ダークナイト [映画感想−た]
やっと、やっと観ることができました。
さて、何から話せばいいのやら、という感じですが。
元々それほどこのジャンルが得意ではない私からしたら、
とりあえず見終わって最初に出た言葉は「お腹いっぱいで苦し〜」でした。
152分の長尺ですが、そこまでの長さを感じさせない盛りだくさんの作りで、
若干寝不足気味で観に行って、寝そうになったらどうしようなんて思っていたのですが、
そんな心配はあっさりどこかに行ってしまうほど、瞬きする間もないぐらいでした。
その味は、私にとってちょっと食べ慣れてない異国のものなのだけど、
不思議に胃もたれするようなことはない。
でももうこれ以上はとても消化できそうにない。強力なフルコースでした。
それは、この作品がアメコミとかヒーローものとかいうよりも、
普通の犯罪ドラマと言えそうな話の展開による部分が大きいと思いました。
マフィアのマネーロンダリングだの、その資金源が香港企業だとか、
愛する人が人質となり、どうにかして助け出さなきゃいけないとか、
これ別にバットマンじゃなくてもいいのでは?なんてことを思ったりもして。
だからこそアメコミに疎い私も普通に飲み込めたのかも知れません。
ただもちろん、そこにバットマンやジョーカーというありえない"キャラクター”がいて、
とてもニューヨークに似ているけれど、ここはゴッサムシティという街なのであって、
次々に起こる事件に立ち向かい、悪人たちを追いかけたり締め上げたりする方法は、
警察のお仕事とはまるで違う。法律も街のルールもすべて架空の作り話。
なのにこのリアリティはなんなのでしょう?
悩めるバットマン
特殊能力のない、ただの人間であるバットマン。
今回も新しいバットスーツを作り、武器もいろいろと新調してよく働いています。
でも見終わってみると、バットマン自体の存在感は薄い気がしました。
それは何よりジョーカーや、後半に登場するトゥーフェイスのインパクトが大きすぎるせいでしょう。
わざわざ香港出張してたなあとか(この香港シーンの展開は結構スキ)、
バットポッドが登場するところとか、ジョーカーをボコボコにするところとか、
ジョーカーが人質を取って指示を出していたビルに乗り込んでいったところとか、
いろいろとその登場シーンは思い出すのですが、
それよりジョーカーたちのシーンのほうが圧倒的に記憶に残っています。
で、そのジョーカーです。
噂通りにものすごいものを見せてもらったという感じです。
ただ、ここまで世間の評価が高いのはちょっとどうかなあと、
あまのじゃくな私は思ってしまいます。
あまりにもこれがヒース・レジャーの遺作だから、という思いに、
みんな囚われすぎていないかしらん。
間違いなく彼の仕事の中ではとびきりのものだと思いますが、
彼がまだ生きていたなら、ここまで手放しに絶賛されたかなあ、と思ってしまいました。
個人的好みで言えば『ブロークバック・マウンテン』の彼の演技のほうが胸を打ったし。
例えば、これもいろんなところで例えに出されているようですが、
『ブラックレイン』における松田優作の評価にも似ていて、
確かにあの佐藤役は凄まじかったけど、実は『探偵物語』のほうが好みなんだけど(!)みたいな。
・・・まあ、ジョーカーとイニス、佐藤と工藤ちゃんを比較する意味はないかもしれませんが。
でも、1つの役柄の昇華のさせ方として、近年稀にみる完成度。
ここまで素晴らしいものを見せてくれたことには本当に感動しました。
オスカー候補は本当にありえるかも知れません。
最凶最悪
今回登場のもう1人の重要人物、ハービー・デント/トゥーフェイスを演じたアーロン・エッカート。
彼もとても素晴らしかった。彼ももっと評価されてもいいんじゃないでしょうか。
ダークナイトに対するホワイトナイト。
でもジョーカーの手によってあっさりとダークサイドに落ちてしまう、
その変わり方のものすごさというか、恐ろしい特殊メイクとともに、
ジョーカー以上に大活躍だったと言ってもいいと思います。
でもトゥーフェイスになってからがちょっと物足りなかった。
もっと活躍(?)させて欲しかったです。
そうは言っても個人的にはああいう"顔"はすごーく苦手でコワイんですが。
ところで、劇場には結構小さい子どもたちが観に来てたんですが、
これ、子どもに見せちゃダメでしょう。
話はわけわかんないと思うし、ジョーカーやトゥーフェイスの顔はトラウマになりそう。
日本ではなぜかレーティング付いてないんですよね。
連れてきた親もここまでとは思わなかったんでしょう。
コインが表なら・・・
前作のケイティ・ホームズから交替したレイチェル役のマギー・ジレンホール。
この2人、たぶんそんなに年齢は違わないと思うのですが、
ケイティ・ホームズのほうはどうもお嬢ちゃんっぽいし、
キャリアのある女性ということではマギー・ジレンホールのほうが貫禄があって適役だったと思います。
マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマンのレギュラー3人。
特に今回はゲイリー・オールドマンが大活躍でした。
この人、こんなに完璧に良い人の役って今までなかったんじゃないでしょうか。
一昔前ならジョーカー側の人ですよね。そういう意味では新境地開拓していると言えそうです。
最後はちょっとウルッと来ました。
大活躍
復習のために先週末『バットマンビギンズ』をレンタルして観たのですが、
特典映像に冒頭の銀行強盗シーンがまるまる入っていて、
ちょっと長い予告編かなぐらいに思って観てたんですが、
そのまんまなワケないと思ってたら、まんまだったんですね。
・・・うーむ、やっぱりこれはスクリーンでいきなり観たかった。
マホーンの登場に純粋に驚きたかった!
