まだらキンセンカにあらわれるガンマ線の影響 [映画感想−ま]
ポール・ニューマンが監督、妻のジョアン・ウッドワードが主演、
73年のカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した作品。
なんとも不思議なタイトルに惹かれて鑑賞しました。
夫に去られ、娘2人と暮らすベアトリス(ジョアン・ウッドワード)は、
ルーズな性格でほとんど家事もせず娘たちの教育にも無関心。
部屋の間貸しや電話セールスなどで生計を立てています。
長女のルース(ロバータ・ウォラック)は、
そんな母親の性格を受け継いでいることを自覚して1人悩み、
次女のマチルダ(ネル・ポッツ)は科学の実験に没頭、
家のことには無関心を装っていますが・・・。
だらしない母、ベアトリス
元はピュリッツァー賞受賞の舞台劇だそうで、
何か特別ドラマチックな事件が起こるというような話ではなく、
少ない登場人物たちの心理劇という雰囲気です。
だらしなくて攻撃的で、どうしようもない母親ベアトリス。
家のことは一切せず、いつもくわえタバコにローブ姿。
お店を開きたいなど夢ばかり語り、人に対してはただただ攻撃的。
こんな母親を持った娘はかわいそうと思ってしまいます。
ただベアトリスもかわいそうな人ではあります。
夫に捨てられその夫も今は亡く、男や世の中を信用していない。
生きるハリのようなものがなく、楽しみといえば新聞の広告欄を読むことぐらい。
持って生まれた性格と、どうにもならない日々の生活。
彼女の行き詰まっている感じは、なんとなくわかります。
姉のルースは男の子やオシャレに興味を持ち始める年頃で、
学校ではチアリーディングをやったり、
人前で母親をマネた1人コントをしてみせたりと一見活発なのですが、
精神的に追い詰められると発作を起こすなど脆い部分も持っています。
母親ベアトリスの若い頃を知る人が昔の彼女を描写すると、
チアリーダーだったとか人前でコントを披露していたとか、
まるっきり今のルースのよう。
それを聞いた彼女は落ち込み、そして母親を責めます。
この年頃の女の子にとって母親に似ているというのは、
自分の将来が見えてしまう気分になるし、おそらく相当イヤなものだと思います。
母親が大好きならそれほどでもないかも知れませんが、
自分のことは棚に上げて何かと口うるさいこの母を鬱陶しく思っているルースにとって、
自分の中に母親と同じ性質を見出してしまう絶望感はかなりのものだと思います。
母娘3人
妹のマチルダは気が弱く、科学のことにしか興味がない。
教師から譲り受けたうさぎを飼い、放射線を浴びせたキンセンカを育て、
やがてそのキンセンカで学校主催の科学フェアの決勝進出を果たします。
映画のタイトルはこの彼女の科学実験から来てるのですが、
キンセンカの種子に大量にガンマ線をかけたもの、中程度の量のもの、
そしてほんの少しかけたもののそれぞれの成長を比較し、
実験の結果から導かれる結論を発表します。
ガンマ線の影響は大きく、花は育たないか、あるいは突然変異を見せる。
その結果は、彼女自身にも変異を与えるのです。
強烈な個性を持った母親の元で暮らす2人の娘。
やがてそれぞれ母親に対して新たな意識を持ちます。
夜の裏庭で母娘3人それぞれの視線と複雑な思いが絡み合うラスト、
マチルダは自ら導き出した結論を胸に静かに夜空を見上げます。
彼女の心を震わす"原子"という言葉を思い、自分の内なる原子も感じ、
自分がどう生きるべきかを考えます。
マチルダの研究は
マチルダを演じるネル・ポッツは、ポールとジョアンの実際の娘。
青い瞳はパパ似、口元はママ似でしょうか。
静かですがキラリと光る演技を見せてくれています。
ルース役のロバータ・ウォラックは、なんとあの『荒野の七人』や、
最近では『ホリデイ』でも元気なところを見せていたイーライ・ウォラックの娘!
彼女は今もTVドラマなどを中心に活躍しているようです。
今作では思春期の女の子らしさや軽妙なコントなども見せる一方、
てんかん発作の持病を持つという複雑な役を演じていて、とても印象的でした。
WOWOWのカンヌ国際映画祭特集でのTV放送。
ネットなどで調べてもこの作品の情報はほとんど見つけられません。
ポール・ニューマンは生涯5本の長編映画を監督していて、
これはその内の3作目。その落ち着いた演出は、
登場人物たちのそれぞれの内に秘めた思いを静かに導き出しています。
日本では劇場未公開で、当然DVDも未発売。
こういうのをシレッと放送してくれるからWOWOWはやめられない。
DVD発売される予定はあるのでしょうか?
