チャプター27 [映画感想−た]
ジョン・レノン殺害犯、マーク・チャップマンを主人公とする映画が作られると聞き、
多くの人が戸惑いを感じ、反対運動まで起こり、
アメリカではなかなか配給先が決まらなかったそうです。
あの日から30年近く経った今も、
多くの謎と多くの悲しみを抱えたままのあの事件を、
この作品は、どう描き、何を語ろうとしているのでしょう?
1980年12月6日。
マーク・デイヴィッド・チャップマン(ジャレッド・レト)は、
ハワイからニューヨークへやって来ます。
その目的はジョン・レノンに"会う"こと。
彼はジョンの住むダコタハウスを訪れ、ジョンのファン、ジュード(リンジー・ローハン)や、
カメラマンのポール(ジュダ・フリードランダー)らと知り合いになります。
街をさまよい、自問自答を繰り返しながらジョンと遭遇する時を待ち続けるチャップマン。
そして、運命のその日、12月8日の夜が訪れます。
その夜、ダコタハウス
タイトルの『チャプター27』とは、
J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が26章から成ることから、
その次の章という意味を持っています。
レノン殺害時にチャップマンが『ライ麦畑でつかまえて』を携えていて、
彼が主人公ホールデン・コールフィールドに自分を重ね合わせていたというのは有名な話。
この映画は、まさにチャップマン=ホールデンという図式で話が進みます。
冒頭で「僕のクソったれな子供時代の話はしない」と言ってみたり、
空港からのタクシーの中でセントラルパークのアヒルの話をしてみたりと、
まったく『ライ麦畑〜』をなぞっています。
映画を見終わってから『ライ麦畑〜』を引っ張り出し、パラパラとめくってみたら、
「このホテルは変人だらけ」なんて文章があったり、
ホテルに売春婦を呼ぶあたりもなんとなく似ています。
(でも、やって来た女の人はずいぶんタイプが違ってますが、
それでもグリーンのドレスを着ているあたりは同じです。)
この作品がいかに『ライ麦畑〜』をベースに作られたかがわかりました。
そういうわけなので、チャップマンがなぜジョン・レノンを殺そうと思ったのか、
その動機やきっかけとなったこと、彼の生い立ちなども一切わかりません。
あくまで事件が起こるまでの3日間を、チャップマンの語りだけで描いています。
いずれ起こることがわかっている事件に対して少しずつ時間が近づいてくる緊張感は、
こういった事実に基づいた作品ならではのものであり、
そんな中でチャップマンの感情の起伏の激しさ、何度も気持ちが揺らいだりする様子が、
不思議なリアリティを持って迫ってきます。
ジュードとは親しくなったが
チャップマンに200時間にも及ぶインタビューを敢行した、
『ジョン・レノンを殺した男』を元に作られたそうですが、
この本は読んでいないのでわかりませんが、
チャップマンがインタビューでどのようなことを語ったのか、
またどれほど真実を語っているかはわかりません。
いまだに暗殺説なども根強く残っていたりと謎も多く、
そもそも、彼が何を語ったとしても何も解決しないでしょう。
彼は本当にジョン・レノンのファンだったのか。
この映画では彼の目的はレノンを殺すことというより、
『ライ麦畑〜』のホールデンになりきることだったような印象を受けます。
それがどこまで脚色なのかはよくわかりません。もちろん、その理由もわかりません。
そしてこの映画で、事件の真実に一歩でも近づくということも最後までありません。
そもそも、それを目的に作られたのではないでしょう。
そのことが、ジョン・レノンを愛する人、関係者を傷つけることにもなりかねない。
また、『ライ麦畑〜』の読者も傷つけかねません。
でも、こういった作品を作るという姿勢、意志というものは、
私は素直に頭が下がるし、認めてもいいのではないかと思いました。
もっとドラマチックにすることも、謎解き風にすることもできたはずです。
そこが確かに物足りない感じでもあるのですが、
興味本位や話題作りで作ったという風では決してなく、静かで丁寧な作りも好感が持てました。
真実は見えない
一番の話題でもあった、ジャレッド・レトの役作り。
30kg増量したらしいですが、本来の彼の姿がまったく見えません。
クリスチャン・ベールが『マシニスト』で、これとはまったく逆に30kg減量し、
ガリガリの身体を見せていた時もそうでしたが、
ボッテリしたお腹を見せられるたびに、どうしてもそこに目が行ってしまい、
話に集中できず困りました。
リンジー・ローハンは出番は少なめながら、可愛いショーン・レノン君と共に、
この作品の中でホッとさせる存在でした。
見るたびに美人だなあと思うのですが、最近はゴシップネタでしか見かけなくなって残念。
もっと女優業を見たいです。
それと、どうでもいいことなんですが、ジョン・レノン役の俳優さんの名前が
"マーク・リンゼイ・チャップマン"というんですね。
なんだか冗談のような、名前でキャスティングしたんじゃないの?みたいな。
こんな風にたくさんの偶然で世の中は出来てるんですね、やっぱり。
Chapter 27(2007 カナダ/アメリカ)
監督 J・P・シェファー
出演 ジャレッド・レト リンジー・ローハン ジュダ・フリードランダー
アーシュラ・アボット マーク・リンゼイ・チャップマン
多くの人が戸惑いを感じ、反対運動まで起こり、
アメリカではなかなか配給先が決まらなかったそうです。
あの日から30年近く経った今も、
多くの謎と多くの悲しみを抱えたままのあの事件を、
この作品は、どう描き、何を語ろうとしているのでしょう?
