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アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生 [映画感想−あ]

現在のアメリカで実力、知名度共にトップフォトグラファーと言える、
写真家アニー・リーボヴィッツのドキュメンタリー。
彼女の生い立ち、ローリングストーン誌でのデビュー、
有名な、凶弾に倒れる数時間前のジョン・レノンの写真や、
デミ・ムーアの妊婦ヌードなどの撮影秘話、
晩年の作家スーザン・ソンタグとの関係、そして現在の活動風景と、
彼女の写真家としての半生を丁寧に映しだしています。


キース・リチャーズ
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ローリングストーン誌で、それまで記事の付け足し程度だったミュージシャンたちの写真が、
彼女の登場でこれまでとは一味違うものとなり、
その独自のスタイルがどのようにして生まれたのかとか、
ヴァニティ・フェアやヴォーグへと活動の場を広げ、
セレブリティの写真やファッションフォトも手がけるようになり、
その一方でスーザン・ソンタグと共にサラエボへ向かい戦地の撮影を行うなど、
写真家として変わっていく様子が語られます。

長年第一線で活躍する女性写真家であり、
ヴァニティ・フェアなどの大がかりな写真を見ると、
ものすごく芸術家芸術家した人かなとか、
ジョン・レノンやデミ・ムーアの写真のセンセーショナルさから、
尖った感じの人なのかなとか、勝手に怖いオバサンをイメージしていたのですが、
撮影風景などを見ていると意外と気さくな感じだし、
スーザン・ソンタグの話になると感情を露わにする場面もあって、
彼女の内面的な部分もほんの少し見せてもらえるようです。
彼女に写真を撮られたいと思う人が多いのは、
こういうキャラクターの良さもあるんじゃないのかな、と思いました。


ジョージ・クルーニー
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アニーの幼い頃も登場する家族のプライベートフィルムや、
写真家として活動を始めた頃のフィルムなどもたくさん登場するので、
いろんなエピソードがかなりリアルに伝わってきます。
ローリングストーン誌で活躍していた頃のものなどはとても興味深く、
その頃のエピソードを創刊者のヤン・ウェナーやミック・ジャガー、キース・リチャーズ、
パティ・スミスなどのミュージシャンたちが詳細に語っていて、このへんはものすごく面白い。
ストーンズのツアーに周りが止めたのに独断で同行、
皆の予想通り麻薬中毒になって帰ってきてリハビリ施設に入ったなんていう話も出てきたり、
70〜80年代のロック好きな人は絶対惹きつけられると思います。
ジョニー・デップが『ラスベガスをやっつけろ』で演じた、
ハンター・S・トンプソンとのエピソードも登場します。
ミュージシャンの写真だけでなく、政治家や社会的な写真も数多く撮影し、
彼女の作品が世間に与えた影響の大きさがよくわかります。


キルスティン・ダンストとアニー
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監督はアニーの実の妹であるバーバラ・リーボヴィッツ。
元々この作品はアメリカのドキュメンタリー番組『American Masters』という、
TVシリーズの枠で製作されたもので、そのせいもあるのか、
ドキュメンタリー作品としては特にこれといって目新しい作りではありません。
それでも身内が撮っているせいかアニー自身もリラックスしているし、
撮る方も撮られる方も格好付けたり無駄な力が入ってる感じがないのが良い。
私はヴァニティ・フェアでの彼女の写真の大ファンなので、
その撮影シーンがたくさん見られて嬉しかったです。
ヴォーグのために再現した『マリー・アントワネット』の撮影も素晴らしかった。
キルスティン・ダンストが「こんなに着飾ったのに撮影は10分!?」というのが可笑しかった。
うん、仕事が早いのはいいことです。

世界中を旅することができるから写真家になったというアニー。
そして死ぬまで写真を撮り続けたいというアニー。
こういう生き方は心の底から羨ましいです。
50歳になって突然思い立って"出産"したなんて話の本当のところも、
もうちょっと詳しく聞きたかったけど・・・それは下世話かな。
彼女の写真家としての活動とはあまり関係のないことだし。
でも、これまで以上に彼女に興味を持つようになりました。


Annie Leibovitz: Life Through a Lens(2006 アメリカ)
監督 バーバラ・リーボヴィッツ
出演 アニー・リーボヴィッツ ミハイル・バリシニコフ ヒラリー・クリントン ジョージ・クルーニー
   ロバート・ダウニー・Jr. キルスティン・ダンスト ウーピー・ゴールドバーグ ミック・ジャガー
   キーラ・ナイトレイ デミ・ムーア ヨーコ・オノ キース・リチャーズ ジュリア・ロバーツ