再放送かDVD発売されたアカツキにはぜひ観て欲しい佳作です。
The Effect of Gamma Rays on Man-in-the-Moon Marigolds(1972 アメリカ)
監督 ポール・ニューマン
出演 ジョアン・ウッドワード ネル・ポッツ ロバータ・ウォラック
73年のカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した作品。
なんとも不思議なタイトルに惹かれて鑑賞しました。
夫に去られ、娘2人と暮らすベアトリス(ジョアン・ウッドワード)は、
ルーズな性格でほとんど家事もせず娘たちの教育にも無関心。
部屋の間貸しや電話セールスなどで生計を立てています。
長女のルース(ロバータ・ウォラック)は、
そんな母親の性格を受け継いでいることを自覚して1人悩み、
次女のマチルダ(ネル・ポッツ)は科学の実験に没頭、
家のことには無関心を装っていますが・・・。
だらしない母、ベアトリス
元はピュリッツァー賞受賞の舞台劇だそうで、
何か特別ドラマチックな事件が起こるというような話ではなく、
少ない登場人物たちの心理劇という雰囲気です。
だらしなくて攻撃的で、どうしようもない母親ベアトリス。
家のことは一切せず、いつもくわえタバコにローブ姿。
お店を開きたいなど夢ばかり語り、人に対してはただただ攻撃的。
こんな母親を持った娘はかわいそうと思ってしまいます。
ただベアトリスもかわいそうな人ではあります。
夫に捨てられその夫も今は亡く、男や世の中を信用していない。
生きるハリのようなものがなく、楽しみといえば新聞の広告欄を読むことぐらい。
持って生まれた性格と、どうにもならない日々の生活。
彼女の行き詰まっている感じは、なんとなくわかります。
姉のルースは男の子やオシャレに興味を持ち始める年頃で、
学校ではチアリーディングをやったり、
人前で母親をマネた1人コントをしてみせたりと一見活発なのですが、
精神的に追い詰められると発作を起こすなど脆い部分も持っています。
母親ベアトリスの若い頃を知る人が昔の彼女を描写すると、
チアリーダーだったとか人前でコントを披露していたとか、
まるっきり今のルースのよう。
それを聞いた彼女は落ち込み、そして母親を責めます。
この年頃の女の子にとって母親に似ているというのは、
自分の将来が見えてしまう気分になるし、おそらく相当イヤなものだと思います。
母親が大好きならそれほどでもないかも知れませんが、
自分のことは棚に上げて何かと口うるさいこの母を鬱陶しく思っているルースにとって、
自分の中に母親と同じ性質を見出してしまう絶望感はかなりのものだと思います。
母娘3人
妹のマチルダは気が弱く、科学のことにしか興味がない。
教師から譲り受けたうさぎを飼い、放射線を浴びせたキンセンカを育て、
やがてそのキンセンカで学校主催の科学フェアの決勝進出を果たします。
映画のタイトルはこの彼女の科学実験から来てるのですが、
キンセンカの種子に大量にガンマ線をかけたもの、中程度の量のもの、
そしてほんの少しかけたもののそれぞれの成長を比較し、
実験の結果から導かれる結論を発表します。
ガンマ線の影響は大きく、花は育たないか、あるいは突然変異を見せる。
その結果は、彼女自身にも変異を与えるのです。
強烈な個性を持った母親の元で暮らす2人の娘。
やがてそれぞれ母親に対して新たな意識を持ちます。
夜の裏庭で母娘3人それぞれの視線と複雑な思いが絡み合うラスト、
マチルダは自ら導き出した結論を胸に静かに夜空を見上げます。
彼女の心を震わす"原子"という言葉を思い、自分の内なる原子も感じ、
自分がどう生きるべきかを考えます。
マチルダの研究は
マチルダを演じるネル・ポッツは、ポールとジョアンの実際の娘。
青い瞳はパパ似、口元はママ似でしょうか。
静かですがキラリと光る演技を見せてくれています。
ルース役のロバータ・ウォラックは、なんとあの『荒野の七人』や、
最近では『ホリデイ』でも元気なところを見せていたイーライ・ウォラックの娘!
彼女は今もTVドラマなどを中心に活躍しているようです。
今作では思春期の女の子らしさや軽妙なコントなども見せる一方、
てんかん発作の持病を持つという複雑な役を演じていて、とても印象的でした。
WOWOWのカンヌ国際映画祭特集でのTV放送。
ネットなどで調べてもこの作品の情報はほとんど見つけられません。
ポール・ニューマンは生涯5本の長編映画を監督していて、
これはその内の3作目。その落ち着いた演出は、
登場人物たちのそれぞれの内に秘めた思いを静かに導き出しています。
日本では劇場未公開で、当然DVDも未発売。
こういうのをシレッと放送してくれるからWOWOWはやめられない。
DVD発売される予定はあるのでしょうか?
再放送かDVD発売されたアカツキにはぜひ観て欲しい佳作です。
The Effect of Gamma Rays on Man-in-the-Moon Marigolds(1972 アメリカ)
監督 ポール・ニューマン
出演 ジョアン・ウッドワード ネル・ポッツ ロバータ・ウォラック
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