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レスラー [映画感想−ら]

ダーレン・アロノフスキーのこれまでの作風とレスリングという題材がどう繋がるのか、
観るまでまったく想像できなかったのですが、
アロノフスキー印の感覚的、神秘的な雰囲気はまるっきりどこかへ行ってしまった、
映像もストーリーも直球の作品でした。
技巧を凝らしたようなところは皆無、ただただ真っ直ぐにキャストやストーリーを追い、
登場するレスラーたちはすべて本物、ドキュメンタリータッチとも言えるその作りは、
とても力強く、最初からぐいぐいと引き付けられてしまいました。


1980年代に一世を風靡した伝説のレスラー、
ランディ・"ザ・ラム"・ロビンソン(ミッキー・ローク)。
今も現役ながら活躍の場は週末の小さな会場での興業のみ。
平日はスーパーでバイトをし、トレーラーハウスに1人暮らしという孤独な生活を送っていました。
ある日、日頃の無理がたたり心臓発作を起こしてしまったランディは、ついに引退を考え始めます。
彼は馴染みのストリッパー、キャシディ(マリサ・トメイ)に心情を聞いてもらうと、
彼女はランディに家族に会ってみたら、と提案します。
ランディには長年疎遠になっているステファニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)という娘がおり、
彼は勇気を出して会いに行くことを決めますが・・・。


自分を生きる
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冒頭から何度も登場するランディの背中を追い続けるカメラ。
当然彼の表情は見えないのですが、まさに背中がすべてを語る、という映像で、
そこに彼が背負い続けてきたものの多さ、重さがしっかりと見えるようです。
楽屋からリングへ向かうランディの背中。遠くに聞こえていた声援が徐々に近づいてきて、
その声援を送る人々の前に彼が姿を現すと、会場のボルテージは一気に上がります。
彼が何度となく経験して来た緊張感と高揚感。
そしてこの状況を、ランディがスーパーのデリ売場で仕事を始めることになった時に、
同じような演出で見せます
売場へ向かう彼の背中、そこに同じように遠くから声援が聞こえます。
プロレスを諦め新しい第一歩を踏み出すために、
彼なりに自分を奮い立たせようとしていたのかも知れません。
でも、カーテンの向こうにはリングも声援を送る観客もなく、
待っているのはハムや惣菜を求める客たち。
ここで彼が感じた失意はどれほどのものだったのか。

それでもランディはなんとかその状況を受け入れようと努力します。
おそらくこれまで家族も顧みず好きに生きてきたかも知れません。
でも彼はいいかげんな人間ではなく、基本的に真面目でまっすぐな人なのだろうな、と、
彼のバイトぶりを見ていると感じてしまいました。
結局このバイトの仕事は投げ出してしまうことにはなるのですが、
それは無責任とかいいかげんだからではなく、
自分にとって大事なものが何かわかってしまったから、なのです。


自分らしく生きる
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娘となんとか和解しかかったのにつまらないことで台無しにしてしまったり、
キャシディとも想いが通じ合いそうで、しかし彼女にも彼女の人生があることがわかる。
ランディは何度も何度も挫折を繰り返しながら、
結局、自分が生きていく場所はリングの上にしかないと悟ります。
けれどそこに再び立つことは死をも意味する。
でもそれは"そこしかない"のではなく、”そここそがすべて”なのです。
そんな彼の生き方は、そんな場所を持たない私から見たら羨ましくすらありました。
世の大半の人は失敗したり、挫折を感じながら生きている。
でもそうなったら仕方なく別の生き方を探し、生き続けなくてはいけない。
でもランディには何かを犠牲にしても自分が輝ける場所を持っている、
それはものすごく幸福なことなんじゃないかなと思いました。
もちろん、何が幸福かなんて他人が決めることじゃないし、
ランディも進んで下した結論ではないかも知れません。
でも、身体がボロボロになっても、貧乏でも家族に恵まれなくても、
自分に向けて歓声が上がる場所、そこにいればどんな痛みも忘れさせる場所、
望んでも誰もが得られるわけじゃないそんな場所に立ち、自分の人生のけじめをつける。
こんなランディの生き方には単純に心打たれてしまいました。

