ゴーストワールド [映画感想−か]
先日の『JUNO/ジュノ』の記事で『ゴーストワールド』を思い出した・・・と書いたので、
久しぶりに観てみることにしました。
LA郊外に住むイーニド(ソーラ・バーチ)とレベッカ(スカーレット・ヨハンソン)。
高校を卒業したけれど、進路は何も決まっていません。
とりあえずレベッカはコーヒーショップで働き始めたけれど、
イーニドは自分が何をしたいかまるでわからないし、そもそも仕事なんかしたくない。
そんなある日、退屈しのぎに新聞の広告欄で見つけた男にいたずら電話をかけることにした2人。
呼び出したダイナーに現れたのは、冴えない中年男シーモア(スティーヴ・ブシェミ)。
ブルースレコードのコレクターで、世間とうまく馴染めない彼に何かを感じたイーニド。
2人は少しずつ親しくなっていきますが・・・。
イーニドとレベッカ
劇場で観たとき、そのあまりの内容にドップリ落ち込んでしまった、その記憶が蘇ってきました。
同じように落ち込み、これは私の映画だ!と思った人が当時かなりいたはずです。
また、イーニド、レベッカ、シーモアのそれぞれを、
これはまさにあの人のことだ!と身近で思いつく人がいたり。
私にも、高校時代に知り合い、卒業後は進路もそのあとの就職先もまるで違ってしまいましたが、
長い間、とても親しく付き合っていた友人がいました。
でもある時ちょっとしたことがあって、それをきっかけにまったく会わなくなってしまいました。
私達はまさにイーニドとレベッカのようで、高校時代はクラスメイトとは距離があったし、
映画や音楽の趣味にヘンなこだわりがあったりしていました。
彼女は絵を描くのが得意で、そういう意味でも私よりイーニド度が高かった。
私のイーニド度も結構なものだったと思うのですが、
結果的にはレベッカになって行ったのだと思います。
それが、その友人と距離ができてしまった原因にもなってしまった。
そういった経験からも、このイーニドとレベッカを客観視できませんでした。
イーニドとシーモア
イーニドは、嫌いなもの、イヤなことはとにかくハッキリしています。
反対に好きなこと、自分がどうしたいか、何が楽しいのかが自分でまったくわからない。
そして、そんな自分が大嫌い。
もうこのあたり、まったく私なのです。特に十代の頃の。
キライなものの理由・・・大抵それはバカだから。薄っぺらだから。嘘っぱちだから。
そんなことを敏感に感じ取ってしまう彼女は、
だけど自分だって中身はそれほどのものじゃないということも感じている。
だからそんな自分がイヤでイヤでしょうがないのだと思います。
そのどこにもやりきれない気持ちをぶつける術を知らない毎日から、
ある日フッと消えてなくなりたいと思っている。
ああ本当に、書いていてイヤになるくらい私にもそんな気持ちがありましたし、
いまだにあるような気もする・・・。
でも、十代にそういう思いをする人は少なくない気がします。
他人と折り合いを付けることが負けのような気がするし、
考えれば考えるほど、どんどん深みにはまってしまう感じ。
客観的に見ればすごく些細なことなのに。
さて、そこで『JUNO/ジュノ』です。
ちょっと普通とは違う性格、個性的な好みや物事を斜めから見るような物言い、
いつも女の子2人組でつるんでいたりといったところなどは一見この作品に似ているような気がします。
でも圧倒的に違うのは、ジュノは自分の趣味嗜好がハッキリしていて迷いがない。
将来のことはあまり考えていないようだけど、まだ彼女が16歳で、
イーニドより若干若くて進路に悩む状況ではないということもあります。
この年頃の1年2年はとっても長い。ジュノも妊娠を経て、高校を卒業するときにはどうなっているのか。
彼女なら、ちゃんと乗り切れそうな気もします。
ジュノのそういう前向きな姿勢が、広く人々に受け入れられたのでしょう。
人は、何かとんでもない事態になったときは、思いも寄らない力を発揮するものなのかも知れません。
ジュノには予想外の妊娠がありましたが、イーニドには、そんなとんでもないことが起こらなかった。
きっとイーニドは、そういうとんでもないことを心待ちにしていたと思います。
自分でどうしようもない現実からフワッとさらってってくれるような事件。
シーモアにちょっとだけ希望を見出しかけていたのかも知れませんが、
それも、彼を深く知ってみればそうじゃなかったと気づいてしまいます。
そうして彼女は、ずっとバスを待っていた老人がバスに乗る瞬間を目撃します。
『ゴーストワールド』は、ラストの解釈がいろいろ分かれていますが、
仮にあれを前向きなハッピーエンドだと考えても、何かザラッとした後味の悪いものが残ってるし、
だけど単純に"天国行き"のバスとも思えない。