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F/X2 イリュージョンの逆転 [映画感想−あ]

『F/X 引き裂かれたトリック』の続編。
前作の80年代真っ只中な感じと思いっきりB級な雰囲気が結構気に入っていたのですが、
さっぱりこの続編を観る機会がなく、観ようという気もなかなか起きず・・・でも、
シリーズものってどうしても順を追ってコンプリートせずに済ませられないタチで、
ハードディスクの容量も少なくなってきたし・・・と、ようやく鑑賞いたしました。


ロリー・タイラー(ブライアン・ブラウン)は特殊効果の仕事を引退し、
今はオモチャ作りをしながら恋人のキム(レイチェル・ティコティン)と、
彼女の息子クリス(ドミニク・ザンプローナ)と3人で暮らしていました。
ある日ロリーは、キムの元夫で刑事のマイク(トム・メイソン)から、
連続殺人事件の犯人逮捕のために協力するよう頼まれ、渋々引き受けます。
しかしそれは、ある迷宮入りとなっていた事件が絡むワナで、
マイクは殺され、ロリーやキムも命を狙われるはめに。
そこでロリーは、元刑事で今は私立探偵となったレオ・マッカーシー(ブライアン・デネヒー)に頼み、
事件の真相を調べ始めますが・・・。


リモコンで操作だ!
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冒頭は前作と同様、掴みはOK!の映画撮影シーンで始まります。
安っぽいサイボーグ?が『トータル・リコール』あたりを思い出させ、
そんな頃の作品だなあとシミジミします。
例によって要所要所でロリーの手作り特殊効果が大活躍なんですが、
これまた前作と同様「いつの間にそんなに大がかりなモノを?」という、
ツッコミどころは満載です。

最初の、連続殺人犯を捕まえるためにバスルームに仕掛けるトリックは、
スモーク焚いたりスクリーン使ったりと確かに特殊効果っぽいと言えますが、
それ以外はなんだかB級スパイ映画の小道具作りのような感じだし、
後半のマフィア宅で、見張りや下っ端を1人1人片付けていくのとか、
そんな細かい仕掛けをいちいち・・・と言いたくなります。
まあこの辺は完全にお遊びシーンと言えますけどね。
最初から最後まで大活躍のピエロ人形は、どう見ても中の人が・・・って、
それは言いっこナシですね。


裏切りもあり!?
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ロリーが殺し屋にキムとクリスと共にスーパーに追い込まれるシーンがありますが、
オイルとかスプレー缶とかポップコーン!とか、
手近にある商品を駆使して敵を撃退というのも、まあありがちな展開。
でもそんなハデなことしたらスーパー内大火災だし、
その前に非常ベルやらスプリンクラーやら動き出すのでは?とか、
だいたい閉店してすぐなんだから店員とか警備員とか誰かしらいるだろー!とか、
もうツッコミまくりで、とにかくユルくてくだらない。
だいたいこの殺し屋弱すぎだし。なかなか不死身ではありますが。

陰謀や裏切りや寝返りなんかを絡めつつ、
マフィアだヴァチカンだと、かなり大きな敵を相手に、
FXマンと私立探偵が挑むという、大風呂敷を広げたような畳んだままのような、
ユルーい感じが・・・なんか憎めない。
前作で刑事だったレオが私立探偵になったことでロリーと良いコンビとなり、
それぞれ役割分担して活躍するところはなかなか面白かったです。
はみだし熱血刑事だったレオがなんだかのびのびしてて、
微妙にモテたりもするし、彼はいいキャラクターです。
でもこの作品、いい人ばかりが死んじゃうのがちょっと悲しい・・・。


おじさんコンビ大活躍!
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ロリーが映画製作の現場から引退している設定なんで、
前作のように映画作りの裏側みたいなものを見る楽しみはなくなってしまって、
そこがちょっとつまらないというか、単なるB級探偵モノになってしまったのは残念。
でも、TVのお昼のロードショーとか、深夜の映画劇場でボーッと観るにはいい感じの作品。
こういう安くてユルーい作品って、もう作られることはないだろうなと思うと、
それはそれでちょっと寂しい気もします。


F/X2: The Deadly Art of Illusion(1991 アメリカ)
監督 リチャード・フランクリン
出演 ブライアン・ブラウン ブライアン・デネヒー レイチェル・ティコティン ジョアンナ・グリーソン
   トム・メイソン ドミニク・ザンプローナ



