ルックアウト/見張り [映画感想−ら]
『(500)日のサマー』公開が待ち遠しいので、
それまでジョセフ・ゴードン=レヴィット祭りを不定期で開催します!
とは言っても彼の出演作は日本では劇場未公開やDVDすら出てないものが多くて、
あっさり終わりそうな気がしてるんですが・・・まずはこれから。
壮絶な交通事故を起こし、恋人や友人を失ってしまったクリス(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)。
生き残った彼も記憶障害の後遺症に悩まされながら、
昼は自立支援センターに通い、夜は銀行の掃除係として働いていました。
ある日、クリスは行きつけのバーでゲイリー(マシュー・グード)という男に声をかけられ、
彼を介し、ラヴリー(アイラ・フィッシャー)とも親しくなります。
新しい出会いにようやく生きる喜びを見出し始めたクリスでしたが・・・。
自分を取り戻したいクリス
見終わってから公式サイトなどを見たら、
"クライムアクション"なんて文字が躍っていて驚きました。
確かに銃撃戦があったりもするんですが、どちらかというとそういう要素は少なめで、
あくまで主人公クリスの心の動き、彼の行動などに重点を置いた人間ドラマだと思いました。
事故の後遺症と罪の意識で自分を見失ってしまっているクリス。
物事を順序だてて考えられない、理由もなく涙が流れる、すぐに睡魔が襲う。
あらゆることを憶えていられないのですべてメモに書き留めて暮らす彼の毎日。
いったいこのあと彼はどうなってしまうんだろうと心配になってしまうし、
またそんなクリスの様子はとても興味深くもあって、
ずっと彼の行動を追っていたいとさえ思ってしまいます。
というのも、やがてクリスはある犯罪に加担してしまうことになり、
話は宣伝どおりの"クライムアクション"の方向へ進んでいくわけです。
そうすると、それまでクリスの日常を描いていた"人間ドラマ"が、
途端に単なる犯罪ドラマになっていきそうになり、
それってちょっとありきたりな感じだし、もしかしてこれつまんないのかも、と思っていたら、
いえいえ、そんなにカンタンにありきたりなものにはなりませんでした。
ゲイリーの企みは
最初に描かれるクリスの症状、彼の生活ぶりがすべて伏線となっていて、
彼は直面する出来事に彼なりの方法でひとつひとつ対処していきます。
それは非常に危なっかしいし、観ていてハラハラしてしまいます。
こういう、悪気のない主人公が犯罪に巻き込まれていくのは本当に観ていてつらいし落ち着かない。
友だちもなく、家族にもほとんど見放されたクリスを支える唯一の存在が、
ルームメイトのルイス(ジェフ・ダニエルズ)です。
盲目で、クリスよりはるかに年上で少しシニカルなルイス、
彼はクリスのために食事は作るし、クリスにいろんなアドバイスを与える頼もしい存在。
授業で「日課を順序よくリストにする」という課題が出来なかったクリスに、
「リストじゃなくストーリーを考えろ、結末がわかっていたらそこからさかのぼればいい」
とアドバイスし、それが後にクリスを大いに助けることになるのです。
この"ストーリーを考える" "結末からさかのぼる"という考え方、
私自身にもすごく良いアドバイスだと思ってしまいました。
クリスのような障害はなくても、日々あらゆることがとっちらかってしまっている自分にとって、
物事を冷静に考える良いアイデア。なんでもメモするクセもつけたいと思いました。
唯一の友ルイス
新しい友人や恋人が出来たと思い喜んでいたクリス。
しかし彼らはある目的のためにクリスに近づいてきただけで、
そのことが新たな悲劇を生み、クリスをさらに深く傷つけます。
けれどそれは結果的に彼を交通事故の心理的な後遺症から立ち直らせ、自立させ、
新たな一歩を踏み出すきっかけとなるのです。
罪のない犠牲者を出してしまう展開は少し残念ではありますが、
そのことで彼は新たな十字架を背負うことになるのだろうし、それでも彼は生きてゆく。
1人の青年の成長ドラマとして、深く心に染みました。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットは一見普通の青年のようで、
実際には心に深い闇を抱えている主人公クリスをうまく演じています。
傑作『BRICK』の主人公に通じる暗さ、でもあれよりはいくらか笑顔も見せるし、
その分内面の複雑さが感じられ、何にしてもこういう葛藤する青年は本当にピッタリ。
ジェフ・ダニエルズの盲目演技はスゴイ。この人は本当にカメレオン俳優ですね。
カメレオンと言えば、クリスを悪の道に引きずり込むゲイリー。
見終わって名前を見るまでまったく気が付かなかったのですが、
『マッチポイント』のあのすごくカンジのいいおぼっちゃま、
というか『ウォッチメン』のオジマンディアスことマシュー・グードだったとは!
