ミックマック [映画感想−ま]
タイトルの『ミックマック』とはフランス語でイタズラとか企み、策略という意味なのだそうで、
その名の通り全編大ネタ小ネタ、ありとあらゆるイタズラ大会・・・と言っても、
イタズラなんて生易しいものじゃなく余裕で死人が出そうなアブナイものもたくさんあって、
かなりキケン、だけどファンタジー風味の復讐ドラマ・・・ってよくわかんないな。
要はジャン=ピエール・ジュネってことかなあと。
幼い頃、父親を地雷処理中の事故で失ったバジル(ダニー・ブーン)は、
ある発砲事件に巻き込まれ一命は取り留めますが、頭に銃弾が残ったままになってしまいます。
その事件のせいで家も仕事も失ってしまったバジルは、ある日、
廃品回収業を営むプラカール(ジャン=ピエール・マリエール)という男に誘われ、
同じように行き場を失った仲間たちの大勢住む彼の家に住まわせてもらうことになります。
そしてひょんなことからバジルは自分の頭に埋まった銃弾を製造している会社を見つけ、
さらにその向かいには自分の父親の命を奪った地雷製造会社が建っていることを知り・・・。
頭に埋まってます
久しぶりのジャン=ピエール・ジュネ作品、上映館も少なく観ようかどうか迷う・・・というか、
観る機会はちょっとないかも、と思っていたらぽっかり時間が出来て急遽鑑賞、
そのためジュネ作品を観る体勢が整ってなくて、この独特のノリに慣れるのに時間がかかってしまいました。
冒頭のバジルの父親の亡くなる様子やバジルが銃撃戦にまきこまれるあたり、
ホームレスとなったバジルのあれこれはテンポも良くワクワクもしていたのですが、
プラカールに誘われ新しい"家族"が出来てからは、その家族の面々の個性の強さがあまりに味が濃くて、
"これ面白いでしょ?でしょ?"と次々繰り出され念を押される感じがいかにもなジュネ節というか、
いかにもなフレンチギャグの応酬にしばらくはちょっと引いてしまっていました。
彼らの廃品からあらゆるモノを作り出す様子や1人1人の特殊能力などとにかく押しが強く、
これ以上やられるとちょっとイヤかも知れないと思ってしまったり。
『アメリ』にはそれなりにハマッた私ですが、あれが苦手という人も多かったのを思い出し、
ああきっとこういう押しの強さがダメなところなんじゃないかな、なんてことも途中考えてしまいました。
『アメリ』はオドレイ・トトゥの可愛さや小物のキュートさに誤魔化されて、
なんだかカワイイ映画みたいに思われていたけれど、
結構キワドイ表現やさりげなく下品だったりするようなところもたくさんあって、
その程良い毒加減こそが面白いところだと思ったのですが、
今作もそういう部分がたくさん登場するところはまったく同じで、
それがアメリ1人だったのに比べ今回は大人数でかかってきちゃうから、
ちょっとお腹いっぱいというか、微妙に舌に絡んだり口の中に残る感じを受けたのかも知れません。
作戦決行中
それに今作でのバジルたちの目的は復讐であり、その標的の巨大さは、
どう考えても個人レベルの復讐では済まないだろうと思われるシリアスなものだし、
だからこそ全編"イタズラ"で押し通す平和さが微笑ましく頼もしくもあるのでしょうが、
それでいいのかなあという思いも最後まで拭えず、これはもう自分のアタマの固さなのかも知れません。
まあそもそも武器製造会社が向かい合って普通に建ってるという設定、
バカみたいなセキュリティの甘さとかお気楽さを最初に受け入れてしまえば、
そういうファンタジーな話なんだしやってることはまるっきり子どものイタズラレベルなんだと、
あとはその世界に黙って身を委ねてしまえば良いのかも知れませんが。
それにしても敵2人をいがみ合わせ破滅させるのかと思えば、
最終的に鉄槌を下すことになるのがアレというのはわからなくもないけど、
あれだけ手作りで頑張ってきて最後アレ頼りというのはちょっとありがちというのか、
ここまでのヒネリっぷりを最後にもうちょっとガツンと見せて欲しかったかなあとも思いました。
もちろんその前に敵2人をああいう方法で追い込ませる、
"想像"させて追い詰めるということこそがキモであったのはよくわかってるし面白いとは思いましたが。
戦争被害を受けた子どもたちの写真をチラリと出してしまう唐突さも、
バジルたちの"演出"としてサラッと流していいところなのかも知れませんが、
そのチラ見せにこそジュネの本気さがあるように感じられて、
(実際、ジュネの武器商人たちへのリアルな怒りが製作動機らしいし)
ここまでの大イタズラ大会をファンタジーじゃなく本気の反戦映画にするようで、
もちろんそれでも全然いいのですが、いよいよ自分の立ち向かい方を一瞬見失う気がしてしまいました。
吹っ飛ばしますよ
とまあ文句ばかり言ってるようですが、それでも思い出すあれこれにイヤな思いはまったく無くて、
家でのんびりお酒飲んでとろーんとしながら観たらすごく幸せな気持ちになるような気もして、
こういう、監督の色がものすごく濃く出たものというのは、それを心から楽しむ、
すべて身を委ねる体勢を取ってから観るのが正しいのだろうなとすごく実感させられました。
色づかいや構図や、とにかく映像はどこもここも完璧に作り込まれていて、
そのこだわりぶりはさすがとしか言いようがありません。
ジュネと言えばのドミニク・ピノンがすっかり年とってしまってましたが、
あのしゃくれ具合は健在だしいよいよ味のあるオジサンになっていたのが嬉しかった。しかも人間大砲!