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アイム・ノット・ゼア [映画感想−あ]

ボブ・ディランを6人の俳優が演じる、とは?
時代時代で違う役者に演じさせることで、
ディランの音楽の変遷を描くのかと思ったら、まるで違っていました。
予めお断りしておくと、私はボブ・ディランはほとんど知りません。
昔好きだったミュージシャンのアイドルがディランで、
それで興味を持って聴いてみたことはありますが、
曲が自分の好みではなかったし、深く聴き込むまでには至りませんでした。
そんな私にはおそらくハードルの高い作品だろうなと思いましたが、
・・・確かに一筋縄ではいかない作品でした。

主人公を複数の役者が演じると聞いて思い出したのは『おわらない物語 アビバの場合』
監督もトッド・ソロンズだし・・・じゃなくてヘインズ!トッド違いでした。
かなーり違いますね。自分のいい加減さにアキレてしまいます。
でもトッド・ヘインズと聞いて改めて驚く。グラムの次はフォークの神様?
(その間に『エデンより彼方に』がありますが・・・それにしても不思議な映画ばかり作る人です)
『アビバ〜』で主人公を複数が演じた意図は、たとえ見かけが変わっても、
アビバという本質は変わらないといった意味があったと記憶しています。
では今作でディランを複数で演じさせた意図は何でしょう?


ジュード(ケイト・ブランシェット)
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ストーリーを紹介するのはかなり困難だしあまり意味もないと思います。
実は6人の登場人物はそれぞれ名前も違い、誰一人ディランだとは名乗っておらず、
見た目も積極的に似せているわけじゃありません。
年齢、性別、人種に時代もバラバラで、それぞれの物語は複雑に交錯するし、
ディランに詳しい人でも、かなり混乱するんじゃないかなと思います。
6人の中で実際にディランらしいミュージシャンなのは、
クリスチャン・ベール演じるジャックとケイト・ブランシェットのジュード。
ほかはディランの曲や実際のエピソードなどを絡めながらも、
実はディランというよりディラン自身のヒーローだったりして、
一段と空想上の人物になっています。
マーカス・カール・フランクリン演じる黒人の少年ウディは、
ディランが敬愛するフォークシンガー、ウディ・ガスリーを名乗っています。
ベン・ウィショー演じるアーサーは詩人のアルチュール・ランボー。
リチャード・ギア演じるビリーはビリー・ザ・キッドという具合。
またもう1人、ヒース・レジャー演じるロビーは、
ディランの家族を登場させ、唯一彼のプライベートな部分を描いているのですが、
このロビーの職業は俳優というのもちょっと捻った設定です。


ジャック(クリスチャン・ベール)
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その他の登場人物で、私が乏しい知識の中でわかったのは、
アレン・ギンズバーグ、ノーマン・メイラー、
ブライアン・ジョーンズそしてビートルズ!といった人たちと、
ミシェル・ウィリアムズが演じてるのはイーディだなあとか、
ロビーとシャルロット・ゲンズブール演じるクレアが腕を組んで歩くシーンは、
ディランの有名なアルバムジャケットだ!とか・・・その程度です。
あとはもう何が何やらという感じだし、時間や場所は行ったり来たりするし、
でも、不思議に置いて行かれる感じはなく、
何か浮遊感のようなものを感じさせ、心地よくすらありました。
でも、ブルース・グリーンウッドが演じたBBCのキャスターとのエピソードなんて、
かなり念入りに描かれていましたが、実際こんなことがあったのでしょうか?
こんなあたりがわかっていると面白いだろうなあと、そんなところは残念。

出演者はいずれも素晴らしい演技を見せてくれます。
一番印象深いのはやはりケイト・ブランシェットでしょう。
本当にこの人に演じられないものはないのかも知れない。
鼻につくギリギリの上手さというか、素直に認めるしかないなりきりぶりです。
演奏シーンが意外にキマっていたのがクリスチャン・ベール。
この人も何をやらせても上手いんだなと思いました。
サウスポーでギターかき鳴らしてたマーカス少年も上手かった。
彼は実際に歌ってるようだし、大人びた物言いとかすごく良かったです。
ヒース・レジャーとシャルロット・ゲンズブールのパートは、
唯一のラブストーリーでもあり、その分感情移入しやすくもありました。
なんとなくヒース・レジャーのプライベートライフに重なってる気もしたし、
シャルロット・ゲンズブールは、やはりただならない存在感です。


