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幸せの始まりは [映画感想−さ]

ポール・ラッドとオーウェン・ウィルソンの共演というのは、
これまで何度もあったような気がしたのですが、
実はこれが初めてと言ってもよいのですよ!(誰に言ってるのだ?)
最近だと『ナイトミュージアム』にどちらも出演しているのですが、
当然、あんな役なので同じシーンでの登場はまったくナシ。
この二人の共演、それだけで個人的に無条件に大傑作間違いなし!
しかもそれが正式にロードショー公開されるなんて!


ソフトボール選手のリサ(リース・ウィザースプーン)は、
ある日ジョージ(ポール・ラッド)という男からの電話を受けます。
恋人のいないリサにチーム仲間がジョージを紹介しようとしたのですが、
ジョージの電話は「自分には恋人がいるのでつきあえない」というもの。
そんな奇妙な電話は気にも留めず、リサはメジャー・リーガーのマティ(オーウェン・ウィルソン)
とデートをし意気投合、一夜を共にします。
一方ジョージは、父チャールズ(ジャック・ニコルソン)とともに経営する会社の、
不法行為疑惑で収監されるかも知れないという事態に陥り、
同時に恋人も突然彼の元を去ってしまいます。
落ち込むジョージはアシスタントのアニー(キャスリン・ハーン)のアドバイスで、
気分を変えるために再びリサに電話をかけ、デートの約束をします。
しかしその頃リサは、突然チームからの解雇を知ったばかりでした。
互いに最悪な状況の中、リサとジョージはレストランで待ち合わせますが・・・。


思いは通じない
howdoyouknow_1.jpg


ジェームズ・L・ブルックスの監督作品を観るのは『恋愛小説家』以来ですが、
そもそも監督作としてはこの後にアダム・サンドラー主演の、
『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』が一本あっただけなようで、
(残念ながら未見)本当におひさしぶりな感じです。
その演出ぶり、そしてキャストいずれもが期待どおりというのか、
予想を裏切らない、いい意味で思った通りの、
それぞれ俳優たちそのままの最良の面を見せてくれている作品に仕上がっていました。

観る前に、唯一この作品に乗れないなあと思ったのは、
リース・ウィザースプーン・・・決してキライな女優さんではないのですが、
最近はあまり積極的に観たいと思うことのない人でした。
予告編の段階では、二人の男性に翻弄されるヒロインなんだったら、
もうちょっとキャラの弱目な可愛い感じの女優がいいような気がしたし、
すでにオスカー女優となった彼女では強すぎるイメージも勝手に持ってしまっていました。
ところが観てみると、強さと弱さ、ロマンチストだったり現実的だったりと、
実にいろんな豊かな表情を見せ、小麦色に焼けた肌とキュッと引き締まったふくらはぎが、
まさにプロスポーツ選手らしくてとても良いのです。
元々彼女を念頭に書かれた役だということなので、監督が主人公をどう描こうとしたのか、
そこは揺るぎなかったのだと思うし、私が観る前に決定的に勘違いしていたのは、
これはリサという女性が主人公だということ、男二人(と怖いオジサン)は、
あくまでも脇役だということ、ここをしっかり理解していれば良かった。
(でも、あの予告編は鑑賞後の今観ればなるほどと思うのですが、
何度観てもピンと来ない、ボンヤリした印象のものだったのです!と強調しておこう。)


思いは届かない
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では”ワキ”の男性二人はどうだったのかというと、
これがまたいい意味でチカラが入っていないというか、
それぞれの持ち味を最大限活かしたキャラクターでファンとしては大満足!
特にオーウェン・ウィルソン演じるマティは、
彼がこれまで何度も演じてきた得意な天然キャラクター。
物事を深く考えたりしないし、自分の思うようにしか行動しない。
自分に正直である人の愛おしさと付き合いづらさ、
相手を愛してる気持ちに間違いはないんだけど、その言動を見ていると、
結局一番愛してるのは自分なんじゃないかと思ってしまうし、
こういう人を愛することは本当に難しいと思わせます。
けれど、最初はたくさんいるガールフレンドの一人でしかなかったリサに、
何か違うものを感じ、彼なりに彼女を深く愛するようになる。
その微妙に変わっていく心の動きが、とてもさりげなく自然だし、
でも、やれやれまったく・・・とこちらが心配になるぐらい相変わらず天然。
彼の演技力と、もちろん演出の巧さもあるのだと思いますが、
本当にこれまたアテガキしたとしか思えない、納得の演技でした。

