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カールじいさんの空飛ぶ家 [映画感想−か]

今後、この作品を何度観ることがあるかわからないけれど、
そのたびに冒頭の「カールとエリーの物語」には必ず胸を締め付けられ、
涙を流さずにはいられないと思います。
ものすごく乱暴な言い方をすると、短編としてここで終わってくれてもいいと思ったくらい。


カール・フレドリクセン(エドワード・アズナー)は少々頑固な老人。
亡き妻エリーとの思い出にあふれた一軒家で一人暮らしていましたが、
家の周囲は開発のため取り壊され今やカールの家が一軒だけ取り残されてしまっていました。
それでも頑なに立ち退きに応じないカール。
そんな中、ボーイスカウトの少年ラッセル(ジョーダン・ナガイ)がカールを訪ねてきますが、
カールは適当なことを言って少年を追い返してしまいます。
そしてある日、カールはトラブルを起こしてしまい、施設に入らなければならなくなってしまいます。
愛する家での最後の夜、カールはエリーの遺した冒険ブックを眺めているうちに、ある決意をします。


頑固じいさん
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事前に予備知識を入れないで観るタチなので、
カールが家に風船を付けて飛び立ってからどうなるのかは一切知りませんでした。
ラッセルがなぜかついてきてしまうのはわかっていましたが、
なんとなく、2人でその家であちこち旅をして・・・という、
『80日間世界一周』みたいな展開をぼんやりと予想していたので、
(ラッセルがアジア系なのもそういうことなのかな、とか)
後半の大活劇ぶりはまったく予想外でした。

目的地であるパラダイスの滝に意外とあっさり到着(実際にはその目前、ですが)しますが、
そこでの大活劇は結構ハラハラドキドキさせるもので、
謎の怪鳥、言葉をしゃべる(ようにされた)犬たち、
そして伝説の人物、チャールズ・F・マンツとの出会いなど、
なかなかに盛りだくさんで見せ場もいっぱい。
でも、この辺は冒頭のリアルなドラマに比べるとちょっとお子さま向けな、
普通の冒険活劇というのかアクション映画になってしまった感じ。
別にそれで悪いことなんて全然ないのですが、ピクサー初の人間が主人公ということで、
もう少しリアルな話なんだと勝手に思いこんでいたので、
このファンタジー展開はかなり予想を裏切られた感じでした。


なんでそんなところに!?
up_2.jpg


そもそも、大量の風船で家が空を飛ぶという時点でファンタジーなわけだし、
それを考えたら何が出てきたっておかしくはないのですが、
前半とのギャップというか、結構いきなりで無理矢理な感じを受けてしまったのです。
犬が"しゃべる"ということにはちゃんとした設定がなされていてなるほどなと思ったのですが、
それでも犬が料理したり飛行機を操縦したりというのはあまりにファンタジー設定過ぎるし、
それなら普通のアニメのようにしゃべる犬でいいのでは?と思ってしまったり。
そんな細かいことはどうでもいいのかも知れないし、
実際、言うほど気になって観ていたわけでもないのですが、
いったいマンツは何歳なんだとか、どうやって生きていたのか、なんてことも考え出すと、
これはもしかしてカールの夢オチなんじゃないかと思いながら観ていました。
あるいは、カールは実はとっくに死んでしまっていたのでは・・・とか。
だって、杖をついて歩いていたようなおじいさんだったのに、あの元気っぷりは異常でしょう!

