親愛なるザカリーへ [映画感想−さ]
この作品は東京MXテレビの「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」にて鑑賞。
我が家では東京のローカル局であるMXテレビはノイズが入ってキチンと受信せず、
見れないものだとずっとあきらめていたんですが、最近になって、
偶然MXテレビにチャンネルを合わせてみたら、なぜかすごくキレイに映ってる!
電波が強くなったのか、理由はわからないのですが、
これだけキレイに映るんだったら、念願の「未公開映画〜」が観られる!
というわけで、昨年末と今年一回目の放送だったのが、この『親愛なるザカリーへ』でした。
大変素晴らしく、また意義深い作品でしたので、これを今年一本目の記事にします。
多くの人々に愛されていた医師のアンドリュー・バグビー。
しかし彼は何者かによって殺害されます。
幼い頃からの彼の親友であった映画監督のカート・クエンは、
膨大な数のアンドリューの映像、そして彼の友人たちの証言を集め、
一本のビデオレターを作ることにします。
それは、彼が遺した一人息子ザカリーに亡き父親の姿を知ってもらうためのものでした。
しかしそのビデオを製作中、事件は意外な方向に進み始めます。
誰からも愛されたアンドリュー
町山智浩さんのブログなどを読んでいたので、これが単に、
亡くなった親友の息子に宛てたビデオレターというだけじゃない、
ということはわかっていました。
ドキュメンタリーなのでネタバレという言葉を使うのもヘンですが、
この作品がどう展開し、結末がどうなるのか、詳しいことは言えません。
観ている間に悲劇的な展開は薄々感じてしまうのですが、それでも見終わってみると、
こんなにも残酷で、そしてこんなにも愛を感じるドキュメンタリーというのは、
なかなかないんじゃないだろうかと思いました。
多くの友人、親戚、そして両親のインタビューから見えてくる生前のアンドリューの姿。
彼を知る人たちがまさに口を揃えてアンドリューのことを褒め称えますが、
それは彼が不幸な事件により亡くなったから、ということだけでないことは、
楽しかった思い出に笑い、涙する彼らの表情を見ていればよくわかります。
アンドリューの映像もたくさんあるので、その証言がどれもとてもリアルに伝わって来ます。
こんないい人であったアンドリューなぜ殺されてしまったのか。
しかしこの映画はその真実を追究する内容ではありません。
二人は親友
大切な一人息子を失った両親は自殺を考えるほど嘆き悲しみます。
やがて息子を殺した犯人が、以前アンドリューが交際していた、
シャーリー・ターナーという女であることが判明します。
彼女は逮捕されますが、実はアンドリューの子どもを身ごもっており、やがて出産。
ザカリーと名付けられたその赤ん坊、愛する息子がこの世に残してくれた、
自分たちの孫となるザカリーを養子として引き取り、育てていくことが、
アンドリューの両親バグビー夫妻にとっては唯一の救いであったはず。
しかし、考えられない司法制度により、この老夫婦にさらなる試練を与えます。
こんなひどいことがあっていいのか・・・この両親の強さには本当に敬服します。
この作品の面白いところ、という言い方もちょっとヘンなのですが、
作っているうちに当初の目的からどんどん逸れていって、着地点が違ってしまうことです。
この映画がザカリーのためでもアンドリューのためでもなく、
まったく違う人たちのためのものになってしまう。
しかしそれは結果として正しい着地点であり、この作品が作られた意義が生まれたとも言える。
ここにドラマではないドキュメンタリーの面白さがあるし、柔軟さを感じられます。
この映画が作られなくても事件は明るみに出たかも知れないし、
起こるべき事は起こってしまったでしょう。
けれどもこの映画によってこの事件に関係した人たちの気持ちはひとつになり、
遺された人たちにたくさんの力を与えたと思います。
両親の悲しみは深い
今現在、日本でこの作品を容易に観ることは出来ないのが非常に残念です。
これはぜひDVD化して、多くの人に観てもらいたいです。
この記事を書くことで、その役にちょっとでも立てるといいなという淡い希望を抱きつつ。
Dear Zachary: A Letter to a son about his father(2008 アメリカ)
監督 カート・クエン
※追記 この作品は2011年1月に『ザカリーに捧ぐ』というタイトルでDVD化されました。
我が家では東京のローカル局であるMXテレビはノイズが入ってキチンと受信せず、
見れないものだとずっとあきらめていたんですが、最近になって、
偶然MXテレビにチャンネルを合わせてみたら、なぜかすごくキレイに映ってる!
