あの日の指輪を待つきみへ [映画感想−あ]
リチャード・アッテンボロー久々の監督作。
ラブストーリーですが一筋縄でいかないというか、ちょっとヒネリがある。
でも広げた布のヘンな端っこばかりをひねって、妙なカタチになったまま、
魅力も個性も宙ぶらりんなまま・・・といった印象なのが残念。
1991年、アメリカ・ミシガン州ブラナガン。
エセル・アン(シャーリー・マクレーン)は長年連れ添った夫の死に涙も見せず、
娘のマリー(ネーヴ・キャンベル)はそんな母親の態度に苛立ちをおぼえ、
両親の長年の親友であるジャック(クリストファー・プラマー)に相談します。
しかしジャックも多くを語らず、マリーは母親への不信感を募らせるばかり。
一方アイルランド、ベルファストの丘ではクィンラン(ピート・ポスルスウェイト)が、
ジミー(マーティン・マッキャン)と共に半世紀前に墜落した米軍機の残骸を掘り起こしていました。
そこで2人はあるものを発見し・・・。
涙を見せないエセル
アメリカとアイルランドという2つの場所、過去と現在、
それらが往き来してどう繋がるのか。
徐々に謎が解けてきてすべてが1つになった時には確かに「ああなるほど」と思います。
ただ、そこに至るまでのエピソードがところどころ物足りないというのか、
登場人物たちの心情が見えそうで見えないのです。
最後までちゃんと観たのに、あらすじだけを聞かされたような物足りなさを感じました。
不幸な体験をする若き日のエセル(ミーシャ・バートン)。
でも彼女を単純に不幸なヒロインのように描いてはいません。
それが意図したものなのか演出がダメなのかがよくわからないのですが、
それをわからなくしているのは、男3人・・・ジャック(グレゴリー・スミス)、
チャック(デヴィッド・アルペイ)、そしてテディ(スティーヴン・アメル)と、
彼女の関係がキチンと描かれていないからだと思いました。
これだけ美人で性格も良さそうなんだから、3人がエセルに恋するのはわかります。
でも、気が付けば最初から彼女はテディしか見ていない。
彼女がなぜテディを選んだのか、なぜほかの2人は諦めるしかなかったのか、
その辺で具体的なエピソードの1つでも付けて欲しかった。
確かにテディは一番ハンサムで人も良さそうだけど、それ以上のことがわからないので、
エセルは単に一番男前を選んだのね、という印象しか残らない。
それで余計、エセルがイヤな女に見えてしまうのです。
多くを語らないジャック
テディが建てる家、そしてそれが後々どういう意味を持ち、
エセルがその家に対してどういう思いで生きてきたのか、そこはよくわかりました。
それと同様なジャックとエセル、チャックとエセルのエピソードが欲しかった。
そうでないと、後の男3人の間での約束に説得力がないというか、
3人の友情の深さは感じられますが、そこまでするかなあと思ってしまいました。
それが戦争の時代に生きたということであるのかも知れませんが。
それにエセルとチャックの夫婦生活そのものもまったく描かれず、
その不幸だったらしい結婚はマリーの話からでしか窺い知れない。
これにも物足りなさを感じました。
これは過去と現在だけを描く演出上仕方のないことだとは思いますが、
何か写真だとか、どうにか具体的な描写はできなかったのか。
年を取ったチャックがどんな風だったかだけでも見ることが出来たら。
葬式の写真まで若い時のチャックというのはあまりに不自然に思えました。
一方、遠く離れたアイルランド。若い頃のクィンラン(ジョン・トラヴァース)、
そしてジミーの祖母エレノア(ブレンダ・フリッカー)のジャックたちとの関わりなどは、
ありえない気がしないでもないですが、これはこれでなかなか面白かったです。
今のクィンランがなぜ大昔の墜落機の掘り起こしにこだわり続けるのか、
その謎が解けた時は、ああ彼も重いものを抱えて生きてきたんだということがわかります。
ジミーの若干アタマが弱いんじゃないかと思えるキャラクターは、
彼のその天然な感じがあってこそ、エセルを動かすきっかけになったんだと思えます。
IRAを絡ませる必要はあるのかな?と最初は思いながら観ていたのですが、
最後に"兵士の死"を具体的に見せ、エセルと絡ませるために必要だったのだということで納得しました。
何かを探し続けるクィンラン
不満をいくつも挙げてしまいましたが、それはこの作品が描こうとしたテーマ、
その意味の深さをどうも描ききれてない、その惜しさばかりを感じてしまうからです。
戦争が人々にもたらす不幸、そしてそれを抱えながら生きていく人たち。
どうしようもない現実をただ受け入れていくしかない人生を誰も否定することはできない。
でも、真実を知らされないマリーが母親を責めることも当然なこと。
ジャックの後悔、エセルに対する想いもどんなに重いものだったか。
人生の辛さ、そしてそれを諦めるのではなくどうやって乗り越えるのか、
そんないろんなことをこの作品は本来語ろうとしていたのだと思います。
それでもシャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマー、
2人のたたずまいを見せられると、もうそれだけでイイと思ってしまいます。
ずっと泣けない頑固ばあさんのシャーリー・マクレーン、
派手で遊び好きなのに一途な男のクリストファー・プラマー・・・どちらもピッタリ。
老人が昔の恋を引きずってる話って弱いんですよね。
この2人だけで、個人的にこの作品の点数はグググッと上がってしまっているんですが。
だからこそ、本当に、惜しい!
