第9地区 [映画感想−た]
ああ映画の面白さってこういうことだよなあと単純に思いました。
ハリウッドはネタ切れだなんだと言ってるのに、
違う国からはまだこんなスゴイものが登場するんだなあと。
SF、アクション、バイオレンス、友情に夫婦愛に親子愛、
ドキュメンタリータッチでたたみかけ、コメディ要素も忘れず、
血肉飛び散る大活劇の最後はホロリとさせる・・・凄まじい怪作!
1982年、南アフリカのヨハネスブルク上空に突如巨大な宇宙船が現れます。
中を調べると、そこは宇宙船の故障で難民となったエイリアンたちで溢れていました。
政府は彼らを地上に降ろし、「第9地区」に隔離し住まわせることにします。
言葉も通じず野蛮な行いを繰り返すエイリアンたちとの共存は難しく、
それから20数年、依然トラブルが絶えないことから、
政府は民間企業マルチユナイテッド社(MNU)にエイリアンの管理を委託します。
MNUはエイリアンたちを郊外の第10地区への強制移動を決定。
ヴィカス(シャルト・コプリー)はその現場責任者に任命されます。
大きな仕事を任されたヴィカスは意気揚々、エイリアンたちに移住の同意を得るため、
第9地区を訪れますが、そこで彼はある物体を見つけ・・・。
ど、どうしましたっ!?
舞台が南アフリカで、人種ならぬエイリアン隔離政策というので、
真面目に問題提起でもされるのかと思ったらそんな堅苦しい内容ではなくて、
というかもう、そういうことは十分観ている側に伝わりすぎるぐらい伝わってしまう、
スラムの描き方、人間側の汚さ狡さ浅はかさとかが本当に巧い。
関係者へのインタビュー、ビデオや防犯カメラらしき映像など、
フェイクドキュメンタリーの作りがすごくリアルで、
でもそこに映っているのは、ありえないエイリアンの姿だったりするのが不思議。
今や、どんなびっくり映像が登場しても大して驚かなくなってしまってはいますが、
それでもエイリアンたちがあまりに自然に風景に溶け込んでいるのは、
自然すぎて可笑しくて、でもそれが違和感というのではなく、
実際20年以上もの間ずっとそんな景色を観ているかのような気分にさせられるのが、
本当に素直に凄くてただただ面白いです。
結構グロい表現も交えながら、あまりに異常な"普通"さがいちいち可笑しい。
エイリアンがキャットフード好きで、彼らを利用するギャング団と猫缶で取引するとか、
(このキャットフードを"猫缶"と訳したのは字数制限が理由だと思うけどウマイ!)
立ち退きさせるために書類にサインさせる(でもまったく通じない)とか、
本当に随所で笑わせてもらいました。
△※★#◆%@!?
エイリアン移住プロジェクトのリーダーに抜擢されたヴィカスという男。
気が小さそうだけどいつもニコニコしてて悪い人じゃなさそう・・・と思ったら、
彼がエイリアンたちを前にするとガラッと態度を豹変させる、
その姿がものすごく不愉快で、だんだんムカムカしてきました。
なんといってもゾッとしたのは、ある小屋で大量のエイリアンの卵を発見し、
それを「中絶だ」と言って焼き払う場面。
彼はエイリアンなんて本当に虫けら同然にしか思っていないことがわかります。
このヴィカスをイヤなヤツにしたことが、今作を面白くした理由のひとつだと思いました。
イヤなヤツだから、彼がヒドイ目にあっても単純に肩入れしないし、
でもやっぱり何とかしてあげたいという気持ちにもなり、二転三転する展開に、
こちらの気持ちも落ち着かないままに話が進んでいきます。
エイリアンと人間、どっちが良い者だとか悪者だとか、単純な図式にならない。
知能の高いエイリアンが登場しても、このエイリアンもヴィカスの敵になるのか味方なのか、
ハッキリしないまま話が進むので、ずっと緊張感が続きます。
ヒーローとか軍人とか大統領とかが登場して宇宙人退治に乗り出し地球を救う。
・・・そんな話、こちらは今さら観たいとは思わない。
勧善懲悪もそれはそれでスッキリして面白いものだけど、
世の中そんな簡単な図式では語れないというリアルさを感じました。
宇宙人が出てきて現実的というのもヘンな話ですが、
その不思議なリアリティが気持ちをキリキリさせるのです。
観ているこちらは誰に感情移入すればいいのか悩み、試されるようでもあります。
何しろヴィカスには妻の父親や、彼を捕まえようとする傭兵、
さらにはナイジェリア人ギャング団と、戦う相手が多すぎで、
これまたどれもこれもニクタラシイ敵ばかりで、結局ヴィカスを応援してしまったりもするんですが、
このヴィカスさん、散々応援させといてコロッと裏切ったりもする。
いや本当に最後まで気を抜かせません。
ずっとそこに。
気持ちいいぐらい(?)に豪快に人やエイリアンが銃で吹き飛ばされ粉々になるのは、
冷静に考えたらものすごく恐ろしいことなんですが、
こういうのの気持ちよさというのは素直に認めざるを得ないです。
宇宙人とか戦闘とか殺戮とか、最後にはパワードスーツまで登場するし、
いわゆる男子の皆さんの好きな成分が満載で、あと足りないのはセクシャルな部分ぐらいかな?