イーニドにとって何がハッピーエンドなのか。彼女はとりあえず何か1つ答えを見出したことはわかりますが、
その答えがキチンと説明されるわけではないので、観ているこちら側はよくわからないまま。
イーニドに対する評価が観る人によって分かれるのと同じで、
すべて観る側に委ねるエンディングなのかな、と思いました。
2人に連れ回されるジョシュ(ブラッド・レンフロ)
ブラッド・レンフロが出ていましたね。それはすっかり忘れていました。
なんだかどうでもいいような役でしたが、いろいろ複雑な思いで見てしまいました。
撮影当時15歳だったスカーレット・ヨハンソン。
だんだんと大人っぽく変わっていって、最後はどう見ても20歳ぐらいに見えます。
その後の彼女の活躍を思えばさすが、ということでしょうか。
そして一番胸に迫るのは、やはりスティーヴ・ブシェミ。
彼のラブシーンを見る日が来るなんて!!と、劇場で頭を抱えそうになったものです。
シーモアみたいな人も身近にいるなあ・・・と思いながら観ていたのでなお一層。
本当に攻撃力の高い作品です。
Ghost World(2001 アメリカ)
監督 テリー・ツワイゴフ
出演 ソーラ・バーチ スカーレット・ヨハンソン スティーヴ・ブシェミ
イリーナ・ダグラス ボブ・バラバン ブラッド・レンフロ
久しぶりに観てみることにしました。
LA郊外に住むイーニド(ソーラ・バーチ)とレベッカ(スカーレット・ヨハンソン)。
高校を卒業したけれど、進路は何も決まっていません。
とりあえずレベッカはコーヒーショップで働き始めたけれど、
イーニドは自分が何をしたいかまるでわからないし、そもそも仕事なんかしたくない。
そんなある日、退屈しのぎに新聞の広告欄で見つけた男にいたずら電話をかけることにした2人。
呼び出したダイナーに現れたのは、冴えない中年男シーモア(スティーヴ・ブシェミ)。
ブルースレコードのコレクターで、世間とうまく馴染めない彼に何かを感じたイーニド。
2人は少しずつ親しくなっていきますが・・・。
イーニドとレベッカ
劇場で観たとき、そのあまりの内容にドップリ落ち込んでしまった、その記憶が蘇ってきました。
同じように落ち込み、これは私の映画だ!と思った人が当時かなりいたはずです。
また、イーニド、レベッカ、シーモアのそれぞれを、
これはまさにあの人のことだ!と身近で思いつく人がいたり。
私にも、高校時代に知り合い、卒業後は進路もそのあとの就職先もまるで違ってしまいましたが、
長い間、とても親しく付き合っていた友人がいました。
でもある時ちょっとしたことがあって、それをきっかけにまったく会わなくなってしまいました。
私達はまさにイーニドとレベッカのようで、高校時代はクラスメイトとは距離があったし、
映画や音楽の趣味にヘンなこだわりがあったりしていました。
彼女は絵を描くのが得意で、そういう意味でも私よりイーニド度が高かった。
私のイーニド度も結構なものだったと思うのですが、
結果的にはレベッカになって行ったのだと思います。
それが、その友人と距離ができてしまった原因にもなってしまった。
そういった経験からも、このイーニドとレベッカを客観視できませんでした。
イーニドとシーモア
イーニドは、嫌いなもの、イヤなことはとにかくハッキリしています。
反対に好きなこと、自分がどうしたいか、何が楽しいのかが自分でまったくわからない。
そして、そんな自分が大嫌い。
もうこのあたり、まったく私なのです。特に十代の頃の。
キライなものの理由・・・大抵それはバカだから。薄っぺらだから。嘘っぱちだから。
そんなことを敏感に感じ取ってしまう彼女は、
だけど自分だって中身はそれほどのものじゃないということも感じている。
だからそんな自分がイヤでイヤでしょうがないのだと思います。
そのどこにもやりきれない気持ちをぶつける術を知らない毎日から、
ある日フッと消えてなくなりたいと思っている。
ああ本当に、書いていてイヤになるくらい私にもそんな気持ちがありましたし、
いまだにあるような気もする・・・。
でも、十代にそういう思いをする人は少なくない気がします。
他人と折り合いを付けることが負けのような気がするし、
考えれば考えるほど、どんどん深みにはまってしまう感じ。
客観的に見ればすごく些細なことなのに。
さて、そこで『JUNO/ジュノ』です。
ちょっと普通とは違う性格、個性的な好みや物事を斜めから見るような物言い、
いつも女の子2人組でつるんでいたりといったところなどは一見この作品に似ているような気がします。
でも圧倒的に違うのは、ジュノは自分の趣味嗜好がハッキリしていて迷いがない。
将来のことはあまり考えていないようだけど、まだ彼女が16歳で、
イーニドより若干若くて進路に悩む状況ではないということもあります。
