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ツリー・オブ・ライフ [映画感想−た]

映画は自分で観るまではなるべく人の感想や批評は読まないようにしているのですが、
それでもこの作品に関してはついついあらゆることが目に入ってしまい、
それがどうにも、ちょっとほかにはないような状況だったので、
いったいどんなものなのかと期待と不安でいっぱいでした。
なかなか観に行けなくて、このまま観ないで済ませちゃおうか、
いややはりそこは自分の目で確かめたい!と、ようやく終了間際に駆け込み鑑賞。


1950年代。テキサスの田舎町にオブライエン一家は暮らしていました。
厳格な父(ブラッド・ピット)と優しく美しい母(ジェシカ・チャステイン)、
そして三人の息子たち。
長男のジャック(ハンター・マクラケン)は11歳になり、
何かと口うるさく、時には暴力的にもなる父に反感を抱くようになり、
徐々に反抗的な態度を取るようになり・・・。


thetreeoflife_1.jpg


すでに観た人たちの感想の混乱ぶりやどちらかというとネガティブな反応、
ちょっと驚きの構成などを事前に知っていたので覚悟も出来ていて、
結果「ああ、なるほどね」という感じで、驚きつつも意外なことに楽しめた気がします。
まあ確かにそういう事前情報を一切入れずに観たらこれは相当な驚きと、
戸惑いやら不満でいっぱいになったかも知れません。
本当はそのほうが良かったのか悪かったのか、それも今となってはよくわかりませんが、
覚悟していたからこそ逆に楽しめたというのは「思ってたよりひどくない」という、
一番言ってはいけない感想になってしまいそうでもあるのですが、
とにかく、とりあえずイヤな気持ちにはならなかったことは事実だし、
そうなったことに自分でもまあ満足しています。

確かにいわゆる一般的な映画的手法や文法ということを考えると、
かなり特異な作りであると言えるかも知れません。
一応本筋は1950年代のオブライエン家のあれやこれやで、
淡々とした描かれ方ながらも一応物語として成立しています。
父親は若い頃に音楽家の夢を持っていましたが挫折、
そのため息子たちにはなんとしても成功して欲しいと願い、
その気持ちが息子たちに厳しい態度となり、その結果息子たちから疎まれてしまいます。
この父親が具体的に何の仕事をしているのかはよくわからないのですが、
この時代のこの年代の父親としては特別ではない、よくいるタイプに思えます。
そんな父親に反抗的な態度を取ってしまう長男ジャック。
そのジャックが成長した姿をショーン・ペンが演じていて、
彼は現在建築家か何かになっていておそらく成功しているように見えます。


thetreeoflife_2.jpg


時間軸は行きつ戻りつ、現代になったり50年代に戻ったりします。
一家の描写が断片的なのはおそらく現代のジャックが思い出しているということだと思うのですが、
では現代のジャックはなぜ今この頃のことを思い出し、しかも思い詰めているのか、
そのあたりがどうしてもいまひとつよくわかりませんでした。
ショーン・ペンの瞳はなぜか常に虚ろで、心情描写とはいえ岩だらけの場所に立ったりして、
自分がどこにいるのか、どこへ向かえばいいのかわからないという風。
演じているショーン・ペン自身もわかってないんじゃないかと思うような、
いつもの彼らしい力強さも見えません。

そうこうしていると突然"幻想シーン"パートが始まります。
モヤモヤとした光のきらめきから始まり、それは宇宙の始まりで、
やがて地球が生まれ生物が誕生し・・・と言ってもそうハッキリと説明されるわけではなく、
厳密に宇宙の成り立ちが描かれるわけでもないのですが、
ああそういうことなのかなあといろいろ想像しつつ観ていました
映画の冒頭でヨブ記が引用されることから、全編に宗教的なものが散りばめられているのか、
そのこと自体がテーマなのか、逆にそれに異議を申し立てたいのか、
宗教的なものにまったく疎い自分にとっては、
最初から敷居の高さを感じずにはいられなかったのですが、
この、途中から唐突に始まりかなり長い時間を割いて描かれる幻想映像パートで、
いったいこの映画はどこへ向かうのかといよいよ不安になりつつも、
けれど映像自体は環境ビデオのように美しく、ずっとぼんやり眺めていたいような心地よさでした。


