インビクタス 負けざる者たち [映画感想−あ]
クリント・イーストウッドの新作は、アパルトヘイト後の南アフリカでの、
ネルソン・マンデラ大統領とラグビーワールドカップにまつわる実話。
イーストウッド作品は今や観る前から傑作だろうという安心感すらありますが、
さて、今作はどうでしょう。
1994年南アフリカ。
27年におよぶ牢獄生活より釈放されたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は、
その後行われた初の総選挙により大統領に選ばれます。
しかし、アパルトヘイト撤廃後も人種間での対立は依然残っており、
マンデラは国家がひとつになるためには互いに赦し合うことが大事であると主張しますが、
その考えはなかなか理解されません。
そんな中、ラグビーワールドカップが翌年には自国で開催されるにもかかわらず、
代表チーム「スプリングボクス」が弱小チームで、
白人の支持はあっても黒人には不人気であることを知り、
マンデラはワールドカップでの優勝こそが国家統一の良い機会になると確信、
チームのキャプテンであるフランソワ・ピナール(マット・デイモン)を官邸に呼び、
優勝のためには何が必要かを彼に尋ねます。
苦悩するマンデラ
スポーツは観るものであり、その能力がゼロに等しい私などは、
職業としてスポーツを行う人とはいったいどういう人種なのか想像もつきません。
彼らが日々何を考え、どのように行動し、自分の技を磨き身体を鍛え、
チーム競技であれば協調性やチーム内での自分の立場も明らかにしなければならないのだろうとか、
個人プレーならすべての責任を自分一人で負うための精神力を養わなくてはならないのだろうなど、
いろんなことを想像するしかありません。
それでもそんな中で優劣が付き、勝者はたった1人、たった1チーム。
そこにどんな違いがあるのでしょう?もちろんその時の運というのも関わってくるのだろうし。
ちょうどバンクーバーオリンピックの直後だったこともあり、
そんなことを何度となく考えていた時に、この作品を観ることになりました。
弱小ラグビーチームがワールドカップで優勝する。
そんなことが実現してしまうなんて、まるでドラマのようですが本当の話。
でも、それがどのように達成されたかなんてことを今作では事細かく描いているわけではありません。
ある日突然ピナールはマンデラに呼び出され、チームの状態を尋ねられます。
またマンデラは選手全員の名前を記憶し、練習中のチームを突然訪ね、選手一人一人に言葉をかけます。
そんないろんな出来事ののち、少しずつ選手たちの意識は変わっていきます。
ほんのちょっとしたこと、やる気とかポジティブに勝ちを目指すこと。
それは本当にものすごく単純なことなのかも知れませんが、誰にでも出来ることじゃない。
力づける方も、それを受け止める方も。
ピナールは真意を知る
そんな絵に描いたような理想論を正攻法で描いていく、
今作の真っ直ぐさに素直に胸を打たれました。
それはマンデラという実在の人物がいかに"不屈の人"であり、
けれどその胸の内に秘めたものは熱く強く、しかし柔軟で、
ラグビーを国を収める"道具"にする冷静さと、単純にそれを楽しめる純真さを併せ持っている。
マンデラ自身の人としての魅力があってこその物語であり、
もちろん脚色はあるのだとは思いますが、この既に出来上がっているストーリーを、
直球で描いていくイーストウッド自身の真っ直ぐさも強く感じさせられました。
マンデラが、映画で自分を演じるとしたら誰が良いかと聞かれた際に、
モーガン・フリーマンの名前を挙げたそうで、それ以来個人的に親交もあるらしく、
まったく違和感のないマンデラ像となっていました。
しっかりラグビー選手の身体を作り、言葉も習得してのマット・デイモンも安心のキャスティング。
イーストウッドの次回作にも出演するそうで、すっかり御大に気に入られたようです。
彼ら2人のほかのキャストもいずれも魅力的。
イーストウッド作品は、主役以外の脇にはあまり知られていない役者を使うことが多く、
また、舞台に合わせた現地の役者をキチンとキャスティングするので、
変な先入観などを持たせないのが良いなといつも思うのですが、
今回もマンデラのアシスタントの女性や、SP班の面々はとてもいい役者ばかりでした。
最初は反発し合っていた白人黒人混合SPチームのドラマは本当に面白く、
そうなるんだろうなあという通りの結末がまた清々しくすらありました。
優勝へ!