一方、ストリッパーのキャシディの生き方もとても理解できます。
彼女もレスラーと同様にカラダ1つで生きている身。肉体の衰えは生活にかかってくるし、
その評価はチップや指名の数でハッキリとわかるシビアな世界に生きています。
彼女には養っていかなければならない子どもがいて、
生き方を変えなくてはいけない岐路に彼女も立っている。
ランディの気持ちはよくわかるし、受け入れたいけれどそうはいかない。
彼女がラストに見せた行動はものすごく理解できて、ものすごく身に染みました。


自分の場所に立つ
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落ちぶれたレスラーと、演じるミッキー・ロークの実生活があまりにも似通っていて、
適役だとか、ロークあっての作品という評価も多いようですが、
決してそれだけの作品とは思えませんでした。
ミッキー・ロークの事情を知識として持っていれば、そう考えてしまうのは仕方ない。
アロノフスキー監督もそこを狙ってキャスティングしたんだと思います。
でも、当然ながら決してレスラーを演じるミッキー・ロークのドキュメンタリーにはなってないし、
彼だけじゃなく出演者全員が素晴らしい演技を見せています。
ほかのレスラーたちの"演技"もなかなかのものでした。
ランディと対戦相手が一緒にスーパーに"小道具"を買い出しに行くシーンは微笑ましくすらありました。

かつての栄光も今は昔、家族にも見捨てられ恋愛もうまくいかず・・・というストーリーは、
映画として特に目新しいものではなく、でも、そんなある種ベタな内容だからこそ、
それをリアルに描くことで、どこにもそれず真っ直ぐ心に響いたのだと思います。
登場人物たちの痛みや汗、身体の軋む音までがスクリーンを通してこちらに伝わってくるような、
まさに肉体派の映画であり、ぶつかり合う身体の中に潜む彼らの思いに偽りは感じられない。
痛いシーンが多くて何度も目をつぶってしまいましたが、それは彼らレスラーたちに対して失礼ですね。
ダーレン・アロノフスキーがこれからどんなものを見せてくれるかの期待も持たせてくれた、傑作。


The Wrestler(2008 アメリカ/フランス)
監督 ダーレン・アロノフスキー
出演 ミッキー・ローク マリサ・トメイ エヴァン・レイチェル・ウッド



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ライラにお手あげ [映画感想−ら]

『メリーに首ったけ』から早10年。
ファレリー兄弟+ベン・スティラーと来れば個人的に超期待!
でもニール・サイモン作品のリメイクって・・・大丈夫?


スポーツ用品店を経営するエディ(ベン・スティラー)は、40歳で独身。
父親(ジェリー・スティラー)や友人のマック(ロブ・コードリー)は、
そんな彼を心配しますが、なかなか結婚には踏み出せないでいました。
ある日、昔の恋人の結婚式に出席し、軽く傷つきながらの帰り道、
街でライラ(マリン・アッカーマン)という女性と出会います。
あっという間に恋に落ちた2人は、ライラの仕事の事情や周りのプレッシャーもあって、
交際もそこそこに結婚、メキシコへハネムーンに向かいます。
しかしそこでエディは、今まで想像もしなかったライラの素顔を知らされることに。
その上そんなエディの前にミランダ(ミシェル・モナハン)という魅力的な女性も現れ・・・。


元カノの結婚式が悪夢の始まり
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ライラと出会って結婚し、ハネムーンに出発するあたりまでは、
なんだか普通のラブコメといった感じで、
ベン・スティラーのパパが多少飛ばしてるかな?というぐらいで、
(自分の息子の女性関係をストレートに聞きまくるオヤジさん、最高!)
ファレリー兄弟、またもや『2番目のキス』のパターンなのか!?と、
ちょっと心配していたんですが・・・もちろんそんなことはありませんでした。
新婚旅行先で次々に明らかになるライラのトンデモぶり!
ライラは最初は環境調査のボランティアなんかやってるというぐらいで、
「2人の関係を大事にしたいの」と婚前交渉もナシだし、
爽やかで可愛らしいイメージだったのが・・・いやあ、恐ろしくて書けません!
これは別に彼女がエディを騙してたとかいうわけではなくて、
彼女実に天然なんですね。ただあまりにも性格が極端。
やはり慌てて結婚なんてするもんじゃないです。