thetreeoflife_3.jpg


しかしそこに恐竜が登場した時にはさすがに、
心の中でオイオイとツッコミそうになるのを抑えられませんでした。
これも噂には聞いていたのでああこれかあと思ったのですが、
恐竜の映像はよく出来ているとは言ってもやはり唐突なCGだし、
それまでのリアルで美しい映像にそんな恐竜を重ねられても違和感しか感じられず、
いっそそこから類人猿が登場し人間へと進化していき、
ついにはオブライエン家の先祖へと繋がり・・・となるのならまだわかる気もするのですが、
そんなこともなく、この幻想パートが終わるとまたスコンと50年代アメリカへ移動してしまいます。
このバランスの悪さは意図されたものなのか、本当はもうちょっと何かあって、
それらを見せてると4時間も5時間もかかってしまうということなのかと思ったり。
さらに、恐竜が出てくるってことはキリスト教的方面は否定しているということかなあとか、
頭の中がクエスチョンマークだらけになってしまいました。

そういうわけで、居心地が悪いと言ったらこれほど落ち着かない気持ちになる作品は、
最近ではちょっと珍しいかも知れず、観た人たちの混乱ぶりも納得でした。
けれど映像の美しさは文句なしだし、50年代パートはいかにもテレンス・マリック風で、
キラキラとした光り、母親の子どもたちへの愛情に満ちあふれた様子や、
父子の確執を描いていても悪意やとげとげしさのようなものはなく、
すべてがぼんやりと美しい思い出の写真のようで、
ハッキリとしたストーリーがあるわけではないのに、
何と言っていいかわからない不思議な説得力のようなものを感じました。


thetreeoflife_4.jpg


作品を魅力的にしていたのは、それぞれのキャストに因るところも大きかったと思います。
こういうお父さん役を演じることにだいぶ違和感がなくなったブラッド・ピット、
ただひたすら優しく美しい母親ジェシカ・チャスティン、
三人の息子たちのうち、反抗期に入った長男ジャックの心揺れ動く感じと、
いずれ亡くなることがわかっている次男R.L.の愛らしさや音楽的才能を見せる様、
無条件に兄を信頼する姿には素直に心打たれてしまいました。
残念だったのはショーン・ペンがいまひとつ彼らしさを出していない気がして、
例えば思いっきりルックスを変えてブラッド・ピット二役でも良かったかなとか、
まあいろんなことを考えたりもしたのですが。

なぜか三男の影が薄かったり、結局次男はなぜ死んだのかもよくわからないし、
やはりもういい大人になってる現代のジャックはどうしてこの頃のことを思い出し、
くよくよしているのかの説明はもうちょっとあっても良かったかなと思います。
そこは父と息子の問題、兄と弟の関係といった普遍的テーマだから、
ということで納得する、そういうことで片付けてしまっていいことなのか、
いくら普遍的だからと言って宇宙の始まりまで遡ることはないんじゃないかなあと思ったり。
あげく最後のほうで現代のジャックは昔の姿の家族に会うのですが、
それもよくわからなくて、一見、いわゆる天国でみんなに会えたみたいな映像なんですが、
ジャックも父親もまだ死んではいないんですよね?あ、これはさらに未来の映像?
・・・とまあ、自分の理解力の無さをただただ披露してしまうみたいで恥ずかしいんですが、
そういう細かいことは本当にどうでもいいのかも知れないし、
そして、そんなこんながわからなくても不思議と腹は立たず、
モヤモヤっとした気持ちではあっても、ああなんというのか、
こういうモヤモヤを描けるところが映画というものなのかなあと思ったりしました。
もう一度、今度はゆったりと美しい映像を楽しみたいなあと、
そういう軽い位置づけの作品として捉えていい・・・んですよね?


The Tree of Life(2011 アメリカ)
監督 テレンス・マリック
出演 ブラッド・ピット ショーン・ペン ジェシカ・チャスティン
   ハンター・マクラケン ララミー・エップラー タイ・シェリダン
   フィオナ・ショウ


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