この年頃の1年2年はとっても長い。ジュノも妊娠を経て、高校を卒業するときにはどうなっているのか。
彼女なら、ちゃんと乗り切れそうな気もします。
ジュノのそういう前向きな姿勢が、広く人々に受け入れられたのでしょう。
人は、何かとんでもない事態になったときは、思いも寄らない力を発揮するものなのかも知れません。
ジュノには予想外の妊娠がありましたが、イーニドには、そんなとんでもないことが起こらなかった。
きっとイーニドは、そういうとんでもないことを心待ちにしていたと思います。
自分でどうしようもない現実からフワッとさらってってくれるような事件。
シーモアにちょっとだけ希望を見出しかけていたのかも知れませんが、
それも、彼を深く知ってみればそうじゃなかったと気づいてしまいます。
そうして彼女は、ずっとバスを待っていた老人がバスに乗る瞬間を目撃します。
『ゴーストワールド』は、ラストの解釈がいろいろ分かれていますが、
仮にあれを前向きなハッピーエンドだと考えても、何かザラッとした後味の悪いものが残ってるし、
だけど単純に"天国行き"のバスとも思えない。
イーニドにとって何がハッピーエンドなのか。彼女はとりあえず何か1つ答えを見出したことはわかりますが、
その答えがキチンと説明されるわけではないので、観ているこちら側はよくわからないまま。
イーニドに対する評価が観る人によって分かれるのと同じで、
すべて観る側に委ねるエンディングなのかな、と思いました。
2人に連れ回されるジョシュ(ブラッド・レンフロ)
ブラッド・レンフロが出ていましたね。それはすっかり忘れていました。
なんだかどうでもいいような役でしたが、いろいろ複雑な思いで見てしまいました。
撮影当時15歳だったスカーレット・ヨハンソン。
だんだんと大人っぽく変わっていって、最後はどう見ても20歳ぐらいに見えます。
その後の彼女の活躍を思えばさすが、ということでしょうか。
そして一番胸に迫るのは、やはりスティーヴ・ブシェミ。
彼のラブシーンを見る日が来るなんて!!と、劇場で頭を抱えそうになったものです。
シーモアみたいな人も身近にいるなあ・・・と思いながら観ていたのでなお一層。
本当に攻撃力の高い作品です。
Ghost World(2001 アメリカ)
監督 テリー・ツワイゴフ
出演 ソーラ・バーチ スカーレット・ヨハンソン スティーヴ・ブシェミ
イリーナ・ダグラス ボブ・バラバン ブラッド・レンフロ
タグ:映画
ラストのバスの乗車の解釈はこの映画を観た人それぞれなのだろうなぁ~と思いながら観ていました。
by おぉ!次郎 (2009-04-14 05:41)
おぉ!次郎さん、こんにちは。
イーニドのことを思うとハッピーエンドであって欲しいのですが、
では、あのバスはどこ行きだったら彼女にとってハッピーなんでしょうね。
いつまでも後を引く、印象深い名作です。
コメント& nice!ありがとうございました。
by dorothy (2009-04-14 23:58)
劇中盤で年配の方がなかなか来ないバスをずっと待っていてバスに乗っていくエピソードがありました。私には希望を信じていれば実現するようなシーンに思えました。なので、主人公のバスのシーンも希望を持った将来に思えました。
by おぉ!次郎 (2009-04-16 20:59)
来るはずのないバスを待つのが老人だから、
やって来たそのバスは「天国行き」であり、
天国=死、ということでバッドエンディングと捉える人が多いみたいですね。
でも私もおぉ!次郎さんと同じように、希望を持ったエンディングだと思いたいです。
イーニドが天国を望んだのならそれでもいいと思うし、
イーニドはそんなヤワじゃないとも思います。
by dorothy (2009-04-17 01:05)
なるほど!バスの行き先が天国と捉える解釈も確かにありますね!!私などは“バスの到着”は“希望したチャンスの到来”その先は自らの希望の経験とイメージしてしまいました。待っていたのが老人なのは、長い年月を経てもチャンスは訪れるものだとのことかと…。
早速のコメントありがとうございました。
by おぉ!次郎 (2009-04-17 22:46)
はじめまして.
なんともポップな映画でしたね. 色使いといい.
思春期の女の子ならではのしっかりしてそうで, そうでもない世界観が面白かったです
by nhakamura (2011-05-01 21:45)
nhakamuraさん、はじめまして。
女の子らしい可愛さも見せつつヘビーな作品でした。
イーニドみたいな女の子は少数派かもしれませんが、
どこか思い当たるところは必ずあるんじゃないかなと思いますね。
by dorothy (2011-05-02 23:06)