そこにもう1人、ミランダというなんとも魅力的な女性が登場し、
ライラのこともあってエディは彼女が気になり出すわけですが、
そうは言ってもエディは新婚旅行中。恋してる場合じゃない!
でも、ライラがアクシデントでホテルの部屋から出られないのをいいことに、
ミランダや彼女の家族と楽しい時間を過ごします。
真実を言い出すきっかけが無かったと言えば確かにそうなんですが、
ミランダ一家やホテルマン、なぜか元カノの結婚式にいたナマイキな子どもとか、
いろんな人たちが入り交じり、誤解が誤解を生んでいきます。
このあたりのドタバタな感じは確かにニール・サイモンっぽい感じではあります。


ライラは運命の人?
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やがてすべてが明らかになってしまう時は当然来てしまうんですが、
そこからの展開がまたくだらなすぎ。思いっきりベタなコメディと化します。
いろいろあってメキシコから出られなくなってしまうエディの取った行動は・・・バカです。
ベン・スティラーらしいといえばまったくらしくて、最初のラブコメな雰囲気もどこへやら。
そしていろいろあって、ラストはこうなるんだろうなあと想像して、
やっぱりそんな感じで落ち着くのね・・・と思ったら違った!
ラストに意外な女優さんがチラリと登場して予想外の結末。
うん、私は気に入りましたよ!

ライラを演じるマリン・アッカーマンという人、
観ている間は全然気づかず、その体当たりぶりにただただ驚いていたんですが、
見終わって調べたら、そうか『ウォッチメン』のシルク・スペクターIIの人だ!
髪がブロンドなんでまったく印象が違います。
『メリーに首ったけ』のキャメロン・ディアスにちょっと雰囲気が似てる気がしますが、
まああの時のキャメロン・ディアスの可愛さとくらべると、どうしたって見劣りしちゃいます。
それにしてもものすごいカラダの張り方で、心から尊敬してしまいます。
邦題だとライラが主役みたいなんで、そう考えると若干物足りなさを感じてしまうんですが、
あくまで主役はベン・スティラーのほうなので、こんなぐらいの感じでいいのかも知れません。
そうか!『ライラにお手あげ』って『メリーに首ったけ』と同じ雰囲気の邦題にしたんだ!
と今頃気付いてしまった。『ギリーは首ったけ』ってのもありましたが。
確かにお手あげではありますが、あまり内容を言い得てない気も・・・。


ミランダこそ運命の人?
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ミランダ役のミシェル・モナハンも好きな女優さん。
ライラとの対比もあって、一層魅力的に見えてしまいますが、
・・・と書きながらまた気づく。
なんだかビミョーに『寝取られ男のラブ♂バカンス』っぽい気が。
舞台がリゾート地とか女性がブロンド対ブルネットとか。
いや、話は全然違いますけどね。
オトコが情けないっていうのは共通項かな。

ファレリー兄弟と言うと下品な下ネタとか身障者ネタみたいなイメージがあるんですが、
それとは別に意外にも、いつも家族の描写がすごく暖かくて良いと思うのです。
ミランダの一家が内輪のネタでものすごくウケるところとか、
ああこういうノリってあるなあと思うし、
ミランダの従兄弟のマーティン(ダニー・マクブライド)が、
とにかくミランダのことを心配してエディを目の敵にしてるところとか、
なんかすごく暖かさを感じてしまうのです。
エディとお父さんとの関係もすごくいい感じだし。
そんなところもファレリー兄弟作品の好きなところかな。
とは言っても、やはり誰にでもお勧めすることはできないキワドイ描写満載。
これが好きと言うと人格を疑われそうですが・・・まあ今さらね。
ハイ、私はコレ大好きです!
『メリーに首ったけ』が好きという人ならわかってもらえる・・・と思います。
ああでも、ベン・スティラーも年取ったなあ。


The Heartbreak Kid(2007 アメリカ)
監督 ピーター・ファレリー ボビー・ファレリー
出演 ベン・スティラー マリン・アッカーマン ミシェル・モナハン ジェリー・スティラー
   ロブ・コードリー ダニー・マクブライド



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レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで [映画感想−ら]

レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが、
『タイタニック』以来約10年ぶりの共演ということで話題の今作。
そのことに世の中の人がどれほど思い入れを持つのかわかりませんが、
もし強く感じている人は、これは観ない方がいいかも知れない。
凄まじい夫婦の物語です。


1955年、コネチカット。
フランク(レオナルド・ディカプリオ)とエイプリル(ケイト・ウィンスレット)は、
"レボリューショナリー・ロード"という名の通りに建つ美しい家に、
2人の子どもたちと暮らしていました。
フランクはマンハッタンの事務機会社に勤める平凡なサラリーマン、
女優志願だったエイプリルは家事や子育てに追われる日々。
そんな毎日に疑問を感じ始めたエイプリルは、
ある日、フランクにパリで生活することを提案します。