そんなこんな、いろいろ気になる点は多々ありましたが、
まあそこは深く気にせず楽しめばいいのかな、とは思いました。
何より、改めて言うまでもないですが美しい映像!
今回、自分にとって初めてのデジタル3D体験だったのですが、
本当に素晴らしく、まさに見とれるほどの美しい映像でした。
3Dと言ってもやたらと何かが飛び出してきたりといったことはなく、
おそらく意図してそういう3D3Dした映像にしていないんだと思うのですが、
それでも、空に浮かぶ風船のリアルさ、光の差し方やきらめき方とか、
家や崖の上から見下ろす景色の奥行き感などがものすごくリアルに感じられました。
何度か登場する宙づりシーンは、高所が苦手な人にはちょっと耐えられないぐらいだったのでは。
それと、字幕が浮いて出ているのも不思議な感じで、
観るまでは3D字幕なんて読みづらいんじゃないかと思ってましたが、
かえってクリアで読みやすかったぐらいです。
ただ3Dメガネ自体は大きくて、途中何度もずり落ちて来てしまい、
しょっちゅう持ち上げなくてはならないのがちょっと大変でしたが。


テニスボール大好き!
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少年ラッセルがなぜアジア系なのかは特に語られることもなく謎なんですが、
声優を務めたジョーダン・ナガイ君はその名前でわかるとおり日本人とのハーフだそうで、
彼を最初に決めたのでアジア系の造形にしたのか、
まずアジア系という設定があってジョーダン君をキャスティングしたのか。
日本人としてはどうも気になるところです。
敵役となるチャールズ・F・マンツの声は名優クリストファー・プラマー!
言われて納得、なんとなく顔、似てる気がする!

敵役、と書いてしまいましたが、彼を悪者にしてしまうのはちょっと可哀相な気もしました。
大活劇にするために敵役は必要だったのかも知れないし、
いわゆるマッドサイエンティティストにすることでわかりやすい図式になったのかも知れませんが、
でもあの彼の最後は・・・納得できない上にちょっと怖さも感じました。
たくさんいた犬だって相当・・・なんて考えるとかなり後味悪いというか、
そういうところはなんだか残酷で、お子さまにもどうなんだろう?と思ったり。
もうちょっと全体的にすっきりする理屈というか、
強引でも無理矢理でもファンタジーでもいいから、スキッとさせて欲しかった気がします。
キレイな映像、カールとラッセルの愛らしいキャラクター、
そしてエリーとの夫婦愛という、すごく心がほんわかするようパーツを、
無理矢理怪しい雲の中に投げ入れてかき回したようなモヤモヤしたものが残ってしまった。
冒頭シーンが素晴らしすぎるだけに、すごく残念に思いました。
ワガママかしら?


Up(2009 アメリカ)
監督 ピート・ドクター
声の出演 エドワード・アズナー クリストファー・プラマー ジョーダン・ナガイ
     ボブ・ピーターソン デルロイ・リンドー ジョン・ラッツェンバーガー



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コメント 4

ぷーちゃん

これ野球の野村監督夫妻が
プロモーションしていましたね。
良さそうな映画ですね。
by ぷーちゃん (2009-12-27 13:22) 

堀越ヨッシー

こんにちは。
冒頭部分と後半のドタバタぶりとのギャップや、あっさり南半球に着いてしまう強引さ、チャールズ・マンツの描き方など、脚本に粗さが目立つのがなんとも残念です。キャラクターデザインや美術、音楽が素晴らしかっただけに、その完成度の低さが余計に悔やまれます。
 
ジブリと違って色んな監督を育てようという志は大いに評価したいところですが、オイラはやっぱりジョン・ラセターが一番だと思います。そういった意味では「トイ・ストーリ−3」の監督がラセターじゃないって所に、もの凄い不安を感じている今日この頃です...。
by 堀越ヨッシー (2009-12-27 16:47) 

dorothy

ぷーちゃんさん、こんにちは。
野村監督はキライではないですが、あのプロモーションはちょっと悲しかったです。
なんとなく。
by dorothy (2009-12-28 00:10) 

dorothy

堀越ヨッシーさん、こんにちは。
100%同意見w 私もラセター派かな。そしてもちろんブラッド・バード!
・・・ブラッド・バードってピクサーの人ってことでいいんでしたっけ?まあいいか。
ところでヨッシーさんのご覧になった劇場では「トイ・ストーリー3」の予告編が流れたんですね。
観たかったなー。確かに不安もありますが、とりあえず楽しみです!

by dorothy (2009-12-28 00:27) 

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