キリアン・マーフィーのチラッとだけの出方は面白いし、
エリック・ロバーツ、アンソニー・マイケル・ホールなんていうキャスティングも渋い!
市長役の人は『LOST』の人だ〜とか、出てくる人にいちいち反応してしまう、
なんとも絶妙なキャスティングでした。
香港シーンにエディソン・チャンに似てる人がいるなあと思ったら本人だったそうですね。
なんだかそういう面白さでも、もう一回観たくなるような作品でした。
ドゥオーン!
盛りだくさんな本作にあって、実は一番気になったというか、
それまでの流れとはなんか違うような、でも意外に記憶に残っているのが、
一般市民と囚人たち、2つのフェリーのエピソード。
かなりベタな設定だし、たぶん現実にはああいう風にはならないだろうな、
もっとパニック状態になって両方同時にドカン!だと思うのですが、
あの、起爆装置を受け取る囚人、男前なことをやってくれました。
何が善で何が悪か、それは見た目だけではわからないという、すごくわかりやすい表現というか。
でも、だからこそ映画全体の中でなんだか一番浮いているような気がしました。
あの囚人チームのやってくれたことに対して、一般市民チームのほうはちょっとインパクトなさ過ぎ。
あれ以上のアイディアは思いつかなかったのでしょうか。
「俺がやる」「いえ私が」「いやいやオイラが」「じゃあどうぞどうぞ」
・・・とかいうダチョウ倶楽部的展開で(スミマセン)譲り合ったあげく何もできないとか、
なんかそんなもう一捻りが欲しかった。
あの結果にジョーカーがガッカリしちゃうんですが、私も違う意味でガッカリしてしまいました。
そうは言っても映画的なドキドキ感でいうと、意外とここが一番ドキドキした部分かも知れません。
私のバットマンワールドに対する思い入れの少なさもあって、
星5つ!と言うほどの大傑作とは言い切れないのですが、
盛りだくさんで隙のない、恐ろしく完成度の高い作品であることは間違いないです。
私のような一般客にはちょっと敷居が高すぎたかな。
とりあえずまだお腹パンパン状態なので、消化したらもう一回観てみたいです。
The Dark Knight(2008 アメリカ)
監督 クリストファー・ノーラン
出演 クリスチャン・ベール ヒース・レジャー アーロン・エッカート マイケル・ケイン
マギー・ジレンホール ゲイリー・オールドマン モーガン・フリーマン
さて、何から話せばいいのやら、という感じですが。
元々それほどこのジャンルが得意ではない私からしたら、
とりあえず見終わって最初に出た言葉は「お腹いっぱいで苦し〜」でした。
152分の長尺ですが、そこまでの長さを感じさせない盛りだくさんの作りで、
若干寝不足気味で観に行って、寝そうになったらどうしようなんて思っていたのですが、
そんな心配はあっさりどこかに行ってしまうほど、瞬きする間もないぐらいでした。
その味は、私にとってちょっと食べ慣れてない異国のものなのだけど、
不思議に胃もたれするようなことはない。
でももうこれ以上はとても消化できそうにない。強力なフルコースでした。
それは、この作品がアメコミとかヒーローものとかいうよりも、
普通の犯罪ドラマと言えそうな話の展開による部分が大きいと思いました。
マフィアのマネーロンダリングだの、その資金源が香港企業だとか、
愛する人が人質となり、どうにかして助け出さなきゃいけないとか、
これ別にバットマンじゃなくてもいいのでは?なんてことを思ったりもして。
だからこそアメコミに疎い私も普通に飲み込めたのかも知れません。
ただもちろん、そこにバットマンやジョーカーというありえない"キャラクター”がいて、
とてもニューヨークに似ているけれど、ここはゴッサムシティという街なのであって、
次々に起こる事件に立ち向かい、悪人たちを追いかけたり締め上げたりする方法は、
警察のお仕事とはまるで違う。法律も街のルールもすべて架空の作り話。
なのにこのリアリティはなんなのでしょう?