エイプリルは悩む
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幸せな家庭でありながら満たされない妻が自分の人生を考え始める、
最初はそういうよくある話なのかと思っていました。
サム・メンデスということで『アメリカン・ビューティー』を思い浮かべたり、
ケイト・ウィンスレットということでは『リトル・チルドレン』も浮かびました。
実際そういう話であると言ってもいいのですが、この作品は、どこかちょっと違います。
まず、時代設定が50年代ということに大きな違いがあると思います。
おそらく、まだ妻は家を守ることが一番とされていた時代。
夫は終身雇用の会社で、適当な仕事ぶりでも間違いなく給料がもらえていた時代。
夫婦は、それぞれそんな現状に不満を持ちながらも、それほど切実でもない。
でも、エイプリルは不思議な打開策をひらめいてしまいます。
人生に何の野心もないフランクは、とまどいながらも「それもいいかも」と思い始めます。

エイプリルのその突拍子もないひらめきは、ものすごく無責任だし何の根拠もないもの。
今の時代であっても受け入れがたいものでしょう。
彼女の不思議なところは、特に自分自身をどうこう言い訳にするのではなく、
フランクに託してしまうところです。
曰く「あなたは特別な人なのだから。あなたの人生はこんなつまらないものではないはず」と。
それはまさに言い訳であり、また夫をその気にさせる方便だったと言えなくもありません。
私の人生はこんなはずじゃない!ということをことさらに強調せず、
あなたも幸せになるべきだと説得するのです。
ここが彼女のずるく、また愚かなところだと思いました。


フランクはとまどう
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フランクは特に野望もなく、
一生サラリーマンでいようと半ば人生を諦めている風です。
かといって投げやりに生きているとかいうことではなく、
おそらく彼は、妻や子どもたちと無事に幸せに生きることが、
何より大事だったんだと思います。
こういう性格はなんとなく日本人的というか、
あまり映画的ではない(というよりディカプリオ的じゃない?)雰囲気です。
その事なかれ主義な性格は決して悪いことじゃないし、
一生懸命、妻の機嫌を損なわないよう気を遣う様子を見ていると、
彼に同情したくもなってきます。
でも、それもおそらく"不機嫌な妻の顔を見たくない"という、
自分の気持ちから来ているのだろうし、結局彼も自分のことしか考えていない。
人なんて、夫婦なんてみんなそんなものだと思いますが。

そうやって何だかわからない不満から少しずつ亀裂が生じてきて、
行き違いや思い違いや、想定外の出来事などいろんな理由で、
夫婦の関係は壊れていくのだということがものすごくよくわかります。
こういうのはどこにでもあって、誰もどうしようもないことなのでしょう。
どちらかが我慢すればいいのかとか、他人を巻き込めばいいのかとか、
いろいろ解決策を考えようとしますが、
でも、完璧な答えはどこにもなく、誰も持ち合わせていないのでしょう。
こういう風に壊れていくかいかないかは、もう運でしかないような気すらしました。


キャンベル夫妻
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フランクとエイプリルのほかに、隣家に住むキャンベル夫妻、
そして彼らに家を紹介した不動産屋の夫婦が登場します。
彼らもそれぞれ、なんとなく危うい夫婦関係であり、
フランクたちほどの"修羅場"はなくても、
果たして幸せな人生を送れているのか謎です。
あくまでフランクたちが主人公なので、この2組のエピソードは、
それほど大きく描かれるわけではありませんが、
それでもどちらの夫婦の様子も、心に深く何かを残します。
特にラストシーンはものすごく胸が痛みます。
『アメリカン・ビューティ』は夫婦の崩壊をブラックな笑いで描いていましたが、
それに比べて今作はとても真っ直ぐに重い。
そんな中、この最後の最後でゾッとするようなブラックユーモアを見せた感じがします。

