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ファンタスティック Mr.FOX [映画感想−は]

以前こんな記事こんな記事を書きましたが(日付を見ると2009年8月&11月!)、
その後も日本公開のニュースはまったく聞こえて来ず、諦めかけていたところ、急に公開決定!


Mr.FOX(ジョージ・クルーニー)は人間の農家からニワトリやアヒルを盗むプロ。
しかし妻Mrs.FOX(メリル・ストリープ)の妊娠を機に泥棒稼業から足を洗います。
それから2年後(キツネ年で12年後)、Mr.FOXは新聞記者として働き、
妻と(キツネ年で)12歳になる、ちょっと変わり者の息子アッシュ(ジェイソン・シュワルツマン)
と共に幸せな穴ぐら暮らしをしていましたが、42歳(キツネ年で)になったMr.FOXは、
日々の生活に物足りなさを感じ、アナグマ弁護士のバジャー(ビル・マーレイ)の反対も聞かず、
見晴らしの良い丘の上の家を購入します。
しかしこの丘は近くにとてつもなく強欲で意地悪な3人の農場主が住んでいる危険地帯。
ところがMr.FOXは妻や息子に内緒でこっそり泥棒稼業を復活させ・・・。


fantasticmrfox_1.jpg


ウェス・アンダーソンは本当にニガテというか相性が悪くて、
ビル・マーレイの魅力(?)とヘンリー・セリックが担当したアニメパートが素晴らしい、
『ライフ・アクアティック』はまあまあ"好き"だったんですが、そのほかは、
どんなにお気に入り俳優が登場しようとどうしてもハマれない監督でした。
というわけで今回も大袈裟じゃなくヒヤヒヤしながらの鑑賞で、
これでダメなら本当に彼の作品とは決別しよう!ぐらいの気持ちで挑んだわけですが、
・・・いやあ、これはよかった!

まあ、ストップモーションアニメというだけで点数は甘くなってしまうのですが、
『ライフ・アクアティック』の潜水艦断面図に通じる地中の横穴などが、
蟻の巣穴観察のような楽しさで、とにかくずっと観ていたいぐらい楽しい!
室内インテリアの細かさなどはリカちゃんハウスに夢中だった少女時代を思い出し、
こんなドールハウスが欲しい!と本気で思ってしまいました。
よくまあここまで凝ったものを作ったなと、そのこだわりぶりはウェス・アンダーソンらしい。
らしいといえば、彼の作品でよく使われている横移動撮影がここでも多用されていて、
それがなにか紙芝居的なものを感じさせ、雰囲気にすごく良く合っています。
それは意識してのものなのか、あるいは横移動=人形劇的なものが元々好きで、
だからこういう作品を作ろうと思い立ったのか、そのあたりはよくわかりませんが、
もうずっとこの路線で行ってくれていいよ!と見終わって心の中で叫んでしまいました。


fantasticmrfox_2.jpg


『チャーリーとチョコレート工場』(あるいは『夢のチョコレート工場』!)の原作、
『チョコレート工場の秘密』などを書いたイギリスの作家、ロアルド・ダールの、
『すばらしき父さん狐』が原作だそうで、これは残念ながら未読ですが、
それらしい手作り感たっぷりの可愛いぬいぐるみ的ルックスは確かに童話的で、
けれどもストーリーは程良くダーク。
キツネ対人間の戦いというか騙しあいはチョコレート工場に通じるブラックさがあり、
当然人間側が悪役となってしまうのは仕方ないのかも知れませんが、
キツネたちの行動も、そりゃあこれじゃ人間怒っちゃうよなあと思ったり。

Mr.FOXは一見クールでスマートなのですが、このまま普通の夫や父親でいたくなくて、
本来の仕事である泥棒稼業をこっそり再開します。
新聞記者でいろいろ理屈っぽいことを言ったりもするのに、
泥棒仕事の時はいかにも"ズルいキツネ"ぶり。
また、Mr.FOXの甥のクリストファソン(エリック・アンダーソン)が、
Mr.FOX家に居候することになるのですが、このクリストファソンが、
勉強もスポーツも何もかもソツなくこなすMr.FOXもビックリの知性派。
そんなクリストファソンやMr.FOXなど、一見クールな彼らがいざ食事となると、
野性味溢れる乱暴さでガツガツとそこらじゅうまき散らすように食べ散らかしたり、
何かあると「ガルルル・・・」と歯を見せて唸り声を上げたりして、
そのあたりのギャップがとにかくオカシイです。


fantasticmrfox_3.jpg


Mr.FOXのクールだけどいざとなると熱くなったりするキャラクターは、
声を担当しているジョージ・クルーニーが普段演じている役柄に微妙に重なるようで、
なかなか上手い起用だなあと感心しました。
冷静沈着だけどいざとなると・・・という妻がメリル・ストリープというのもなるほどだし、
イマイチ出来の悪い息子アッシュをジェイソン・シュワルツマンが演じるのもすごくピッタリ。
"アンダーソン組"のビル・マーレイやオーウェン・ウィルソン、
それにウィレム・デフォーの農場の用心棒ぶりとか本当に楽しい。
常連を(声のみなのに)使いながらいずれも適役というのは、
この作品がまったくいつもと変わらない、まぎれもないアンダーソン作品である、
ということなのかも知れないと思いました。
メインが父親と息子の関係という点もいかにも彼らしいし、
とにかくなんだかまるっきり私の苦手なアンダーソン・ワールド満開と言ってもいいのに、
こんなにすんなり受け入れられるのはなぜだろう?とずっと考えているのですが、
常に私が彼の作品から感じてしまってイヤな気分になっていた、
過剰なのに素っ気ない、いわゆるスノッブさのような彼の"スタイル"が、
人形アニメにすることで適度に薄まるのか、人形というフィルターがかかることで、
作り物くささがすんなり受け入れられるということなのかも、と思いました。
しつこく繰り返しますが、ずっとこの路線で行ってくれないかしら。


Fantastic Mr. Fox(2009 アメリカ)
監督 ウェス・アンダーソン
声の出演 ジョージ・クルーニー メリル・ストリープ ジェイソン・シュワルツマン
     ビル・マーレイ マイケル・ガンボン ウィレム・デフォー
     オーウェン・ウィルソン ジャーヴィス・コッカー



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堀越ヨッシー

作品を見てもいないのに、nice!を押すのもどうかと思ったんですが...
という訳で、dorothyさん、こんにちは。
ちょっとお知らせしたいことが出来たので、コメントします。 
 
先日、新宿の紀伊國屋書店に立ち寄ったら、「ファンタスティック Mr.FOX」のメイキング本がありましたよ!。もちろん洋書なので英語表記なのですが、小型の本の割りにはたくさんの写真が載っていて、結構見応えがありました。dorothyさんが映画のメイキング本に関心があるかどうかはわかりませんが、機会があれば是非ご一読を!(^皿^)>。
by 堀越ヨッシー (2011-05-17 20:28) 

dorothy

ヨッシーさん、こんにちは!
あ、ごらんになってないのですね、残念。ヨッシーさんの感想も聞きたいなあ。
ところでメイキング本ってちょっと聞き捨てならないですねー。
キツネさんたちはもちろん、ビル・マーレイもいたりするのかしら?
チェックしてみます。良い情報をありがとうございます!
by dorothy (2011-05-19 02:40) 

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