悩めるバットマン
特殊能力のない、ただの人間であるバットマン。
今回も新しいバットスーツを作り、武器もいろいろと新調してよく働いています。
でも見終わってみると、バットマン自体の存在感は薄い気がしました。
それは何よりジョーカーや、後半に登場するトゥーフェイスのインパクトが大きすぎるせいでしょう。
わざわざ香港出張してたなあとか(この香港シーンの展開は結構スキ)、
バットポッドが登場するところとか、ジョーカーをボコボコにするところとか、
ジョーカーが人質を取って指示を出していたビルに乗り込んでいったところとか、
いろいろとその登場シーンは思い出すのですが、
それよりジョーカーたちのシーンのほうが圧倒的に記憶に残っています。
で、そのジョーカーです。
噂通りにものすごいものを見せてもらったという感じです。
ただ、ここまで世間の評価が高いのはちょっとどうかなあと、
あまのじゃくな私は思ってしまいます。
あまりにもこれがヒース・レジャーの遺作だから、という思いに、
みんな囚われすぎていないかしらん。
間違いなく彼の仕事の中ではとびきりのものだと思いますが、
彼がまだ生きていたなら、ここまで手放しに絶賛されたかなあ、と思ってしまいました。
個人的好みで言えば『ブロークバック・マウンテン』の彼の演技のほうが胸を打ったし。
例えば、これもいろんなところで例えに出されているようですが、
『ブラックレイン』における松田優作の評価にも似ていて、
確かにあの佐藤役は凄まじかったけど、実は『探偵物語』のほうが好みなんだけど(!)みたいな。
・・・まあ、ジョーカーとイニス、佐藤と工藤ちゃんを比較する意味はないかもしれませんが。
でも、1つの役柄の昇華のさせ方として、近年稀にみる完成度。
ここまで素晴らしいものを見せてくれたことには本当に感動しました。
オスカー候補は本当にありえるかも知れません。
最凶最悪
今回登場のもう1人の重要人物、ハービー・デント/トゥーフェイスを演じたアーロン・エッカート。
彼もとても素晴らしかった。彼ももっと評価されてもいいんじゃないでしょうか。
ダークナイトに対するホワイトナイト。
でもジョーカーの手によってあっさりとダークサイドに落ちてしまう、
その変わり方のものすごさというか、恐ろしい特殊メイクとともに、
ジョーカー以上に大活躍だったと言ってもいいと思います。
でもトゥーフェイスになってからがちょっと物足りなかった。
もっと活躍(?)させて欲しかったです。
そうは言っても個人的にはああいう"顔"はすごーく苦手でコワイんですが。
ところで、劇場には結構小さい子どもたちが観に来てたんですが、
これ、子どもに見せちゃダメでしょう。
話はわけわかんないと思うし、ジョーカーやトゥーフェイスの顔はトラウマになりそう。
日本ではなぜかレーティング付いてないんですよね。
連れてきた親もここまでとは思わなかったんでしょう。
コインが表なら・・・
前作のケイティ・ホームズから交替したレイチェル役のマギー・ジレンホール。
この2人、たぶんそんなに年齢は違わないと思うのですが、
ケイティ・ホームズのほうはどうもお嬢ちゃんっぽいし、
キャリアのある女性ということではマギー・ジレンホールのほうが貫禄があって適役だったと思います。
マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマンのレギュラー3人。
特に今回はゲイリー・オールドマンが大活躍でした。
この人、こんなに完璧に良い人の役って今までなかったんじゃないでしょうか。
一昔前ならジョーカー側の人ですよね。そういう意味では新境地開拓していると言えそうです。
最後はちょっとウルッと来ました。
大活躍
復習のために先週末『バットマンビギンズ』をレンタルして観たのですが、
特典映像に冒頭の銀行強盗シーンがまるまる入っていて、
ちょっと長い予告編かなぐらいに思って観てたんですが、
そのまんまなワケないと思ってたら、まんまだったんですね。
・・・うーむ、やっぱりこれはスクリーンでいきなり観たかった。
マホーンの登場に純粋に驚きたかった!