ロビー(ヒース・レジャー)とクレア(シャルロット・ゲンズブール)
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こんな作品を作らせる、ボブ・ディランの偉大さを改めて思い知らされた気がします。
そして、ボブ・ディランという人が時代によってその音楽性や印象の変わっていった人であり、
トッド・ヘインズにはそれらを余すところ無くすべて描きたいという意図があったんだと思いますが、
とにかくディランという人を愛し、理解し、研究し尽くしていないと、
ここまで想像力を広げることは困難なのではないかと思います。
もちろん、これはトッド・ヘインズの才能あってのこと。
こんな素晴らしいものを見せられると、自分がボブ・ディランを知らないことが残念でならない。
自分が知っているアーティストだったらどれだけこれを楽しめたことだろうと思うと、
ただただ悔しいです。
寡作な監督ですが、トッド・ヘインズにはまた驚かされたい。
次は何を見せてくれるか、楽しみです。


I'm Not There.(2007 アメリカ)
監督 トッド・ヘインズ
出演 ケイト・ブランシェット ベン・ウィショー クリスチャン・ベール リチャード・ギア
   マーカス・カール・フランクリン ヒース・レジャー クリス・クリストファーソン
   ジュリアン・ムーア シャルロット・ゲンズブール ブルース・グリーンウッド
   ミシェル・ウィリアムズ デヴィッド・クロス



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ウォッチメン [映画感想−あ]

単なるヒーローものじゃない、ストーリーが難解、残酷描写が多い・・・などなど、
事前に入ってくる情報がなかなかにハードル高そうで、
観ようかどうしようか迷っていたのですが、
あの、血の付いたピースマークのグラフィックがカンペキに私の心を捉えていたので、
頑張って行ってきました。普段はしない予習もちょびっとだけして。


1985年。アメリカはニクソン大統領が5選を果たし、
ソ連と核戦争の可能性を秘めた緊張関係が続いていました。
10月のある夜、エドワード・ブレイク(ジェフリー・ディーン・モーガン)という男が、
ニューヨークの高層マンションから突き落とされ、殺されます。
現場に現れたロールシャッハ(ジャッキー・アール・ヘイリー)は、
そこで血の付いたスマイルバッジを見つけ、事件を独自に捜査。
その結果殺された男は、以前コメディアンという名で活躍した、
彼と同じ"元"ヒーローの1人だったことを突きとめます。
コメディアンの死に不審なものを感じたロールシャッハは、
同じく仲間だったナイトオウル2世(パトリック・ウィルソン)、
オジマンディアス(マシュー・グード)、シルク・スペクターII(マリン・アッカーマン)、
そしてDr.マンハッタン(ビリー・クラダップ)らの身辺を調べ始めますが・・・。


ロールシャッハ
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上映時間2時間43分。ハッキリ言って長い。長いのですが、
観ている間、このままずっと続いてくれないかなあという気持ちになっていました。
確かに残酷描写が多く、思わず目を伏せてしまうシーンもあったのですが、
映像もストーリー展開もとにかく面白くて、
心地よい長さというか、不思議な感覚に囚われていました。
登場するヒーローたち1人1人の生い立ちを丁寧に説明するので、
連続もののTVドラマを一気見しているような感じだし、
"ウォッチメン"の先輩グループ"ミニッツメン"の存在も重要なファクターで、
本当に内容が盛りだくさんなのです。

その"ミニッツメン"が活躍した1940年代から、やがて"ウォッチメン"に世代交代し、
1977年にヒーローたちの活動を禁止する条例が発動され、
そして1985年の現在までの50年近くの出来事が、
タイトルバックでスチール写真やドキュメンタリーフィルムのように見せられるのですが、
これがものすごく良く出来ています。
ボブ・ディランの『The Times They Are A-Changin'』をバックに、
ケネディ暗殺やベトナム戦争、月面着陸といったあらゆる出来事が登場し、
それらにヒーローたちがすべて関与していた、という映像で、
ミック・ジャガーやデヴィッド・ボウイ、アンディ・ウォーホルにトルーマン・カポーティなどが、
彼らとともに写真に収まっていたりするのが本当に観ていて楽しい!
これを観る前にある程度の予習が必要だと思っていたのですが、
原作自体の予習より、アメリカの近代史の予習、というか復習をしていったほうが、
こういうところはより楽しめると思いました。


