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キッスで殺せ [映画感想−か]

たまに無性に観たくなる、不思議な魅力を持った作品です。
カルトムービーとして有名なものですが、
表向きはいわゆるフィルムノワールと言われるジャンルで、
原作はミッキー・スピレーンのマイク・ハマーもの。
・・・ということですが、私はほとんどこのジャンルの本は読まないので、
原作と比べてどうこうとかは一切わかりません。
また、マイク・ハマーと言えば濱マイク?・・・こちらも1本も観ていません。


ロサンゼルスの私立探偵マイク・ハマーが、深夜、クルマを走らせていると、
突然、裸足でトレンチコートを纏っただけの女がクルマの前に立ち塞がります。
強引なヒッチハイクをしてきたクリスティーナというその女を乗せ、しばらく走っていると、
突然謎の男たちに捕まり、2人は拷問を受けたあげく、クルマごと川に突き落とされます。
マイクはなんとか助かりますが、クリスティーナは死亡。
マイクはFBIの取り調べを受けますが何も答えず、助手のヴェルダと共に独自に調査を始めます。


謎の女その1 クリスティーナ
kissmedeadly_3_1.jpg


この作品を初めて観たのは今から10年ほど前。
これと、デヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』を、
何の予備知識もなく、偶然同じ時期に観てしまいました。
『キッス〜』を先に観たので、『ロスト〜』を観たとき、
「あ、キッスで殺せだ!」と気がついてしまったのですが、
偶然とはいえ、この順番で観たのは正解だったと思いました。
最初に『キッス〜』を観たとき、普通の探偵ものだと思っていたら話が思わぬ方向へ進んでいき、
最後はただただ呆気にとられてしまい、相当ショックを受けたのですが、
その後、リンチがこの作品へのオマージュとして『ロスト〜』を作ったことを知り、
逆に、なるほどこれは確かにリンチ的であるのかも、と妙に納得したものです。

私立探偵、謎めいた美女たち、ピストルや闇に光るナイフ、危険な裏社会・・・などなど、
一見普通のフィルムノワール風(と言っても、フィルムノワールの定義はよくわからないので、
個人的にフィルムノワールという言葉から感じるもの、という意味です)なのですが、
話のオチにとんでもないものが登場すると、まさにトンデモ映画と言える色あいとなり、
リンチ的不条理さを感じずにはいられませんでした。
その"とんでもなさ"もあって、この作品がカルトと呼ばれてしまうのだと思うのですが、
とにかく最初から最後まで目が離せない不思議な緊張感、
話がどこに進んでいくのかがまるで見えず、見えたと思ったら思いっきり崖から突き飛ばすかのように、
あっけなくオチを付けて幕を下ろす、そのやり方になんとも言えない魅力を感じている気がします。


謎の女その2 リリー
kissmedeadly_2_1.jpg


主人公マイク・ハマーは、まあ男前と言えなくもないのですが、
それほど女たちを引きつけるような人には見えません。
でも、あちこちで「Kiss me〜」と言われてしまうのですね。
最初のほうでFBIに取り調べを受けるところが、彼の人となりを紹介する格好になってるのですが、
それがひどい言われようで、こんなに言われてはそりゃあ協力したくなくなるよなあ、と思うのですが、
これがあながちウソでないというのがだんだんわかってきます。
強引で自分勝手。かなり暴力的。なんだかとっても胡散臭い。
でも、もつれたヒモをほぐし、たぐり寄せる能力は大したものです。
とっさの判断力もキチンと備わってます。
面白いのは、この人、なんだかわからない武器というか、
瞬時に相手を痛めつけるワザを持っているんですね。
でも、これがなんだかわかりません。
相当屈強な相手が一発でやられてしまい、そばで見ていた仲間が怯えてしまうという、
それってどんな攻撃方法だったのかすごく知りたい!

ハードボイルドに美女はつきものだと思うのですが、
何人か登場する女性陣は、どうもどの人も印象が薄く、ハッキリ言って美女がいないのです。
一番キレイだと思ったのは、ギャングの親分の邸宅にいてマイクをすんなり家に入れる謎の美女。
でもこの人、それだけの役なんですね。
その次は事の発端となったクリスティーナ・・・かなあ。
彼女の元ルームメイトのリリーは、まあそういう設定であったと思うのですが。
どこかトロそうなしゃべり方といい、見ていてちょっとイライラしてしまいました。
で、一番美女であって欲しいマイクの助手ヴェルダが、どうも・・・残念。
ここはグレース・ケリーかイングリット・バーグマンばりの美女にして欲しかったところですが、
それだとお上品すぎて、マイクの本業である浮気調査の役には立たないかな?


マイクの"相棒"ヴェルダ
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登場人物の中では、脇で唯一和ませてくれる自動車修理工のニックが良い。
必ず「バ・バ・ブーン!」を会話の中に入れてしゃべる憎めないメキシカンオヤジ・・・なんですが。

製作された50年代当時のアメリカの不安感・・・赤狩りとか核の恐怖とか、
そういったものが込められている、と専門家たちは言いますが、
そんな細かいことより、何かとんでもなく面白いものを作ってやろう!
という意気込みがあったのでは、ということが感じられ、この作品をとても愛おしく思います。
アタマのタイトルロールが下から上へ流れていくのとか、当時としたら斬新だったのでは?
それらがすべて成功しているとも思えませんが、なぜか惹きつけて止まない魅力を持っています。
また何年かしたらきっと観たくなる。アヤシイ箱の中を覗いてみたくなる。


Kiss Me Deadly(1955 アメリカ)
監督 ロバート・アルドリッチ
出演 ラルフ・ミーカー アルバート・デッカー ポール・スチュワート ジャック・ランバート
   マキシン・クーパー ギャビー・ロジャース ニック・デニス クロリス・リーチマン ジャック・イーラム



フィルム・ノワール セレクション キッスで殺せ!

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