パラノイドパーク [映画感想−は]
『ミルク』の公開が待ち遠しい、ガス・ヴァン・サント2007年の作品。
オレゴン州ポートランドに住むアレックス(ゲイブ・ネヴァンス)は、
スケートボードに夢中な16歳の少年。
ある日、友人のジャレッド(ジェイク・ミラー)にパラノイドパークへ行こうと誘われます。
それはスケーターたちが集まる聖地とも言える場所で、
アレックスはすぐにそこが気に入り、ジャレッドと週末にまた来る約束をします。
しかしジャレッドは急用が出来、アレックスは1人でパークへ向かうことに。
そこで不良グループに声を掛けられたアレックスは、
誘われるままに彼らについて行き、誤って1人の男を死なせてしまいます。
アレックス
ほとんど素人の少年少女ばかりを起用したスタイルは、
『エレファント』にとてもよく似ています。
まるで彼らのドキュメンタリーのような、普通の高校生の日常生活。
両親の離婚やガールフレンドとの関係など、小さな問題はいくつもあるけれど、
毎日はそれなりに楽しく平穏に過ぎていきます。
けれどそこに不意に起こる事件。それが彼らに落とす影。
誰にも言えない大きな秘密を抱えてしまったアレックスは1人悩み、
それを察した女友達のメイシー(ローレン・マッキニー)は、
彼に思いを手紙にするよう勧めます。
アレックスは"パラノイドパーク"と名付けたノートに、
この一連の出来事を書き始めます。
その文章がボイスオーバーとしてアレックスの胸の内を語り、
物語が進んでいくのですが、時間は交差し同じシーンが繰り返し登場し、
それはそのままアレックスの心の中の混乱を表しているようです。
幸せな場所
ストーリーとしては、あらすじ以上の出来事も、ドラマチックな展開も、
予想外のオチも特にありません。
時間が往き来し、延々と学校の廊下や歩道を歩くアレックスを映しだします。
彼が思い悩み、また虚ろな表情でいるそのアップをただ捉えます。
そこで彼が何を考え何を思っているのかを想像してくれと言わんばかりです。
また、パラノイドパークではスケーターたちの姿を、
そのそばに付いて滑っているかのように撮っています。
なぜかアレックスのスケートシーンは、ここでは見られません。
まだあまり滑りに自信のない彼は、ボードに腰掛け脇で眺めていることのほうが多い。
もしかして、カメラの動きがアレックスの目となり、
彼の目からこのパークを見ていることを表しているのかも知れません。
ほかのスケーターを追うカメラはアレックスがその脇をすり抜けているのかも知れないし、
彼の滑りを体感すること、彼の目から見たパークの様子を映し出すこと、
そのことでもまたアレックスの内面を感じさせようとしているようです。
スケーターに付いて同じように滑るこのカメラワークは、
どのように撮影したのかわかりませんが、迫力があり、とても心躍る映像です。
今回の撮影はクリストファー・ドイル。
『エレファント』との一番の違いはここで、
ガス・ヴァン・サントの世界にあのドイル調カメラワークが重なって、
独特なここにしかない映像を作り出しています。
また今回も画面はスタンダードサイズで、
これは小さな町の普通の少年の日常を切り取るのに最適なサイズにも思えて、
そんな彼に降りかかった不幸な出来事を受け止める息苦しさも感じさせました。
ドイルはアレックスのおじさん役でチラッと出演もしています。
メイシーの忠告
キャストはほとんど地元ポートランドで、
マイスペースなどを通して見つけた素人ばかりだそうです。
それにしても今回も監督好み?の美少年をよく見つけ出したものです。
アレックス役のゲイブ・ネヴァンス君はまだ本当に"少年"という感じで、
その無表情さはイマドキの子のようでもあり、この年頃ならではとも思われ、
いかにも大人と子どもの間の不安定な感じを出しています。
彼をパークに誘うジャレッド役の子もなかなかカワイイ。
それに比べて女子のカワイゲのなさというか、
ガールフレンドのジェニファー役の子はいかにもな化粧させられてるし、
何かとアレックスの相談に乗るメイシーもニキビだらけで可哀相。
本当に女子には容赦ないというかほとんど気に掛けてないというか。
それから、アレックスの13歳の弟でヘンリーという子が登場するんですが、
この子は両親の揉め事がストレスになって吐いたりするような子。
そんなヘンリー君がすごく楽しそうにアレックスに話してるシーンが登場します。
で、何を話してるかというと、ナポレオンがどうのこうのとか言ってる。
リップクリームがどうの、おばあちゃんが砂漠で骨折したとか、
・・・それって『バス男』?ナポレオンってナポレオン・ダイナマイト!?