Closing the Ring(2007 イギリス/カナダ/アメリカ)
監督 リチャード・アッテンボロー
出演 シャーリー・マクレーン クリストファー・プラマー ネーヴ・キャンベル ピート・ポスルスウェイト
マーティン・マッキャン グレゴリー・スミス ミーシャ・バートン スティーヴン・アメル
デヴィッド・アルペイ ブレンダ・フリッカー ジョン・トラヴァース
ラブストーリーですが一筋縄でいかないというか、ちょっとヒネリがある。
でも広げた布のヘンな端っこばかりをひねって、妙なカタチになったまま、
魅力も個性も宙ぶらりんなまま・・・といった印象なのが残念。
1991年、アメリカ・ミシガン州ブラナガン。
エセル・アン(シャーリー・マクレーン)は長年連れ添った夫の死に涙も見せず、
娘のマリー(ネーヴ・キャンベル)はそんな母親の態度に苛立ちをおぼえ、
両親の長年の親友であるジャック(クリストファー・プラマー)に相談します。
しかしジャックも多くを語らず、マリーは母親への不信感を募らせるばかり。
一方アイルランド、ベルファストの丘ではクィンラン(ピート・ポスルスウェイト)が、
ジミー(マーティン・マッキャン)と共に半世紀前に墜落した米軍機の残骸を掘り起こしていました。
そこで2人はあるものを発見し・・・。
涙を見せないエセル
アメリカとアイルランドという2つの場所、過去と現在、
それらが往き来してどう繋がるのか。
徐々に謎が解けてきてすべてが1つになった時には確かに「ああなるほど」と思います。
ただ、そこに至るまでのエピソードがところどころ物足りないというのか、
登場人物たちの心情が見えそうで見えないのです。
最後までちゃんと観たのに、あらすじだけを聞かされたような物足りなさを感じました。
不幸な体験をする若き日のエセル(ミーシャ・バートン)。
でも彼女を単純に不幸なヒロインのように描いてはいません。
それが意図したものなのか演出がダメなのかがよくわからないのですが、
それをわからなくしているのは、男3人・・・ジャック(グレゴリー・スミス)、
チャック(デヴィッド・アルペイ)、そしてテディ(スティーヴン・アメル)と、
彼女の関係がキチンと描かれていないからだと思いました。
これだけ美人で性格も良さそうなんだから、3人がエセルに恋するのはわかります。
でも、気が付けば最初から彼女はテディしか見ていない。
彼女がなぜテディを選んだのか、なぜほかの2人は諦めるしかなかったのか、
その辺で具体的なエピソードの1つでも付けて欲しかった。
確かにテディは一番ハンサムで人も良さそうだけど、それ以上のことがわからないので、
エセルは単に一番男前を選んだのね、という印象しか残らない。
それで余計、エセルがイヤな女に見えてしまうのです。
多くを語らないジャック
テディが建てる家、そしてそれが後々どういう意味を持ち、
エセルがその家に対してどういう思いで生きてきたのか、そこはよくわかりました。
それと同様なジャックとエセル、チャックとエセルのエピソードが欲しかった。
そうでないと、後の男3人の間での約束に説得力がないというか、
3人の友情の深さは感じられますが、そこまでするかなあと思ってしまいました。
それが戦争の時代に生きたということであるのかも知れませんが。
それにエセルとチャックの夫婦生活そのものもまったく描かれず、
その不幸だったらしい結婚はマリーの話からでしか窺い知れない。
これにも物足りなさを感じました。
これは過去と現在だけを描く演出上仕方のないことだとは思いますが、
何か写真だとか、どうにか具体的な描写はできなかったのか。
年を取ったチャックがどんな風だったかだけでも見ることが出来たら。
葬式の写真まで若い時のチャックというのはあまりに不自然に思えました。
一方、遠く離れたアイルランド。若い頃のクィンラン(ジョン・トラヴァース)、
