ブラックブック [映画感想−は]
ポール・ヴァーホーヴェンと聞くと、
『ロボコップ』『トータル・リコール』『スターシップ・トゥルーパーズ』のちょっとB級SF系か、
『氷の微笑』『ショーガール』のエロティックサスペンス(?)ものを想像して、
これもどこかでトンデモ戦争映画にでもなるのかと思って観始めましたが、
実に真っ直ぐな戦争サスペンスという趣で、最後まで目を離すことが出来ませんでした。
何が善で何が悪かわからない。
助けてくれたレジスタンスが善人とは限らず、
ナチス高官も心に葛藤を抱えている。
戦争が終われば、かつてのレジスタンスやユダヤ人たちがナチス以上の狂気を見せる。
戦争とはどちらか一方を善か悪に決めつけて終息させることなどできない、ということを、
わかりやすく、また深い哀しみとともに描いていました。
主人公エリスを演じたカリス・ファン・ハウテンが素晴らしい。
女のたくましさや弱さ、ずるさや愛らしさを実にうまく演じていました。
家族を殺され、一人生き残ったけれど、
ただただその復讐に燃えて・・・ということではなく、
とにかくただ、生き抜こうとする。
その苦しみ、その虚しさを、まさに体当たりで表現していました。
終盤近くの「この苦しみに終わりはあるの!?」という彼女の慟哭には強く胸を打たれました。
そして、その苦しみに終わりはないことを最後に私たちは知ることになります。
それにしてもチョコレート!
タイトルの『ブラックブック』は重要なものではあったけれど、
その意味するところは少しあっさりとしていたようにも思います。
むしろ『チョコレート』という題でも良かったのでは?と思ったぐらいです。
Zwartboek(2006 オランダ/ドイツ/イギリス/ベルギー)
監督 ポール・ヴァーホーヴェン
出演 カリス・ファン・ハウテン セバスチャン・コッホ トム・ホフマン
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