チェ 39歳別れの手紙 [映画感想−た]
いろんな意味で私にはハードルの高かった『チェ 28歳の革命』の続編。
観に行くのもそれなりに覚悟がいるし、かといって観たくないわけでもなく、
むしろ早く観たくてしょうがない、といった気分でこの一週間ほどを過ごしていました。
1965年3月、エルネスト・"チェ"・ゲバラ(ベニシオ・デル・トロ)は、
世間から忽然と姿を消します。
フィデル・カストロは共産党中央委員会で、ゲバラからの"別れの手紙"を公表します。
ゲバラはすべての地位を捨て、新たな革命の旅へ出ることを決意していたのでした。
容姿を変え、妻アレイダ(カタリーナ・サンディノ・モレノ)や子どもたちと最後の時を過ごし、
1966年11月、ゲバラはボリビアに入国します。
チェ最後の革命の旅は
前作では55年からのキューバ革命と64年のニューヨークを、
時間軸を前後させて描いていましたが、
今回はこういった演出は一切なし。時間通りに話が進んでいきます。
前作の感想で、キューバでの状況説明の少なさをニューヨーク部分で説明しているようだ、
と書いたのですが、今回それがないことでいよいよわかりにくくなるか・・・と思ったら、
意外にも、前作より話に集中することができました。
とは言ってもやはり登場人物の関係性や、
ゲバラが(地理的にも思想的にも)どこへ向かおうとしているのか、
そういった細かい説明は今回もまったくと言っていいほどありません。
そもそも、ゲバラをボリビアへと向かわせたのはどういうことだったのか。
国連で演説をしたのが64年。そして翌年に失踪。
この間に彼が何を考え、彼やその周囲にどんなことがあったのかを知りたかった。
キューバで革命を成功させても、まだ世界には多くの不正があり、
貧困に苦しむ人々が大勢いて、それらを見過ごすことはできなかったのはわかります。
結果的に、彼はこのボリビアで命を落とすことになるのですが、
そうならず、仮にここでの革命を成功させたとしても、
彼はまた新たな地へと旅立ったことでしょう。
変装してボリビアへ
前回同様、今作でもゲバラ本人の思いや考えが最後までよく見えませんでした。
最後の最後、政府軍に捕らえられてからようやく素顔がほんの少し見えた気がします。
それまでは相変わらず負傷兵を救い、農民の子どもの治療をし、
彼本人は喘息の発作に苦しみ続けます。
キューバの時に比べ兵士たちの士気は低く、農民も味方にはなりません。
ことごとく作戦が失敗し次々と仲間を失っていく中、彼がどんな思いだったのか、
今度こそもう少し見えるのではないかと思ったのですが、
残念ながら、私には感じることができませんでした。
そういった演出は一切排除することが目的だったのでしょう。
ソダーバーグはインタビューで「一切脚色はない」と言い切っています。
エンドロールを見れば、というより”聞け"ば、その強い意志は充分に伝わってきます。
まさに疑似ドキュメンタリーを作るつもりで製作し、その点では成功していると思います。
それでは、この作品を作る目的は何だったのか。
その目的は結局のところよく見えませんでした。
ゲバラの何を描きたかったのか。ゲバラのいた時代、
そして彼の起こした革命そのものを忠実に再現することから見えてくる何かを、
観る側は懸命に掴まなくてはいけないのかも知れません。
女性戦士タニア
ゲバラの諜報部員として働く女性戦士タニアをフランカ・ポテンテが演じていましたが、
流暢なスペイン語を話し、とても印象的でした。
タニアという人がそもそもドイツ人だったそうで、その意味では彼女はまさに適役。
ほんのワンシーンだけマット・デイモンが出演していましたが、
ジェイソン・ボーンとマリーは残念ながら(?)出会えませんでしたね。
前作同様、戦士たちのキャラクターがわかりにくく、
まあこれは私の理解力の無さ、顔認識が非常に苦手なアタマだからなんですが、
今回は政府軍側もたくさん登場するので、大変厳しい思いをしました。
ベニシオ・デル・トロは当然ながら一貫して険しく重苦しい表情なのですが、
一ヵ所だけ、ボリビアの子どもたちと戯れるシーンで、
唯一、まさにこぼれるような笑顔を見せます。
おそらくこの笑顔は演出ではなく、彼の演技でもなく、
素の状態だったのではないかと思いました。
それが不思議なことに私の知っているチェ・ゲバラ本人の、
魅力的な、人を惹きつけて止まないあの笑顔に一番似ているように思いました。
Che: Part Two(2008 アメリカ/フランス/スペイン)
監督 スティーブン・ソダーバーグ
出演 ベニシオ・デル・トロ デミアン・ビチル フランカ・ポテンテ ルー・ダイアモンド・フィリップス
カタリーナ・サンディノ・モレノ ロドリゴ・サントロ マット・デイモン
観に行くのもそれなりに覚悟がいるし、かといって観たくないわけでもなく、