強烈に個性的で味わい深い面々、彼らの特殊部隊ぶりが、
自分がもしすべてを失い、彼らのファミリーに入れてもらえることになっても、
何も取り柄がないからきっとダメだな、と軽く妄想するぐらいにはしっかりハマリました。
1人で生きていくことの大変さ、人と力を合わせて生きていくことの幸せ、
でもそのためには人のためになること、自分も何か役に立たないといけないんだな、
なんてことを一瞬本気で考えたりもしました。
個人レベルの幸せを追求する上でのひとつのカタチとしての反戦、ということでもあるのかな。
ほんわかしてそうでかなり高度なところからのヒネリ方は、
子どもじみたイタズラをいっぱい見せつつ実はすごくクレバーな感じという、
フランス映画の頭の良さみたいなものを久しぶりに見せつけられた気がしました。
Micmacs à Tire-Larigot(2009 フランス)
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
出演 ダニー・ブーン アンドレ・デュソリエ ニコラ・マリエ ジャン=ピエール・マリエール
ヨランド・モロー ジュリー・フェリエ オマール・シー ドミニク・ピノン
ミシェル・クレマド マリー=ジュリー・ポー
その名の通り全編大ネタ小ネタ、ありとあらゆるイタズラ大会・・・と言っても、
イタズラなんて生易しいものじゃなく余裕で死人が出そうなアブナイものもたくさんあって、
かなりキケン、だけどファンタジー風味の復讐ドラマ・・・ってよくわかんないな。
要はジャン=ピエール・ジュネってことかなあと。
幼い頃、父親を地雷処理中の事故で失ったバジル(ダニー・ブーン)は、
ある発砲事件に巻き込まれ一命は取り留めますが、頭に銃弾が残ったままになってしまいます。
その事件のせいで家も仕事も失ってしまったバジルは、ある日、
廃品回収業を営むプラカール(ジャン=ピエール・マリエール)という男に誘われ、
同じように行き場を失った仲間たちの大勢住む彼の家に住まわせてもらうことになります。
そしてひょんなことからバジルは自分の頭に埋まった銃弾を製造している会社を見つけ、
さらにその向かいには自分の父親の命を奪った地雷製造会社が建っていることを知り・・・。
頭に埋まってます
久しぶりのジャン=ピエール・ジュネ作品、上映館も少なく観ようかどうか迷う・・・というか、
観る機会はちょっとないかも、と思っていたらぽっかり時間が出来て急遽鑑賞、
そのためジュネ作品を観る体勢が整ってなくて、この独特のノリに慣れるのに時間がかかってしまいました。
冒頭のバジルの父親の亡くなる様子やバジルが銃撃戦にまきこまれるあたり、
ホームレスとなったバジルのあれこれはテンポも良くワクワクもしていたのですが、
プラカールに誘われ新しい"家族"が出来てからは、その家族の面々の個性の強さがあまりに味が濃くて、
"これ面白いでしょ?でしょ?"と次々繰り出され念を押される感じがいかにもなジュネ節というか、
いかにもなフレンチギャグの応酬にしばらくはちょっと引いてしまっていました。
彼らの廃品からあらゆるモノを作り出す様子や1人1人の特殊能力などとにかく押しが強く、
これ以上やられるとちょっとイヤかも知れないと思ってしまったり。
『アメリ』にはそれなりにハマッた私ですが、あれが苦手という人も多かったのを思い出し、
ああきっとこういう押しの強さがダメなところなんじゃないかな、なんてことも途中考えてしまいました。
『アメリ』はオドレイ・トトゥの可愛さや小物のキュートさに誤魔化されて、
なんだかカワイイ映画みたいに思われていたけれど、
結構キワドイ表現やさりげなく下品だったりするようなところもたくさんあって、
その程良い毒加減こそが面白いところだと思ったのですが、
今作もそういう部分がたくさん登場するところはまったく同じで、
それがアメリ1人だったのに比べ今回は大人数でかかってきちゃうから、
ちょっとお腹いっぱいというか、微妙に舌に絡んだり口の中に残る感じを受けたのかも知れません。
作戦決行中
それに今作でのバジルたちの目的は復讐であり、その標的の巨大さは、
どう考えても個人レベルの復讐では済まないだろうと思われるシリアスなものだし、
だからこそ全編"イタズラ"で押し通す平和さが微笑ましく頼もしくもあるのでしょうが、
