ヒックとドラゴン [映画感想−は]
主人公ヒックの声を『トロピック・サンダー』のジェイ・バルチェル、
ほかに『スーパーバッド』のジョナ・ヒルとクリストファー・ミンツ=プラッセ、
『ウォーク・ハード』のクリステン・ウィグといった面々が声優陣として出演とあって、
最初はアパトー/フラットパック系のニュースとして知り、楽しみにしていたのですが、
日本での公開は3D作品ということもあって字幕上映は2Dのみで上映館も少数という、
最近よくあるパターンだと知ると、途端に興味を失ってしまっていました。
ところが始まってみるとあちこちでものすごい高評価しかも3D必見!という声多数で、
うーん、では観ておくかあと重い腰を上げたのでした。
はるか北の海にあるバーク島はバイキングたちが暮らす島。
この島では大昔から人間とドラゴンとの争いが続いていました。
鍛冶屋で修行中のヒックはこの島のバイキングたちのリーダーであるストイックの息子ですが、
ひ弱で頼りなく、父親の悩みの種となっていました。
しかしヒックは自分もいつかは立派なバイキングになることを夢見ており、
父親たちに混じって戦いに参加しますが、結局足手まといになるばかりでした。
しかしある日、自ら発明した武器を持って参戦。
するとこの武器で伝説のドラゴンであるナイト・フューリーを捕えることに成功します。
森の中で負傷して動けなくなったナイト・フューリーに止めを刺すべく近づくヒック。
しかし彼はこのドラゴンを殺すことができず・・・。
ドラゴンに乗る!
印象的な登場人物、バイキングの丘の上での生活という設定も珍しい。
何種類も登場するドラゴンたちはこれまたどれも個性的で、
ドラゴンというと恐竜やトカゲ系のイメージを持ってしまうのですが、
確かにそんなドラゴンらしさも持ちつつ、犬や猫のような愛らしい動きも見せるのが新鮮でした。
よく知りませんがポケモンのキャラクターとして登場しそうな雰囲気。
トゥースこと伝説のドラゴン、ナイト・フューリーは丸っこい瞳が愛らしいのですが、
全身は黒くコウモリのような大きな翼を持っていて、とてもシャープでカッコイイ。
予備知識ナシで観たのでヒックと仲良くなるのは小さい子どもドラゴンなのかと勝手に想像していて、
(『リロ&スティッチ』のスティッチみたいな感じかなとなぜか思っていました)
予想を裏切るカッコ良さにちょっとシビレてしまいました。
個人的に不安だった吹き替えは、いわゆるタレント起用をしていないのが好ましくて、
特に主人公ヒック役の声や台詞回しは実に自然でとても良かったです。
(上映前に見せられた『○ュレック』の予告編なんて、あれ主人公シュ○ックじゃなくてハマちゃんだよ!)
3Dに関しては後ほど述べますが、ヒックの父親たちのヒゲや着物の毛皮などが人形アニメのようにリアルで、
星空や空に舞うホコリなどは3Dならではの美しさで、しばしばうっとりするほどでした。
ストーリーに関しては良く言えば簡潔、あまりにトントン拍子過ぎるかなと思いましたが、
98分という全体の長さやアニメーション作品としてはそれはある程度仕方ないのかも知れません。
子どもだけでなく大人の鑑賞にも堪えるものになっていると思いましたが、
それでももうちょっと深く掘り下げて欲しいとか、不満に思う点も多々ありました。
ドラゴンを倒す!
