性と楽しげにしていてマックスにかまわず、
口を開けば小言ばかり・・・またもマックス爆発!思わず家を飛び出してしまうのです。
そうしてお待ちかね、かいじゅうの登場!
森の向こう、木々の間に動くかいじゅうのシルエットが見えた時の興奮!
しかもマックスに負けず劣らずの大暴れ!
マックスを見て驚いたかいじゅうたちはいきなり「食べちゃおうか」なんて言い出して結構コワイ。
自分が子どもの時にこれを見たら、結構なトラウマになりそうです。
マックスは機転を利かし「ボクは王様だ!」と言って食べられる危機を回避しますが、
それでもこのあとどうなっちゃうんだろうとドキドキです。
王様と認められたマックスは初仕事として、しもべとなるかいじゅうたちに完璧な命令を出します。
それは「かいじゅうおどりをはじめよう!」ここからの高揚感といったら!
踊って走って大暴れ、やがてみんなで重なって眠る幸せ。
しかしかいじゅうの世界も実はいろんな問題を抱えていて、
なかなか難しい"かいじゅう"関係に、マックスも楽しい思いばかりしていられなくなります。
そのうち、マックスの王様としての行動を批判するものが出てきたり、
マックスが王様であることを疑い出すものも出てきたり。
マックスと一番気が合う、かいじゅうたちのリーダー的存在のキャロル(ジェームズ・ガンドルフィーニ)。
楽しいヤツだしみんなのことを一生懸命考えているけれど、何かあるとすぐに暴れ出してしまう。
そんなところが実にマックスにそっくりなのですが、これはそんな自分にそっくりな他者に接することで、
しかも自分が王様という上の立場に立つことによってマックスは他者との関わりを学ぶという、
少年の成長物語・・・と言ってしまうとそれまでかも知れませんが、
人間社会の写し絵的なかいじゅう世界を、誰もが思い浮かべ自分に当てはめてみることは、
大人であっても必要かもと思わせる、かいじゅう世界の奥深さのようなものも伝わってきました。
それぐらい、かいじゅう世界はリアルでドロドロしていてかなりめんどくさそう!
みんなで笑って踊っておしくらまんじゅうしてるのは楽しい。
気に入らないものは破壊していくのも楽しい。
でも楽しい時間はいつまでも続かない。破壊はその瞬間快感は得られても、
同じくらいかそれ以上の喪失感を得てしまいます。
そんなことを自分のイマジネーションの中で学んだマックス。
こんな風に大人になれる少年はそうはいないと思うし、これはやはり大人から見た、
成長するとはこうであって欲しい、という世界かなとも思いました。
彼がラストで母親を見つめる眼差しは「ボクがしっかりしなきゃ」なんていう次元では既になかった。
それが余計に胸にググッと迫ってきたのですが。
私は原作は未読なので解説などから得た情報によると、
原作ではかいじゅうたちには名前もセリフも無いそうで、
設定やストーリーは大部分スパイク・ジョーンズの作り出したものなのだそうです。
それも、かなり自身の経験に重ね合わされているらしく、
母と姉の3人家族(原作には姉は登場しない)という構成など、
相当マックス=スパイク・ジョーンズなのだそう。
登場人物を少し遠くから見つめるような、冷静なのに暖かい不安定なカメラワークが、
いかにもスパイク・ジョーンズタッチ。
抜けるような青空やきらめく砂粒の砂漠、暖かな光を差す夕日など、
映像の美しさも実に心地よかったです。
それにしてもかいじゅうの造形の素晴らしさは思った以上でした。
一人一人個性的で、切ない表情や鳴き声に何度も何度も胸がいっぱいになり、
マックスとの別れのシーンなど、そのリアルさにもう涙ボロボロ。
そして何と言ってもマックス少年演じるマックスの素晴らしさ!