そしてジミーの祖母エレノア(ブレンダ・フリッカー)のジャックたちとの関わりなどは、
ありえない気がしないでもないですが、これはこれでなかなか面白かったです。
今のクィンランがなぜ大昔の墜落機の掘り起こしにこだわり続けるのか、
その謎が解けた時は、ああ彼も重いものを抱えて生きてきたんだということがわかります。
ジミーの若干アタマが弱いんじゃないかと思えるキャラクターは、
彼のその天然な感じがあってこそ、エセルを動かすきっかけになったんだと思えます。
IRAを絡ませる必要はあるのかな?と最初は思いながら観ていたのですが、
最後に"兵士の死"を具体的に見せ、エセルと絡ませるために必要だったのだということで納得しました。
何かを探し続けるクィンラン
不満をいくつも挙げてしまいましたが、それはこの作品が描こうとしたテーマ、
その意味の深さをどうも描ききれてない、その惜しさばかりを感じてしまうからです。
戦争が人々にもたらす不幸、そしてそれを抱えながら生きていく人たち。
どうしようもない現実をただ受け入れていくしかない人生を誰も否定することはできない。
でも、真実を知らされないマリーが母親を責めることも当然なこと。
ジャックの後悔、エセルに対する想いもどんなに重いものだったか。
人生の辛さ、そしてそれを諦めるのではなくどうやって乗り越えるのか、
そんないろんなことをこの作品は本来語ろうとしていたのだと思います。
それでもシャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマー、
2人のたたずまいを見せられると、もうそれだけでイイと思ってしまいます。
ずっと泣けない頑固ばあさんのシャーリー・マクレーン、
派手で遊び好きなのに一途な男のクリストファー・プラマー・・・どちらもピッタリ。
老人が昔の恋を引きずってる話って弱いんですよね。
この2人だけで、個人的にこの作品の点数はグググッと上がってしまっているんですが。
だからこそ、本当に、惜しい!
Closing the Ring(2007 イギリス/カナダ/アメリカ)
監督 リチャード・アッテンボロー
出演 シャーリー・マクレーン クリストファー・プラマー ネーヴ・キャンベル ピート・ポスルスウェイト
マーティン・マッキャン グレゴリー・スミス ミーシャ・バートン スティーヴン・アメル
デヴィッド・アルペイ ブレンダ・フリッカー ジョン・トラヴァース
タグ:映画
dorothyさん、おはようございます。
いつもながらの文章力に感心しております。
アイルランドがらみでは、先日、”マイケル・コリンズ”を
見ました。なかなかの感動作品でした。私には、
これくらいのコメントしか。。。
またの、記事アップ楽しみにしております。
(^。^)丿
by ぷーちゃん (2009-09-13 11:17)
ぷーちゃんさん、こんにちは。
『マイケル・コリンズ』はリーアム・ニーソンでしたっけ?レイフ・ファインズ?
(この2人はしょっちゅうごっちゃになってしまいます)
確かに観たはずなんですが憶えてない・・・というか、
観た時も「?」って感じだった気がします。
アイルランドの話は地理的にも歴史にも疎くて・・・ダメですね。
by dorothy (2009-09-14 00:03)
dorothyさん、おはようございます。
主演は、リーアム・ニーソンです。彼は、アイルランド出身の
様です。そのうち、『マイケル・コリンズ』のこと、
ブログ記事にしたいなぁって思ってま~す。
内戦の話題で、あまり女性には、受けなかったのかも。
私的には感動しましたが。ではでは。(^▽^)
by ぷーちゃん (2009-09-14 11:11)
ぷーちゃんさん、
『マイケル・コリンズ』の感想期待してます!
by dorothy (2009-09-18 00:50)