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JUNO/ジュノ [映画感想−さ]

今年のアカデミー賞脚本賞受賞、
作品、監督、主演女優賞候補にもなった話題作。
そうでもなければたぶん日本では公開されることもなかったようなインディペンデント作品です。


16歳のジュノは、同級生のポーリーとたった一度、興味本位のセックスをして妊娠してしまいます。
中絶や自殺も考えますが、ポーリーや親友レア、そして両親に告白し産むことを決意。
産んだ子どもは里子に出すことを決め、里親捜しを始めます。


ジュノとポーリー
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16歳で妊娠というと、どこかフシダラであるとか遊んでいるとか、
何も考えていないような印象を受けますが、
この主人公ジュノは、生活態度すべてに於いて自己主張がハッキリしており、
強い意志を持って日々暮らしていることが、その言動でわかります。
そうは言っても、彼女のしたこと・・・友だちとの興味本位のセックスという点では、
考えナシの子どもだったと言えるかも知れません。
ただ、そのことを彼女自身も、また家族も否定したり後悔したりしません。
少なくとも親はもうちょっと怒ったり落胆したり騒いだりするもんじゃないかと思うのですが、
あっけないくらいすぐに理解し、「よし、次!」とばかりに気持ちを切り替え前進します。
その点が、ちょっと出来過ぎな気もしますが、ジュノが愛され信頼されている表れかも知れません。
まああれぐらいキッパリとジュノに宣言されると、親としてはそれ以上のことは言えないかもとも思います。

女の子が主役で、単なる惚れたハレタなんて話ではない作品というのは、
意外にありそうで無いものだということに気づきました。
ジュノの考え方や音楽的嗜好などは、ちょっと普通の16歳の女の子と違っています。
でも、それがヘンな主張になっていないところに好感が持てました。
ジュノ本人が自分は人とは違うとか、ちょっと変わってるとかいった意識がないし、
周りも特別そんな目で見てはいません。
そういうキャラクター設定などから、どうしても私は『ゴーストワールド』を思い出してしまったのですが、
あの作品の主人公イーニドは、自分が周りとは違うという意識が強すぎて、
どんどん深みにはまってしまう暗さがあり、
そこにやるせなさのようなものを感じてしまったのですが、
このジュノくらい潔くいてくれると、なんだかもうあなたの言うとおりにします!と言いたくなってしまいます。


義母と親友リアは力強い味方
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ジュノ役のエレン・ペイジは、ジュノ=エレン・ペイジとして後々まで記憶されることでしょうし、
また、それ以上の芝居も今後見せてくれるだろうなあという期待感を持たせてくれます。
まあよくこんなにポンポンとナマイキなセリフが淀みなく出てくるなあと感心しますし、
それがまったくイヤミでもなんでもなく自然なところが素晴らしいです。
イヤミといえば『スパイダーマン』のデイリー・ビューグル新聞社社長のときの、
あのイヤミな感じとは正反対と言っていい、父親役のJ・K・シモンズの愛情溢れる芝居も泣けます。
義母役アリソン・ジャネイは、いつもちょっと怖そうで、今回もやっぱり怖そうなんですが、
彼女が超音波技師に啖呵を切るシーンは思わず拍手したくなります。
主人公の義母という普通なら悪役にもなりそうな立場ですが、そうならないところもイイです。
ジュノの"お相手"ポーリー役のマイケル・セラ、親友リア役のオリヴィア・サールビーも、
とても自然で好印象、ちゃんと自分の役どころがわかっている!という演技。
16歳男子の頼りなさと、ジュノに向ける真っ直ぐな瞳が切なくも愛おしいポーリー。
いつもジュノに付き合っているリアは、チアリーダーというジュノとは正反対とも言える性格なのに親友という、
ジュノ以上に天然で不思議キャラ。またそれがとてもキュートです。
そして里親候補になる夫婦を演じるジェニファー・ガーナーとジェイソン・ベイトマン。
ある意味楽天的なジュノとは正反対の、いろんなものを抱えてしまっている大人、
でもどちらも実は大人になりきれていない大人として登場し、
ジュノに大きく影響され、またジュノにも大きな影響を与えます。
この夫婦との出会いが、ジュノに初めて愛というものを教えることになるのです。

デビュー作『サンキュー・スモーキング』も素晴らしかったジェイソン・ライトマン監督。
この作品でその実力が証明されたと言ってもいいでしょう。
たぶん近いうちにアイヴァン・ライトマンの息子、ではなく、
アイヴァンがジェイソンの父、と言われるようになるかも知れません。


愛情深い父親
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私の後ろの列に、まさにジュノ世代と思われる女子高生4人組がいたのですが、
終映後に聞こえてきた感想は「期待したほど面白くなかった」「途中寝そうになった」という、
ちょっと否定的意見でした。
いずれもそこそこオシャレしてて、ケバイわけでもなく、
地味という感じでもない少女たちでしたが、それを聞いて思ったことは、
この作品、ジュノと同世代の子たちには意外と感じるところは少ないのかも、ということです。
特に日本の女子高生にとっては、です。
彼女たちはたぶん、ジュノのような強さは持ち合わせていないだろうし、
もちろん妊娠なんていう大事件にも遭遇していない。
同世代であるという共通点はあるけれど、
日本とアメリカという、置かれている環境や状況はまるで違うし、
その違いを客観的に見れるほどの人生経験もしていない。
今の自分に重ね合わせても、よく理解できないかも知れない、と思いました。
まあ私の勝手な思いこみですが。
私などは自分が16歳の頃を思い出して、その違いを冷静に判断し、
また、深く思いを馳せることもできます。
その上、里親候補の夫婦やジュノの両親の気持ちにも感情移入できてしまいます。
なので、いろいろと胸に迫るポイントがあちらこちらにたくさんありました。
実際にジュノほどの強さを持った16歳というのは、たぶん現実にありえない存在で、
すでに大人になった世代が、あの頃自分がこんな16歳だったら良かった、という、
理想型を体現しているのかも知れません。
もうティーンじゃない大人にこそ観て欲しい作品だと思いました。


Juno(2007 アメリカ)
監督 ジェイソン・ライトマン
出演 エレン・ペイジ マイケル・セラ ジェニファー・ガーナー ジェイソン・ベイトマン
   アリソン・ジャネイ J・K・シモンズ オリヴィア・サールビー



JUNO/ジュノ <特別編>

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD



JUNO/ジュノ (Blu-ray Disc)

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↓『シー・オブ・ラブ』は卑怯!なサントラ。

JUNO/ジュノ

JUNO/ジュノ

  • アーティスト: サントラ,ベル・アンド・セバスチャン,モット・ザ・フープル,キミヤ・ドーソン,キャット・パワー,ヴェルヴェット・アンダーグラウンド,モルディ・ピーチズ,アンツィー・パンツ,マイケル・セラ,バリー・ルイ・ポリサー,ザ・キンクス
  • 出版社/メーカー: Warner Music Japan =music=
  • 発売日: 2008/04/23
  • メディア: CD



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