冒頭から描かれる、家畜を襲うドラゴンを"害虫"として"駆除"する表現が乱暴で、
こんなに激しい戦闘状態がしょっちゅうでは毎回相当に死人も出るだろうしとか、
でもまあそこはこういう設定、こういう世界観なのだろうと納得し、
けれどそここそがこの話の最後まで納得いかない理由のひとつとなってしまうのでした。
これだけ敵対する関係である人間とドラゴンたちという図式を最初に見せて、
だからこそヒックとトゥースが心を通わせることになるのがドラマだとは思うのですが、
そこに至る経緯もわりにあっさりとしたもので、もう少し時間をかけるか、
あるいは決定的なきっかけとなるような何かがもう少し欲しい気がしました。
(とは言え、最初にヒックとトゥースが"触れ合う"シーンは単純にジーンとしてしまいましたが。)
私はてっきり、バイキングとしてはひ弱なヒックには何か特別な力が備わっていて、
だからドラゴンと心を通わせられるのは彼だけなのかも、と思っていたのですが、
まあ彼だけが"気がついた"ということでは特別ではあったんだとは思いますが、
この程度だったら誰かがとっくにドラゴンを飼い慣らせていたんじゃないかなと思ったり。
トゥースとの関係を通してヒックがドラゴンの扱いを取得していき、
ほかのドラゴンたちも手なずけられるようになっていく。
しかしドラゴンがどうやって生きているのか、その"生態系"が明らかになった時点で、
人間たちのとる行動は果たしてアレでいいのか、本当の"敵"は巨大なアレ1匹のみで、
アレを倒せばすべて丸く治まるって、ドラゴンたちはそもそもその程度の存在なのか、
そのへんの大雑把さもちょっと引っかかってしまうのでした。
ヒック以外の人もいつの間にかあっさりドラゴンに乗れるようになるし。
まあでも、童話的世界ではこういうのはよくあることだと思うし、
厳しく言い過ぎな気がしないでもありません。
でもついそんなことを気にしてしまうのは、せっかく映像やキャラクターがこんなに素晴らしいのに、
それでこんな風に展開するのかあという、なんとも惜しいなあという気がしてしまったからです。
息子が心配・・・。
とはいえ、ラストでヒックが受け入れなければならない"運命"・・・これは衝撃でした。
それまでの納得いかなさや諸々のことがここですべて吹っ飛んだというか、
もしかしたら私はここで「えっ?」とか「うっ」とか実際に声が出ていたかも知れません。
子どもも観るアニメーション作品でここまでハードな表現はほかにあるのでしょうか?
あまりアニメを観ない私はまったく例が浮かびませんが、こういうのはアメリカらしいとも言えるし、
また逆にアメリカ映画でよくここまでやったなとも思いました。
というかこれはドリームワークスだからでディズニーやピクサーでは敢えてこうはしないのでは。
『カールじいさんの空飛ぶ家』でカールじいさんが暴力を振るい相手を流血させただけで、
「ピクサー初の流血!」と話題になっていましたが、
それを考えるとこれはよくやった!と変に感心してしまう、スゴイ展開だと思いました。
さて、最後に3Dについてですが、今回は109シネマズにてMASTERIMAGEという3D方式で鑑賞。
3Dメガネが一回限りの軽いものなのはありがたいのですが、とにかく映像が暗くて困りました。
夜のシーンが結構あるのですが、全体に薄暗くて表情などがほとんどわからない場面も多く、
途中何度かメガネを外して観ると、実際には明るくてちゃんと表情もわかるのです。
この方式は明るいという話をどこかで読んでいたのでちょっとガッカリでした。
要所要所で3Dの恩恵を受けられる美しいシーンはあるのですが、
期待したドラゴン飛翔シーンも暗さとこぢんまり感で感動とはほど遠く、
きちんと映像が観られないイライラを何度も感じてしまいました。
これはこの方式が悪いのか、映写の問題なのか、自分の目が悪いのか、
余計なストレスを感じながらでは映画自体に入っていけず、変な疲労感だけが残ってしまいました。
ほとんどの人がそういう不満もなく3Dで観て感動しているということは、
私に問題アリという可能性が高いのでしょう。
機会があったら2Dでゆっくりじっくり鑑賞し直したいです。
・・・って『アリス・イン・ワンダーランド』の時にも思ったような気がする。
3Dじゃなく、普通に映画を楽しみたい。3Dブーム(ブーム、ですよね?)早く終わってくれないかなあ。
良いこともあると思うけど、映画の楽しみ方をイビツにしてしまってる気がします。
How to Train Your Dragon(2010 アメリカ)
監督 ディーン・デュボア クリス・サンダース
声の出演 田谷隼 田中正彦 岩崎ひろし 寿美菜子
淺井孝行 宮里駿 南部雅一 村田志織
ほかに『スーパーバッド』のジョナ・ヒルとクリストファー・ミンツ=プラッセ、
『ウォーク・ハード』のクリステン・ウィグといった面々が声優陣として出演とあって、
最初はアパトー/フラットパック系のニュースとして知り、楽しみにしていたのですが、
日本での公開は3D作品ということもあって字幕上映は2Dのみで上映館も少数という、
最近よくあるパターンだと知ると、途端に興味を失ってしまっていました。
ところが始まってみるとあちこちでものすごい高評価しかも3D必見!という声多数で、
うーん、では観ておくかあと重い腰を上げたのでした。
はるか北の海にあるバーク島はバイキングたちが暮らす島。
この島では大昔から人間とドラゴンとの争いが続いていました。
鍛冶屋で修行中のヒックはこの島のバイキングたちのリーダーであるストイックの息子ですが、
ひ弱で頼りなく、父親の悩みの種となっていました。
しかしヒックは自分もいつかは立派なバイキングになることを夢見ており、
父親たちに混じって戦いに参加しますが、結局足手まといになるばかりでした。
しかしある日、自ら発明した武器を持って参戦。
するとこの武器で伝説のドラゴンであるナイト・フューリーを捕えることに成功します。
森の中で負傷して動けなくなったナイト・フューリーに止めを刺すべく近づくヒック。
しかし彼はこのドラゴンを殺すことができず・・・。
ドラゴンに乗る!