1980年12月6日。
マーク・デイヴィッド・チャップマン(ジャレッド・レト)は、
ハワイからニューヨークへやって来ます。
その目的はジョン・レノンに"会う"こと。
彼はジョンの住むダコタハウスを訪れ、ジョンのファン、ジュード(リンジー・ローハン)や、
カメラマンのポール(ジュダ・フリードランダー)らと知り合いになります。
街をさまよい、自問自答を繰り返しながらジョンと遭遇する時を待ち続けるチャップマン。
そして、運命のその日、12月8日の夜が訪れます。
その夜、ダコタハウス
タイトルの『チャプター27』とは、
J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が26章から成ることから、
その次の章という意味を持っています。
レノン殺害時にチャップマンが『ライ麦畑でつかまえて』を携えていて、
彼が主人公ホールデン・コールフィールドに自分を重ね合わせていたというのは有名な話。
この映画は、まさにチャップマン=ホールデンという図式で話が進みます。
冒頭で「僕のクソったれな子供時代の話はしない」と言ってみたり、
空港からのタクシーの中でセントラルパークのアヒルの話をしてみたりと、
まったく『ライ麦畑〜』をなぞっています。
映画を見終わってから『ライ麦畑〜』を引っ張り出し、パラパラとめくってみたら、
「このホテルは変人だらけ」なんて文章があったり、
ホテルに売春婦を呼ぶあたりもなんとなく似ています。
(でも、やって来た女の人はずいぶんタイプが違ってますが、
それでもグリーンのドレスを着ているあたりは同じです。)
この作品がいかに『ライ麦畑〜』をベースに作られたかがわかりました。
そういうわけなので、チャップマンがなぜジョン・レノンを殺そうと思ったのか、
その動機やきっかけとなったこと、彼の生い立ちなども一切わかりません。
あくまで事件が起こるまでの3日間を、チャップマンの語りだけで描いています。
いずれ起こることがわかっている事件に対して少しずつ時間が近づいてくる緊張感は、
こういった事実に基づいた作品ならではのものであり、
そんな中でチャップマンの感情の起伏の激しさ、何度も気持ちが揺らいだりする様子が、
不思議なリアリティを持って迫ってきます。
ジュードとは親しくなったが
チャップマンに200時間にも及ぶインタビューを敢行した、
『ジョン・レノンを殺した男』を元に作られたそうですが、
この本は読んでいないのでわかりませんが、
チャップマンがインタビューでどのようなことを語ったのか、
またどれほど真実を語っているかはわかりません。
いまだに暗殺説なども根強く残っていたりと謎も多く、
そもそも、彼が何を語ったとしても何も解決しないでしょう。
彼は本当にジョン・レノンのファンだったのか。
この映画では彼の目的はレノンを殺すことというより、
『ライ麦畑〜』のホールデンになりきることだったような印象を受けます。
それがどこまで脚色なのかはよくわかりません。もちろん、その理由もわかりません。
そしてこの映画で、事件の真実に一歩でも近づくということも最後までありません。
そもそも、それを目的に作られたのではないでしょう。
そのことが、ジョン・レノンを愛する人、関係者を傷つけることにもなりかねない。
また、『ライ麦畑〜』の読者も傷つけかねません。
でも、こういった作品を作るという姿勢、意志というものは、
私は素直に頭が下がるし、認めてもいいのではないかと思いました。
もっとドラマチックにすることも、謎解き風にすることもできたはずです。
そこが確かに物足りない感じでもあるのですが、
興味本位や話題作りで作ったという風では決してなく、静かで丁寧な作りも好感が持てました。
真実は見えない
一番の話題でもあった、ジャレッド・レトの役作り。
30kg増量したらしいですが、本来の彼の姿がまったく見えません。
クリスチャン・ベールが『マシニスト』で、これとはまったく逆に30kg減量し、
ガリガリの身体を見せていた時もそうでしたが、
ボッテリしたお腹を見せられるたびに、どうしてもそこに目が行ってしまい、
話に集中できず困りました。
リンジー・ローハンは出番は少なめながら、可愛いショーン・レノン君と共に、
この作品の中でホッとさせる存在でした。
見るたびに美人だなあと思うのですが、最近はゴシップネタでしか見かけなくなって残念。
もっと女優業を見たいです。
それと、どうでもいいことなんですが、ジョン・レノン役の俳優さんの名前が
"マーク・リンゼイ・チャップマン"というんですね。
なんだか冗談のような、名前でキャスティングしたんじゃないの?みたいな。
こんな風にたくさんの偶然で世の中は出来てるんですね、やっぱり。
Chapter 27(2007 カナダ/アメリカ)
監督 J・P・シェファー
出演 ジャレッド・レト リンジー・ローハン ジュダ・フリードランダー
アーシュラ・アボット マーク・リンゼイ・チャップマン
タグ:映画
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