イーストウッド作品はどちらかというと人間の暗部や暴力などを描く印象が強く、
これまで、見終わって爽快感を得るようなものは少なかったと思います。
ところが今回は、希望とか理想とか人の良心といったものを本当にストレートに描いていて、
そのことに一番驚かされました。
実話であることがもちろんその大きな理由ではあると思いますが、
ここ数年、精力的に新作を作り続けている彼が、
ここに来て新たな方向へ向かっているという事実に、
これまで以上に嬉しく頼もしい気持ちにさせてもらいました。
彼にはこれからもどんどん、あらゆる題材のいろんな作品を作ってもらいたい。
必ず傑作を作り出してくれる監督がいる、この時代に感謝!
Invictus(2009 アメリカ)
監督 クリント・イーストウッド
出演 モーガン・フリーマン マット・デイモン トニー・キゴロギ パトリック・モフォケン
マット・スターン ジュリアン・ルイス・ジョーンズ アッジョア・アンドー
マルグリット・ウィートリー レレティ・クマロ パトリック・リスター ペニー・ダウニー
ネルソン・マンデラ大統領とラグビーワールドカップにまつわる実話。
イーストウッド作品は今や観る前から傑作だろうという安心感すらありますが、
さて、今作はどうでしょう。
1994年南アフリカ。
27年におよぶ牢獄生活より釈放されたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は、
その後行われた初の総選挙により大統領に選ばれます。
しかし、アパルトヘイト撤廃後も人種間での対立は依然残っており、
マンデラは国家がひとつになるためには互いに赦し合うことが大事であると主張しますが、
その考えはなかなか理解されません。
そんな中、ラグビーワールドカップが翌年には自国で開催されるにもかかわらず、
代表チーム「スプリングボクス」が弱小チームで、
白人の支持はあっても黒人には不人気であることを知り、
マンデラはワールドカップでの優勝こそが国家統一の良い機会になると確信、
チームのキャプテンであるフランソワ・ピナール(マット・デイモン)を官邸に呼び、
優勝のためには何が必要かを彼に尋ねます。
苦悩するマンデラ
スポーツは観るものであり、その能力がゼロに等しい私などは、
職業としてスポーツを行う人とはいったいどういう人種なのか想像もつきません。
彼らが日々何を考え、どのように行動し、自分の技を磨き身体を鍛え、
チーム競技であれば協調性やチーム内での自分の立場も明らかにしなければならないのだろうとか、
個人プレーならすべての責任を自分一人で負うための精神力を養わなくてはならないのだろうなど、
いろんなことを想像するしかありません。
それでもそんな中で優劣が付き、勝者はたった1人、たった1チーム。
そこにどんな違いがあるのでしょう?もちろんその時の運というのも関わってくるのだろうし。
ちょうどバンクーバーオリンピックの直後だったこともあり、
そんなことを何度となく考えていた時に、この作品を観ることになりました。
弱小ラグビーチームがワールドカップで優勝する。
そんなことが実現してしまうなんて、まるでドラマのようですが本当の話。
でも、それがどのように達成されたかなんてことを今作では事細かく描いているわけではありません。
ある日突然ピナールはマンデラに呼び出され、チームの状態を尋ねられます。
またマンデラは選手全員の名前を記憶し、練習中のチームを突然訪ね、選手一人一人に言葉をかけます。
そんないろんな出来事ののち、少しずつ選手たちの意識は変わっていきます。
ほんのちょっとしたこと、やる気とかポジティブに勝ちを目指すこと。
それは本当にものすごく単純なことなのかも知れませんが、誰にでも出来ることじゃない。
力づける方も、それを受け止める方も。
ピナールは真意を知る
そんな絵に描いたような理想論を正攻法で描いていく、