これは彼自身の俳優としての才能も大いにあると思いますが、
やはり相手にするかいじゅうが本物!というのが大きいと思いました。
マックス君がどんなにキャリアのある天才子役だったとしても、
ブルーバックで演じさせられるより、ちゃんと相手がいて、
彼らの重さやモシャモシャ感を感じながら演じる方が当然リアルであるはず。
かいじゅうを100%CGにせず着ぐるみにしたのは本当に正解だったと思います。
『アバター』のような超最先端映像ももちろん素晴らしく意味のあることですが、
このリアルなフェイクこそ映画的。何倍も何倍も満足感を得られました。
Where the Wild Things Are(2009 アメリカ)
監督 スパイク・ジョーンズ
出演 マックス・レコーズ キャサリン・キーナー マーク・ラファロ
声の出演 ジェームズ・ガンドルフィーニ ポール・ダノ キャサリン・オハラ
フォレスト・ウィッテカー クリス・クーパー ローレン・アンブローズ
最初にスチールを見た時の衝撃から半年あまり、
ようやく会えたね、かいじゅう!
マックス(マックス・レコーズ)は苛立っていました。
姉(ペピータ・エメニック)は近頃友だちとばかり遊んでかまってくれないし、
母親(キャサリン・キーナー)も仕事で忙しい。
ある日、ついに母親と衝突してしまったマックスは家を飛び出してしまいます。
海岸で見つけたボートに乗り込み大海原へと漕ぎ出すマックス。
やがてボートはどこかの島へとたどり着きます。
そこは、大きなからだのかいじゅうたちがいっぱい住む島。マックスはそこで王様となりますが・・・。
冒頭でお姉ちゃんにかまってもらえず大暴れするマックスくんがまさにかいじゅう!
一人遊びの様子や後先考えない暴れっぷりがまったくもって子どもで、
くやしい気持ちを家中をめちゃくちゃにすることで発散させ、そしていっそう落ち込む。
彼の孤独さが痛いほど伝わってきます。
その夜、猫のように母親の足元に転がって母親のストッキングの先っぽを引っ張り、
母親に促されて物語を語り出すマックス。彼が語る物語を聞き書きする母親。
このシーンの暖かさに早くも涙がツツーッと流れてしまいました。
けれど数日後、マックスは母親と諍いを起こしてしまいます。
母親はボーイフレンド(マーク・ラファロ!)らしき男性と楽しげにしていてマックスにかまわず、
口を開けば小言ばかり・・・またもマックス爆発!思わず家を飛び出してしまうのです。
そうしてお待ちかね、かいじゅうの登場!
森の向こう、木々の間に動くかいじゅうのシルエットが見えた時の興奮!
しかもマックスに負けず劣らずの大暴れ!
マックスを見て驚いたかいじゅうたちはいきなり「食べちゃおうか」なんて言い出して結構コワイ。
自分が子どもの時にこれを見たら、結構なトラウマになりそうです。
マックスは機転を利かし「ボクは王様だ!」と言って食べられる危機を回避しますが、
それでもこのあとどうなっちゃうんだろうとドキドキです。
王様と認められたマックスは初仕事として、しもべとなるかいじゅうたちに完璧な命令を出します。
それは「かいじゅうおどりをはじめよう!」ここからの高揚感といったら!
踊って走って大暴れ、やがてみんなで重なって眠る幸せ。
しかしかいじゅうの世界も実はいろんな問題を抱えていて、
なかなか難しい"かいじゅう"関係に、マックスも楽しい思いばかりしていられなくなります。
そのうち、マックスの王様としての行動を批判するものが出てきたり、
マックスが王様であることを疑い出すものも出てきたり。
マックスと一番気が合う、かいじゅうたちのリーダー的存在のキャロル(ジェームズ・ガンドルフィーニ)。
楽しいヤツだしみんなのことを一生懸命考えているけれど、何かあるとすぐに暴れ出してしまう。
そんなところが実にマックスにそっくりなのですが、これはそんな自分にそっくりな他者に接することで、
しかも自分が王様という上の立場に立つことによってマックスは他者との関わりを学ぶという、
少年の成長物語・・・と言ってしまうとそれまでかも知れませんが、
人間社会の写し絵的なかいじゅう世界を、誰もが思い浮かべ自分に当てはめてみることは、
大人であっても必要かもと思わせる、かいじゅう世界の奥深さのようなものも伝わってきました。
それぐらい、かいじゅう世界はリアルでドロドロしていてかなりめんどくさそう!