また、不動産夫婦の息子ジョンという人が途中登場します。
精神を患った数学者という彼は、フランクたちにストレートな意見を言い、
2人の隠れている心の裏側をどんどん露わにしていきます。
マイケル・シャノン演じる彼の存在感はものすごく、登場シーンは少ないのですが、
この役でオスカー助演男優賞にノミネートされたのも納得の演技です。
演技の点では、ゴールデングローブではこれで主演女優賞を受賞した、
ケイト・ウィンスレットの演技も本当に素晴らしい。
激しさと、急に凍りつくように静まりかえる瞬間など、
エイプリルの自分でもどうしようもない苦しみがものすごく伝わってきました。
レオナルド・ディカプリオももう少し評価されてもいいと思います。
相変わらずの童顔が損をさせてるのか・・・でも、
ただただ頼りなく、感情をどこへ持っていくべきかわからない、
どうしようもない夫を演じきっていました。


"数学者"ジョン・ギヴィングス
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最初に『タイタニック』風ラブストーリーを期待する人は、
これは観ない方がいいと書きましたが、
それ以外にも、高校生以下の子どもも観ない方がいい。
おそらく、何一つ理解出来ないと思うので。
只今恋愛中、なんていう人のデート映画としても厳禁。
1人で、あるいは同性の友だちと観ることを勧めます。
既婚者、パートナーのいる人は・・・おそらく一番胸を痛めてしまうでしょうし、
ありとあらゆることを考えてしまうと思うので、
やはり2人で観るのはキツイかも知れません。
でも一緒に観て、このことについてよく話し合うことも大事かも知れない。
そこは人それぞれでしょう。
人は何を幸福だと思い、どう生きていきたいと思うのか。
夫婦の関係を壊すことで幸せになれる人、我慢してでも共に暮らしていくことが、
結果的に幸せだという人もいると思います。
では自分はどうなのか、相手はどうなのか、そんなことを延々と考えさせられてしまう、
しばらくはずっと引きずっていきそうな作品です。
これから観る人は心して立ち向かって欲しいです。


Revolutionary Road(2008 アメリカ/イギリス)
監督 サム・メンデス
出演 レオナルド・ディカプリオ ケイト・ウィンスレット マイケル・シャノン キャシー・ベイツ
   デヴィッド・ハーバー キャサリン・ハーン リチャード・イーストン



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ルドルフ 赤鼻のトナカイ [映画感想−ら]

なかなか今年はクリスマス気分になれません。
いろいろ世の中、キビシイからでしょうか。
まあそれはそれとして、そろそろクリスマス映画でも観て気分を盛り上げようかなと思い、
平日なので、サクッと軽めのこんな作品をチョイス。


サンタクロースが暮らすクリスマスタウンに、かわいいトナカイが生まれました。
ルドルフと名付けられたそのトナカイは、なんとピカピカ光る赤い鼻を持っていました。
その鼻のおかげで仲間はずれにされ、サンタのソリを引く練習もさせてもらえません。
一方、オモチャ作りが仕事のエルフたち。その中に、どうしてもオモチャ作りが好きになれない、
歯医者になることを夢見る、ちょっと変わり者のエルフ、ハーミーがいました。
ちょっぴり"ほかとは違う”ルドルフとハーミーは、ある日出会い、一緒に旅に出ることに・・・。


あああ、愛らしいとはこのこと!
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原作は1939年にロバート・メイが娘のために書いた物語「赤鼻のトナカイ」。
後に出版され、1949年に義兄のデビット・マークスがあの有名な曲を作り、
これらを元に、1964年にTVアニメとして制作されたということです。
以来、アメリカでは毎年この時期に放送されるお馴染みの番組なのだそう。
また、制作に日本人スタッフが関わっていたことでも有名なのだそうで、
人形アニメーション制作の第一人者であった持永只仁、
また人形製作の小室一郎という人たちは、後のスタジオジブリに繋がって行くのだとか。

日本でも以前からいろんなチャンネルで放送されていたし、DVDも発売されていましたが、
私はちゃんと観たのは今回が初めてでした。
ストーリーは完全にお子さま向けと言ってもいいのですが、
サンタクロースが単純にイイ人じゃないところがちょっと辛口設定で意外でした。
サンタのキャラって、本当はそういうものなのでしょうか?
ルドルフの赤い鼻を見て「これではワシのソリを引かせられないぞ」なんて言ってみたり、
せっかくサンタのために歌ってるエルフたちの歌を、
「あんまり良くないな」とかハッキリ言っちゃうし。
クリスマスの季節以外は痩せてるっていうのもヘン。
で、奥さんがせっせと食べさせてクリスマスまでに太らせるって・・・。
まあ、いろいろ言い出すとツッコミどころ満載なのは仕方のないことで、
ここは素直な子どもの心に戻らなくてはいけませんね。


