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ミスト [映画感想−ま]

ホラーは苦手だし、トーマス・ジェーン主演ってピンと来ないし、
『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』のフランク・ダラボンと言われても、
どうもその方向とは違う雰囲気そうだぞと劇場スルーした作品でした。
でもやたら評価が高くて、これ以上ない衝撃のラストとやらも興味あって、
勇気を出して鑑賞してみました。


アメリカのとある湖畔の田舎町を激しい嵐が襲います。
翌朝、画家のデヴィッド(トーマス・ジェーン)は、
息子のビリー(ネイサン・ギャンブル)と共にスーパーへ買い出しに出かけます。
停電のためごった返すレジの列に並んでいると、
そこに血まみれになったダン(ジェフリー・デマン)が、
「霧の中に何かいる。みんな霧にやられてしまった」と言って駆け込んで来ます。
店の外はあっという間に濃い霧に覆われ、デヴィッドたちは店内から動けなくなります。
やがてその霧の中の魔の手は店内にも忍び寄り・・・。


霧の中に何が!?
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スティーヴン・キング先生は先日観た『2番目のキス』で、
予期せずそのお姿を拝見しましたが、相変わらず怖かった・・・ってそれは言い過ぎかな。
そのキングとフランク・ダラボンとのコンビ作と言われても、
『ショーシャンクの空に』は確かに名作だと思いますが、
『グリーンマイル』はあまり好きではなかったので、
そういう方面から惹きつけられることもありませんでした。
今作を観て感じたのは『グリーンマイル』を観た時の何とも言えない違和感と後味の悪さ。
もう細かいことは忘れてしまいましたが、あの時の気持ちが蘇ってきました。
そういう意味ではこのキング+ダラボンコンビらしいということなのかなとも思いました。

ストーリーは単にナゾの霧に襲われるだけなのかと思っていたら、
霧の中から何だかわけのわからない触手が出てきたり、
巨大な蚊(?)やそれを食べる怪鳥、巨大グモとか、
思いっきり怪獣映画になっていくので、ちょっと予想外。
なのでかえって恐ろしさは感じなかったのですが、
それでも襲われて血とか肉片が!とかはやっぱり苦手。
それと子グモがワラワラというのはゾゾーっとしました。
なので、こんな調子で続いていって本当に傑作なの?と、
前半のB級な雰囲気にはかなり半信半疑になっていました。


いつまで続くのか
themist_2.jpg


ところがだんだん、この作品で重点が置かれるのは謎の怪物たちじゃなく、
スーパーの中の人間たちの生態だとわかって来てなるほどと思いました。
普通ならみんなで力を合わせて戦い、助け合い・・・となりそうなところなのに、
強い地元意識や職業差別や元々の軋轢なんかでモメて、
しまいには狂信的オバサンが登場して、なんだか違う方向に話が進んでいきます。
この強烈なユダヤ教信者ミセス・カーモディを、
マーシャ・ゲイ・ハーデンがさすがの芝居で見せてくれますが、
私があそこにいたら真っ先に殴って、缶詰投げつけて、ドアの外に放り出してやりたい!
と強く思わせるなんともインパクトの強い"悪役"ぶり。
こういう宗教観に囚われた人ってアメリカの田舎にはいかにもいそうだし、
時間と共にだんだんと"信者"を増やしていくのはすごく恐ろしい。
人はこういう極限状態の中にいると、ちょっとしたことで考えは揺らぐだろうし、
あるいは思考停止してしまうだろうなと思います。
そこに必ずダイ・ハードなヤツがいてリーダーシップ取ってくれるとは限らない。
ここでは一見デヴィッドがそれらしいけど、最初から敵は多いし、
やることなすこと裏目・・・とは言わないまでも、ほぼどれも失敗続き。
でも実際はそんなものでしょう。

そんな中でスーパーの副店長オリーがいい意味で期待を裏切ってくれて、
彼が実は一番カッコイイ!と思ってしまいました。
人は見た目で判断できないといういい例かな。
それと機械工のジムという人が、最初は強気でデヴィッドに敵意むき出しなのに、
自分のせいで1人死なせてしまったら急に弱気になって、
その後もいろいろあって、結局狂信オバサンの信奉者になってしまうとか、
こういう人間描写はすごくよく描けていて面白かったです。


マーシャ・ゲイ・ハーデンが一番怖い
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デヴィッドの息子役を演じたネイサン・ギャンブル。
この子がたまらなくカワイイ!
彼の泣き顔にはキューンときてしまいました。
お父さんは息子との約束を守った・・・とはいえ、
こんな可愛い子を!と思うと、本当に本当に胸が痛くなってしまいました。
ネイサン君は『バベル』でブラッド・ピットの息子、
『ダークナイト』でゲイリー・オールドマン演じるゴードン警部の息子として、
いずれもグッと来る演技を見せてくれていた男の子です。
あと『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』でも息子の1人でした。
なかなかの売れっ子ぶりですが、いつまでもその可愛さを失わないで欲しい!

そしていろいろあって、あのラストシーン。
"衝撃のラスト"って最近はそんな宣伝文句ばかりで、
もうホントどうでもいいという気がするんですが、これは確かに衝撃でした。
ハリウッド的にこれはナシだと思うし、救いが無いにも程がある。
結果は全部失敗でも、とりあえずデヴィッドは頑張ったと思うし、
そんな頑張った人が一番不幸で悲惨な目に遭うというのはちょっとほかに無いと思います。
このエンディングを観て、映画というものに何を求めるかということを考えてしまいました。
映画は必ず主人公が報われるという決まりはないし、この結末がダメとは絶対に言えない。
でも「そんなのありえない!」とか言いながらも、そのありえなさを楽しむ、
それが私の映画の楽しみ方かも知れないと思うと、これは無い。
そういうほうが好き、ということでしかないのかも知れませんが。
作品そのものより、映画ってなんだろうということを、
意外にもこんなハリウッド製ホラー映画で考えさせられてしまうとは・・・。
そのこともショックでした。


The Mist(2007 アメリカ)
監督 フランク・ダラボン
出演 トーマス・ジェーン マーシャ・ゲイ・ハーデン ローリー・ホールデン アンドレ・ブラウアー
   トビー・ジョーンズ ウィリアム・サドラー ジェフリー・デマン ネイサン・ギャンブル



ミスト コレクターズ・エディション [DVD]

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  • メディア: DVD


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コメント 2

堀越ヨッシー

こんにちは。
見たい、見たいとずっと思っているのですが、なかなか機会がなくてスルーしてる作品です。個人的には怪物がどんな感じなのかに興味が尽きない訳ですが、噂の“救いのないラスト”っていうのも気になります。DVDには白黒バージョンが収録してあるそうで、出来ればそちらで見てみたいですね。
by 堀越ヨッシー (2009-05-03 20:30) 

dorothy

ヨッシーさん、こんにちは。
怪物はどうなんでしょう?デカイ虫とか鳥とかはかなりB級な感じだし、
一番でっかいヤツは霧の中でよくわかんないし・・・存在感はすごく感じられますが。
白黒バージョンはいいらしいですね。時間を空けていつか観たいなと思います。
by dorothy (2009-05-03 22:05) 

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