みんなで笑って踊っておしくらまんじゅうしてるのは楽しい。
気に入らないものは破壊していくのも楽しい。
でも楽しい時間はいつまでも続かない。破壊はその瞬間快感は得られても、
同じくらいかそれ以上の喪失感を得てしまいます。
そんなことを自分のイマジネーションの中で学んだマックス。
こんな風に大人になれる少年はそうはいないと思うし、これはやはり大人から見た、
成長するとはこうであって欲しい、という世界かなとも思いました。
彼がラストで母親を見つめる眼差しは「ボクがしっかりしなきゃ」なんていう次元では既になかった。
それが余計に胸にググッと迫ってきたのですが。
私は原作は未読なので解説などから得た情報によると、
原作ではかいじゅうたちには名前もセリフも無いそうで、
設定やストーリーは大部分スパイク・ジョーンズの作り出したものなのだそうです。
それも、かなり自身の経験に重ね合わされているらしく、
母と姉の3人家族(原作には姉は登場しない)という構成など、
相当マックス=スパイク・ジョーンズなのだそう。
登場人物を少し遠くから見つめるような、冷静なのに暖かい不安定なカメラワークが、
いかにもスパイク・ジョーンズタッチ。
抜けるような青空やきらめく砂粒の砂漠、暖かな光を差す夕日など、
映像の美しさも実に心地よかったです。
それにしてもかいじゅうの造形の素晴らしさは思った以上でした。
一人一人個性的で、切ない表情や鳴き声に何度も何度も胸がいっぱいになり、
マックスとの別れのシーンなど、そのリアルさにもう涙ボロボロ。
そして何と言ってもマックス少年演じるマックスの素晴らしさ!
これは彼自身の俳優としての才能も大いにあると思いますが、
やはり相手にするかいじゅうが本物!というのが大きいと思いました。
マックス君がどんなにキャリアのある天才子役だったとしても、
ブルーバックで演じさせられるより、ちゃんと相手がいて、
彼らの重さやモシャモシャ感を感じながら演じる方が当然リアルであるはず。
かいじゅうを100%CGにせず着ぐるみにしたのは本当に正解だったと思います。
『アバター』のような超最先端映像ももちろん素晴らしく意味のあることですが、
このリアルなフェイクこそ映画的。何倍も何倍も満足感を得られました。
Where the Wild Things Are(2009 アメリカ)
監督 スパイク・ジョーンズ
出演 マックス・レコーズ キャサリン・キーナー マーク・ラファロ
声の出演 ジェームズ・ガンドルフィーニ ポール・ダノ キャサリン・オハラ
フォレスト・ウィッテカー クリス・クーパー ローレン・アンブローズ
かいじゅうたちのいるところ ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- メディア: Blu-ray
dorothyさん、こんにちは。
かいじゅうたちにすっかり魅了されてしまったようですね♪。
先日、渋谷のタワレコに立ち寄ったら書籍売り場に関連書籍をたくさん売っていました。その中にメイキング本(装丁がすごくユニーク!)があったので手に取って見たのですが、いわゆるCG処理される前の着ぐるみが結構怖くて(どれも無表情!)試写会で子供たちが泣き出したという話に、妙に納得してしまいました(^皿^)。
キャロルの寂しげな後ろ姿は、やっぱりCGでは出せない存在感ですよね。オイラも傍らに一緒に座り、ただ黙って夕日を眺めていたくなりました♪。
by 堀越ヨッシー (2010-02-04 17:03)
堀越ヨッシーさん、こんにちは。
いやホント、本物のかいじゅうが目の前に現れて、
しかも「食べちゃおうか」なんて言われたら確実に泣いて逃げます!
絶対に子どもには怖い生き物だと思いますね。
でもおっかない姿だからこそ愛おしいというか。
あのお別れの時の前のキャロルがもう・・・卑怯すぎ!
思い出しただけでキャロルみたいに鼻水出ちゃいますw
by dorothy (2010-02-05 03:56)
んんーん、dorothyさんの素敵な解説を
見ていると、興味がそそられます。
これもチェックしなきゃ。
by ぷーちゃん (2010-02-06 18:43)
ぷーちゃんさん、こんにちは。
素敵だなんてそんな(照)
これはイマイチ〜という人も結構いるので微妙なんですが、
よかったらぜひ。
by dorothy (2010-02-08 01:33)