電波が強くなったのか、理由はわからないのですが、
これだけキレイに映るんだったら、念願の「未公開映画〜」が観られる!
というわけで、昨年末と今年一回目の放送だったのが、この『親愛なるザカリーへ』でした。
大変素晴らしく、また意義深い作品でしたので、これを今年一本目の記事にします。
多くの人々に愛されていた医師のアンドリュー・バグビー。
しかし彼は何者かによって殺害されます。
幼い頃からの彼の親友であった映画監督のカート・クエンは、
膨大な数のアンドリューの映像、そして彼の友人たちの証言を集め、
一本のビデオレターを作ることにします。
それは、彼が遺した一人息子ザカリーに亡き父親の姿を知ってもらうためのものでした。
しかしそのビデオを製作中、事件は意外な方向に進み始めます。
誰からも愛されたアンドリュー
町山智浩さんのブログなどを読んでいたので、これが単に、
亡くなった親友の息子に宛てたビデオレターというだけじゃない、
ということはわかっていました。
ドキュメンタリーなのでネタバレという言葉を使うのもヘンですが、
この作品がどう展開し、結末がどうなるのか、詳しいことは言えません。
観ている間に悲劇的な展開は薄々感じてしまうのですが、それでも見終わってみると、
こんなにも残酷で、そしてこんなにも愛を感じるドキュメンタリーというのは、
なかなかないんじゃないだろうかと思いました。
多くの友人、親戚、そして両親のインタビューから見えてくる生前のアンドリューの姿。
彼を知る人たちがまさに口を揃えてアンドリューのことを褒め称えますが、
それは彼が不幸な事件により亡くなったから、ということだけでないことは、
楽しかった思い出に笑い、涙する彼らの表情を見ていればよくわかります。
アンドリューの映像もたくさんあるので、その証言がどれもとてもリアルに伝わって来ます。
こんないい人であったアンドリューなぜ殺されてしまったのか。
しかしこの映画はその真実を追究する内容ではありません。
二人は親友
大切な一人息子を失った両親は自殺を考えるほど嘆き悲しみます。
やがて息子を殺した犯人が、以前アンドリューが交際していた、
シャーリー・ターナーという女であることが判明します。
彼女は逮捕されますが、実はアンドリューの子どもを身ごもっており、やがて出産。
ザカリーと名付けられたその赤ん坊、愛する息子がこの世に残してくれた、
自分たちの孫となるザカリーを養子として引き取り、育てていくことが、
アンドリューの両親バグビー夫妻にとっては唯一の救いであったはず。
しかし、考えられない司法制度により、この老夫婦にさらなる試練を与えます。
こんなひどいことがあっていいのか・・・この両親の強さには本当に敬服します。
この作品の面白いところ、という言い方もちょっとヘンなのですが、
作っているうちに当初の目的からどんどん逸れていって、着地点が違ってしまうことです。
この映画がザカリーのためでもアンドリューのためでもなく、
まったく違う人たちのためのものになってしまう。
しかしそれは結果として正しい着地点であり、この作品が作られた意義が生まれたとも言える。
ここにドラマではないドキュメンタリーの面白さがあるし、柔軟さを感じられます。
この映画が作られなくても事件は明るみに出たかも知れないし、
起こるべき事は起こってしまったでしょう。
けれどもこの映画によってこの事件に関係した人たちの気持ちはひとつになり、
遺された人たちにたくさんの力を与えたと思います。
両親の悲しみは深い
今現在、日本でこの作品を容易に観ることは出来ないのが非常に残念です。
これはぜひDVD化して、多くの人に観てもらいたいです。
この記事を書くことで、その役にちょっとでも立てるといいなという淡い希望を抱きつつ。
Dear Zachary: A Letter to a son about his father(2008 アメリカ)
監督 カート・クエン
※追記 この作品は2011年1月に『ザカリーに捧ぐ』というタイトルでDVD化されました。
ザカリーに捧ぐ : 松嶋×町山 未公開映画を観るTV [DVD]
- 出版社/メーカー: アニプレックス
- メディア: DVD
タグ:映画
運良く貴重な作品が見られて
良かったですね〜。
by ぷーちゃん (2010-01-11 22:00)
ぷーちゃんさん、コメント& nice!ありがとうございます。
たくさんの人に観て欲しい作品です。
by dorothy (2010-01-13 00:49)