私の印象は『クローバーフィールド』+『アバター』な感じ。
特に身体がエイリアン化するとか、宇宙人との共生が出来るか否かとか、
執拗に追いかけてくる傭兵の感じなんか、ものすごく『アバター』と共通する点が多い気がして、
だけど最先端な3D映画のアチラより、こちらが断然面白いのはなぜだろう?
まあ、目指しているものが全然違うだろうから比べるのもナンなんですが。
痛いシーンが多いのは個人的にはすごく苦手なんですが、
・・・いやホント、途中でちょっと気分が悪くなったぐらいなんですが、
単に驚かそうとか、残酷なモノを見せたいという見せ物的なものじゃない、
何か一本筋の通った残酷描写のような気がしました。
それも、良く出来たリアリティだからなのでしょうか。
「エビ」と呼ばれるエイリアンの造形もすごくいいと思うし、
スラムの描写も含め、イヤになるぐらい気持ち悪いんだけど、
子どもエイリアン(小エビちゃん!)がすごく可愛かったり。
いやあなんだか本当に盛りだくさんで、あれこれ言いたいことがいっぱいです。
こういうのこそ「観てソンはない」だなあと思いました。
District 9(2009 アメリカ/ニュージーランド)
監督 ニール・ブロムカンプ
出演 シャルト・コプリー デヴィッド・ジェームズ ジェイソン・コープ ヴァネッサ・ハイウッド
ハリウッドはネタ切れだなんだと言ってるのに、
違う国からはまだこんなスゴイものが登場するんだなあと。
SF、アクション、バイオレンス、友情に夫婦愛に親子愛、
ドキュメンタリータッチでたたみかけ、コメディ要素も忘れず、
血肉飛び散る大活劇の最後はホロリとさせる・・・凄まじい怪作!
1982年、南アフリカのヨハネスブルク上空に突如巨大な宇宙船が現れます。
中を調べると、そこは宇宙船の故障で難民となったエイリアンたちで溢れていました。
政府は彼らを地上に降ろし、「第9地区」に隔離し住まわせることにします。
言葉も通じず野蛮な行いを繰り返すエイリアンたちとの共存は難しく、
それから20数年、依然トラブルが絶えないことから、
政府は民間企業マルチユナイテッド社(MNU)にエイリアンの管理を委託します。
MNUはエイリアンたちを郊外の第10地区への強制移動を決定。
ヴィカス(シャルト・コプリー)はその現場責任者に任命されます。
大きな仕事を任されたヴィカスは意気揚々、エイリアンたちに移住の同意を得るため、
第9地区を訪れますが、そこで彼はある物体を見つけ・・・。
ど、どうしましたっ!?
舞台が南アフリカで、人種ならぬエイリアン隔離政策というので、
真面目に問題提起でもされるのかと思ったらそんな堅苦しい内容ではなくて、
というかもう、そういうことは十分観ている側に伝わりすぎるぐらい伝わってしまう、
スラムの描き方、人間側の汚さ狡さ浅はかさとかが本当に巧い。
関係者へのインタビュー、ビデオや防犯カメラらしき映像など、
フェイクドキュメンタリーの作りがすごくリアルで、
でもそこに映っているのは、ありえないエイリアンの姿だったりするのが不思議。
今や、どんなびっくり映像が登場しても大して驚かなくなってしまってはいますが、
それでもエイリアンたちがあまりに自然に風景に溶け込んでいるのは、
自然すぎて可笑しくて、でもそれが違和感というのではなく、
実際20年以上もの間ずっとそんな景色を観ているかのような気分にさせられるのが、
本当に素直に凄くてただただ面白いです。
結構グロい表現も交えながら、あまりに異常な"普通"さがいちいち可笑しい。
エイリアンがキャットフード好きで、彼らを利用するギャング団と猫缶で取引するとか、
(このキャットフードを"猫缶"と訳したのは字数制限が理由だと思うけどウマイ!)
立ち退きさせるために書類にサインさせる(でもまったく通じない)とか、
本当に随所で笑わせてもらいました。
△※★#◆%@!?