印象的な登場人物、バイキングの丘の上での生活という設定も珍しい。
何種類も登場するドラゴンたちはこれまたどれも個性的で、
ドラゴンというと恐竜やトカゲ系のイメージを持ってしまうのですが、
確かにそんなドラゴンらしさも持ちつつ、犬や猫のような愛らしい動きも見せるのが新鮮でした。
よく知りませんがポケモンのキャラクターとして登場しそうな雰囲気。
トゥースこと伝説のドラゴン、ナイト・フューリーは丸っこい瞳が愛らしいのですが、
全身は黒くコウモリのような大きな翼を持っていて、とてもシャープでカッコイイ。
予備知識ナシで観たのでヒックと仲良くなるのは小さい子どもドラゴンなのかと勝手に想像していて、
(『リロ&スティッチ』のスティッチみたいな感じかなとなぜか思っていました)
予想を裏切るカッコ良さにちょっとシビレてしまいました。
個人的に不安だった吹き替えは、いわゆるタレント起用をしていないのが好ましくて、
特に主人公ヒック役の声や台詞回しは実に自然でとても良かったです。
(上映前に見せられた『○ュレック』の予告編なんて、あれ主人公シュ○ックじゃなくてハマちゃんだよ!)
3Dに関しては後ほど述べますが、ヒックの父親たちのヒゲや着物の毛皮などが人形アニメのようにリアルで、
星空や空に舞うホコリなどは3Dならではの美しさで、しばしばうっとりするほどでした。
ストーリーに関しては良く言えば簡潔、あまりにトントン拍子過ぎるかなと思いましたが、
98分という全体の長さやアニメーション作品としてはそれはある程度仕方ないのかも知れません。
子どもだけでなく大人の鑑賞にも堪えるものになっていると思いましたが、
それでももうちょっと深く掘り下げて欲しいとか、不満に思う点も多々ありました。
ドラゴンを倒す!
冒頭から描かれる、家畜を襲うドラゴンを"害虫"として"駆除"する表現が乱暴で、
こんなに激しい戦闘状態がしょっちゅうでは毎回相当に死人も出るだろうしとか、
でもまあそこはこういう設定、こういう世界観なのだろうと納得し、
けれどそここそがこの話の最後まで納得いかない理由のひとつとなってしまうのでした。
これだけ敵対する関係である人間とドラゴンたちという図式を最初に見せて、
だからこそヒックとトゥースが心を通わせることになるのがドラマだとは思うのですが、
そこに至る経緯もわりにあっさりとしたもので、もう少し時間をかけるか、
あるいは決定的なきっかけとなるような何かがもう少し欲しい気がしました。
(とは言え、最初にヒックとトゥースが"触れ合う"シーンは単純にジーンとしてしまいましたが。)
私はてっきり、バイキングとしてはひ弱なヒックには何か特別な力が備わっていて、
だからドラゴンと心を通わせられるのは彼だけなのかも、と思っていたのですが、
まあ彼だけが"気がついた"ということでは特別ではあったんだとは思いますが、
この程度だったら誰かがとっくにドラゴンを飼い慣らせていたんじゃないかなと思ったり。
トゥースとの関係を通してヒックがドラゴンの扱いを取得していき、
ほかのドラゴンたちも手なずけられるようになっていく。
しかしドラゴンがどうやって生きているのか、その"生態系"が明らかになった時点で、
人間たちのとる行動は果たしてアレでいいのか、本当の"敵"は巨大なアレ1匹のみで、
アレを倒せばすべて丸く治まるって、ドラゴンたちはそもそもその程度の存在なのか、
そのへんの大雑把さもちょっと引っかかってしまうのでした。
ヒック以外の人もいつの間にかあっさりドラゴンに乗れるようになるし。
まあでも、童話的世界ではこういうのはよくあることだと思うし、
厳しく言い過ぎな気がしないでもありません。
でもついそんなことを気にしてしまうのは、せっかく映像やキャラクターがこんなに素晴らしいのに、
それでこんな風に展開するのかあという、なんとも惜しいなあという気がしてしまったからです。
息子が心配・・・。
とはいえ、ラストでヒックが受け入れなければならない"運命"・・・これは衝撃でした。
それまでの納得いかなさや諸々のことがここですべて吹っ飛んだというか、
もしかしたら私はここで「えっ?」とか「うっ」とか実際に声が出ていたかも知れません。
子どもも観るアニメーション作品でここまでハードな表現はほかにあるのでしょうか?
