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ロバと王女 [映画感想−ら]

観ているあいだ、ずっとニコニコしている自分に気づいてしまいます。
ああ私はこういうおとぎ話を素直に綴ったファンタジー映画が大好きなのだ、と気づくから。
いえ、それだけではありません。
これはとびきり美しい色彩を持ったジャン・コクトーの『美女と野獣』だと気づかされるからです。

年を重ねてなお美しいジャン・マレーがきらめくコスチュームを身に着け鷹揚に語り始めたかと思うと、
そのものズバリ、コクトーの詩を朗読し始める。
後ろに立っているだけだと思われた人形の目は前を歩く人に沿って動いている。
鏡は真実を写し、一輪のバラが恋の道案内をする。
ドヌーブはスローに森を駆け抜け、逆回転でコスチュームを変えたりする。

ストーリー自体はそもそもがおとぎ話で、
そこに深い裏テーマが潜んでるようなものではありません。
妻を亡くし、妻以上に美しい後妻を探してみれば、
行き着くのは自分の娘だと気づいて娘に求婚する王、
それに対し娘も受けるべきかしら?と思い悩むという、
おとぎ話と言うにはあまりにもお気楽な父娘に対し、
アドバイス(というか横恋慕?)する妖精の語る言葉は不思議に現実的でシニカル。
原作ではどうなっているのか、この妖精の部分は脚色なのではないかと思うのですが、
この妖精の存在がこの物語を「大人の童話」にしていると言えます。
父と娘の結婚なんて道徳的にありえないのよ!と言いながら、
実は王様のことが好きだっただけじゃないの?というオチは、そこだけフレンチな恋物語になっています。

いつの時代ともどこの国とも知れない舞台設定、
未来を知るという妖精の住む家には電話機が置かれているし、
最後はヘリコプターまで登場するという不思議な演出が、
まるで人工甘味料のようなイケナイ甘さで夢中にさせます。
「ロバの皮」はまさしく被りもので、ロバの顔をフードのように被るドヌーブが信じられないぐらいに愛らしい。

ロバの皮を被るドヌーブ

ジャン・マレーの座る椅子に付いた猫か熊かわからない顔や仮面舞踏会の仮面もどこかとぼけていてキッチュ。

こんな感じ・・・。

ミシェル・ルグランの音楽はどれもこれも完璧な美しさで、
現代風でありながらどこの国の音楽とも知れない不思議さでただただ愛を語ります。
私は愛が好き〜と、ひたすら素直に愛を求めるだけの人たち。
この完璧な美は永遠に色あせることなく輝き続けるでしょう。
ドヌーブが身にまとう太陽の輝きのドレスのように。


Peau d'Ane(1970 フランス)
監督 ジャック・ドゥミ
出演 カトリーヌ・ドヌーヴ ジャン・マレー ジャック・ペラン デルフィーヌ・セイリグ ミシュリーヌ・プレール

ロバと王女 デジタルニューマスター版

ロバと王女 デジタルニューマスター版

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • メディア: DVD


タグ:映画
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