キリアン・マーフィーのチラッとだけの出方は面白いし、
エリック・ロバーツ、アンソニー・マイケル・ホールなんていうキャスティングも渋い!
市長役の人は『LOST』の人だ〜とか、出てくる人にいちいち反応してしまう、
なんとも絶妙なキャスティングでした。
香港シーンにエディソン・チャンに似てる人がいるなあと思ったら本人だったそうですね。
なんだかそういう面白さでも、もう一回観たくなるような作品でした。
ドゥオーン!
盛りだくさんな本作にあって、実は一番気になったというか、
それまでの流れとはなんか違うような、でも意外に記憶に残っているのが、
一般市民と囚人たち、2つのフェリーのエピソード。
かなりベタな設定だし、たぶん現実にはああいう風にはならないだろうな、
もっとパニック状態になって両方同時にドカン!だと思うのですが、
あの、起爆装置を受け取る囚人、男前なことをやってくれました。
何が善で何が悪か、それは見た目だけではわからないという、すごくわかりやすい表現というか。
でも、だからこそ映画全体の中でなんだか一番浮いているような気がしました。
あの囚人チームのやってくれたことに対して、一般市民チームのほうはちょっとインパクトなさ過ぎ。
あれ以上のアイディアは思いつかなかったのでしょうか。
「俺がやる」「いえ私が」「いやいやオイラが」「じゃあどうぞどうぞ」
・・・とかいうダチョウ倶楽部的展開で(スミマセン)譲り合ったあげく何もできないとか、
なんかそんなもう一捻りが欲しかった。
あの結果にジョーカーがガッカリしちゃうんですが、私も違う意味でガッカリしてしまいました。
そうは言っても映画的なドキドキ感でいうと、意外とここが一番ドキドキした部分かも知れません。
私のバットマンワールドに対する思い入れの少なさもあって、
星5つ!と言うほどの大傑作とは言い切れないのですが、
盛りだくさんで隙のない、恐ろしく完成度の高い作品であることは間違いないです。
私のような一般客にはちょっと敷居が高すぎたかな。
とりあえずまだお腹パンパン状態なので、消化したらもう一回観てみたいです。
The Dark Knight(2008 アメリカ)
監督 クリストファー・ノーラン
出演 クリスチャン・ベール ヒース・レジャー アーロン・エッカート マイケル・ケイン
マギー・ジレンホール ゲイリー・オールドマン モーガン・フリーマン
タグ:映画
こんばんは。
>お腹パンパン状態なので、消化したらもう一回観てみたいです
そうなんですよね。
私ももう1回見ようと思っているのですが、少し間を置きたいです。
by hash (2008-09-01 21:54)
hashさん、コメント& nice!ありがとうございます。
時間が経つほどに、いろんなことを思い出しては考えてしまい、
仕事中もボーッとしてました。
カラダに受けた衝撃度では今年暫定1位かもです。
by dorothy (2008-09-02 01:19)
こんにちは(^皿^)
なるほど、確かにヒース・レジャーに対する世間の評価は、「ブラックレイン」公開時に於ける松田優作と似ているかもしれませんね。公開当初「ブラックレイン」は客の入りが悪かった(劇場に行ったのは熱狂的な優作ファンとリドリー・スコットファンのみ)のに、松田優作急逝の報が流れてから一気に一般人の客足が伸びましたからね。このあたりは当時複雑な心境でした。
オイラの場合、ヒースの死は特に関係なくて、純粋にバットマンファンとして“凶悪でクール”なジョーカーが見られたのが一番嬉しかったですね。と同時に、漫画のキャラクターを嘘っぽくならないようにリアルに作り上げたヒースの芝居はやっぱり凄いなと感動しました。
日本でも漫画の実写映画化は多いですけど、文字通り“漫画”みたいなものばかりでガッカリですね。
by 堀越ヨッシー (2008-09-02 09:32)
堀越ヨッシーさん、コメント& nice!ありがとうございます。
>ヒースの死は特に関係なくて、純粋にバットマンファンとして“凶悪でクール”なジョーカーが見られたのが一番嬉しかったですね
そういう感想をもっと聞きたいなと思いました。
世間的には純粋にヒース・レジャーの演技が評価されるんじゃなく、
「彼が亡くなったことが惜しい」という方向で評価されているものが多い気がして。
それと「ヒースがジョーカーを演じたことが彼の死に繋がった」という論調もどうも気に入らないんですよね。
これは、クリスチャン・ベイルも反論していましたが。
そういうことは全然抜きにして、彼の演技はただただ素晴らしかったと思います。
by dorothy (2008-09-04 00:00)