むしろ早く観たくてしょうがない、といった気分でこの一週間ほどを過ごしていました。
1965年3月、エルネスト・"チェ"・ゲバラ(ベニシオ・デル・トロ)は、
世間から忽然と姿を消します。
フィデル・カストロは共産党中央委員会で、ゲバラからの"別れの手紙"を公表します。
ゲバラはすべての地位を捨て、新たな革命の旅へ出ることを決意していたのでした。
容姿を変え、妻アレイダ(カタリーナ・サンディノ・モレノ)や子どもたちと最後の時を過ごし、
1966年11月、ゲバラはボリビアに入国します。
チェ最後の革命の旅は
前作では55年からのキューバ革命と64年のニューヨークを、
時間軸を前後させて描いていましたが、
今回はこういった演出は一切なし。時間通りに話が進んでいきます。
前作の感想で、キューバでの状況説明の少なさをニューヨーク部分で説明しているようだ、
と書いたのですが、今回それがないことでいよいよわかりにくくなるか・・・と思ったら、
意外にも、前作より話に集中することができました。
とは言ってもやはり登場人物の関係性や、
ゲバラが(地理的にも思想的にも)どこへ向かおうとしているのか、
そういった細かい説明は今回もまったくと言っていいほどありません。
そもそも、ゲバラをボリビアへと向かわせたのはどういうことだったのか。
国連で演説をしたのが64年。そして翌年に失踪。
この間に彼が何を考え、彼やその周囲にどんなことがあったのかを知りたかった。
キューバで革命を成功させても、まだ世界には多くの不正があり、
貧困に苦しむ人々が大勢いて、それらを見過ごすことはできなかったのはわかります。
結果的に、彼はこのボリビアで命を落とすことになるのですが、
そうならず、仮にここでの革命を成功させたとしても、
彼はまた新たな地へと旅立ったことでしょう。
変装してボリビアへ
前回同様、今作でもゲバラ本人の思いや考えが最後までよく見えませんでした。
最後の最後、政府軍に捕らえられてからようやく素顔がほんの少し見えた気がします。
それまでは相変わらず負傷兵を救い、農民の子どもの治療をし、
彼本人は喘息の発作に苦しみ続けます。
キューバの時に比べ兵士たちの士気は低く、農民も味方にはなりません。
ことごとく作戦が失敗し次々と仲間を失っていく中、彼がどんな思いだったのか、
今度こそもう少し見えるのではないかと思ったのですが、
残念ながら、私には感じることができませんでした。
そういった演出は一切排除することが目的だったのでしょう。
ソダーバーグはインタビューで「一切脚色はない」と言い切っています。
エンドロールを見れば、というより”聞け"ば、その強い意志は充分に伝わってきます。
まさに疑似ドキュメンタリーを作るつもりで製作し、その点では成功していると思います。
それでは、この作品を作る目的は何だったのか。
その目的は結局のところよく見えませんでした。
ゲバラの何を描きたかったのか。ゲバラのいた時代、
そして彼の起こした革命そのものを忠実に再現することから見えてくる何かを、
観る側は懸命に掴まなくてはいけないのかも知れません。
女性戦士タニア
ゲバラの諜報部員として働く女性戦士タニアをフランカ・ポテンテが演じていましたが、
流暢なスペイン語を話し、とても印象的でした。
タニアという人がそもそもドイツ人だったそうで、その意味では彼女はまさに適役。
ほんのワンシーンだけマット・デイモンが出演していましたが、
ジェイソン・ボーンとマリーは残念ながら(?)出会えませんでしたね。
前作同様、戦士たちのキャラクターがわかりにくく、
まあこれは私の理解力の無さ、顔認識が非常に苦手なアタマだからなんですが、
今回は政府軍側もたくさん登場するので、大変厳しい思いをしました。
ベニシオ・デル・トロは当然ながら一貫して険しく重苦しい表情なのですが、
一ヵ所だけ、ボリビアの子どもたちと戯れるシーンで、
唯一、まさにこぼれるような笑顔を見せます。
おそらくこの笑顔は演出ではなく、彼の演技でもなく、
素の状態だったのではないかと思いました。
それが不思議なことに私の知っているチェ・ゲバラ本人の、
魅力的な、人を惹きつけて止まないあの笑顔に一番似ているように思いました。
Che: Part Two(2008 アメリカ/フランス/スペイン)
監督 スティーブン・ソダーバーグ
出演 ベニシオ・デル・トロ デミアン・ビチル フランカ・ポテンテ ルー・ダイアモンド・フィリップス
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タグ:映画
2009-02-14 01:34
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