ポール・ラッド演じるジョージもとても魅力的に描かれています。
自分の置かれている立場、父親に対する気持ちは常に揺れ続けていて、
そんなどん底な状況で出会ったからこそリサに強力に惹かれてしまう。
自分の気持ちになかなか気付いてくれないリサに、
決して無理せず自分らしくアプローチします。・・・かなりジタバタしますが。
マティと正反対と言える、相手を深く思いやる心の持ち主で、
これまたもうちょっとガツンと行ってもいいんじゃないの?と応援したくなります。
ポール・ラッドの困り顔と無邪気な、だけどちょっと影のある笑顔はやはり良い。
シリアスに笑わせるという、この手のコメディ演技は本当にお手のものという感じです。


思いは通わない
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ただ、ストーリー的に惜しいと思う点もいくつか。
ジョージと父チャールズの危機感がちょっと理解しづらかった。
こういった状況に私の知識がついていけないだけかも知れませんが、
確かに自分が収監されるというピンチな状況はわかるんですが、
それが単純にジョージを落ち込ませているだけだし、もちろんそれで十分なのですが、
もう少しリサとの関係や、もっと言うとリサのキャリアの問題にまでうまく絡んだりして、
それぞれの問題が意外な繋がりで解決する・・・とかいうのをちょっと期待してしまったのですが、
まあそれはこちらの勝手な思い込み、方向が違うのでしょう。
おそらくチャールズの、というよりジャック・ニコルソンの存在があまりにも大きくて、
浮いてしまってるように見えてしまったのだと思います。
ニコルソンは『愛と追憶の日々』や『恋愛小説家』などブルックス監督作にたびたび出演しているので、
今回もメインキャストというよりは友情出演的意味合いが強いんじゃないかと想像するのですが、
でもそれだったらもうちょっと出番が少なくてもいい気がするし、
そのほうが逆にインパクトがあって、役柄としての存在感も出たような気がします。

チャールズのシーンで一番"おおっ!"と思ったのは、
ジョージのアシスタントのアニーの出産後に登場するところ、
ここはおそらく全員"ええっ!?"と思わされる爆笑シーンなんですが、
こういうのがもうちょっとあると良かったのに。そんなところが惜しい気がしました。
それにしてもこのアニーの病院でのシーンはとにかく素晴らしすぎます。
劇場内でもそこらじゅうで泣き笑いが起こっていましたが、
こういうメインキャラ以外にスポットライトを当て、
それが主人公たちの心に大きく影響を与えるエピソードというのは、
観ているこちら側もリサたちと同じ体験をし、同じ気持ちを味わえるし、
登場人物の感情にすんなり同期できる気がして、ああこういうところ本当に巧いなあと思いました。

原題の『How Do You Know』というのは"どうやってそれを知るのか?"
みたいなことかなあと思うのですが、登場人物それぞれが悩みを抱えていて、
互いの気持ちもわからないことばかりで、自分の思いも上手く伝えられない。
それぞれの思いや自分自身の心の内側に、いつ、どうやって気がつくのか、
そんなこんなが込められたタイトルなんじゃないかと思いました。
彼らが悩み抜いた末に気がつく瞬間、いままでよくわからないでいたものに気がつく瞬間、
それらが実にさりげなく、でも確実に描かれていて胸を打たれました。
人はそうやって互いを、そして自分自身を知り、次へと進んでいくのだろうな、
そんなことをたくさん気付かせてくれる、本当に幸せが観ているこちらにも始まりそうな、
実に素敵な、チャーミングな作品でした。



How Do You Know(2010 アメリカ)
監督 ジェームズ・L・ブルックス
出演 リース・ウィザースプーン ポール・ラッド オーウェン・ウィルソン
   ジャック・ニコルソン キャスリン・ハーン マーク・リン=ベイカー
   レニー・ヴェニート シェリー・コン



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コメント 2

ぷーちゃん

恋愛小説家の監督作品ですね。
温かい作品なんだろなっと
メモメモ(^m^)
by ぷーちゃん (2011-02-27 14:23) 

dorothy

ぷーちゃんさん、こんにちは!
「恋愛小説家」お好きだったらきっと気に入りますよ!
by dorothy (2011-02-28 22:21) 

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