あまりアニメを観ない私はまったく例が浮かびませんが、こういうのはアメリカらしいとも言えるし、
また逆にアメリカ映画でよくここまでやったなとも思いました。
というかこれはドリームワークスだからでディズニーやピクサーでは敢えてこうはしないのでは。
『カールじいさんの空飛ぶ家』でカールじいさんが暴力を振るい相手を流血させただけで、
「ピクサー初の流血!」と話題になっていましたが、
それを考えるとこれはよくやった!と変に感心してしまう、スゴイ展開だと思いました。
さて、最後に3Dについてですが、今回は109シネマズにてMASTERIMAGEという3D方式で鑑賞。
3Dメガネが一回限りの軽いものなのはありがたいのですが、とにかく映像が暗くて困りました。
夜のシーンが結構あるのですが、全体に薄暗くて表情などがほとんどわからない場面も多く、
途中何度かメガネを外して観ると、実際には明るくてちゃんと表情もわかるのです。
この方式は明るいという話をどこかで読んでいたのでちょっとガッカリでした。
要所要所で3Dの恩恵を受けられる美しいシーンはあるのですが、
期待したドラゴン飛翔シーンも暗さとこぢんまり感で感動とはほど遠く、
きちんと映像が観られないイライラを何度も感じてしまいました。
これはこの方式が悪いのか、映写の問題なのか、自分の目が悪いのか、
余計なストレスを感じながらでは映画自体に入っていけず、変な疲労感だけが残ってしまいました。
ほとんどの人がそういう不満もなく3Dで観て感動しているということは、
私に問題アリという可能性が高いのでしょう。
機会があったら2Dでゆっくりじっくり鑑賞し直したいです。
・・・って『アリス・イン・ワンダーランド』の時にも思ったような気がする。
3Dじゃなく、普通に映画を楽しみたい。3Dブーム(ブーム、ですよね?)早く終わってくれないかなあ。
良いこともあると思うけど、映画の楽しみ方をイビツにしてしまってる気がします。
How to Train Your Dragon(2010 アメリカ)
監督 ディーン・デュボア クリス・サンダース
声の出演 田谷隼 田中正彦 岩崎ひろし 寿美菜子
淺井孝行 宮里駿 南部雅一 村田志織
dorothyさん、こんにちは。
オイラも3Dブームが早く終わって欲しいと、切に願っているひとりです(^皿^)。
さて、「ヒックとドラゴン」。
いろんな意味で“曲者”な映画でしたね。もちろん登場人物やドラゴンは魅力的だったし、映像も綺麗、音楽も素敵でしたが、いかんせん肝心の物語が....ね。果たしてこれは大人向けなのか?子供向けなのか?すごく中途半端な印象を受けた次第です。
実のところ、クライマックスを見ていて「ひょっとして、ヒックが巨大なボスドラゴンでさえも手なずけてしまうのでは!?」と内心ヒヤヒヤものでした。もしそうなったら座席からずっこけてしまうところでしたが、さすがにそれはなくてちょっとひと安心(苦笑)。
そして、やはり一番の衝撃は最後のアレですね。ヒックの身に起こるアレに関してはちょっと思うところがあったので、近々記事にしたいと思っています。
お忙しいとは思いますが、せめて月に一本はdorothyさんのレビューを読みたいもんであります(^皿^)。
by 堀越ヨッシー (2010-09-28 19:22)
堀越ヨッシーさん、こんにちは。
結局こんな程度の感想しか書けなかったです・・・。
最後のアレに関するヨッシーさんの感想、ぜひぜひお聞かせ願いたいです。
アレは単に衝撃!という以上のものがあるんじゃないのかなあと勝手に想像してるんですが。
私の知識では全然「?」なもので。
それと吹き替えに関してもお聞きしたいな。
私はすっごく久しぶりの吹き替え作品鑑賞だったのでw
全然忙しくないんですよ。単にサボってるだけです。ううう頑張ります!
by dorothy (2010-09-29 03:13)