ナイトオウル2世&シルク・スペクターII
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そういったアメリカの史実から次第にずれていった”もしも”の世界。
アメリカがベトナム戦争で勝利し、ニクソンはウォーターゲート事件で失脚せず、
85年現在も在任中。
そうなったのももちろんヒーローたちの活動があってこそだったわけですが、
ヒーローがいる世界というのがそもそも"もしも"の世界なので、
この現実のようなフィクションの世界が不思議にすんなりと受け入れられる気がしました。
77年に発動されたヒーロー禁止令で引退を余儀なくされた彼らが、
ある者は引退を素直に受け入れ、ある者は依然ヒーローとしての活動を密かに続け、
ある者は素顔を晒してヒーローであった過去を売り物にして富を得ている。
そんな、ヒーローものでは普通はありえない"引退後"の姿を描いている点が、
妙に人間くさく、現実的に感じてしまいます。
そもそもDr.マンハッタン以外はスーパーパワーを持っているわけではなく、
普通の人がマスクを付けただけの"自警団"なわけだから、
(そうは言ってもものすごく強いんですけどね)人間くさくて当然なのですが。
ヒーローの時はバットマンのようなコスチュームで格好いいナイトオウル2世も、
引退した今は冴えないジャケットに冴えないメガネ、
お腹も心なしかポッテリしちゃってるし・・・と、なんともくたびれた雰囲気。
それがあることをきっかけにヒーローの仕事をしたら急にイキイキとしてしまう!
うーん、それって『Mr.インクレディブル』じゃん!
というか、こっちが元ネタなわけですね。


Dr.マンハッタン
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ザック・スナイダー監督が、ほぼ原作のグラフィックノベル通り忠実に映像化したのだそうで、
ストーリーだけでなく、街並みや小物などの凝りに凝ったディテールは素晴らしいの一言!
それらの膨大な情報量は一度観ただけではとてもとても目が追いつかないぐらいです。
残酷描写はちょっとカンベンですが、ぜひもう一度二度と観たい!
ディテールといえば、オジマンディアスがオフィスで使ってたのが、
どう見てもMacのSE30だったのがツボにはまりました。
彼が南極の隠れ家でたくさんのモニターで観ていた映像の中には、
アップルの歴史的TVCM"1984"があったし。マカーのツボを突きまくり!
それと、前述したボブ・ディランを始め、時代に合わせた音楽の使い方もなかなかシブイ。
印象的だったのはDr.マンハッタンの生い立ちのところで、
ずっとコヤニスカッティ風な音楽が流れていたのですが、
帰ってきて調べたら本当に『コヤニスカッティ』の音楽だったんですね。
この使い方もなかなか奥が深いと思いました。

活動の場を失ったヒーローたち。彼らそれぞれが信じる理想や正義。
それが本当の正義なのか、そもそも正義とは何なのか、
アメリカが掲げる正義は果たして世界にとって正義なのか。
そんな矛盾、そんな複雑に絡み合う彼らヒーローたちの葛藤や混沌とした社会、
ありとあらゆる問題を提起し、最後にはひとつの"結論"が出ますが、
果たしてそれが正解なのかどうか、世界に平和は訪れるのか。
悪を倒してメデタシとはいかないヒーローたちのドラマ。
この世界観はかなり衝撃的です。
アメコミなんて・・・と敬遠してたら絶対にソン!
大人のためのヒーロー物語。よかったら是非!

Watchmen(2009 アメリカ)
監督 ザック・スナイダー
出演 マリン・アッカーマン ビリー・クラダップ マシュー・グード ジャッキー・アール・ヘイリー
   ジェフリー・ディーン・モーガン パトリック・ウィルソン カーラ・グギノ



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イエスマン “YES”は人生のパスワード [映画感想−あ]

ジム・キャリーの映画を観るのは久しぶり。
今回も『ライアーライアー』や『ブルース・オールマイティ』のような、
ダメ主人公があることをきっかけに・・・の得意路線風?


