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ボビー [映画感想−は]

エミリオ・エステベスが監督、脚本を手がけ、出演もしています。
5年越しの念願の企画だったそうですが、思い入れだけで突っ走るということもなく、
実に真面目で丁寧な作品に仕上がっています。

1968年6月5日、次期アメリカ大統領候補であったロバート・F・ケネディが暗殺されます。
その悲劇の舞台となったロサンゼルスのアンバサダーホテル、
事件が起こるまでの16時間、そのホテルに居合わせたいろんな人々の様子を描いています。

複数の登場人物のエピソードが同時に語られる、いわゆる群像劇です。
古くは『グランドホテル』から、アルトマン作品、
最近は『マグノリア』や『クラッシュ』など。
(冒頭、アンソニー・ホプキンスの口から『グランドホテル』の話が出るのは、
ちょっとあざとい気もしましたが。)
私はこの群像劇というものが大好きなので、これもとても期待していました。
結論から言うと、上記の作品群には確かにはるかに及びません。
ひとつひとつのエピソードは良くできていてムダな部分も少なく、
俳優たちの演技も素晴らしく、文句はないのですが、
こういう群像劇の醍醐味とも言える、それぞれのエピソードが混じり合い、
エンディングに向かって昇華していく・・・というような点に関しては、
ちょっと物足りなさを感じました。
とは言え、やたらと登場人物たちが出会ったり関わりあったりすればしたで、
普通そんなに接点があるものなのか?そんなに世の中狭くないだろう!
とツッコミたくなることもあるのですが。

エピソードの中では、リンジー・ローハンが、
イライジャ・ウッドのベトナム行きを阻止するために偽装結婚する、という話が、
ショックで、またとても切なかったです。


若者代表
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それと、厨房での黒人対メキシコ人の人種についてのやりとりは面白かった。
この図式は今でもそんなに変わっていないのでは?という気がします。
ウィリアム・H・メイシーの、真面目で、でも浮気もしてます、というのは、
彼の得意とするところと言ってもいい、なんだか安心の芝居でした。

最後に暗殺シーンへと向かうことはわかっているはずなのですが、
実際そうなってしまうとなんでこんなことが!?と涙が止まらなくなってしまいました。
それは当然、と言ってはなんですが、ケネディが撃たれたことより、
彼の巻き添えとなってしまった人々に思いが行ってしまったからです。
みんなこの16時間のあいだにいろんなことがあったけれど、
なんらかの幸せな時を過ごしたあとだった人ばかりだからです。
改めて愛情を確かめ合った夫婦や、LSDでハッピー(?)な一日を過ごした若者二人、
そして新しい一歩を踏み出し始めたばかりの若いカップル。
クビになったクリスチャン・スレーターは別ですが・・・。
そのシーンにかぶさるケネディのスピーチが、深く重く胸に響きました。


歓声が一瞬にして悲鳴となります
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人種の問題、戦争や暴力によって容易に踏みにじられる人間の尊厳、
そのひとつひとつが今に通じるということの悲しさ、愚かさ。
すべてが未だに解決されていないことばかりだと、しみじみ実感させられます。
だから今、この作品を作る意味があったのかも知れません。

それにしても実に豪華なキャスティングですが、
考えてみればエミリオ・エステベスの身内や旧友ばかりとも言えます。
彼の人徳と言えるのかも知れません。
シャロン・ストーンとデミ・ムーアの2ショットはなんとも言えない迫力でした。
観ていて何かよくわからない興奮を覚えました。


二大女優の底力
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アシュトン・クッチャーはデミ姉さんに連れて来られて、
無理矢理あの役を作ってもらったんでしょうか?なかなかの怪演でしたが。
ローレンス・フィッシュバーンも出番は短いですが、彼らしさを出していました。
それと、画面上で一緒になることはなかったと思いますが、
エミリオとパパのマーティン・シーンはやはりよく似ていてびっくり。


父と息子
bobby_2.jpg


でもやはり、そつなくまとめたという感じで、
もう少し盛り上がる部分があっても良かったかも、という気はします。
そういうところ、エミリオ・エステベスという人は真面目な人なんだろうなあと思います。
普通に良い映画を観た、という満足感は充分得られました。


Bobby(2006 アメリカ)
監督 エミリオ・エステベス
出演 ハリー・ベラフォンテ ニック・キャノン エミリオ・エステベス ローレンス・フィッシュバーン
   ヘザー・グレアム アンソニー・ホプキンス ヘレン・ハント ジョシュア・ジャクソン
   アシュトン・クッチャー シャイア・ラブーフ リンジー・ローハン ウィリアム・H・メイシー
   デミ・ムーア マーティン・シーン クリスチャン・スレイター シャロン・ストーン イライジャ・ウッド

     

ボビー BOBBY

ボビー BOBBY

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD


タグ:映画
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