ライフ・イズ・コメディ!ピーター・セラーズの愛し方 [映画感想−ら]
イギリスの天才喜劇俳優ピーター・セラーズ波乱の生涯を描いたドラマ。
物語は、彼がラジオドラマのスターとして活躍している頃から始まり、
映画界への進出、『ピンクパンサー』シリーズなどの成功、
その一方での家庭の崩壊、そして晩年を、
どう見てもピーター・セラーズにしか見えない、
ジェフリー・ラッシュの驚くべき演技で見せていきます。
オープニング、誰もいない暗いスタジオに入り、モニターの前に腰掛けるジェフリー・ラッシュ。
(ここではまだ彼はジェフリー・ラッシュにしか見えません。黒縁メガネをかけてはいますが)
暗く地味な始まりですが、すでに画面上に出ているスタッフの名前、
そしてタイトル"The Life and Death of Peter Sellers"の文字が
ピンク・パンサーなどでお馴染みの、例のクネクネした飾り文字になっています。
彼がカメラのほうをチラッと見て微笑み、モニターのスイッチを入れます。
するとそこに映し出されるのはカラフルなアニメーション!
『何かいいことないか子猫チャン』のテーマ曲"What's New, Pussycat?"が流れる中、
登場人物が全部黒縁メガネのピーター・セラーズというピンクパンサー風アニメーションが展開していきます。
もうこれだけでワクワクしてしまいます。
・・・ですが、明るいワクワクはそこまで。
映画は進むにつれて、セラーズの素顔をどんどん暴いていきます。
はっきり言って、どうしようもなく困った人だということが、
いろんなエピソードで語られます。
子どもがそのまま大人になった、と言えば聞こえはいいですが、
自分の息子に息子以上に子どものような態度で接する・・・というよりものすごくキレてみたり、
思い通りにならないと、暴れて家中をひっくり返す、
誰彼かまわず相手を傷つけるようなことを言い、
共演したソフィア・ローレンを本気で好きになってしまうと、
まわりがまるで見えなくなってしまい、妻や子どもたちにそのことを告白してしまったり・・・。
いわゆる天才にありがちの、芸術的才能は素晴らしいけどほかのことはまるでダメ、を
絵に描いたような人と言えるかも知れません。
人格形成に影響したと思われる母と父
セラーズはスクリーン上でいろんなタイプの役を演じていました。
『博士の異常な愛情』のように一人三役をこなしたりといったものもありました。
では、実際の彼はいったいどういう人だったのか。
"困った性格"であったことは彼の素顔であったかも知れませんが、
逆に言うと、それさえも無意識のうちに演じていたのかも知れないし、
本人にも本当の自分がわからないでいたのかも知れません。
鏡に映る姿に彼は何を見ていたのか
劇中、ラッシュが唐突に彼の周囲の人々に扮して見せる場面がたびたび登場します。
ある時は父や母に、妻やキューブリックなどになりきって、
カメラ目線でそれぞれの心情を語ります。
でもそれはもちろん彼ら自身の言葉ではなく、
セラーズが"こうあって欲しい"と思う言葉をしゃべらせるのです。
彼の存在感のなさ、何を考えているかわからない部分を、
ほかのキャラクターを通して説明するかのように。
いろんな役を演じてきたセラーズを表現する、なんとも巧みな演出です。
まあ、ジェフリー・ラッシュがエミリー・ワトソンになるのはかなりブキミではありますが。
また、この作品のすごいところは、セラーズの出演作を完璧に再現していることです。
『博士の異常な愛情』のセットなど、
セラーズの部分だけラッシュに差し替えて合成してるんじゃないかと思ったほど。
もうこの辺になると、ジェフリー・ラッシュはどう見てもピーター・セラーズ本人にしか見えなくなっています。
完璧にDr.ストレンジラブ!