銀行の貸付担当のカール(ジム・キャリー)は、
離婚以来何もかもやる気が出ず、ネガティブな日々を送っていました。
ある日、久しぶりに会った友人ニック(ジョン・マイケル・ヒギンズ)に、
あるセミナーのパンフレットを渡されますが、最初はまったく興味を持ちませんでした。
ところが親友のピーター(ブラッドレイ・クーパー)との出来事がきっかけとなり、
自分の生活を改めようと決意、例のセミナーに参加することにします。
そこでこのセミナーの主催者テレンス(テレンス・スタンプ)に、
「意味のある人生を送るための唯一のルールは、すべてに"イエス"と言うこと」と説かれます。
カールは早速それを実践。するとそのことがきっかけで、
アリソン(ズーイー・デシャネル)と出会い、いろんなことが好転し始めますが・・・。


ギターもイエス!
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ジム・キャリーを見るのは久しぶりと書きましたが、
見始めて最初に思ったことは「ジム・キャリー年取ったなあ」でした。
調べたら今年47歳。遠目だと若くて元気だけど、アップだとさすがにいいオジサンになってます。
しかも今回相手役がズーイー・デシャネルですから。
彼女は1980年生まれの今年29歳。でもそれより若く見える。
彼女の場合、だんだん若くなってるような気がします。
『あの頃ペニー・レインと』の時のほうが化粧バッチリで老けてた気が・・・。
ハリウッド映画では昔から年の差カップルのラブストーリーは珍しくないですけど、
この18歳差はちょっとギリギリっぽかったかな。

で、このズーイー演じるアリソンがとにかくカワイイ!
彼女が出てるんじゃなければDVDでいいかも、と思ってたぐらいズーイー目的でした。
このアリソンという女の子、ハッキリ言って不思議ちゃんなのですが、
彼女は別に例の”イエス信者”ではなく、元々あらゆることを体験したい!と思ってる人で、
ジョギングしながら写真撮影会とか、いろんなことをやっています。
一番強烈なのは彼女が組んでいるバンド"Munchausen by Proxy"!
・・・ミュンヒハウゼン症候群って何!?
帰ってきてからウィキペディアとか思いっきり読み込んでしまいました。
うーん、すごい名前を付けたものです。
彼女は実際にバンド活動もしているし、本当に彼女をモデルにして書かれたような役です。


ナチュラル!
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とにかく、何がどうでもイエスと言わなければいけないのはそりゃあ大変です。
ホームレスがクルマで送ってくれ、携帯貸してくれと言ってきてもイエス。
膨大なスパムメールもすべて受け入れなくてはいけないなんてそんな無茶な!
でも、これがことごとくいい方向に進んでいき、
そうなってくると自然に本人のテンションも上がっていって、
頼まれてもいないのに、あれもこれもと手を出してしまいます。
ギターに韓国語、飛行機の操縦まで習い始め、イラン人の花嫁ももらっちゃう!?
で、これが後々うまい具合に役に立ったりするもんだから、
カールはどんどん調子に乗ってしまいます。
でも、あることがきっかけで、今度はこれらが全部裏目に出てしまうことに!
この展開は予想してなくて笑ってしまいました。

その前に、アリソンと一緒に思いつき旅行をするんですが、
とりあえず空港に行って、行き先を決めないで飛行機に飛び乗るという、
こういうの一回やってみたいもんです。
でもこの思いつき旅行もそうですが、とにかくこのすべてにイエス作戦、
相当お金や時間に余裕がないと、早々にムリってことになると思います。
その辺がさすがに映画だなあという感じなのですが、
結局、問題が起こってアリソンとケンカしてしまうことになって、
イエス作戦、やっぱりムリでしたということになってしまうのですが、
さて、どう決着を付けるのやら・・・。


ハリポタパーティもイエス!
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”イエス”セミナーは、どう見ても胡散臭い自己啓発セミナー風だし、
イエス作戦はその内破綻するだろうことは予想できるし、結局そうなってしまう。
やはり何でも考えて発言し行動すべきなんでしょう。
イエスと言うよりノーのほうがラクというか、
その時点で責任を回避できる可能性が高い気がします。
でも、どちらの言葉も簡単に連発するようなものではなく、
実はどちらも同じように責任があり、よく考えて言うべき言葉なんだと、
そんなことを観ていて感じました。
ただイエスと言う言葉の持つ前向きさは、確かに大切。
イエスノー選べる状況なら、イエスと言ってみるほうがいいような気がします。

年をとってくるといろんなことを諦めがちで、最初からムリ=ノーと決めつけてることが多い。
無理かどうかなんてやってみないと確かにわからない。
とりあえずイエス作戦、ちょっと取り入れてみようかな、と思ってしまいました。
4月ということもあるし、何かを始めたくなる季節でもあることですし。
でも、FBIに目を付けられるような行動は避けないと・・・です。


Yes Man(2008 アメリカ)
監督 ペイトン・リード
出演 ジム・キャリー ズーイー・デシャネル ブラッドレイ・クーパー
   ジョン・マイケル・ヒギンズ テレンス・スタンプ



イエスマン “YES

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