終始暗い話の中でここだけ意外性があってかわいくて、なんとなくホッとするシーンでした。
ガス・ヴァン・サントといえばエリオット・スミス。
彼の美しいナンバーは、当然ながら文句なくピタリとはまっています。
それ以外に懐かしさを感じさせる音楽がたびたび登場するのですが、
これはいずれもニーノ・ロータの作品。
フェリーニ作品の音楽を持ってくるとは一見ミスマッチのようですが、
これが不思議に合っていて、美しい映像に独特の強い印象を与えていました。
悲しいのに美しいガス・ヴァン・サントならではの作品。
またとても大切にしたい一本に出会いました。
Paranoid Park(2007 フランス/アメリカ)
監督 ガス・ヴァン・サント
出演 ゲイブ・ネヴァンス ジェイク・ミラー テイラー・モンセン ローレン・マッキニー
オレゴン州ポートランドに住むアレックス(ゲイブ・ネヴァンス)は、
スケートボードに夢中な16歳の少年。
ある日、友人のジャレッド(ジェイク・ミラー)にパラノイドパークへ行こうと誘われます。
それはスケーターたちが集まる聖地とも言える場所で、
アレックスはすぐにそこが気に入り、ジャレッドと週末にまた来る約束をします。
しかしジャレッドは急用が出来、アレックスは1人でパークへ向かうことに。
そこで不良グループに声を掛けられたアレックスは、
誘われるままに彼らについて行き、誤って1人の男を死なせてしまいます。
アレックス
ほとんど素人の少年少女ばかりを起用したスタイルは、
『エレファント』にとてもよく似ています。
まるで彼らのドキュメンタリーのような、普通の高校生の日常生活。
両親の離婚やガールフレンドとの関係など、小さな問題はいくつもあるけれど、
毎日はそれなりに楽しく平穏に過ぎていきます。
けれどそこに不意に起こる事件。それが彼らに落とす影。
誰にも言えない大きな秘密を抱えてしまったアレックスは1人悩み、
それを察した女友達のメイシー(ローレン・マッキニー)は、
彼に思いを手紙にするよう勧めます。
アレックスは"パラノイドパーク"と名付けたノートに、
この一連の出来事を書き始めます。
その文章がボイスオーバーとしてアレックスの胸の内を語り、
物語が進んでいくのですが、時間は交差し同じシーンが繰り返し登場し、
それはそのままアレックスの心の中の混乱を表しているようです。
幸せな場所
ストーリーとしては、あらすじ以上の出来事も、ドラマチックな展開も、
予想外のオチも特にありません。
時間が往き来し、延々と学校の廊下や歩道を歩くアレックスを映しだします。
彼が思い悩み、また虚ろな表情でいるそのアップをただ捉えます。
そこで彼が何を考え何を思っているのかを想像してくれと言わんばかりです。
また、パラノイドパークではスケーターたちの姿を、
そのそばに付いて滑っているかのように撮っています。
なぜかアレックスのスケートシーンは、ここでは見られません。
まだあまり滑りに自信のない彼は、ボードに腰掛け脇で眺めていることのほうが多い。
もしかして、カメラの動きがアレックスの目となり、
彼の目からこのパークを見ていることを表しているのかも知れません。
ほかのスケーターを追うカメラはアレックスがその脇をすり抜けているのかも知れないし、
彼の滑りを体感すること、彼の目から見たパークの様子を映し出すこと、
そのことでもまたアレックスの内面を感じさせようとしているようです。
スケーターに付いて同じように滑るこのカメラワークは、