目のあたり、すごく見覚えある人なんだけどなあと思いながら最後まで本当に気付きませんでした。
相変わらず年齢不詳なラヴリー役のアイラ・フィッシャー、
1シーンだけ登場するカーラ・グギーノもすごく良かった。
B級サスペンス風なジャケットに騙されないで欲しい、佳作です。
The Lookout(2007 アメリカ)
監督 スコット・フランク
出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット ジェフ・ダニエルズ マシュー・グード
アイラ・フィッシャー カーラ・グギーノ ブルース・マッギル
それまでジョセフ・ゴードン=レヴィット祭りを不定期で開催します!
とは言っても彼の出演作は日本では劇場未公開やDVDすら出てないものが多くて、
あっさり終わりそうな気がしてるんですが・・・まずはこれから。
壮絶な交通事故を起こし、恋人や友人を失ってしまったクリス(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)。
生き残った彼も記憶障害の後遺症に悩まされながら、
昼は自立支援センターに通い、夜は銀行の掃除係として働いていました。
ある日、クリスは行きつけのバーでゲイリー(マシュー・グード)という男に声をかけられ、
彼を介し、ラヴリー(アイラ・フィッシャー)とも親しくなります。
新しい出会いにようやく生きる喜びを見出し始めたクリスでしたが・・・。
自分を取り戻したいクリス
見終わってから公式サイトなどを見たら、
"クライムアクション"なんて文字が躍っていて驚きました。
確かに銃撃戦があったりもするんですが、どちらかというとそういう要素は少なめで、
あくまで主人公クリスの心の動き、彼の行動などに重点を置いた人間ドラマだと思いました。
事故の後遺症と罪の意識で自分を見失ってしまっているクリス。
物事を順序だてて考えられない、理由もなく涙が流れる、すぐに睡魔が襲う。
あらゆることを憶えていられないのですべてメモに書き留めて暮らす彼の毎日。
いったいこのあと彼はどうなってしまうんだろうと心配になってしまうし、
またそんなクリスの様子はとても興味深くもあって、
ずっと彼の行動を追っていたいとさえ思ってしまいます。
というのも、やがてクリスはある犯罪に加担してしまうことになり、
話は宣伝どおりの"クライムアクション"の方向へ進んでいくわけです。
そうすると、それまでクリスの日常を描いていた"人間ドラマ"が、
途端に単なる犯罪ドラマになっていきそうになり、
それってちょっとありきたりな感じだし、もしかしてこれつまんないのかも、と思っていたら、
いえいえ、そんなにカンタンにありきたりなものにはなりませんでした。
ゲイリーの企みは
最初に描かれるクリスの症状、彼の生活ぶりがすべて伏線となっていて、
彼は直面する出来事に彼なりの方法でひとつひとつ対処していきます。
それは非常に危なっかしいし、観ていてハラハラしてしまいます。
こういう、悪気のない主人公が犯罪に巻き込まれていくのは本当に観ていてつらいし落ち着かない。
友だちもなく、家族にもほとんど見放されたクリスを支える唯一の存在が、
ルームメイトのルイス(ジェフ・ダニエルズ)です。
盲目で、クリスよりはるかに年上で少しシニカルなルイス、
彼はクリスのために食事は作るし、クリスにいろんなアドバイスを与える頼もしい存在。
授業で「日課を順序よくリストにする」という課題が出来なかったクリスに、
「リストじゃなくストーリーを考えろ、結末がわかっていたらそこからさかのぼればいい」
とアドバイスし、それが後にクリスを大いに助けることになるのです。