なぜかスリムなサンタ
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いわゆるコマ撮りの人形アニメーションで、
最近のウォレスとグルミットあたりとは、さすがに比較にはならないレベルではありますが、
人形それぞれのキャラクターがとにかく愛らしく、
トナカイのスタイルや動きは、ただただ愛らしいの一言!
首の曲がり具合とか後ろ足の感じがすごくちゃんとしていて、しかもカワイイ。
持永さんが奈良公園の鹿を研究したなんて話もネットで仕入れた情報では登場していました。
ルドルフの鼻が光るとき、リコーダーを「ピー」と吹いたような音がするんですが、
ちょっと古い電子音のようにも聞こえて、なんだかクリスマスツリーの電飾のような雰囲気も感じられました。

歯医者になりたいエルフのハーミー、ルドルフのガールフレンドのクラリスや
出来そこないのオモチャたちもたまらない愛らしさです。
でも愛らしいといえば雪男!
とっても憎めないキャラなのに、一番ヒサンな目にあってしまいます。
もちろん最後はハッピーエンドですが。


一番災難な雪男
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最近はキャラクターグッズもたくさんあったり、
いろんなイベントやコラボレーションなどもあって、
この愛らしいルドルフのキャラクターをご存知の方も多いはず。
未見の方、もし機会があったらぜひ。


Rudolph, the Red-Nosed Reindeer(1964 アメリカ)
監督 長島喜三  ラリー・レーマ



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ラスト、コーション [映画感想−ら]

2時間40分という長尺や、連日満員という情報に、
公開時、何度もル・シネマの近くに行く機会がありながら観ることが叶わなかった作品。
ようやく鑑賞できました。


1938年、香港。女子大生ワン・チアチー(タン・ウェイ)は、
学友のクァン(ワン・リーホン)に劇団への入団を誘われます。
抗日運動をテーマに掲げる演目で見事に主役を務めたワンは、
クァンへの淡い恋心も手伝い、次第に実際の抗日活動に手を染め始めます。
彼らの標的となったのは、抗日組織弾圧を任務とする特務機関のリーダー、イー(トニー・レオン)。
ワンはうまく彼に近づくことができますが、暗殺計画は失敗。
そして3年後の上海。再びクァンにイー暗殺計画を持ちかけられたワンは・・・。


許されない関係
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ジェーン・オースティン作品からアメコミ、カウボーイの世界まで、
台湾人でありながら、その演出する幅の広さと奥深さに、
個人的に目が離せない監督であるアン・リー。
今作では香港と上海を舞台とし、中国人俳優を多く使っている点で、
原点回帰とも言えるのかもしれませんが、
許されない愛というテーマは彼の作品で一貫して描かれ続けているものであり、
しかも今作は愛など軽く超越してしまった、人間の奥の奥に潜む業のようなものを、
大胆かつ緻密な映像で滲み出させるような作品となっていました。

ミス・ワールド北京大会入賞者という経歴もあるそうですが、
それがちょっと信じられないぐらい、あまりに素朴な印象の、
主人公ワンを演じるタン・ウェイ。
演劇の世界に身を投じる前の化粧っ気ゼロのシーンなど、
本当に中国の素朴な田舎娘という印象なのですが、
ひとたびマイ夫人としてスパイ活動に入るために濃い化粧を施し、
髪をセットし、優雅なドレスに身を包むと、途端に別人のレディになる、
・・・かというとそんなことはなくて、やはりどこか垢抜けないまま。
ポスターなどで見る化粧した彼女が、私には常に安田美沙子を素朴にしたように見えていて、
映画の中ではそんなことはないのだろうと思ったら、やっぱりそんな雰囲気のまんま。
こんなことではすぐにイーにバレてしまうんじゃないかとヘンにドキドキしていたのですが、
劇中のワンは、持ち前の演技力で数々のピンチを乗り越えていきます。
この、常にどこか無理をしている雰囲気がかえってリアリティがあり、
この妙なリアリティこそ、彼女がキャスティングされた理由かとも思い、
その危うさゆえに、イーとの情愛の世界に溺れていくことの奥深さを一層印象づけたように思いました。


