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ブラック・サンデー [映画感想−は]

「午前十時の映画祭 青の50本」にて鑑賞。
日本では1977年、劇場爆破予告のため公開直前に上映中止となっていた幻の作品。
それが大スクリーンで観られる!と期待大で劇場へ向かいました。


テロ組織"黒い九月"の女闘士ダリア・イヤッド(マルト・ケラー)は、
ベイルートの片田舎のアジトで仲間たちとテロの準備を行っていました。
しかし、カバコフ少佐(ロバート・ショウ)らイスラエルの特殊部隊がアジトを奇襲、
ダリアが録音した犯行声明のテープを入手します。
一方、なんとかその場から逃げ延びたダリアはアメリカへ。
実は彼女はベトナム帰還兵のマイケル・ランダー(ブルース・ダーン)と手を組み、
アメリカ国内でのテロを計画していたのでした。
その計画を察知したカバコフもアメリカへ渡り・・・。


決行!
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最初はテロリストが美女であるということに映画的演出を感じたし、
もっとエンタテインメントで、且つシンプルに悪:テロ組織、
善:アメリカという図式で話が進むのかと思っていたら、
これが一筋縄でいかない複雑な作りで実に面白かったです。
面白い、とあっさり言ってしまうのもなんですが、何より興味深いのは、
テロを起こす側に加担するのがアメリカ人で、それに立ち向かうのがイスラエル人という、
このあたりが最初は私のアタマではよく理解出来ず、
それでも物語が進むにつれて徐々に理解出来てくると、
物語の奥深さにどんどん引きずり込まれていきました。
実在したテロリストグループ"黒い九月"という名前がそのまま登場し、
それはおそらく当時、今思う以上にリアリティのあった話なのではないかと思うと、
途端に緊張感もあふれてきました。

そうは言っても銃撃戦の激しさや、いよいよテロ決行の日の緊張感たっぷりの映像、
飛行船がスタジアムに徐々に近づいて行く映像のダイナミックさ、
カバコフが飛行船を阻止しようと奮闘する様子は本当に手に汗握りますし、
深夜のボートと巡視船のチェイスや、貨物船船長が電話線を使った爆弾で殺されたり、
ダリアが看護婦に化けてカバコフの命を狙いにやってくるシーンなど、
サスペンス演出もとてもよく出来ていてまさに一時も目を離せません。
そういう意味では十分にエンタテインメントな作品であると言えます。


心の傷
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カバコフ、マイケル、ダリアの主要三人の個性もとても強くて、
特に一番、良い意味でわかりやすく明らかにサイコな悪役のマイケルには、
彼がこうなってしまった事情が丁寧に描かれていて、
シンパシーすら感じてしまいそうになります。
ベトナムで長く捕虜生活を送り、ようやく帰国すれば妻子には見放される。
彼がセラピーのために行った復員専門病院のようなところでぞんざいな扱いを受ける様子など、
この当時アメリカではどのように受け止められたのかとても気になります。
また、マイケルとダリアが単に恋愛関係で繋がっているというわけではなく、
おそらくそれは互いの目的のためという理由のほうが強くて、
だからどちらもほんの少しのことで脆く崩れそうになります。
相手を信じ、疑い、利用する様に凄まじく深い業のようなものを感じるし、
セスナ格納庫の爆弾テストの際のマイケルの妄執と、
それを見たダリアの怯えは観ていてとても息苦しく、
そしてこのシーンが何より映像的に美しいということに、
この作品全体を通した狂気が象徴的に表れているなと感じました。


止める!
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クライマックスの飛行船バトルは合成バレバレな映像は仕方ないとしても、
数万人ものエキストラをスタジアムに集めたらしい映像は迫力満点だし、
最後までどうやって解決するのか、おそらくテロは失敗するのだろうと思っていても、
こんな状態になっていったいどうするんだろう?と本当にドキドキのしぱなしでした。
この、まさにパニック・イン・スタジアムなシーンは、
ここだけでもとても見応えがあり、人々のパニックぶりはとにかくリアルで、
十分にケガ人続出だろうなと思えるし、そしてあまりにリアルなこの状況で、
もしテロが成功していたらどんなに恐ろしいことになるか・・・と、
想像するだけで震えが来てしまいます。

そして何より恐ろしいと思ってしまうのは、公開からすでに30年以上経っていながら、
中東問題は未だ解決していないということ。
上映中止となった1977年当時のリアリティはどれほどのものだったかわかりませんが、
今現在もまだこういうことがいつ起こってもおかしくないし、
実際、10年前には911テロが起こってしまった。
映画が未来を予測していたとかいったことを安易に言いたくはないし、
物語自体は原作を書いたトマス・ハリスがジャーナリストであったことから、
ある程度予測のついた上で書き上げたものかも知れないと想像出来ます。
しかし、こういったことがいつ起こってもおかしくないという状況が、
いまだに続いているということが何より恐ろしい現実だし、
この映画のどのシーンよりも震えが来る事実だと思いました。
34年も前に作られた大傑作。機会があればぜひご覧ください。
可能ならば大きなスクリーンで。


Black Sunday(1977 アメリカ)
監督 ジョン・フランケンハイマー
出演 ロバート・ショウ ブルース・ダーン マルト・ケラー
   フリッツ・ウィーヴァー スティーヴン・キーツ クライド・クサツ



ブラック・サンデー [DVD]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ジャパン
  • メディア: DVD


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