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シャッターアイランド [映画感想−さ]

予告編を観た時は、監督スコセッシなのになんだかシャマラン映画みたいだなあと思い、
謎解きだの結末はしゃべらないでだの、しまいには超日本語吹替版とか、
「?」がいっぱいだったのですが、スコセッシを信じて?観てきました。


1954年、連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は、
新しい相棒のチャック(マーク・ラファロ)と共に、
ボストンから離れた沖合に浮かぶ孤島"シャッターアイランド"に向かいます。
そこには精神を患った犯罪者を収容するアッシュクリフ病院があり、
彼らの目的はそこで起こったある女性患者の失踪事件の捜査を行うためでした。
2人は院長のコーリー(ベン・キングズレー)らから事情を聴き捜査を始めますが、
女性患者が島を出た形跡はなく、捜査は進展せず・・・。


テディが追うもの
shutterisland_1.jpg


まず言いたいのは、この映画の広告宣伝での謎解き云々はまったくどうでもいいこと。
これに惑わされてしまうと余計な神経を使ってしまって映画自体を楽しめないと思いました。
事前に、既に観た人たちの「そういうのは関係ない」という意見をいくつか聞いていたので、
私はなるべくそんな宣伝で言っているような「謎」に関してはあまり考えないようにして、
全編に流れる空気や、主人公テディが体験し感じるそのままを同じように感じる、
映画自体の語り口調のようなものを楽しむように努めました。
そもそも、その言われている"謎"とか"オチ"というのはわりとすぐに気が付くというか、
なんとなくこんなことだろうなと思うし、そしてその通りの結末となります。
なので人によっては「意外性がない」とか「ヒネリがない」みたいな意見になるのかも知れません。
でもそれを持ってつまらないと言ってしまうのは、それこそつまらない。

孤島の精神病院というシチュエーション、それはあまりにも美しく恐ろしく、
いかにもな患者たち、何かしら秘密を隠しているような職員たちなど限りなく怪しい。
連日続く嵐は胸をざわつかせるし、断崖絶壁や引き潮でないと渡れない灯台、
ゴシック調の建物もものすごくいろんなことを語りかけてくるし、
そんなもろもろが真実は何かを少しずつあぶり出し、またわからなくしていく。
そんな映画自体の醸し出す雰囲気が、なぜだかわからないぐらい心地よく、
私はわくわくすらしながら観ていました。


病院が隠すこと
shutterisland_2.jpg


かといって、雰囲気だけを楽しむような映画ではもちろんありません。
細かいストーリーを話すことが出来ないのが困りものですが、
物語の合間合間に挟まるテディの過去・・・戦争での体験や死んだ妻の姿などが、
どんな意味を持ちどんな風にストーリーに絡んでくるのか、
そもそもそれは現実にあったことなのか、テディの妄想なのか、
それとも誰かに見せられているのか、誰か違う人のビジョンなのか・・・など、
観ているこちらもあらゆることを想像し混乱させられます。
けれども最後にすべての真相が明らかにされると、
ああなるほど、だからあそこであんなだったんだ!といくつも思い当たり、
そしてそうなってしまった理由に私はものすごく心打たれてしまいました。

不満な点がないことはありません。
おそらく意識的にだと思われるオーバー過ぎるぐらいの荘厳な音楽は、
クラシカルな雰囲気を出すのに一役買っていますが、ちょっと大袈裟に感じなくもない。
それと最後の真相が明かされるシーンも、それはちょっとと思うような部分もあり、
アナグラムの書かれたボードなんて、そこまで親切じゃなくてもと思ったり
でもそのちょっと過剰な感じ、そして何より偏執狂的雰囲気こそ、
スコセッシ監督らしいところなのかも知れません。
結局最後は、こういう部分が好きか嫌いかということになってしまう気もしました。
私はこれが好きなのかも知れない。嫌いと言う人にはどんなに私が好きかを語っても、
わかってはもらえないかも知れない。残念ですがそんな感じです。


妻が伝えること
shutterisland_3.jpg


もうレオ君と呼ぶには十分大人なはずなんですが、全体にずいぶんふっくらして、
顔が丸くなったことでやっぱり幼く見えてしまう、
レオナルド・ディカプリオはそれでも素晴らしい熱演でした。
この人の困り顔や泣き顔は毎度同じなような気もするのですが、
でも毎度私は胸をぎゅぎゅっとされてしまいます。
大好きなマーク・ラファロも常にこうやって隣りで見守る役、という気がします。好演。
ベン・キングズレーにマックス・フォン・シドーは、
確実に素晴らしく怪しすぎて惑わされました。
それと"カナダのデ・ニーロ"ことイライアス・コティーズがスコセッシ作品に出るのは違反!
一瞬「えっ!?」って思っちゃいました。すぐにイライアス・コティーズだってわかりましたけどね。

映画の面白さはいろんな要素から成っていて、
人が面白いと思うポイントも人それぞれで、
だからこれをつまらないという人がいるのもわかります。
謎解きを期待して観に来た人にとってはやっぱり期待はずれだろうし。
映画をつまらなかったと思わせる理由が観る側にある場合、
・・・その時の体調とか気分とか、年齢や経験から来る理解力の有無など、
そんないろんな理由で映画と不幸な出会いをしてしまうことはよくあります。
ですが「つまらない」「面白くなかった」と思わせる要素に、
今回は宣伝があまりに加担してしまっている気がして、それが本当に残念でなりません。
配給会社にもいろいろ事情はあると思います。1人でも多く観に来て欲しいと思うのだろうし。
でもこれはあまりにも営業妨害・・・というのは逆かな、
作品自体の良さを壊してしまってるような、ヘンな先入観を持たせてしまうし、
もっと映画自体の良さを信じてあげても良かったのになという気がします。



Shutter Island(2010 アメリカ)
監督 マーティン・スコセッシ
出演 レオナルド・ディカプリオ マーク・ラファロ ベン・キングズレー
   マックス・フォン・シドー ミシェル・ウィリアムズ エミリー・モーティマー
   パトリシア・クラークソン ジャッキー・アール・ヘイリー テッド・レヴィン
   ジョン・キャロル・リンチ イライアス・コティーズ



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ぷーちゃん

今回のコメントもきちんと読みました。
色々な評判があるけど参考にさせて頂きます。
最近映画を観る時間がないんだよね。
それが一番の問題だったりして。
by ぷーちゃん (2010-04-25 20:36) 

dorothy

ぷーちゃんさん、こんにちは。
賛否両論なんですよねーコレ。
私の感想はなんだか映画の内容には触れないで、
宣伝に対する文句ばっかりになっちゃいました。
これは結末がわかって改めて見直したいような感じでもあるんで、
DVDになってからでもいいと思いますよ。
by dorothy (2010-04-26 02:03) 

ぷーちゃん

ありがとう。最近は、DVDのリリースも
直ぐだし、そのようにするかな。
by ぷーちゃん (2010-04-26 22:40) 

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