イーの苦しみは
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この作品を語る上で一番の話題であった性描写ですが、
スゴイスゴイという評判(?)のせいか、私にはそれほどスゴイとは思いませんでした。
確かに一般作品としては時間も長く、カメラワークも大胆で、
なによりトニー・レオンがここまでやるのかという驚きもありました。
けれどそれよりも、このセックスシーンの持つ意味があまりにも大きく、
おそらく、観るまで持っていた興味本位とか下世話な気分なんて、
見始めてしまうとあっさり覆される、
実に深い意味を持ったシーンであることがわかってしまうのです。
作品中のワンシーンとしての単なる演出といった程度のものではなく、
男女の愛情表現のひとつといったことでもなく、
この作品に於いては決して避けて通れるものではない、
このセックスシーンこそがすべてであると言えるかも知れません。
2人の表情、動き、駆け引き、息づかいのすべてが、
戦時中という異常な状況の中で、しかも命を狙う・狙われる関係という、
これまた異常な状態で結ばれている男女を表すこととして、
言葉で説明するより何倍も雄弁に語るシーンとなっているのです。

互いに騙し騙されながら、決して本心を見せない。
観ているこちら側も、果たしてこの時ワンはどういう気持ちなのか、
イーはワンの真意を見抜いているのかいないのか、
2人に恋愛感情は芽生えているのかいないのか・・・といったことが、
本当に最後の最後までわからない。
裸でベッドの上にいるという、人が一番無防備である状況で、
ワンもイーも、その状況にのめり込んでいるようで、そうではない。
常に相手の目を見続け、常に互いに自分が優位に立とうとする。
ワンがイーの拳銃に目が行ったと気づくと、イーはそれを遮ろうとし、
そうしたら今度はワンがイーの目を枕で押さえつける。
けれどそんな行為を繰り返し、相手に身を委ね、果てる瞬間こそ、
2人とも立場や目的をすべて忘れ、自分自身に戻ることができる。
特にイーにとっては、自分の任務の重圧から唯一解放される場所であり、
もしこの女に命を狙われても、それでもいいとすら思ったかも知れない。
そんないろんな感情を汲み取れる、実に深い深い意味を持ったシーンだと思いました。


ワンの人生を狂わせるクァン
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また、ワンをスパイへの道に引き込んでしまうクァンの、
情けなくも切ない様子、その描き方にも感心しました。
ハンサムでおそらく性格も良い。
けれど学生の甘さ青臭さのまま抗日活動にのめり込み、
結局ワンやほかの学生たちの人生を狂わせてしまうクァン。
違う時代であれば、ワンとクァンは幸せなカップルになれたはず。
けれど、クァンは恋愛より活動を優先させる。
では、クァンのワンに対する想いはそれほど深くなかったのかといえばそんなことはなく、
彼女を愛しているのに、どうすることもできない弱さ、そしてどうにもさせてくれない時代、
そんなことを、クァンの行動が表していると思いました。
ワンも、初体験の相手にすらなってくれないクァンに恨み辛みを言うでもない。
ワンの行動はクァンのためにすべてを投げ出したため・・・なんていう、
ありがちな甘い演出もしません。
このことも、最後までワンの気持ちがどこにあったのかをわからなくさせている、
大きな要素だと思いました。

そしてもう1人、イー夫人のジョアン・チェンの存在感もただならないものでした。
ジョアン・チェン、久しぶりに見ましたが相変わらずキレイ。
さすがにドッシリ感が加わっていましたが、
どこまで夫の仕事や夫とワンの関係を知っていたのかとか、
その匂わせ方、したたかな夫人ぶりは大したものでした。

とは言え、この作品はもう完全にトニー・レオンのもの。
ちょっとした動作でその任務の重圧や、冷徹さ、疲れ果てた様子などを表していて、
本当に見事な"悪人"ぶりでした。
ウォン・カーウァイ作品や『インファナル・アフェア』でのカッコ良さは期待できないけれど、
この疲れきった哀しい男をこれほど見事に演じられると、これはこれでシビレてしまいました。
日本料亭での、ワンの歌を聴き目頭を押さえ、拍手する仕草の切なさ。
トニー・レオン=切なさ、みたいな図式は昔から感じているものではありましたが、
そこに"中年の"という言葉が加わり、
それでもやっぱり私は胸をギューッと締め付けられてしまったのでした。


Se, jie / Lust, Caution(2007 アメリカ/中国/台湾/香港)
監督 アン・リー
出演 トニー・レオン タン・ウェイ ジョアン・チェン ワン・リーホン



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