この"ストーリーを考える" "結末からさかのぼる"という考え方、
私自身にもすごく良いアドバイスだと思ってしまいました。
クリスのような障害はなくても、日々あらゆることがとっちらかってしまっている自分にとって、
物事を冷静に考える良いアイデア。なんでもメモするクセもつけたいと思いました。
唯一の友ルイス
新しい友人や恋人が出来たと思い喜んでいたクリス。
しかし彼らはある目的のためにクリスに近づいてきただけで、
そのことが新たな悲劇を生み、クリスをさらに深く傷つけます。
けれどそれは結果的に彼を交通事故の心理的な後遺症から立ち直らせ、自立させ、
新たな一歩を踏み出すきっかけとなるのです。
罪のない犠牲者を出してしまう展開は少し残念ではありますが、
そのことで彼は新たな十字架を背負うことになるのだろうし、それでも彼は生きてゆく。
1人の青年の成長ドラマとして、深く心に染みました。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットは一見普通の青年のようで、
実際には心に深い闇を抱えている主人公クリスをうまく演じています。
傑作『BRICK』の主人公に通じる暗さ、でもあれよりはいくらか笑顔も見せるし、
その分内面の複雑さが感じられ、何にしてもこういう葛藤する青年は本当にピッタリ。
ジェフ・ダニエルズの盲目演技はスゴイ。この人は本当にカメレオン俳優ですね。
カメレオンと言えば、クリスを悪の道に引きずり込むゲイリー。
見終わって名前を見るまでまったく気が付かなかったのですが、
『マッチポイント』のあのすごくカンジのいいおぼっちゃま、
というか『ウォッチメン』のオジマンディアスことマシュー・グードだったとは!
目のあたり、すごく見覚えある人なんだけどなあと思いながら最後まで本当に気付きませんでした。
相変わらず年齢不詳なラヴリー役のアイラ・フィッシャー、
1シーンだけ登場するカーラ・グギーノもすごく良かった。
B級サスペンス風なジャケットに騙されないで欲しい、佳作です。
The Lookout(2007 アメリカ)
監督 スコット・フランク
出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット ジェフ・ダニエルズ マシュー・グード
アイラ・フィッシャー カーラ・グギーノ ブルース・マッギル
タグ:映画
dorothyさん、こんにちは。
いっつも文章力があって、興味深く拝見しています。
ヽ(^▽^)ノ
by ぷーちゃん (2009-10-09 10:53)
ぷーちゃんさん、こんにちは。
いつもお褒めいただき、ありがとうございます。
by dorothy (2009-10-10 14:24)
dorothyさん、こんにちは。
dorothyさんのレビューを読んでいると、ホントその映画を見たくなります!。この作品もすごく気になります。いつか機会があれば...(←って、いつも同じ事言ってて結局未見に終わる)。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットって、なんだか若かりし頃のヒース・レジャーに似てませんか?。「ウォッチメン」のマシュー・グードもオジマンディアスと全然違っててビックリ!。
by 堀越ヨッシー (2009-10-17 10:01)
堀越ヨッシーさん、こんにちは。
ヒース・レジャー似てますよね。エドワード・ノートンもちょっと入ってる。
ヨッシーさんにはオジマンディアスの熱演がオススメです。
まあ、ものすごくお時間がある時にでもぜひ。何が何でもって作品じゃないですからw
by dorothy (2009-10-17 15:06)