どのように撮影したのかわかりませんが、迫力があり、とても心躍る映像です。
今回の撮影はクリストファー・ドイル。
『エレファント』との一番の違いはここで、
ガス・ヴァン・サントの世界にあのドイル調カメラワークが重なって、
独特なここにしかない映像を作り出しています。
また今回も画面はスタンダードサイズで、
これは小さな町の普通の少年の日常を切り取るのに最適なサイズにも思えて、
そんな彼に降りかかった不幸な出来事を受け止める息苦しさも感じさせました。
ドイルはアレックスのおじさん役でチラッと出演もしています。
メイシーの忠告
キャストはほとんど地元ポートランドで、
マイスペースなどを通して見つけた素人ばかりだそうです。
それにしても今回も監督好み?の美少年をよく見つけ出したものです。
アレックス役のゲイブ・ネヴァンス君はまだ本当に"少年"という感じで、
その無表情さはイマドキの子のようでもあり、この年頃ならではとも思われ、
いかにも大人と子どもの間の不安定な感じを出しています。
彼をパークに誘うジャレッド役の子もなかなかカワイイ。
それに比べて女子のカワイゲのなさというか、
ガールフレンドのジェニファー役の子はいかにもな化粧させられてるし、
何かとアレックスの相談に乗るメイシーもニキビだらけで可哀相。
本当に女子には容赦ないというかほとんど気に掛けてないというか。
それから、アレックスの13歳の弟でヘンリーという子が登場するんですが、
この子は両親の揉め事がストレスになって吐いたりするような子。
そんなヘンリー君がすごく楽しそうにアレックスに話してるシーンが登場します。
で、何を話してるかというと、ナポレオンがどうのこうのとか言ってる。
リップクリームがどうの、おばあちゃんが砂漠で骨折したとか、
・・・それって『バス男』?ナポレオンってナポレオン・ダイナマイト!?
終始暗い話の中でここだけ意外性があってかわいくて、なんとなくホッとするシーンでした。
ガス・ヴァン・サントといえばエリオット・スミス。
彼の美しいナンバーは、当然ながら文句なくピタリとはまっています。
それ以外に懐かしさを感じさせる音楽がたびたび登場するのですが、
これはいずれもニーノ・ロータの作品。
フェリーニ作品の音楽を持ってくるとは一見ミスマッチのようですが、
これが不思議に合っていて、美しい映像に独特の強い印象を与えていました。
悲しいのに美しいガス・ヴァン・サントならではの作品。
またとても大切にしたい一本に出会いました。
Paranoid Park(2007 フランス/アメリカ)
監督 ガス・ヴァン・サント
出演 ゲイブ・ネヴァンス ジェイク・ミラー テイラー・モンセン ローレン・マッキニー
タグ:映画
すてきな映画の紹介をありがとう。
さっそく観たい映画の1本に加えておきます。
by ぺんぎん (2009-03-09 09:00)
ぺんぎんさん、コメント& nice!ありがとうございます。
気に入ってもらえるとウレシイです。
by dorothy (2009-03-09 22:41)
前から、ちょっと気になっていたんです。
dorothyさんのレビュー見てみようと思いました。
by かぴー (2009-03-12 01:15)
かぴーさん、こんにちは。
時間が前後したり、ストーリーもあって無いような感じなので、
そういうのが苦手な人には退屈かも知れません。
かぴーさんが気に入ってくれるといいな。
by dorothy (2009-03-12 02:33)