今作の真っ直ぐさに素直に胸を打たれました。
それはマンデラという実在の人物がいかに"不屈の人"であり、
けれどその胸の内に秘めたものは熱く強く、しかし柔軟で、
ラグビーを国を収める"道具"にする冷静さと、単純にそれを楽しめる純真さを併せ持っている。
マンデラ自身の人としての魅力があってこその物語であり、
もちろん脚色はあるのだとは思いますが、この既に出来上がっているストーリーを、
直球で描いていくイーストウッド自身の真っ直ぐさも強く感じさせられました。
マンデラが、映画で自分を演じるとしたら誰が良いかと聞かれた際に、
モーガン・フリーマンの名前を挙げたそうで、それ以来個人的に親交もあるらしく、
まったく違和感のないマンデラ像となっていました。
しっかりラグビー選手の身体を作り、言葉も習得してのマット・デイモンも安心のキャスティング。
イーストウッドの次回作にも出演するそうで、すっかり御大に気に入られたようです。
彼ら2人のほかのキャストもいずれも魅力的。
イーストウッド作品は、主役以外の脇にはあまり知られていない役者を使うことが多く、
また、舞台に合わせた現地の役者をキチンとキャスティングするので、
変な先入観などを持たせないのが良いなといつも思うのですが、
今回もマンデラのアシスタントの女性や、SP班の面々はとてもいい役者ばかりでした。
最初は反発し合っていた白人黒人混合SPチームのドラマは本当に面白く、
そうなるんだろうなあという通りの結末がまた清々しくすらありました。
優勝へ!
イーストウッド作品はどちらかというと人間の暗部や暴力などを描く印象が強く、
これまで、見終わって爽快感を得るようなものは少なかったと思います。
ところが今回は、希望とか理想とか人の良心といったものを本当にストレートに描いていて、
そのことに一番驚かされました。
実話であることがもちろんその大きな理由ではあると思いますが、
ここ数年、精力的に新作を作り続けている彼が、
ここに来て新たな方向へ向かっているという事実に、
これまで以上に嬉しく頼もしい気持ちにさせてもらいました。
彼にはこれからもどんどん、あらゆる題材のいろんな作品を作ってもらいたい。
必ず傑作を作り出してくれる監督がいる、この時代に感謝!
Invictus(2009 アメリカ)
監督 クリント・イーストウッド
出演 モーガン・フリーマン マット・デイモン トニー・キゴロギ パトリック・モフォケン
マット・スターン ジュリアン・ルイス・ジョーンズ アッジョア・アンドー
マルグリット・ウィートリー レレティ・クマロ パトリック・リスター ペニー・ダウニー
インビクタス / 負けざる者たち Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- メディア: Blu-ray
ふむふむ、なるほど
よ〜く分かりました。
drothyさんの解説見てて、これは見なくっちゃと
思いました。次は、何が紹介されるのか、
楽しみにしておりま〜す。
by ぷーちゃん (2010-03-19 08:26)
こんにちは〜☆
この直球ストレート!さは本当に気持ちがよかった!
こんなに輝いてる映画を観たのは久しぶりでうれしかったです♪
イーストウッドすごいな〜。
by ジジョ (2010-03-19 19:28)
ぷーちゃんさん、こんにちは。
次はって・・・私の感想のことですか?
スイマセン、どうも更新サボるクセがついてしまって。
ぷーちゃんさんご承知の通り、ツイッタにポストしてるヒマはあるのに!ですよね。
がんばりまーす!
by dorothy (2010-03-20 01:00)
ジジョさん、こんにちは。
こんなに真っ正面から人って素晴らしい!みたいなのって、
本当に近頃では珍しいと思いました。
しかもそれがイーストウッドだなんて!
ほんとスゴイ人ですネ。
by dorothy (2010-03-20 01:02)