それでいいのかなあという思いも最後まで拭えず、これはもう自分のアタマの固さなのかも知れません。
まあそもそも武器製造会社が向かい合って普通に建ってるという設定、
バカみたいなセキュリティの甘さとかお気楽さを最初に受け入れてしまえば、
そういうファンタジーな話なんだしやってることはまるっきり子どものイタズラレベルなんだと、
あとはその世界に黙って身を委ねてしまえば良いのかも知れませんが。
それにしても敵2人をいがみ合わせ破滅させるのかと思えば、
最終的に鉄槌を下すことになるのがアレというのはわからなくもないけど、
あれだけ手作りで頑張ってきて最後アレ頼りというのはちょっとありがちというのか、
ここまでのヒネリっぷりを最後にもうちょっとガツンと見せて欲しかったかなあとも思いました。
もちろんその前に敵2人をああいう方法で追い込ませる、
"想像"させて追い詰めるということこそがキモであったのはよくわかってるし面白いとは思いましたが。
戦争被害を受けた子どもたちの写真をチラリと出してしまう唐突さも、
バジルたちの"演出"としてサラッと流していいところなのかも知れませんが、
そのチラ見せにこそジュネの本気さがあるように感じられて、
(実際、ジュネの武器商人たちへのリアルな怒りが製作動機らしいし)
ここまでの大イタズラ大会をファンタジーじゃなく本気の反戦映画にするようで、
もちろんそれでも全然いいのですが、いよいよ自分の立ち向かい方を一瞬見失う気がしてしまいました。
吹っ飛ばしますよ
とまあ文句ばかり言ってるようですが、それでも思い出すあれこれにイヤな思いはまったく無くて、
家でのんびりお酒飲んでとろーんとしながら観たらすごく幸せな気持ちになるような気もして、
こういう、監督の色がものすごく濃く出たものというのは、それを心から楽しむ、
すべて身を委ねる体勢を取ってから観るのが正しいのだろうなとすごく実感させられました。
色づかいや構図や、とにかく映像はどこもここも完璧に作り込まれていて、
そのこだわりぶりはさすがとしか言いようがありません。
ジュネと言えばのドミニク・ピノンがすっかり年とってしまってましたが、
あのしゃくれ具合は健在だしいよいよ味のあるオジサンになっていたのが嬉しかった。しかも人間大砲!
強烈に個性的で味わい深い面々、彼らの特殊部隊ぶりが、
自分がもしすべてを失い、彼らのファミリーに入れてもらえることになっても、
何も取り柄がないからきっとダメだな、と軽く妄想するぐらいにはしっかりハマリました。
1人で生きていくことの大変さ、人と力を合わせて生きていくことの幸せ、
でもそのためには人のためになること、自分も何か役に立たないといけないんだな、
なんてことを一瞬本気で考えたりもしました。
個人レベルの幸せを追求する上でのひとつのカタチとしての反戦、ということでもあるのかな。
ほんわかしてそうでかなり高度なところからのヒネリ方は、
子どもじみたイタズラをいっぱい見せつつ実はすごくクレバーな感じという、
フランス映画の頭の良さみたいなものを久しぶりに見せつけられた気がしました。
Micmacs à Tire-Larigot(2009 フランス)
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
出演 ダニー・ブーン アンドレ・デュソリエ ニコラ・マリエ ジャン=ピエール・マリエール
ヨランド・モロー ジュリー・フェリエ オマール・シー ドミニク・ピノン
ミシェル・クレマド マリー=ジュリー・ポー
こちらでは、お久しぶり。
この映画、要はジャン=ピエール・ジュネの世界
なんですね。
と言っても、わたし”アメリ”しか知りませんが。
何も食べないと、やせ死ぬぞー、ハッ、
ぜんぜん映画の話題とは関係なかった。
(≧艸≦)ブブブ
by ぷーちゃん (2010-10-18 19:16)
ぷーちゃんさん、こんにちは。
スミマセン、また訳のわからない感想を書いてしまった。
『アメリ』お好きだったらこれも好きかもだし、
もし良かったら『デリカテッセン』や『ロストチルドレン』も観て欲しいなー。
で...ちゃんと食べてますよ。ご心配なく!(してない?)
肉の蓄えはたっぷりあるので「やせ死ぬ」とか憧れるわぁ〜。
by dorothy (2010-10-18 23:37)