映画内映画、というのともちょっと違う気もしますが、
いくつもの役を演じる俳優をいくつもの役を演じながら演じる(うーん、なんだかわけわかりませんが)、
奥が深く、映画的楽しみに溢れている素晴らしい作品だと思いました。
セラーズの作品を知らないと、ちょっとわかりづらい部分も多いですし、
知っているほどなるほどと思い、ニヤリとさせられます。
セラーズ作品をもっともっと観たくなりました。
The Life and Death of Peter Sellers(2004 アメリカ/イギリス)
監督 スティーヴン・ホプキンス
出演 ジェフリー・ラッシュ シャーリーズ・セロン エミリー・ワトソン ジョン・リスゴー
物語は、彼がラジオドラマのスターとして活躍している頃から始まり、
映画界への進出、『ピンクパンサー』シリーズなどの成功、
その一方での家庭の崩壊、そして晩年を、
どう見てもピーター・セラーズにしか見えない、
ジェフリー・ラッシュの驚くべき演技で見せていきます。
オープニング、誰もいない暗いスタジオに入り、モニターの前に腰掛けるジェフリー・ラッシュ。
(ここではまだ彼はジェフリー・ラッシュにしか見えません。黒縁メガネをかけてはいますが)
暗く地味な始まりですが、すでに画面上に出ているスタッフの名前、
そしてタイトル"The Life and Death of Peter Sellers"の文字が
ピンク・パンサーなどでお馴染みの、例のクネクネした飾り文字になっています。
彼がカメラのほうをチラッと見て微笑み、モニターのスイッチを入れます。
するとそこに映し出されるのはカラフルなアニメーション!
『何かいいことないか子猫チャン』のテーマ曲"What's New, Pussycat?"が流れる中、
登場人物が全部黒縁メガネのピーター・セラーズというピンクパンサー風アニメーションが展開していきます。
もうこれだけでワクワクしてしまいます。
・・・ですが、明るいワクワクはそこまで。
映画は進むにつれて、セラーズの素顔をどんどん暴いていきます。
はっきり言って、どうしようもなく困った人だということが、
いろんなエピソードで語られます。
子どもがそのまま大人になった、と言えば聞こえはいいですが、
自分の息子に息子以上に子どものような態度で接する・・・というよりものすごくキレてみたり、
思い通りにならないと、暴れて家中をひっくり返す、
誰彼かまわず相手を傷つけるようなことを言い、
共演したソフィア・ローレンを本気で好きになってしまうと、
まわりがまるで見えなくなってしまい、妻や子どもたちにそのことを告白してしまったり・・・。
いわゆる天才にありがちの、芸術的才能は素晴らしいけどほかのことはまるでダメ、を
絵に描いたような人と言えるかも知れません。
人格形成に影響したと思われる母と父
セラーズはスクリーン上でいろんなタイプの役を演じていました。
『博士の異常な愛情』のように一人三役をこなしたりといったものもありました。
では、実際の彼はいったいどういう人だったのか。
"困った性格"であったことは彼の素顔であったかも知れませんが、
逆に言うと、それさえも無意識のうちに演じていたのかも知れないし、
本人にも本当の自分がわからないでいたのかも知れません。
鏡に映る姿に彼は何を見ていたのか
劇中、ラッシュが唐突に彼の周囲の人々に扮して見せる場面がたびたび登場します。
ある時は父や母に、妻やキューブリックなどになりきって、
カメラ目線でそれぞれの心情を語ります。
でもそれはもちろん彼ら自身の言葉ではなく、
セラーズが"こうあって欲しい"と思う言葉をしゃべらせるのです。
彼の存在感のなさ、何を考えているかわからない部分を、
ほかのキャラクターを通して説明するかのように。
いろんな役を演じてきたセラーズを表現する、なんとも巧みな演出です。
まあ、ジェフリー・ラッシュがエミリー・ワトソンになるのはかなりブキミではありますが。
また、この作品のすごいところは、セラーズの出演作を完璧に再現していることです。
『博士の異常な愛情』のセットなど、
セラーズの部分だけラッシュに差し替えて合成してるんじゃないかと思ったほど。
もうこの辺になると、ジェフリー・ラッシュはどう見てもピーター・セラーズ本人にしか見えなくなっています。
完璧にDr.ストレンジラブ!
映画内映画、というのともちょっと違う気もしますが、
いくつもの役を演じる俳優をいくつもの役を演じながら演じる(うーん、なんだかわけわかりませんが)、
奥が深く、映画的楽しみに溢れている素晴らしい作品だと思いました。
セラーズの作品を知らないと、ちょっとわかりづらい部分も多いですし、
知っているほどなるほどと思い、ニヤリとさせられます。
セラーズ作品をもっともっと観たくなりました。
The Life and Death of Peter Sellers(2004 アメリカ/イギリス)
監督 スティーヴン・ホプキンス
出演 ジェフリー・ラッシュ シャーリーズ・セロン エミリー・ワトソン ジョン・リスゴー
タグ:映画
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