エイリアン移住プロジェクトのリーダーに抜擢されたヴィカスという男。
気が小さそうだけどいつもニコニコしてて悪い人じゃなさそう・・・と思ったら、
彼がエイリアンたちを前にするとガラッと態度を豹変させる、
その姿がものすごく不愉快で、だんだんムカムカしてきました。
なんといってもゾッとしたのは、ある小屋で大量のエイリアンの卵を発見し、
それを「中絶だ」と言って焼き払う場面。
彼はエイリアンなんて本当に虫けら同然にしか思っていないことがわかります。
このヴィカスをイヤなヤツにしたことが、今作を面白くした理由のひとつだと思いました。
イヤなヤツだから、彼がヒドイ目にあっても単純に肩入れしないし、
でもやっぱり何とかしてあげたいという気持ちにもなり、二転三転する展開に、
こちらの気持ちも落ち着かないままに話が進んでいきます。
エイリアンと人間、どっちが良い者だとか悪者だとか、単純な図式にならない。
知能の高いエイリアンが登場しても、このエイリアンもヴィカスの敵になるのか味方なのか、
ハッキリしないまま話が進むので、ずっと緊張感が続きます。
ヒーローとか軍人とか大統領とかが登場して宇宙人退治に乗り出し地球を救う。
・・・そんな話、こちらは今さら観たいとは思わない。
勧善懲悪もそれはそれでスッキリして面白いものだけど、
世の中そんな簡単な図式では語れないというリアルさを感じました。
宇宙人が出てきて現実的というのもヘンな話ですが、
その不思議なリアリティが気持ちをキリキリさせるのです。
観ているこちらは誰に感情移入すればいいのか悩み、試されるようでもあります。
何しろヴィカスには妻の父親や、彼を捕まえようとする傭兵、
さらにはナイジェリア人ギャング団と、戦う相手が多すぎで、
これまたどれもこれもニクタラシイ敵ばかりで、結局ヴィカスを応援してしまったりもするんですが、
このヴィカスさん、散々応援させといてコロッと裏切ったりもする。
いや本当に最後まで気を抜かせません。
ずっとそこに。
気持ちいいぐらい(?)に豪快に人やエイリアンが銃で吹き飛ばされ粉々になるのは、
冷静に考えたらものすごく恐ろしいことなんですが、
こういうのの気持ちよさというのは素直に認めざるを得ないです。
宇宙人とか戦闘とか殺戮とか、最後にはパワードスーツまで登場するし、
いわゆる男子の皆さんの好きな成分が満載で、あと足りないのはセクシャルな部分ぐらいかな?
私の印象は『クローバーフィールド』+『アバター』な感じ。
特に身体がエイリアン化するとか、宇宙人との共生が出来るか否かとか、
執拗に追いかけてくる傭兵の感じなんか、ものすごく『アバター』と共通する点が多い気がして、
だけど最先端な3D映画のアチラより、こちらが断然面白いのはなぜだろう?
まあ、目指しているものが全然違うだろうから比べるのもナンなんですが。
痛いシーンが多いのは個人的にはすごく苦手なんですが、
・・・いやホント、途中でちょっと気分が悪くなったぐらいなんですが、
単に驚かそうとか、残酷なモノを見せたいという見せ物的なものじゃない、
何か一本筋の通った残酷描写のような気がしました。
それも、良く出来たリアリティだからなのでしょうか。
「エビ」と呼ばれるエイリアンの造形もすごくいいと思うし、
スラムの描写も含め、イヤになるぐらい気持ち悪いんだけど、
子どもエイリアン(小エビちゃん!)がすごく可愛かったり。
いやあなんだか本当に盛りだくさんで、あれこれ言いたいことがいっぱいです。
こういうのこそ「観てソンはない」だなあと思いました。
District 9(2009 アメリカ/ニュージーランド)
監督 ニール・ブロムカンプ
出演 シャルト・コプリー デヴィッド・ジェームズ ジェイソン・コープ ヴァネッサ・ハイウッド
やっぱ、drothyさんのコメントええわぁ。
またまた直球でした。
by ぷーちゃん (2010-04-16 21:02)
ぷーちゃんさん、こんにちは。
ツイッタのほうで毎日お会いしてるので、とっくにお返事してる気になってました!
いつもお褒めいただきありがとうございます。カタジケナイ!
by dorothy (2010-04-18 02:06)
こんにちは。
先日、やっと観て参りました。あまりの面白さに「未だ興奮冷めやらず!」....といったところです。久しぶりに鑑賞中ハラハラドキドキしまくった作品でした。「どうしてあの液体を浴びたら変身するの?」といった基本的疑問は最後まで解けないままでしたが(苦笑)、概ね大満足の内容でした。クリストファーの真摯な眼差しに、ノックアウトです!(^皿^)。やっぱり人(エビ!?)は見た目じゃない、大切なのは心ですね!。
by 堀越ヨッシー (2010-04-20 19:09)
堀越ヨッシーさん、こんにちは。
面白かったですよねー。
確かにあの液体のナゾとか細かいことを言い出せばキリがないです。
後半の現場の映像は誰目線のカメラなんだ?とかw
でも、この手のものにしては結構辻褄合わせがうまいと思うし、
圧倒的なパワーでぐいぐい押してって有無を言わせないという感じでもありました。
クリストファー、クールでしたよね。小エビちゃんの愛らしさも忘れられない!
by dorothy (2010-04-20 20:40)